謎の能力【壁】で始まる異世界スローライフ~40才独身男のちょっとエッチな異世界開拓記! ついでに世界も救っとけ!~

骨折さん

文字の大きさ
上 下
20 / 93
竹の壁の章

仲間探し

しおりを挟む
 異形の大群が現れ、とうとう敷地内に浸入を許してしまった。
 だが今の俺は転移当初の5倍の筋肉を持ち、タイマンで異形と渡り合えるようになっている。
 今しがた身長2メートルを超える大きな個体を退治したところだ。

 異形は股間から串刺しになるように竹壁で串刺しになった後、止めの一撃を額に食らう。
 塵になるようにサラサラと体が崩れ去っていった。

「ライトさん! 大丈夫ですか!? い、異形が逃げていきます!」

 リディアは小屋の屋根から伝えてくる。
 よ、良かった。今回の襲撃は終わったようだ。
 勝って兜の緒を締めよという言葉もある。 
 最後にしっかりと傷んだ壁を補修しておく。

「ライトさん!」

 リディアは屋根から飛び降りるとしっかりと俺に抱きついてくる。 
 俺も彼女を抱きしめながらお互いの無事を祝うことにした。

「リディア、良かったよ。怪我は無いみたいだな」
「はい……。でも心配したんですから。ライトさんがいなくなったら私……」

 恐らくだがもし俺が死んだとしたら壁は消えてしまうだろう。
 俺が死ぬということはリディアを守るものが失われるということ。
 俺の死が彼女の死と直結するのだ。
 
 今回は異形の浸入を許したが何とか勝てた。
 だが今後は直接奴らと戦うべきではない。
 むしろ俺だってあんな化け物と近接戦闘をしたいとは思っていないしな。

 そのためにやれることは一つだけだ。
 俺はリディアの髪を撫でながら……。

「なぁリディア、聞いてくれ。異形の襲撃は続くはずだ。今日よりももっと多くの異形に襲われることもあるかもしれない。だからさ、俺達には一緒に拠点を守ってくれる仲間が必要だ」
「そうですね。私もそう思います。今回は運が良かっただけです。たまたまライトさんの力が上がって襲撃を防ぐことが出来ましたが、恐らく木の壁のままだったら……」

 その通りだ。
 いつ竹壁を壊すような異形の大群が現れるか分からない。 
 だからこそだ。今まで通りの守りだけではなく攻めの守りに切り替えていかないといけない。

「明日からも森の捜索は続けよう。きっとリディアのような生き残りがいるかもしれない」

 聞いた話によると、かつてこの地に存在した王都には10万を超える人々が住んでいたそうだ。
 その1%でも生きてくれていれば、こちらにとって大きな戦力になるからな。

「それじゃまた明日から頑張ろうな」
「はい!」
  
 二人で小屋に戻っていく。
 寝る前にリディアはもよおしたのか、モゾモゾと俺に寄ってきた。

「するの?」
「駄目ですか?」

 と目を潤ませる。
 断れんなぁ。よし、リディアの村民満足度を上げるためにも頑張るとするか。

 一頑張りを終えるとリディアは気絶するように眠ってしまう。
 寝る前に喉が乾いたので水を飲みにいく。
 そこで気付いたことがある。
 
 満月だった。
 しかし月は不気味な程、真っ赤に染まっている。

「怖……」

 何だか背筋に寒気がしたので、早々にリディアが待つ寝床に戻っていった。


◇◆◇


 それから2週間が経ち、俺達は相変わらず森の中を捜索している。
 生き残りは見つけられなかったものの、猪を狩ったり食べられる果物や野草を採種した。
 他にも新しい壁である竹を使った生活用具なども作り生活も豊かになりつつある。

 今も二人でリディアのような生き残りがいないか探しているが、見つかるのは俺達を襲おうとする獣ばかりだ。

「せいっ!」
『ブモッ!』

 ――ドシュッ ドサッ

 先日レベルアップを果たした俺は異形とタイマンで渡り合えるくらいには強くなった。
 突進してくる猪に竹槍を一突きする。
 槍は難なく猪の額を貫き、地面に転がった。

「ラ、ライトさん、強くなりましたね」
「ははは、リディアのおかげだよ」

 言葉の通りだ。どうやら俺が強くなるためにら村民……リディアの満足度を上げる必要がある。
 村民満足度が二回上限を回ったことで俺はレベルアップを果たしたようだ。
 筋力が以前の5倍だからな。地球なら最強の男と言っても過言ではないだろう。
 だがあくまで人間の中では強い程度だ。異形の団体様を相手にするにはまだ力は足りないと思う。
 
 今のところ肉は充分にあるので、猪はその場で皮を剥ぐ。
 リディアは猪の皮を剥ぎつつため息を一つ。

「はぁ、見つかりませんね……」
「だな。少し休もうか」

 思うように成果が得られずリディアは気落ちしている。
 こういった時は気分転換をはかるべきだ。
 負の感情をどこかで絶ち切らなければならないとエドも言ってた気がする。

 いつものように壁が発生する時の摩擦熱を利用し焚き火を起こす。
 石を焼いた後、竹を使った水筒に入れればどこでも熱いお茶が楽しめるのだ。
 
 二人で焚き火を囲み熱いお茶を飲む。
 気分が変わったのかリディアは楽しそうに喋り始めた。

「ふふ、美味しいです。ねぇライトさん。この毛皮は何に使うんですか?」

 と先程狩った猪の皮を撫でる。
 現在数十枚の毛皮のストックはあるが、考えている通りだとまだ足りない。

「今俺達って服は一着しかないだろ? 毛皮を利用して服を作りたいんだ。それだけじゃないぞ」

 これから増えるであろう仲間のためにも毛皮で作った寝具は必要になるだろう。
 せっかく一緒に住むんだからさ、どうせなら快適に暮らしてもらいたいしね。

「へぇー、ライトさんってすごいですね。そこまで考えていたんですね」
「だろ? それにさ、毛皮の布団って気持ちいいしさ。せっかくエッチなことをするんだったらフカフカの布団でしたいじゃん?」

 ちょっとセクハラじみたことを言う。
 とはいえ最近夜になると毎日のように肌を合わせている。
 美女に求められるというのは嬉しいものである。 

「もう、ライトさんのエッチ」

 とリディアは言うが、むしろ俺よりエロいと思うぞ。嬉々としてアレを飲んでくれる人なんて初めて見たよ。

「ふー、それじゃ休んだことだし、もう少し頑張るか……」

 ――パキッ

「リディア……」
「はい……」

 また猪だろうか? まぁ今の俺達の力ならば大した脅威にはならない。 
 また毛皮のストックが増えるだけだ。
 槍を構え茂みに近づくが……。

「ライトさん、あれ……」
「あぁ。やっぱりいたんだな」

 茂みの中には二人のエルフが抱き合うように倒れていた。

 良かった……。
 やはり生き残っている者がリディアの他にもいたんだ。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

処理中です...