22 / 23
ジャワ島へ
しおりを挟む
そろそろ出発の時が来た。
インドネシアに居れる滞在期間は1ヶ月。
通常の観光ビザではこの期間のみ滞在が許されている。
トマさんや、リンさん、そしてジョニーや宿の従業員員ともすっかり仲良くなっていた。
居心地のとても良いこの宿だが、インドネシアを北上し、マレーシアへの入国を考えている私にとっては、そろそろ重い腰を上げる時期に来た。
最後の一日は思う存分、この宿でゆっくり過ごした。
みんなで他愛もない話をしたり、何度も歩いたウブドの街をぶらぶら歩いたり。
お気に入りのカフェでライステラスを眺めながらコーヒーを飲んだり。
5年前に来たときの騙されて辛かった思い出や、短い間だったけど、今回のバリ島の思い出がゆらゆらと心地よい記憶となって頭の中を流れていく。
ここにもっと居たい気持ちが残っていたのは間違いないけれど、旅は始まったばかりということを思い出す。
まだまだ道のりは長い。
先に進んでいかなければと、自分の心に言い聞かせる。
次の日の朝、宿のみんな、トマさんやリンさんに見送ってもらい出発をした。
ハグをしたり、お別れの言葉でお互いを労いながら。
またいつか会うことを約束して、少し自分の気持ちを楽にしながら。
ジャワ島へ向かうバス停までは、ナイスガイ、ジョニーが送ってくれる。
今では当たり前のように一緒にいた彼ともこれが最後のドライブになる。
バスはバリの州都でもあるデンパサールから出発する。
当初は島であるバリからどうやってジャワ島にバスで行くのか気になっていたが、どうやらここからバスごと船に乗り込み、海峡を越えジャワ島に渡るのだ。
クラクションと乗客の呼び込みの声が響きあい、ホコリと排気ガスで空気に色がついているバスターミナルは、すさまじい活気にあふれている。
多くのバスがひしめき合い、ジョニーがいなければどのバスに乗るのか全くわからなかっただろう。
ジョニーが先導し、多くの人をかき分けて、私を目的のバスまで連れて行ってくれる。
何が書いてあるかわからないチケットを呼び込みを行っている受付担当に渡し、担いでいる荷物を預けようとする。
すかさずジョニーが、
「ヒュミ、それはダメだ!荷物はバスの中に持ち込んで、肌身離さず持ってるんだ!」
そう言って、私のバックパックをギュッと押しつけた。
けっこうデカいねんけど、俺の荷物…
これ持ってバス乗んの??
と、一瞬思ったが、
「ここからは、本当に注意した方がいい。バリとは違って治安も悪くなる。
盗みや、スリは日常茶飯事だからな!
そうそう、財布はズボンの後ろにはいれるな!」
ジョニーにそう忠告され、身が引き締まる思いに。なんか急に不安になってきた。
そんなジョニーも乗客の波で見えなくなってくる。
「じゃあな!元気でな!ジョニー!ありがとう!」
「いい旅を!グッドラック!!」
互いに最後の挨拶を交わしたあと、乗客が全員揃ったバスは人混みの中を盛大にクラクションを鳴らし出発した。
チラリと手を振ってるジョニーが見えた。
最高にありがとう。
街中を走るバスと違って、意外にも中は快適だった。
シートも広く、リクライニングもついていて、エアコンも完備されている。
しかし、私の隣に座った男がやけに図体がでかく、常に腕が密着する。
そして、やはりバッグパックが邪魔だ。
とはいえ、ここからはかなり気をつけて行かなければならない。
バリではすっかり平和ボケしてしまっている。
周りを見渡すと、旅行者は私ひとり。
乗客は全員がインドネシア人のようだ。
急に寂しくなってきた。
不安になってきた。
ウブドのみんなが頭に浮かぶ。
そんな不安が顔に出ないよう、窓を眺めながら財布をしっかりと確認し、後ろポケットから前ポケットに入れ直す。
そうこうしているうちに、バスは海峡を渡る船に乗り込んでいった。
インドネシアに居れる滞在期間は1ヶ月。
通常の観光ビザではこの期間のみ滞在が許されている。
トマさんや、リンさん、そしてジョニーや宿の従業員員ともすっかり仲良くなっていた。
居心地のとても良いこの宿だが、インドネシアを北上し、マレーシアへの入国を考えている私にとっては、そろそろ重い腰を上げる時期に来た。
最後の一日は思う存分、この宿でゆっくり過ごした。
みんなで他愛もない話をしたり、何度も歩いたウブドの街をぶらぶら歩いたり。
お気に入りのカフェでライステラスを眺めながらコーヒーを飲んだり。
5年前に来たときの騙されて辛かった思い出や、短い間だったけど、今回のバリ島の思い出がゆらゆらと心地よい記憶となって頭の中を流れていく。
ここにもっと居たい気持ちが残っていたのは間違いないけれど、旅は始まったばかりということを思い出す。
まだまだ道のりは長い。
先に進んでいかなければと、自分の心に言い聞かせる。
次の日の朝、宿のみんな、トマさんやリンさんに見送ってもらい出発をした。
ハグをしたり、お別れの言葉でお互いを労いながら。
またいつか会うことを約束して、少し自分の気持ちを楽にしながら。
ジャワ島へ向かうバス停までは、ナイスガイ、ジョニーが送ってくれる。
今では当たり前のように一緒にいた彼ともこれが最後のドライブになる。
バスはバリの州都でもあるデンパサールから出発する。
当初は島であるバリからどうやってジャワ島にバスで行くのか気になっていたが、どうやらここからバスごと船に乗り込み、海峡を越えジャワ島に渡るのだ。
クラクションと乗客の呼び込みの声が響きあい、ホコリと排気ガスで空気に色がついているバスターミナルは、すさまじい活気にあふれている。
多くのバスがひしめき合い、ジョニーがいなければどのバスに乗るのか全くわからなかっただろう。
ジョニーが先導し、多くの人をかき分けて、私を目的のバスまで連れて行ってくれる。
何が書いてあるかわからないチケットを呼び込みを行っている受付担当に渡し、担いでいる荷物を預けようとする。
すかさずジョニーが、
「ヒュミ、それはダメだ!荷物はバスの中に持ち込んで、肌身離さず持ってるんだ!」
そう言って、私のバックパックをギュッと押しつけた。
けっこうデカいねんけど、俺の荷物…
これ持ってバス乗んの??
と、一瞬思ったが、
「ここからは、本当に注意した方がいい。バリとは違って治安も悪くなる。
盗みや、スリは日常茶飯事だからな!
そうそう、財布はズボンの後ろにはいれるな!」
ジョニーにそう忠告され、身が引き締まる思いに。なんか急に不安になってきた。
そんなジョニーも乗客の波で見えなくなってくる。
「じゃあな!元気でな!ジョニー!ありがとう!」
「いい旅を!グッドラック!!」
互いに最後の挨拶を交わしたあと、乗客が全員揃ったバスは人混みの中を盛大にクラクションを鳴らし出発した。
チラリと手を振ってるジョニーが見えた。
最高にありがとう。
街中を走るバスと違って、意外にも中は快適だった。
シートも広く、リクライニングもついていて、エアコンも完備されている。
しかし、私の隣に座った男がやけに図体がでかく、常に腕が密着する。
そして、やはりバッグパックが邪魔だ。
とはいえ、ここからはかなり気をつけて行かなければならない。
バリではすっかり平和ボケしてしまっている。
周りを見渡すと、旅行者は私ひとり。
乗客は全員がインドネシア人のようだ。
急に寂しくなってきた。
不安になってきた。
ウブドのみんなが頭に浮かぶ。
そんな不安が顔に出ないよう、窓を眺めながら財布をしっかりと確認し、後ろポケットから前ポケットに入れ直す。
そうこうしているうちに、バスは海峡を渡る船に乗り込んでいった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


学校であった怖い話の思い出語り【ネタバレ前提】
よもぎ
エッセイ・ノンフィクション
ファミコンソフト「学校であった怖い話」の思い出語りです。話の内容のネタバレ等が含まれますので、内容を知らない人向けではございません。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

ハピエン厨になったわけ
華抹茶
エッセイ・ノンフィクション
執筆を初めて二年半。いろいろな物語を書いてきたものの、その全ては必ずハッピーエンド。
それ以外を書かない理由をただつらつらと書いたものになります。
【アルファポリスで稼ぐ】新社会人が1年間で会社を辞めるために収益UPを目指してみた。
紫蘭
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの収益報告、どうやったら収益を上げられるのかの試行錯誤を日々アップします。
アルファポリスのインセンティブの仕組み。
ど素人がどの程度のポイントを貰えるのか。
どの新人賞に応募すればいいのか、各新人賞の詳細と傾向。
実際に新人賞に応募していくまでの過程。
春から新社会人。それなりに希望を持って入社式に向かったはずなのに、そうそうに向いてないことを自覚しました。学生時代から書くことが好きだったこともあり、いつでも仕事を辞められるように、まずはインセンティブのあるアルファポリスで小説とエッセイの投稿を始めて見ました。(そんなに甘いわけが無い)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる