5 / 23
英語の壁
しおりを挟む
次々に来るアナの友人に自己紹介こそすれど、その後の会話がなかなか続かない。
みんな、気を使って話を振ってくれている。
しかし、全く反応できない私から、自然と「話せるもの同士」の会話になるのも 致し方ないことだろう。
それでもアナを含め、みんなが気を使ってくれてはいたが、このネイティブの会話の中では完全に孤立してしまった。
もはや、酒としか話す相手がいない。
こういう旅に出るときには、英語力と金はあればあるほどいいと、改めて実感した。
そんな風に、私が酒と会話をしている中、ベンがやってきた。
アナの夫である。
そう、彼女はつい最近、籍を入れたばかりなのだ。
事前にアナから結婚したことの報告を受けていた私は、彼に会うのも楽しみにしていた。
「やぁ、きみか!日本から来たアナの友人は!」
笑顔がさわやかなナイスガイな印象で、さっそくビールで乾杯する。
両腕にバリバリ入ったタトゥーも、なぜかこのベンというだけで威圧感はなく、
ファッションというよりも、どこかこのベンが目指すべきライフスタイルを表現しているような、自然さがあった。
昔の彼氏のサンドロには全く似ていない。
「それで、ヒュミはこれからどこにいくんだ?」
「うん、まずは前回来た時に行けなかった、北部の方…そう、カカドゥを目指そうと思ってるよ」
「おぉ!まじかよ!あそこは最高だぜ!あそこはオーストラリアの中でも自然がハンパねぇところだからな!ワニもうじゃうじゃいるぜ!」
ワニのくだりはおいていても、自分が目指すべき場所が地元民からも推奨される場所と言う事に安堵し、またワクワクした興奮も感じられた。
「それで、そのあとはどうするんだ??」
「そのあとは、インドネシアに向かって、アジアを回り、最終的には世界を一周まわるつもりだよ」
「リアリィ!?マジかよ!!ファッキンクールじゃねーか!!!」
そうしてベンとその横に座るアナと三人で旅の話をして盛り上がっていると、徐々に離れていたアナの友人たちも会話に戻ってきた。
私も酒がだいぶ回り、伝わっても伝わらんでもどっちでもえーわと思い始めていた。
なんとなく、ズレていた周りとピントが合ってきた気がする。
気持ちがかなり大雑把になり、もはや適当に英語を話していたことが、功を奏したかもしれない。
もちろん、スピーキングもヒアリングも酒を飲むことによって、上達したわけではない。
ブロークンイングリッシュは変わらないままだが、なんとなくニュアンスというか、第6感で感じているような。
最終的には、「俺はあの国に行ったぜ!」など、「あの場所にはいくべきだ!」など、それぞれが行った世界の場所自慢や、おすすめの国などで盛りあがり、いつのまにか夜は更けていった。
「じゃあね、ヒュミ。また、ぜひ連絡してちょうだい。
それから、旅の話もまた聞かせてね、楽しみにしてるわ。」
「そうだぜ、パースに来ることがあったら、また飲もうぜ!
あ、あと、ワニには気をつけろよ!」
「二人ともありがとう。そうだね、かならず連絡するよ。ワニには相当ビビってるけど…」
「ハハハ!とにかくだ、良い旅を!だ。また会える日を楽しみにしてるぜ!」
ベンとアナそれぞれと苦手なハグをまた交わす。
出会いの時よりも、少しだけうまくできた気がする。
うまいも下手もないのだろうが、なんというか。
感情をうまく乗せれたような。
五年ぶりに会った友人と、その夫に手を振り、安宿に歩いて帰る。
最後は何とか、輪になじむこともできた。
だけど、孤独を感じたあの瞬間。
これからもそういう瞬間はたくさんあるんだろうなぁと思いながら。
今までは自分の周りにたくさんの仲間がいたから、こんな気持ちになることもなかったなぁ。
日本で支えられてきた当たり前の日々を感じながら、パースでの夜は更けていった。
みんな、気を使って話を振ってくれている。
しかし、全く反応できない私から、自然と「話せるもの同士」の会話になるのも 致し方ないことだろう。
それでもアナを含め、みんなが気を使ってくれてはいたが、このネイティブの会話の中では完全に孤立してしまった。
もはや、酒としか話す相手がいない。
こういう旅に出るときには、英語力と金はあればあるほどいいと、改めて実感した。
そんな風に、私が酒と会話をしている中、ベンがやってきた。
アナの夫である。
そう、彼女はつい最近、籍を入れたばかりなのだ。
事前にアナから結婚したことの報告を受けていた私は、彼に会うのも楽しみにしていた。
「やぁ、きみか!日本から来たアナの友人は!」
笑顔がさわやかなナイスガイな印象で、さっそくビールで乾杯する。
両腕にバリバリ入ったタトゥーも、なぜかこのベンというだけで威圧感はなく、
ファッションというよりも、どこかこのベンが目指すべきライフスタイルを表現しているような、自然さがあった。
昔の彼氏のサンドロには全く似ていない。
「それで、ヒュミはこれからどこにいくんだ?」
「うん、まずは前回来た時に行けなかった、北部の方…そう、カカドゥを目指そうと思ってるよ」
「おぉ!まじかよ!あそこは最高だぜ!あそこはオーストラリアの中でも自然がハンパねぇところだからな!ワニもうじゃうじゃいるぜ!」
ワニのくだりはおいていても、自分が目指すべき場所が地元民からも推奨される場所と言う事に安堵し、またワクワクした興奮も感じられた。
「それで、そのあとはどうするんだ??」
「そのあとは、インドネシアに向かって、アジアを回り、最終的には世界を一周まわるつもりだよ」
「リアリィ!?マジかよ!!ファッキンクールじゃねーか!!!」
そうしてベンとその横に座るアナと三人で旅の話をして盛り上がっていると、徐々に離れていたアナの友人たちも会話に戻ってきた。
私も酒がだいぶ回り、伝わっても伝わらんでもどっちでもえーわと思い始めていた。
なんとなく、ズレていた周りとピントが合ってきた気がする。
気持ちがかなり大雑把になり、もはや適当に英語を話していたことが、功を奏したかもしれない。
もちろん、スピーキングもヒアリングも酒を飲むことによって、上達したわけではない。
ブロークンイングリッシュは変わらないままだが、なんとなくニュアンスというか、第6感で感じているような。
最終的には、「俺はあの国に行ったぜ!」など、「あの場所にはいくべきだ!」など、それぞれが行った世界の場所自慢や、おすすめの国などで盛りあがり、いつのまにか夜は更けていった。
「じゃあね、ヒュミ。また、ぜひ連絡してちょうだい。
それから、旅の話もまた聞かせてね、楽しみにしてるわ。」
「そうだぜ、パースに来ることがあったら、また飲もうぜ!
あ、あと、ワニには気をつけろよ!」
「二人ともありがとう。そうだね、かならず連絡するよ。ワニには相当ビビってるけど…」
「ハハハ!とにかくだ、良い旅を!だ。また会える日を楽しみにしてるぜ!」
ベンとアナそれぞれと苦手なハグをまた交わす。
出会いの時よりも、少しだけうまくできた気がする。
うまいも下手もないのだろうが、なんというか。
感情をうまく乗せれたような。
五年ぶりに会った友人と、その夫に手を振り、安宿に歩いて帰る。
最後は何とか、輪になじむこともできた。
だけど、孤独を感じたあの瞬間。
これからもそういう瞬間はたくさんあるんだろうなぁと思いながら。
今までは自分の周りにたくさんの仲間がいたから、こんな気持ちになることもなかったなぁ。
日本で支えられてきた当たり前の日々を感じながら、パースでの夜は更けていった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


学校であった怖い話の思い出語り【ネタバレ前提】
よもぎ
エッセイ・ノンフィクション
ファミコンソフト「学校であった怖い話」の思い出語りです。話の内容のネタバレ等が含まれますので、内容を知らない人向けではございません。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

ハピエン厨になったわけ
華抹茶
エッセイ・ノンフィクション
執筆を初めて二年半。いろいろな物語を書いてきたものの、その全ては必ずハッピーエンド。
それ以外を書かない理由をただつらつらと書いたものになります。
2025年何かが起こる!?~予言/伝承/自動書記/社会問題等を取り上げ紹介~
ゆっち
エッセイ・ノンフィクション
2025年に纏わるさまざまな都市伝説、予言、社会問題などを考察を加えて紹介します。
【予言系】
・私が見た未来
・ホピ族の予言
・日月神示の預言
・インド占星術の予言
など
【経済・社会的課題】
・2025年問題
・2025年の崖
・海外展開行動計画2025
など
【災害予測】
・大規模太陽フレア
・南海トラフ巨大地震
など
※運営様にカテゴリーや内容について確認して頂きました所、内容に関して特に問題はないが、カテゴリーが違うとの事のでホラー・ミステリーから「エッセイ・ノンフィクション」へカテゴリー変更しました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる