悪役無双

四季

文字の大きさ
上 下
13 / 13

第12話

しおりを挟む
sideシュラ

 俺が生まれた村は、それはもう何にもないところだった。みんなほとんど自給自足の生活で、娯楽もほとんどない。
 そんな故郷の村が大嫌いだった。

 親は言う、早く大きくなって、立派な後継になれと。でも、俺はただ畑を耕すだけの人生なんてごめんだ。
 だから、大きくなったら都会へ行くと決めていた。王都に行って、立派な職業について、お金をたくさんもらって贅沢をする。それが俺の夢だった。

 勉強もたくさんしたし、体も鍛えた、1属性しか使えない魔法も、それだけでも極めようと必死に練習した。
 村に物知りな爺さんがいたから色々なことを教えてもらった。田舎だったから、近くの森に行けば魔物もいた。

 はっきり言って、苦労人だと思う。

 成長してからは、村の誰よりも強くなったし、誰よりも賢くなった。

 14歳の時、そろそろ村を出たいと考えた。このままだと結局親の跡を継ぐことになりそうだったから。

 年に一度、村に行商人がやってくる。俺はその行商人に頼んで王都へ連れて行ってもらうことにした。行商人も最初は渋ったが、何度も頼み込んで、雑用もするという条件で承諾してもらった。
 親には置き手紙だけ置いてきた。話せば確実に反対されるのがわかっていたから。

 俺は騎士団に入りたかった。
 王国の軍は、司令部・魔法師団・騎士団・傭兵団の4つに分かれている。司令部は別格で、魔法師団は貴族でなければ入れない。傭兵団は、平民の部隊だが、給料も安いし、一生下働きだ。騎士団は、貴族がほとんどだが、魔法や剣技が認められれば平民でも入ることが可能だ。
 騎士団の平民入団試験は年一回だ。
 王都についてからは、行商人の手伝いをして面倒を見てもらった。

 騎士団の平民入団試験は、倍率1000倍の超難関。毎年3000人くらい受けて、受かるのは3人程度。それに、商人のおじさんから聞くところによると、大商人の子息などで、コネを使い合格を決めるヤツもいるらしく、倍率はさらに高くなる。

 俺の場合は、魔法が火属性で騎士団では花形で、剣も魔物を倒し続けてかなり鍛えられていた。

 結果、俺はトップの成績で合格を勝ち取ることができた。
 入団式では、貴族出身のひとたちに見下すような目で見られたり、わざと肩をぶつけられたりした。それでも、何も言わずに耐えた。

 騎士団は初めはみんな見習いから始める。
 見習いは、普通3年くらいだが、人によって様々だ。見習いを卒業して初めて騎士と認められる。騎士になれば、士爵位が授けられて準貴族になる。当然一代限りだが。

 俺の目標は準男爵だ。
 平民出身で、士爵はすごい。平民出身で、騎士爵なら多くの人に尊敬されるだろう。そして、準男爵までいけるのは、何十年、下手したら100年に1人いるかどうかだ。かなりの功績が必要だ。

 俺は努力して、2年で騎士になった。はっきり言わせてもらって、かなりすごいことだ。
 俺はわずか17歳で士爵位を得たのだ。

 これからもっと頑張って、どんどん出世してやる!
 そう思っていたとき、軍務大臣であるアイザック=バークリー侯爵閣下から呼び出しがかかった。ご子息の専属従者になってほしいと言うのだ。
 『なってほしい』といっても、これはお願いではない。命令だ。
 侯爵様の望みとは、俺のような下っ端にとっては義務なのだ。俺に選択肢はなかった。


 準男爵になるという俺の夢はついえて、小さい子供の子守りをすることになってしまうなんてついてない。そう思って、不貞腐れていた。



 俺が専属でつくことになるというその少年との顔合わせの日、今までの俺の態度を後悔した。

 応接室のドアを開けた瞬間、天使がソファに腰掛けていたのだ。
 目が合うと、何もできなかった。
 まだ3歳の少年のはずなのに、俺はショタコンなんかじゃないのに、何故か心臓がバクバクした。14歳も離れた少年なのに、ありえないと思いながらも、自分の感情の正体がわかってしまっていた。

 主人に対して邪な気持ちを持ってはいけない、自分を律しようと必死だった。

 侯爵様にはおそらくバレていたのだろう、すごい形相で睨まれた。さすが国軍のトップに立つお方だ、すごい圧力だった。

 主人の兄も、俺を睨んでいた。全身から拒絶のオーラが漂ってくる。きっとこの少年も自分と同じ気持ちなのだとすぐにわかった。

 この恋が実ることはないかもしれない、いや、この恋が実る確率はすごく低いに決まっている。でも、俺はそばにいたい。


 その主人が、目の前で倒れた。
 俺は何もできなかった。
 そして、今もまだ目を覚さない。

 俺は今絶望の中にいる。

 早く目を覚ましてください。
 俺に守らせてください。
 ノア様。



しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

虎太郎
2024.01.25 虎太郎

お体の調子が思わしくないのですね😢
これからが 楽しみなので 気長に続きを待ちますね☺️

解除
ここなっつ
2023.02.06 ここなっつ

初めまして!
とても続きが楽しみです(*´꒳`*)
お体に気をつけて、作者様のペースで更新なさってください!

解除
she
2022.10.31 she

めちゃくちゃ面白いです!!続きまってます(*^^*)

解除

あなたにおすすめの小説

王道BL学園~モブに転生したボクは見ていたい!巻き込まれたくないのに!~

星崎 杏
BL
腐女子の私が死んで気がついたら、お気に入りのゲームのモブに転生した!? ボクは見ていたいだけなのに、巻き込まれるのはノーサンキューです! 念のため、R15にしています。過激なシーンは少なめにしたいです。

異世界転生して病んじゃったコの話

るて
BL
突然ですが、僕、異世界転生しちゃったみたいです。 これからどうしよう… あれ、僕嫌われてる…? あ、れ…? もう、わかんないや。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 異世界転生して、病んじゃったコの話 嫌われ→総愛され 性癖バンバン入れるので、ごちゃごちゃするかも…

異世界転生で僕に生きる意味をくれたのは殺し屋でした

荷居人(にいと)
BL
病気で何もできずに死んでしまった僕。最後まで家族に迷惑をかけ、疎まれ、ただ寝てぼーっとする日々に、何のために生きてきたのかわからない。 生まれ変わるなら健康な体で色んなことをしたい、こんな自分を愛してくれる人と出会いたいと願いながら僕は、15歳という若さで他界した。 そんな僕が次に目を覚ませば何故か赤ちゃんに。死んだはずじゃ?ここはどこ?僕、生まれ変わってる? そう気づいた頃には、何やら水晶が手に当てられて、転生先の新たな親と思われた人たちに自分の子ではないとされ、捨てられていた。生まれ変わっても僕は家族に恵まれないようだ。 このまま、餓死して、いや、寒いから凍えて赤ん坊のまま死ぬのかなと思った矢先に、一人のこの世のものとは思えない長髪で青く輝く髪と金色に光る冷たい瞳を持つ美青年が僕の前に現れる。 「赤子で捨てられるとは、お前も職業に恵まれなかったものか」 そう言って美青年は、赤ん坊で動けぬ僕にナイフを振り下ろした。 人に疎まれ同士、次第に依存し合う二人。歪んだ愛の先あるものとは。 亀更新です。

自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?

トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!? 実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。 ※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。 こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。

隠し攻略対象者に転生したので恋愛相談に乗ってみた。~『愛の女神』なんて言う不本意な称号を付けないでください‼~

黒雨
BL
罰ゲームでやっていた乙女ゲーム『君と出会えた奇跡に感謝を』の隠し攻略対象者に転生してしまった⁉ 攻略対象者ではなくモブとして平凡平穏に生きたい...でも、無理そうなんでサポートキャラとして生きていきたいと思います! ………ちょっ、なんでヒロインや攻略対象、モブの恋のサポートをしたら『愛の女神』なんて言う不本意な称号を付けるんですか⁈ これは、暇つぶしをかねてヒロインや攻略対象の恋愛相談に乗っていたら『愛の女神』などと不本意な称号を付けられた主人公の話です。 ◆注意◆ 本作品はムーンライトノベルズさん、エブリスタさんにも投稿しております。同一の作者なのでご了承ください。アルファポリスさんが先行投稿です。 少し題名をわかりやすいように変更しました。無駄に長くてすいませんね(笑) それから、これは処女作です。つたない文章で申し訳ないですが、ゆっくり投稿していこうと思います。間違いや感想、アドバイスなどお待ちしております。ではではお楽しみくださいませ。

転生したらBLゲームの攻略キャラになってたんですけど!

朝比奈歩
BL
ーーある日目覚めたら、おれはおれの『最推し』になっていた?! 腐男子だった主人公は、生まれ変わったら生前プレイしていたBLゲームの「攻略対象」に転生してしまった。 そのBLゲームとは、本来人気ダンスヴォーカルグループのマネージャーになってメンバーと恋愛していく『君は最推し!』。 主人公、凛は色々な問題に巻き込まれながらも、メンバー皆に愛されながらその問題に立ち向かっていく! 表紙イラストは入相むみ様に描いていただきました! R-18作品は別で分けてあります。 ※この物語はフィクションです。

運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました

十夜 篁
BL
 初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。 そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。 「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!? しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」 ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意! 「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」  まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…? 「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」 「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」 健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!? そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。 《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。