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第12話
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sideシュラ
俺が生まれた村は、それはもう何にもないところだった。みんなほとんど自給自足の生活で、娯楽もほとんどない。
そんな故郷の村が大嫌いだった。
親は言う、早く大きくなって、立派な後継になれと。でも、俺はただ畑を耕すだけの人生なんてごめんだ。
だから、大きくなったら都会へ行くと決めていた。王都に行って、立派な職業について、お金をたくさんもらって贅沢をする。それが俺の夢だった。
勉強もたくさんしたし、体も鍛えた、1属性しか使えない魔法も、それだけでも極めようと必死に練習した。
村に物知りな爺さんがいたから色々なことを教えてもらった。田舎だったから、近くの森に行けば魔物もいた。
はっきり言って、苦労人だと思う。
成長してからは、村の誰よりも強くなったし、誰よりも賢くなった。
14歳の時、そろそろ村を出たいと考えた。このままだと結局親の跡を継ぐことになりそうだったから。
年に一度、村に行商人がやってくる。俺はその行商人に頼んで王都へ連れて行ってもらうことにした。行商人も最初は渋ったが、何度も頼み込んで、雑用もするという条件で承諾してもらった。
親には置き手紙だけ置いてきた。話せば確実に反対されるのがわかっていたから。
俺は騎士団に入りたかった。
王国の軍は、司令部・魔法師団・騎士団・傭兵団の4つに分かれている。司令部は別格で、魔法師団は貴族でなければ入れない。傭兵団は、平民の部隊だが、給料も安いし、一生下働きだ。騎士団は、貴族がほとんどだが、魔法や剣技が認められれば平民でも入ることが可能だ。
騎士団の平民入団試験は年一回だ。
王都についてからは、行商人の手伝いをして面倒を見てもらった。
騎士団の平民入団試験は、倍率1000倍の超難関。毎年3000人くらい受けて、受かるのは3人程度。それに、商人のおじさんから聞くところによると、大商人の子息などで、コネを使い合格を決めるヤツもいるらしく、倍率はさらに高くなる。
俺の場合は、魔法が火属性で騎士団では花形で、剣も魔物を倒し続けてかなり鍛えられていた。
結果、俺はトップの成績で合格を勝ち取ることができた。
入団式では、貴族出身のひとたちに見下すような目で見られたり、わざと肩をぶつけられたりした。それでも、何も言わずに耐えた。
騎士団は初めはみんな見習いから始める。
見習いは、普通3年くらいだが、人によって様々だ。見習いを卒業して初めて騎士と認められる。騎士になれば、士爵位が授けられて準貴族になる。当然一代限りだが。
俺の目標は準男爵だ。
平民出身で、士爵はすごい。平民出身で、騎士爵なら多くの人に尊敬されるだろう。そして、準男爵までいけるのは、何十年、下手したら100年に1人いるかどうかだ。かなりの功績が必要だ。
俺は努力して、2年で騎士になった。はっきり言わせてもらって、かなりすごいことだ。
俺はわずか17歳で士爵位を得たのだ。
これからもっと頑張って、どんどん出世してやる!
そう思っていたとき、軍務大臣であるアイザック=バークリー侯爵閣下から呼び出しがかかった。ご子息の専属従者になってほしいと言うのだ。
『なってほしい』といっても、これはお願いではない。命令だ。
侯爵様の望みとは、俺のような下っ端にとっては義務なのだ。俺に選択肢はなかった。
準男爵になるという俺の夢はついえて、小さい子供の子守りをすることになってしまうなんてついてない。そう思って、不貞腐れていた。
俺が専属でつくことになるというその少年との顔合わせの日、今までの俺の態度を後悔した。
応接室のドアを開けた瞬間、天使がソファに腰掛けていたのだ。
目が合うと、何もできなかった。
まだ3歳の少年のはずなのに、俺はショタコンなんかじゃないのに、何故か心臓がバクバクした。14歳も離れた少年なのに、ありえないと思いながらも、自分の感情の正体がわかってしまっていた。
主人に対して邪な気持ちを持ってはいけない、自分を律しようと必死だった。
侯爵様にはおそらくバレていたのだろう、すごい形相で睨まれた。さすが国軍のトップに立つお方だ、すごい圧力だった。
主人の兄も、俺を睨んでいた。全身から拒絶のオーラが漂ってくる。きっとこの少年も自分と同じ気持ちなのだとすぐにわかった。
この恋が実ることはないかもしれない、いや、この恋が実る確率はすごく低いに決まっている。でも、俺はそばにいたい。
その主人が、目の前で倒れた。
俺は何もできなかった。
そして、今もまだ目を覚さない。
俺は今絶望の中にいる。
早く目を覚ましてください。
俺に守らせてください。
ノア様。
俺が生まれた村は、それはもう何にもないところだった。みんなほとんど自給自足の生活で、娯楽もほとんどない。
そんな故郷の村が大嫌いだった。
親は言う、早く大きくなって、立派な後継になれと。でも、俺はただ畑を耕すだけの人生なんてごめんだ。
だから、大きくなったら都会へ行くと決めていた。王都に行って、立派な職業について、お金をたくさんもらって贅沢をする。それが俺の夢だった。
勉強もたくさんしたし、体も鍛えた、1属性しか使えない魔法も、それだけでも極めようと必死に練習した。
村に物知りな爺さんがいたから色々なことを教えてもらった。田舎だったから、近くの森に行けば魔物もいた。
はっきり言って、苦労人だと思う。
成長してからは、村の誰よりも強くなったし、誰よりも賢くなった。
14歳の時、そろそろ村を出たいと考えた。このままだと結局親の跡を継ぐことになりそうだったから。
年に一度、村に行商人がやってくる。俺はその行商人に頼んで王都へ連れて行ってもらうことにした。行商人も最初は渋ったが、何度も頼み込んで、雑用もするという条件で承諾してもらった。
親には置き手紙だけ置いてきた。話せば確実に反対されるのがわかっていたから。
俺は騎士団に入りたかった。
王国の軍は、司令部・魔法師団・騎士団・傭兵団の4つに分かれている。司令部は別格で、魔法師団は貴族でなければ入れない。傭兵団は、平民の部隊だが、給料も安いし、一生下働きだ。騎士団は、貴族がほとんどだが、魔法や剣技が認められれば平民でも入ることが可能だ。
騎士団の平民入団試験は年一回だ。
王都についてからは、行商人の手伝いをして面倒を見てもらった。
騎士団の平民入団試験は、倍率1000倍の超難関。毎年3000人くらい受けて、受かるのは3人程度。それに、商人のおじさんから聞くところによると、大商人の子息などで、コネを使い合格を決めるヤツもいるらしく、倍率はさらに高くなる。
俺の場合は、魔法が火属性で騎士団では花形で、剣も魔物を倒し続けてかなり鍛えられていた。
結果、俺はトップの成績で合格を勝ち取ることができた。
入団式では、貴族出身のひとたちに見下すような目で見られたり、わざと肩をぶつけられたりした。それでも、何も言わずに耐えた。
騎士団は初めはみんな見習いから始める。
見習いは、普通3年くらいだが、人によって様々だ。見習いを卒業して初めて騎士と認められる。騎士になれば、士爵位が授けられて準貴族になる。当然一代限りだが。
俺の目標は準男爵だ。
平民出身で、士爵はすごい。平民出身で、騎士爵なら多くの人に尊敬されるだろう。そして、準男爵までいけるのは、何十年、下手したら100年に1人いるかどうかだ。かなりの功績が必要だ。
俺は努力して、2年で騎士になった。はっきり言わせてもらって、かなりすごいことだ。
俺はわずか17歳で士爵位を得たのだ。
これからもっと頑張って、どんどん出世してやる!
そう思っていたとき、軍務大臣であるアイザック=バークリー侯爵閣下から呼び出しがかかった。ご子息の専属従者になってほしいと言うのだ。
『なってほしい』といっても、これはお願いではない。命令だ。
侯爵様の望みとは、俺のような下っ端にとっては義務なのだ。俺に選択肢はなかった。
準男爵になるという俺の夢はついえて、小さい子供の子守りをすることになってしまうなんてついてない。そう思って、不貞腐れていた。
俺が専属でつくことになるというその少年との顔合わせの日、今までの俺の態度を後悔した。
応接室のドアを開けた瞬間、天使がソファに腰掛けていたのだ。
目が合うと、何もできなかった。
まだ3歳の少年のはずなのに、俺はショタコンなんかじゃないのに、何故か心臓がバクバクした。14歳も離れた少年なのに、ありえないと思いながらも、自分の感情の正体がわかってしまっていた。
主人に対して邪な気持ちを持ってはいけない、自分を律しようと必死だった。
侯爵様にはおそらくバレていたのだろう、すごい形相で睨まれた。さすが国軍のトップに立つお方だ、すごい圧力だった。
主人の兄も、俺を睨んでいた。全身から拒絶のオーラが漂ってくる。きっとこの少年も自分と同じ気持ちなのだとすぐにわかった。
この恋が実ることはないかもしれない、いや、この恋が実る確率はすごく低いに決まっている。でも、俺はそばにいたい。
その主人が、目の前で倒れた。
俺は何もできなかった。
そして、今もまだ目を覚さない。
俺は今絶望の中にいる。
早く目を覚ましてください。
俺に守らせてください。
ノア様。
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初めまして!
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