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第二章 楽しい(?)異世界新生活

第25話 小悪魔リリアの誘惑

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 イリーナの介抱をザックに任せると、俺たちは家路に着いた。

 家に戻るころにはすっかり夜が更けていたので、俺たちはさっさと湯で体を洗って休むことにする。
 俺はリリアとお休みの挨拶を交わし、自室にこもると、ベッドに身を横たえた。

 イリーナほどではないが、俺も多少酒を入れていたので、すぐに眠くなるかと思ったのだが、眠気はさっぱり起きなかった。
 ザックたちに聞いた話が、頭の片隅に引っかかっていたからだ。

「東の山で突然発見された古代遺跡……。人為的な工事……」

 俺はベッドから立ち上がってランプを点け、部屋の片隅に設置した木箱に手を伸ばした。
 箱の中には、バーバラさんの家に通い詰めて作成したメモが突っ込んである。
 主にバロワ周辺に伝わる伝承や、古代魔法文明時代の博物誌をまとめたものだ。もしかしたら、何かヒントが隠されているかもしれない。

「魂を食らう影……。さまざまな生き物の姿を取り込んだ合成獣……。昔はこのあたりに物騒な化け物がたくさん住んでいたんだなぁ。南の山の洞窟には、巨大な竜の死骸が眠っているなんて伝承もあるし、ここ一帯はモンスターワンダーランドかよ」

 いや、「住んでいた」と過去形で言うのは間違いかもしれない。
 バーバラさんに聞いた話だと、幻獣と呼ばれる太古の怪物には、無限の命を持つ者もいるという。
 また、古代文明の力で作られた生物兵器——「魔獣」と呼ばれる——は、埋もれた遺跡の中でいまも主人たちの財宝を守っているそうだ。

 東の山の遺跡に魔獣が残っていたなら、ザックやイリーナと遭遇するかもしれない。そう思うと、胸が重くなるのを感じた。あいつらには無事に帰ってきてほしいものだが——。

 そんなことを考えていると、部屋のドアがコンコン、とノックされた。

「起きてるよ。どうした、リリア?」

 俺が声をかけると、ドアがきしみを上げながら、ゆっくりと開く。
 開いたドアの向こうに、寝間着用の薄いローブを羽織ったリリアが立っていた。
 
「リリア?」

 様子が変だった。俺の呼びかけに返事をしないし、目は焦点を失ってトロンとしている。
 〈発作〉が始まったのか!? イリーナの猥談がトリガーになったのだろうか?

「うふふ……」

 リリアは薄く笑い、腰紐をほどいた。ローブの下には何も着ていないようだった。

「エイジさん……」

 リリアはこちらに歩を進めながら、煩わしげな様子で胸を張った。
 ローブが肩からずり落ち、瑞々みずみずしい裸身が露わになる。傷一つない白い肢体は興奮からか、わずかに赤らんでいる。体毛が薄いため、まるで薄いピンクの陶器のように見える。
 ランプのオレンジ色の光が照らし出すリリアの姿は、神々しい雰囲気すらたたええていた。

 俺があっけにとられているうちに、リリアは歩みを進め、ついに肌が触れあう位置までやってきた。二本のしなやかな腕が俺の背中に回され、豊かな胸が押しつけられる。

「おい、リリア! しっかりしろ!」

 声をかけ、腕を振りほどこうとしたが、力はリリアのほうが強い。

(おい、謎の声! 出番だ!)

 俺は〈コピー&ペースト〉のスキルを起動させた。
 のことを考えると、リリアから逃げるために、せめて戦闘系のスキルだけでも互角にしておきたかったのだ。

『ステータスを表示します』

**************************
対象=リリア

▽基礎能力値
器用度=19 敏捷度=21
知力=17 筋力=16
HP=16/16 MP=19/19

▽基本スキル
ハリア王国式剣術=7 パルネリア共通語=5
隠密=3 罠技術=1 武具鑑定=1 宝物鑑定=1
ハリア王国式儀礼=4 

▽特殊スキル
騎士の誓い=6 ???の血統=5(固定)
淫蕩の呪い=4 不妊の呪い=10
夭折の呪い=8 不運の呪い=2
??????=?? ??????=??

※スキル【コピー&ペースト】のレベルが足りないため、補正能力値、限界能力値、中級スキル、上級スキルの表示、およびコピーはできません。
**************************

 脳内に表示されたリリアのステータスを見て、俺は思わず息を飲んだ。〈淫蕩の呪い〉のレベルが上がっている! だが、真に驚くべきはそこじゃない。

(〈ハリア王国式剣術=7〉をコピーし、空きスロットにセット)

了解コピー。セットが完了しました』

 スキルのコピー&ペーストを終えると、俺はリリアの肩を叩いた。

「おい、リリア」

「エイジさん、わたしと寝ましょう……?」

 リリアはそう呟きながら、無表情な顔を俺に向けた。桜色の唇から興奮した熱い息が漏れ、俺の首筋を刺激する。こんな状態があと少し続けば、俺の理性はあっけなく崩壊してしまいそうだった。

 いま俺に出来ることはなんだろう——自問した。
 悩みどころだが、悩んでいる暇はない。俺は意を決して口を開く。

「リリア」

「わたしが相手じゃ、嫌ですか……?」

「リリア、

 リリアの肩が、ビクンと震えた。

「いまのきみは、。そうだろ?」

 俺を見上げるエメラルドグリーンの瞳が潤み、目の端から大粒の涙がこぼれた。

「——ごめんなさいっ!」

 リリアは俺の体から腕をいて振り向く。
 俺は咄嗟とっさに腕を伸ばし、逃げようとするリリアの体を背中から抱きしめた。

「俺は何も気にしていない。謝らなくて良い。……それより、どうしてこんなことをしたのか、聞かせてくれないか?」
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