最弱リザードマンの成り上がりをプロデュース~スライムに転生した俺が敵を洗脳して下剋上します~

絵巻とかげ

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14.ケットシーの序列

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 4種族の強みをもう一度おさらいしようか。

 クロコダイルは屈強な肉体と水陸共に戦える所。
 サハギンは水中での機動力。
 コボルドは優れた嗅覚による危機察知能力。
 ケットシーは商売による幅広いビジネスが強いっていうことだったな。
 
 そこで気になるのが、ケットシーの強みだ。
 リザードマンの村をまるごと一つ滅ぼすほどの「銀竜の宝玉」というものがあるのなら、それが大きな強みになってもおかしくないはずだ。
 なのに、そうなってはいない。
 これ、なんか裏がありそうだな……。


「ちょっと聞いても良いか?」
「どうした、リザーク? 何か分からないことがあったのか?」
「ああ。銀竜の宝玉って物をケットシーが持ってるだろ? あれっていつからケットシーは持っていたんだ?」
「そうだな……。少なくとも十年は持っているんじゃないか? オレがガキの頃からあいつら持ってたしな」
「十年か。ちなみに種族の序列はどのタイミングで更新されるんだ?」
「あまりよく知らないが、変わっていた時は毎日序列が変わっている時もあったそうだぞ」


 序列は毎日変わることがある、か。
 となると、やはりおかしいな。
 十年もの間、そんなに強力な道具を持っていながら、ケットシーは19位。
 18位のコボルドよりも下だ。

 「銀竜の宝玉」は確か序列第3位のドラゴン族の吐息を出すものと聞いている。
 それを考えるに、そんな上位の種族の力がこもっているんだから、リザードマンの村だけでなく、コボルドの村だって滅ぼせてもなんら不思議ではない。
 そんな力を持つ道具を持っているケットシーがコボルドよりも下だって?
 どう考えてもおかしいだろ。


「それが本当なら、どうしてケットシーは序列第19位なんだ? 銀竜の宝玉があるなら、リザードマン以外の種族、例えばコボルドよりも上になってもおかしくないと思わないか?」
「そう言われれば確かに。なんでコボルドよりも下なんだろうな?」
「調べてみないと分からないが、何かしらの裏があると思うんだよな。序列がものをいう世界で、そんな力を持ちながら下位に甘んじるのは不自然だ。もしかすると、リザードマン達が思っているほどケットシーは強くないのかもしれない」
「それほど強くない―――となると、リザークの最初のターゲットは、ケットシーってことか?」
「ああ、そうしようと思う。リザードマン達を散々押し売りをしてきているのも腹が立つし、奴らの化けの皮をはがしてやろうぜ!」


 俺がそう言ってニヤリと笑みを浮かべると、リザド達もつられて笑みを浮かべる。

 さて、ターゲットはケットシーに決まった。
 後は、どう奴らを蹴落とすかを決めないとな。


「ケットシーを相手にするのは良いんだけどよ。これからどうすれば良いんだ、リザーク?」
「まずは情報収集かな。できるだけ俺達が行動に移していることは今の段階では他種族にばれるのは避けたい。どう情報は集めるかは色々考えてみるから、しばらくは待ってくれ」
「分かった。なら、待つことにしよう。なに、これまでずっと我慢し続けてきたんだ。今更数ヵ月、数年待つくらいどうってことねえよ!」


 ガハハと笑うリザド達。
 数年待つのも苦にならない、か。
 気を使って言ってくれてるんだろうけど、そんなに時間がかかるのは俺自身が許せないな。
 何しろ、俺もリザードマンとして暮らす以上、その間ずっと苦しみ続けることになるわけだし。
 一刻も早く、この状況から脱したい。

 だが、そのためには準備が必要だ。
 俺の力は表沙汰にはできないし、他の種族に悟られないまま、秘密裏に使う必要がある。
 洗脳の力がどこまで効くのかとかもやってみないと分からないし、色々と分からないことが多すぎるんだよな。
 とりあえず、情報を手に入れる何らかの手段があれば良いんだが。

 話を聞き終えたことで、一旦この場はお開きとなった。
 リザド達が自分の家に帰っていくなか、俺は一人黙々と考え込む。
 すると、リーサが声をかけてきた。


「リザーク、何か考え事をしている所悪いんだけど、狩りってうまくいったの?」
「……ああ、うまくいったぞ。巨大クマ、巨大ウサギの肉がいくつかストックしてある。必要な時は言ってくれ」
「そうなの? それじゃ、巨大ウサギのお肉をお願いしても良いかしら? お昼に使おうと思うの」
「了解。……よし、取り出せたぞ」


 俺は、「収納」の力を使って、巨大ウサギの肉を取り出して見せた。
 すると、子供二人は「おぉー!」と驚きの声をあげていたし、リーサは「まぁ!」と手を口にあてていた。


「俺の力で長期保存もできるから、しばらく食料に困ることはないだろう」
「便利な力なのね。それに、このお肉、鮮度が全然落ちていないように見えるわ。とても新鮮ね」


 巨大ウサギの肉を見て、うっとりとするリーサ。
 子供達が「おいしいお料理ができるのー?」と聞くと、「もちろんよ。いつもよりもきっと美味しくなるわ」とリーサ。
 子供達は大喜びだった。

 倒れていたはずのリードは起きていて、端の方に座りこんでいる。
 肉の方から目を背けていたのだが、口からよだれが流れているのが見えたし、きっと楽しみにしているのだろう。


「リードも肉を楽しみにしているようだな」
「……わ、悪いかよ?」


 リードは気に食わないといった様子で、俺から目を背けてそう言った。
 ちなみにリードには俺達と同じ食事を与えているし、リードはその食事を残さず食べている。
 食事を頑なに拒否するパターンも想定していたし、その場合は強制的に食べさせようと思っていたが、その心配は不要だったんだよな。


「別に。いや、あれだけ嫌っていたリザードマンにお前が随分となじんだものだと思ってな」
「お前がそうさせ―――あひゃひゃ!?」


 リードはにやけ顔になって、その場で崩れ落ちる。
 だけど、比較的早く無表情に戻っていたし、俺への禁止ワードをむやみやたらと言わなくなったみたいだ。
 さすがに学習してきたという感じか。


「そういえばクロコダイルって、どんなものを食べているんだ? 陸も水中もいけるようだが?」
「………………」


 リードはむすっとした表情になって、だんまりを決め込む。
 どうやら意地でも言う気はないらしい。
 まあ、別にそこまで知りたいことでもないし、言ってもらわなくても別に構わないのだが。

 ……ちょっと待てよ?
 今、リードには体を制限するだけの洗脳を施しているし、リードの体内には俺の細胞の一部が入り込んでいる。
 その細胞を使って、リードの記憶を知ることってできたりしないかな?

 せっかくだし、試してみるか。


 俺はリードの直近の記憶を知りたいと念じてみる。
 すると、頭の中にいくつもの映像が流れ込んできた!

 直近の記憶は、リムやリーゼとたわむれている様子ばかりだな。
 それよりも前になると、俺に無理矢理リザードマンの村に連れてこられる様子が見える。

 リード視点の映像が見えたり、声が聞こえるものの、リードが何を考えていたのか、何を言おうとしていたのかまでは分からないようだな。
 まあ、俺も自分の過去の記憶で何を言おうとしたのかまで覚えていることの方が少ないし、仕方ないのかもしれないけど。
 実際に自分が話した言葉ですら、正確に覚えていることの方が少ないから、こうやってちゃんと声が聞こえるだけ、全然ありがたいと思うことにしよう。


 それからしばらく俺はリードの記憶を鑑賞することに。
 ちゃんとリザードマンにされる以前のクロコダイルの頃の記憶もしっかり残っていて、もちろんどんな料理を食べていたのかも見ることができた。


「なるほど。クロコダイルは川魚の塩焼き、暴れ水牛の炙り焼きを食べるのか」
「なっ、お前、なぜそれを……!?」


 俺のつぶやきに反応するリード。
 その反応からすると、どうやら記憶の内容は本物らしい。

 まあ、リード本人は「おばちゃん、いつものアレくれよ!」とか言ってたから、周りのクロコダイルの声からして、そういう料理名なんだと判断したんだけど。
 そこはちょっと記憶のぞき見の不便な所だったりする。

 とはいえこの力、うまく使えばかなり情報収集の役に立つんじゃないか?
 あとは、どれ位の細胞があれば記憶を取り出せるかだな。
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