11 / 14
11.ケットシーの押し売り
しおりを挟む
少し家でくつろいでいると、外から俺を呼ぶリザードマンの声が聞こえてきた。
「リザーク、いるかー!?」
「ああ、今行く!」
俺は武器、防具などの装備を身につけてから、外へ出る。
今度は先程の池で狩りをしたメンバーとは別のリザードマン三人が家の前に集まっていた。
「準備は大丈夫そうだな。さすがはレッドベアを倒したリザークだ」
「俺、言っとくけど、お前達がどう狩りをしているのか知らないから、そこの所はしっかり教えてくれよ?」
「もちろん、そのつもりだ。安心してくれ。それじゃ、行くぞ!」
あまり俺の言うことを聞いてなさそうな感じでさっさとどこかへ移動していくリザードマン達。
……本当に分かっているのかな、コイツら?
俺、こうやって狩りをするのは初めてなんだが、明らかに狩り初心者に対する対応じゃないんだよな、これ。
特に心配なのは、リザードマン達が俺の実力を過剰評価している所だ。
俺がクロコダイルやレッドベアを倒したというのは事実だが、それはあくまでスライムとしての能力を使っての話。
リザードマンとしての能力だけを使った俺といえば、多分巨大カマキリとかの動物相手にさえ、一回も勝ったことはないんじゃないか。
そして、俺の心配は的中した。
巨大クマに遭遇し、リザードマン達が三人がかりでも、なんか徐々に押されているような戦況になっている。
俺も一応戦いに参加するのだが、リザードマンとして戦闘慣れしていないからか、まともに剣を振っても当たらないし、相手の攻撃にモロに当たるのだ。
この感じじゃ、明らかにマズい。
他の三人とも戦況が悪いことは認識しているみたいで、明らかに俺の方をチラチラ見てきている。
ついには「そろそろ本気出していいんだぞ?」的な事をぼそぼそつぶやく始末。
ああ、分かったよ。
やればいいんだろ!?
どこで誰が見ているかも分からないし、極力スライム形態になるのは避けたかったのだが、背に腹は変えられまい。
俺は、右腕から触手を出し、巨大クマの身動きを封じる。
それから俺達四人がかりで巨大クマに一方的な攻撃を仕掛け、勝利。
「……さすがはリザーク! 頼りになるぜ!」
そんな感じの言葉を言って、俺を持ち上げる三人。
だけど、俺はそんな三人に釘をさすことにした。
「勝てて良かったな。だけど、お前達に言っておく事がある」
「……ん、どうしたんだ、リザーク?」
「俺がこうやってスライムとしての力を使えば使うほど、俺はお前達とそう遠くないうちに一緒にいられなくなる可能性が高い」
「えっ、どういうことだよ?」
俺の言葉を聞いて、首をかしげる三人。
やっぱり分かってなかったのか、コイツら。
まあ、そうだろうとは思っていたけどさ。
俺は、自分が考えている懸念について三人に説明した。
俺がいかに他種族にとって危険な存在であるかということ。
それ故に、俺がスライムだと他の種族にバレれば、その種族が俺を討伐しにくるであろうこと。
そして俺はその危険を感じたら、迷惑をかけないために、リザードマンの村から出て行くつもりであることを伝えたのだ。
……まあ、既に何度かスライム形態にはなってるし、今さら気にしても手遅れの可能性も十分あるんだけど。
それはあえて伝えないことにした。
「リザークと一緒にいられなくなるのは嫌だな……。どうすれば良い?」
「別に単純な話だ。バレにくい方法で力を使えば良い。例えばちょっとしたケガを治すのは、手で治療箇所を隠せば、問題なくできるしな」
「そうか……分かった。それなら、戦闘は基本的にオレ達がやる。リザークはそのサポートをしてもらっても良いか?」
「ああ、そうしてもらえたら俺としても嬉しい」
俺が話した内容を三人ともしっかり理解してくれたようだ。
それからは、三人が前線に立って戦う形で狩りを進んでいく。
ただ、俺もやるべき事はやる。
三人のリザードマンの獲物入れを借りて、それを全部俺が背負うことにしたのだ。
というのも、獲物入れに獲物を入れた後、こっそり獲物入れの中で「格納」の力を発動させれば、誰にも見られずに能力を発揮できるからな。
「格納」の力を使えば、どんなものでも重さを感じないし、大量に獲物を狩っても、全て俺の体に吸い込まれていくので、全く重くない。
その仕組みをリザードマンの三人に話すと、とてもありがたがってくれて、喜んで獲物入れを貸してくれた。
普通背負うはずの荷物がなく、身軽な格好で狩りができるからか、いつもよりも早いペースで狩りに成功できるし、敵わない相手にはいち早く逃走ができるようになったのだとか。
ある程度狩ったら村に戻るということもする必要もないし、少しケガをしても俺が治してしまうから、余計な移動もなくなったのも大きいらしい。
直接戦闘には貢献できていないが、狩りの成果をあげるという事に貢献できているみたいで実に良かったな。
十分な狩りの成果をあげたことで、意気揚々と村へと戻っていく俺達。
すると、リザードマンの人だかりができていることに気がつく。
一体どうしたんだろうか?
「……あの感じは、もうケットシーがやってきたみたいだな」
「ケットシー?」
「ああ。多分、オレ達がレッドベアに襲われて、大きな被害にあって、食料とかに困っていると思ったんだろう」
「なるほどな。それだけ聞くと、良いヤツに聞こえてくるが……多分そうじゃないんだよな?」
「ご明察だ。そいつらはオレ達が食料不足になっているだろうということで、高値で食料を売りつけてくるんだよ、いつも。多分、今回もそうなんじゃないかな。リザークのおかげで、今回オレ達の被害はあまりなかったけどさ」
ヘヘッと嬉しそうにするリザードマン。
というか、あんなに大勢のケガ人を出したにも関わらず、それでも被害があまりないという表現になるのか。
一体、普通に被害があった場合はどれだけ深刻な被害が出ていたんだろう?
想像もしたくないな……。
「ふふ、ケットシー様が飢えたお前らに貴重な食料を持ってきたニャ! 牛肉100g10000デル、早い者勝ちだニャ!」
「……食料かぁ。うちは間に合ってるんだよなぁ」
「うーん、うちは困ってないわね」
「あいにく、おれ達も困ってないんだよなぁ」
どうやらリザードマン達の反応はあまり良くないらしい。
レッドベアの被害が家まで及ばなかったからか、みんな食料には困っていないようだ。
ケットシーは、リザードマンから見せる反応に不満げな様子で、ついにはいら立ち始める。
「……お前達がいるかいらないかは関係ないニャ。とにかく、この牛肉を買うのニャ! さもないと、どうなるかは分かってるニャ?」
にやりと笑みを浮かべ、そっと懐から銀色の球をちらりと見せるケットシー。
すると、ひぃぃ!?と後ずさりするリザードマン達。
そして、リザードマン達は話し合って、少しずつお金を出し合って、ケットシーにお金を渡すのだった。
「……確かに受け取ったニャ。せいぜい、ありがたく食べるといいニャ。ケットシー様のありがたーいお肉だニャ。お残しは許さないからニャ!?」
ぷんぷんと怒った態度をとりながら、ケットシーはリザードマンの村から出ていく。
その場に残されたリザードマン達は、はぁとため息をついていた。
……あの様子だと、脅されていらない牛肉を押し売りされた感じだよな。
少し話しかけてみるか。
「……お前達、大丈夫か?」
「あぁ、リザーク。おれ達は大丈夫。なに、ケットシーが押し売りしてくるいつものヤツだ。どうってことないよ」
そう言うと、苦笑いを浮かべるリザードマン達。
どうってことないとは言ってはいるが、やっぱり困っているには間違いないようだな。
「あっ、そういえばリザーク。先程ケットシー達から買った牛肉、いるかい? まだリザークにお礼できてないし、おれ達からのお礼ってことにするのはどうかな、みんな?」
一人のリザードマンがそう言うと、周りのリザードマンは「それは良い考えだな!」「欲しい人にあげる方が良いもんな!」と賛同の声をあげている。
だが、残念ながら、あいにく俺は先ほど大量に肉を狩ったばかりなので。
「俺、ついさっき狩りから帰ってきたばかりなんだよ。この通りな」
俺が獲物入れに手をつっこみ、獲物を一部ちらりと見せてみる。
すると、リザードマン達ははぁとため息をついた。
「リザークも肉には間に合っているのか、分かった。リザークには別の形でお礼をすることにするよ。……この牛肉、どうしようかな?」
俺が牛肉はいらないことを察したリザードマン達は、あっさりと引き下がり、どう牛肉を処分するかを話し合い始めた。
……せっかくの食料だし、処分方法に悩むくらいだったら、俺がもらっておこうかな。
俺の「格納」能力は、どうやら物の劣化を防ぐ作用が働いているようで、狩った獲物の鮮度が全く落ちていなそうだったからな。
牛肉も格納しておいて、必要な時に取り出せる俺がもらっておいた方が、後々役に立つだろう。
「処分に悩んでいるなら、俺がもらっても良いか?」
「……えっ、もらってくれるのかい? リザーク? でも、狩りに行ったばかりなんじゃ?」
「使い道はあるからな。いただけるなら、有効に活用させてもらおうと思っている。別に困ることはない」
「おお、そうなのか! なら、リザークにあげよう! それで良いよな、みんな!」
うんうんとうなずくリザードマン達。
そして、あっさりと牛肉が俺の手に渡される。
渡された牛肉は獲物入れに一回入れた後、そのまま「格納」の力を使って、俺の体の中に収納した。
俺に牛肉を渡したことで、リザードマン達は一件落着といった雰囲気になっている。
だけど、俺はそんなリザードマン達に疑問を投げかけた。
「ちょっと聞きたいんだが。みんなは、さっきのようなケットシーの押し売りをなんであっさり受け入れるんだ? この牛肉だって、本当はいらなかったんだろ?」
「……ああ、リザークは知らないんだね。分かった。ちょっと長くなるけど、聞いてもらっても良いかな?」
そう言って神妙な面持ちになるリザードマン。
俺が黙ってこくんとうなずくと、一呼吸おいてから、俺に事情を話し始めた。
「リザーク、いるかー!?」
「ああ、今行く!」
俺は武器、防具などの装備を身につけてから、外へ出る。
今度は先程の池で狩りをしたメンバーとは別のリザードマン三人が家の前に集まっていた。
「準備は大丈夫そうだな。さすがはレッドベアを倒したリザークだ」
「俺、言っとくけど、お前達がどう狩りをしているのか知らないから、そこの所はしっかり教えてくれよ?」
「もちろん、そのつもりだ。安心してくれ。それじゃ、行くぞ!」
あまり俺の言うことを聞いてなさそうな感じでさっさとどこかへ移動していくリザードマン達。
……本当に分かっているのかな、コイツら?
俺、こうやって狩りをするのは初めてなんだが、明らかに狩り初心者に対する対応じゃないんだよな、これ。
特に心配なのは、リザードマン達が俺の実力を過剰評価している所だ。
俺がクロコダイルやレッドベアを倒したというのは事実だが、それはあくまでスライムとしての能力を使っての話。
リザードマンとしての能力だけを使った俺といえば、多分巨大カマキリとかの動物相手にさえ、一回も勝ったことはないんじゃないか。
そして、俺の心配は的中した。
巨大クマに遭遇し、リザードマン達が三人がかりでも、なんか徐々に押されているような戦況になっている。
俺も一応戦いに参加するのだが、リザードマンとして戦闘慣れしていないからか、まともに剣を振っても当たらないし、相手の攻撃にモロに当たるのだ。
この感じじゃ、明らかにマズい。
他の三人とも戦況が悪いことは認識しているみたいで、明らかに俺の方をチラチラ見てきている。
ついには「そろそろ本気出していいんだぞ?」的な事をぼそぼそつぶやく始末。
ああ、分かったよ。
やればいいんだろ!?
どこで誰が見ているかも分からないし、極力スライム形態になるのは避けたかったのだが、背に腹は変えられまい。
俺は、右腕から触手を出し、巨大クマの身動きを封じる。
それから俺達四人がかりで巨大クマに一方的な攻撃を仕掛け、勝利。
「……さすがはリザーク! 頼りになるぜ!」
そんな感じの言葉を言って、俺を持ち上げる三人。
だけど、俺はそんな三人に釘をさすことにした。
「勝てて良かったな。だけど、お前達に言っておく事がある」
「……ん、どうしたんだ、リザーク?」
「俺がこうやってスライムとしての力を使えば使うほど、俺はお前達とそう遠くないうちに一緒にいられなくなる可能性が高い」
「えっ、どういうことだよ?」
俺の言葉を聞いて、首をかしげる三人。
やっぱり分かってなかったのか、コイツら。
まあ、そうだろうとは思っていたけどさ。
俺は、自分が考えている懸念について三人に説明した。
俺がいかに他種族にとって危険な存在であるかということ。
それ故に、俺がスライムだと他の種族にバレれば、その種族が俺を討伐しにくるであろうこと。
そして俺はその危険を感じたら、迷惑をかけないために、リザードマンの村から出て行くつもりであることを伝えたのだ。
……まあ、既に何度かスライム形態にはなってるし、今さら気にしても手遅れの可能性も十分あるんだけど。
それはあえて伝えないことにした。
「リザークと一緒にいられなくなるのは嫌だな……。どうすれば良い?」
「別に単純な話だ。バレにくい方法で力を使えば良い。例えばちょっとしたケガを治すのは、手で治療箇所を隠せば、問題なくできるしな」
「そうか……分かった。それなら、戦闘は基本的にオレ達がやる。リザークはそのサポートをしてもらっても良いか?」
「ああ、そうしてもらえたら俺としても嬉しい」
俺が話した内容を三人ともしっかり理解してくれたようだ。
それからは、三人が前線に立って戦う形で狩りを進んでいく。
ただ、俺もやるべき事はやる。
三人のリザードマンの獲物入れを借りて、それを全部俺が背負うことにしたのだ。
というのも、獲物入れに獲物を入れた後、こっそり獲物入れの中で「格納」の力を発動させれば、誰にも見られずに能力を発揮できるからな。
「格納」の力を使えば、どんなものでも重さを感じないし、大量に獲物を狩っても、全て俺の体に吸い込まれていくので、全く重くない。
その仕組みをリザードマンの三人に話すと、とてもありがたがってくれて、喜んで獲物入れを貸してくれた。
普通背負うはずの荷物がなく、身軽な格好で狩りができるからか、いつもよりも早いペースで狩りに成功できるし、敵わない相手にはいち早く逃走ができるようになったのだとか。
ある程度狩ったら村に戻るということもする必要もないし、少しケガをしても俺が治してしまうから、余計な移動もなくなったのも大きいらしい。
直接戦闘には貢献できていないが、狩りの成果をあげるという事に貢献できているみたいで実に良かったな。
十分な狩りの成果をあげたことで、意気揚々と村へと戻っていく俺達。
すると、リザードマンの人だかりができていることに気がつく。
一体どうしたんだろうか?
「……あの感じは、もうケットシーがやってきたみたいだな」
「ケットシー?」
「ああ。多分、オレ達がレッドベアに襲われて、大きな被害にあって、食料とかに困っていると思ったんだろう」
「なるほどな。それだけ聞くと、良いヤツに聞こえてくるが……多分そうじゃないんだよな?」
「ご明察だ。そいつらはオレ達が食料不足になっているだろうということで、高値で食料を売りつけてくるんだよ、いつも。多分、今回もそうなんじゃないかな。リザークのおかげで、今回オレ達の被害はあまりなかったけどさ」
ヘヘッと嬉しそうにするリザードマン。
というか、あんなに大勢のケガ人を出したにも関わらず、それでも被害があまりないという表現になるのか。
一体、普通に被害があった場合はどれだけ深刻な被害が出ていたんだろう?
想像もしたくないな……。
「ふふ、ケットシー様が飢えたお前らに貴重な食料を持ってきたニャ! 牛肉100g10000デル、早い者勝ちだニャ!」
「……食料かぁ。うちは間に合ってるんだよなぁ」
「うーん、うちは困ってないわね」
「あいにく、おれ達も困ってないんだよなぁ」
どうやらリザードマン達の反応はあまり良くないらしい。
レッドベアの被害が家まで及ばなかったからか、みんな食料には困っていないようだ。
ケットシーは、リザードマンから見せる反応に不満げな様子で、ついにはいら立ち始める。
「……お前達がいるかいらないかは関係ないニャ。とにかく、この牛肉を買うのニャ! さもないと、どうなるかは分かってるニャ?」
にやりと笑みを浮かべ、そっと懐から銀色の球をちらりと見せるケットシー。
すると、ひぃぃ!?と後ずさりするリザードマン達。
そして、リザードマン達は話し合って、少しずつお金を出し合って、ケットシーにお金を渡すのだった。
「……確かに受け取ったニャ。せいぜい、ありがたく食べるといいニャ。ケットシー様のありがたーいお肉だニャ。お残しは許さないからニャ!?」
ぷんぷんと怒った態度をとりながら、ケットシーはリザードマンの村から出ていく。
その場に残されたリザードマン達は、はぁとため息をついていた。
……あの様子だと、脅されていらない牛肉を押し売りされた感じだよな。
少し話しかけてみるか。
「……お前達、大丈夫か?」
「あぁ、リザーク。おれ達は大丈夫。なに、ケットシーが押し売りしてくるいつものヤツだ。どうってことないよ」
そう言うと、苦笑いを浮かべるリザードマン達。
どうってことないとは言ってはいるが、やっぱり困っているには間違いないようだな。
「あっ、そういえばリザーク。先程ケットシー達から買った牛肉、いるかい? まだリザークにお礼できてないし、おれ達からのお礼ってことにするのはどうかな、みんな?」
一人のリザードマンがそう言うと、周りのリザードマンは「それは良い考えだな!」「欲しい人にあげる方が良いもんな!」と賛同の声をあげている。
だが、残念ながら、あいにく俺は先ほど大量に肉を狩ったばかりなので。
「俺、ついさっき狩りから帰ってきたばかりなんだよ。この通りな」
俺が獲物入れに手をつっこみ、獲物を一部ちらりと見せてみる。
すると、リザードマン達ははぁとため息をついた。
「リザークも肉には間に合っているのか、分かった。リザークには別の形でお礼をすることにするよ。……この牛肉、どうしようかな?」
俺が牛肉はいらないことを察したリザードマン達は、あっさりと引き下がり、どう牛肉を処分するかを話し合い始めた。
……せっかくの食料だし、処分方法に悩むくらいだったら、俺がもらっておこうかな。
俺の「格納」能力は、どうやら物の劣化を防ぐ作用が働いているようで、狩った獲物の鮮度が全く落ちていなそうだったからな。
牛肉も格納しておいて、必要な時に取り出せる俺がもらっておいた方が、後々役に立つだろう。
「処分に悩んでいるなら、俺がもらっても良いか?」
「……えっ、もらってくれるのかい? リザーク? でも、狩りに行ったばかりなんじゃ?」
「使い道はあるからな。いただけるなら、有効に活用させてもらおうと思っている。別に困ることはない」
「おお、そうなのか! なら、リザークにあげよう! それで良いよな、みんな!」
うんうんとうなずくリザードマン達。
そして、あっさりと牛肉が俺の手に渡される。
渡された牛肉は獲物入れに一回入れた後、そのまま「格納」の力を使って、俺の体の中に収納した。
俺に牛肉を渡したことで、リザードマン達は一件落着といった雰囲気になっている。
だけど、俺はそんなリザードマン達に疑問を投げかけた。
「ちょっと聞きたいんだが。みんなは、さっきのようなケットシーの押し売りをなんであっさり受け入れるんだ? この牛肉だって、本当はいらなかったんだろ?」
「……ああ、リザークは知らないんだね。分かった。ちょっと長くなるけど、聞いてもらっても良いかな?」
そう言って神妙な面持ちになるリザードマン。
俺が黙ってこくんとうなずくと、一呼吸おいてから、俺に事情を話し始めた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
追い出された万能職に新しい人生が始まりました
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」
その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。
『万能職』は冒険者の最底辺職だ。
冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。
『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。
口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。
要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。
その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる