最弱リザードマンの成り上がりをプロデュース~スライムに転生した俺が敵を洗脳して下剋上します~

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3.リザードマンの村

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 リザードマンと巨大カマキリが戦っている所に遭遇した俺。
 どうやらその戦いは一進一退の攻防が繰り広げているらしい。
 巨大カマキリの攻撃はリザードマンの剣によって受け流され、一方でリザードマンの攻撃も巨大カマキリに避けられて当たっていないからな。

 そういえばあのリザードマン、俺が身に着けている武器や防具よりもだいぶ質が良さそうなものを使っているみたいだな。
 それにだいぶ使い込まれている感じからするに、きっと戦いに慣れているのだろう。
 実際、動きに無駄はなく、隙を見せることなく、最小限の動きで巨大カマキリの攻撃をやり過ごしているように見える。
 この感じからすれば、俺が手を出すまでもないような気もしてきたな。

 それからしばらくその戦いを眺めていると、巨大カマキリが見せた一瞬の隙をつき、リザードマンが渾身の一撃を放つ。
 リザードマンの一撃によって、カマキリの体は断ち切られ、勝敗は決した。


「……そこにいるのは誰だ? 隠れていないで、出て来い」


 リザードマンは明らかにこちらの方を見て、そう言ってきている。
 というか、リザードマンって、日本語話せるんだな。
 ……いや、それはないか。
 不思議パワーで自動的に異世界の言葉が翻訳されて聞こえるとか、そういう風に捉えた方がまだ自然かもな。

 それにしても、俺がここにいることに気付いていたのか、リザードマン。
 茂みに隠れてひっそりと眺めていたから、気付かれないと思ったんだけどなぁ。
 まあ、気付かれているのなら仕方がない。
 俺は立ち上がって、ゆっくりとリザードマンの近くまで向かうことにした。

 そして近付いてくる俺の姿を見るや否や、リザードマンが急に近付いてきて、両肩をつかんできた!?


「お前……無事だったのか!? てっきり死んでしまったものとばかり……」


 ……うん?
 もしかしてこの反応、俺が「捕食」したリザードマンの知り合いなのか?
 だとしたら、もうそのリザードマンは死んでしまったのに違いはないし、否定しておいた方が良さそうだな。


「いや、俺は……」
「色々と大変だっただろうが、お前が無事だっただけで十分だ。さあ、みんなが待っているぞ!」
「えっ、あっ、ちょっ……!?」


 リザードマンはそう言うなり、俺の腕を引っ張ってぐいぐいとどこかへ向かっていく。
 俺は何も言えないまま、そのリザードマンについていくことになってしまった。

 道中、腕を強く引っ張られながら、リザードマンの話を延々と聞くことになる。
 するとどうやら、俺が「捕食」したリザードマンの名前はリザークというらしい。
 そしてこの腕を引っ張っているリザードマンは、話の内容から察するにリザークの近所に住んでいるおじさん的な感じっぽいな。
 少なくとも家族の間柄ではなさそうだ。
 あと、リザークは一人レッドベアを倒すべく、出かけていったのだが、1週間も戻っていないので、死んでしまったものだとみんな諦めていたという。


「レッドベアの凶悪さはよく聞くからな。リザークが無事で本当に良かった。……おっ、ようやく村に着いたな」


 リザードマンのおじさんについていってしばらく歩くと、いつの間にかリザードマンの村に着いていたみたいだ。

 リザードマンの村は湿地帯に作られているみたいである。
 地面には水分が多めに含まれていて、ぬかるんでいて歩きにくい。
 あちこちに見える家は湿地帯に生えている植物を使って作られていそうな感じだ。


「おーい、みんな! リザークが帰ってきたぞ!」


 リザードマンのおじさんがそう叫ぶと、近くにいたリザードマン達が一斉にこちらの方を向き、そしてこちらの方へ駆けつけてきた!?


「おー、本当にリザークだ! 無事で本当に良かった!」
「おかえり、リザーク! もう一人で突っ走るのはやめてよね!」
「よく一週間も外の世界で生き延びられたな! 後でどう生き延びたか教えてくれよっ!」


 集まってきたリザードマン達は口々に話しかけてくる。
 あー、もうこりゃ、人違いですなんて言い出せる雰囲気じゃなくなっちまったな。
 本当の事を伝えたら、どんなに落胆されることか……。
 リザークという人物になりきって、ある程度情報を集めたら、さっさとこの村からはお別れした方が良いかもな。

 集まってきたリザードマン達の数はどんどん増えていく。
 そして、そんなある時。


「……リザーク? あぁ、本当にリザークなのね!?」


 その声が聞こえると同時に、野次馬リザードマン達はササッと道を開けてきた。
 そしてとあるリザードマンがこちらの方に近づいてくる。

 えーっと、このリザードマンはリザークとどういう間柄なんだろうか?
 野次馬リザードマン達がわざわざ道を開けるくらいだから、相当縁が深い相手なんだろうけど……。


「リーサちゃん、旦那さんが戻ってきて本当に良かったねぇ!」
「……ありがとうございます、リネおばさん。リザーク、きっとあなたの帰りを知ったら子供達も喜ぶわよ。行きましょう!」


 そういうと、リーサというリザードマンはそっと俺の腕をつかんで、俺を引っ張ってくる。
 俺は抵抗することなく、そのまま成り行きでついていくことにした。

 ……それにしても、このリザードマン、リザークのお嫁さんだったのか。
 おまけにリザークの子供までいるときた。
 俺、前世では生涯独身だったことは覚えているし、子育て経験皆無なんだが!?
 すぐに村から出ていくつもりとはいえ、大丈夫かなぁ……?


 リーサに連れられて少し歩くと、一軒の家にたどり着く。
 そしてその家の中に入ると……。


「リム、リーゼ! お父さんが帰ってきたわよ!」
「えっ、ほんとー!? わぁ、おとーさーん!」
「おかえりー、おとーさーん!」


 家の中にいた背丈半分位の二人の子供リザードマンがそう言って俺の体に抱きついてくる。
 俺は戸惑いながらも、二人の頭を優しくなでてあげると、二人ともとても嬉しそうにしていた。


「ふふ、二人とも本当に甘えんぼね。リザーク、お腹空いたでしょう? 今から急いでご飯作るから、その辺でくつろいで待ってて」


 リーサはそう言うと、調理器具が並んでいる部屋の奥の方へと向かっていった。
 俺は、机が置いてある所辺りに腰をかけ、ゆっくりすることに。
 ……と思いきや、リーサの子供二人が俺に色々と絡んで話しかけてくるので、正直あまりゆっくりは出来なかった。
 あまりボロを出さないように、無難な受け答えをするにとどめて、何とか乗り切ったけど。

 二人との会話を続けること十分ほど。
 リーサが料理を持ってこちらの方にやってきた。


「お待たせ。今日はあなたの大好物、湿地魚の刺身サラダよ」


 そう言ってリーサは料理を机の上に置いた。
 見た感じ、料理は刺身のようになっている生の魚の切り身がふんだんに使われている、サラダになっているようだ。
 箸とかそういう道具のようなものは見当たらないから、素手で食べるんだろうか?
 少し抵抗あるが、そういう文化ならば仕方ない。
 という訳で、早速一口っと。


「……美味い」
「でしょ? 久しぶりに食べたんだもの、きっと一層美味しく感じられるわよね! おかわりもあるからどんどん食べちゃって!」


 俺はリーサの言葉に甘えて、たくさんのサラダをご馳走になる事にした。
 リザードマンに擬態しているからか、人間の頃と同じように食事を楽しめるのは実に良かったな。
 恐らくだが、スライム形態の俺じゃ、味覚なんてないから、食事を楽しめないだろうからさ。
 スライムの食事って、食べるというよりかは、溶かして消化するというイメージの方が近いかもしれない。

 食事を終えた俺は、しばらくその場でまた子供の相手をしていると、何やら外が騒がしい事に気付く。
 子供の相手をするのも疲れたし、気分転換に様子を見に行ってみるのもいいかもな。


「外が騒がしいようだから、少し様子を見てくる」
「確かにそうみたいね。気を付けて行ってらっしゃい」


 リーサ達に見送られながら、俺は外へと出て行った。
 そして、リザードマンの人だかりができていることに気が付く。

 俺はその人だかりに近付き、近くのリザードマンに話を聞いてみることにした。


「何があったんだ?」
「……ああ。ケットシーの押し売りが来たんだ。ただでさえ生活に余裕がないのに、本当に困ったものだよ」


 リザードマンはそう言って、やれやれといった表情を浮かべると、また野次馬の先に視線を移した。
 俺もその視線の先を見てみると、白猫の獣人が目に入ってきた。
 どうやら猫の獣人をケットシーと呼ぶらしいな。


「さあ、誰が買うんだニャ? 早く買わないと、ウチらのボスが黙ってないニャよ?」
「……ううっ、でもこんな額は」
「一人じゃなくて二人でシェアするのでも良いのニャよ? 分割払いも……と言いたいところニャけど、お前達リザードマンごときじゃ信用ゼロニャから、現金一括払いしか許されないのニャ! あきらめてきっちりお金を揃えて出すニャ♪」


 ニヤニヤしながらそう言う白猫のケットシー。
 リザードマン達は困り果てた顔をしながらも、みんなで少しずつお金を出し合って、ケットシーの前にまとまったお金を差し出した。


「……フン、まぁまぁかニャ。じゃあ交渉成立ニャ。次来るときまでにまたお金をせいぜい貯めておくといいニャ」


 白猫のケットシーは、そう言って何かをポイッと投げ捨てる。
 そして後ろを向くと、そのまま村から去って行った。
 ケットシーが立ち去ったのを見届けると、リザードマン達はがっくりと肩を落としていた。

 ……明らかに良い買い物をしたって感じじゃないよな。
 お金をかき集めてまで欲しいものを買ったとなれば、普通喜ぶようなものなのに。
 今の状況を近くのリザードマンにそれとなく確かめてみることにするか。


「……みんな大変そうだな。大丈夫か?」
「ああ、リザークか。久しぶりの家族団らんは楽しめたかい?」
「ああ、おかげさまでな」
「そりゃ良かった。……まあ、様子は見ての通りだよ。いつも通り、ケットシー達が商品を高く売りつけてきただけさ。別に問題ないよ」


 はぁと息をつきながら答えるリザードマン。
 ……問題ないと口では言っているが、全然問題ありそうだな。
 しかも、いつも通りって、こんなことが日常的に行われているっていうのか!?

 どういうことか気になったが、そんなことを聞くのは、この村のリザードマンとしてはおかしなことだし、これ以上聞くことは控えることに。
 だが、聞かなくても現在のリザードマンの村が置かれている状況は少し観察していると、嫌でも理解できた。

 ケットシーが金を巻き上げてきた後は、狼の獣人、コボルドが肉を要求してきて、リザードマンの一人が肉を差し出していたし。
 魚の獣人、サハギンが湿地に生息する魚を要求してきて、これまた別のリザードマンが魚を差し出していたし。
 まさに他の種族の言いなりである。

 その度に、リザードマン達は苦しみを耐えるような表情を浮かべ、でも、抵抗することはなく、他種族の言うがままになっていた。
 ……一体、どうしてこんなことになってしまっているんだろうか?
 こんな状況、放っておいて良いはずがないだろうに。
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