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2.スライムの能力
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巨大カマキリによって、体を真っ二つにされた俺。
だが、このままただやられている訳にはいかない。
今の俺はスライムだし、痛みがないことからして、もしかするとあっさりと体ってくっつくんじゃないか?
そう思った俺は、早速体がひっつくように念じる。
すると、俺の上半身と下半身から緑色の触手が多数発生し、触手同士で引き合い、みるみるうちに俺の上半身と下半身がしっかりとつながっていく。
そして数秒も経たないうちに、体自体は元通りになった。
本当にくっついちまったよ……。
恐ろしいな、スライムの体って。
真っ二つに切られても全く流血してなかったし、実質ダメージゼロじゃん、これ。
いや、そんな事を考えるのは後回しだ。
今は、目の前にいる巨大カマキリからどうやって逃げるかを考えないとな。
巨大カマキリは、切り裂いたはずの俺の体が元通りになったのを見てビビッているのか、俺から距離をおいて、じっと様子を見てきていた。
……まあ、そりゃビビるよな。
真っ二つにされたはずのリザードマンの体が、全くノーダメージで元通りになるなんて、俺が見てもビビッて動けなくなる自信があるしさ。
だが、巨大カマキリは勇敢なヤツだったらしい。
ほんの少し時間を置いたら、一気に俺の近くに近付き、ものすごい速さで俺の体をバラバラに切断してきた!?
ちょっ、それはまずいって!?
あまりに素早い動きに避けることはできず、全攻撃が俺の体に命中。
俺の体はとても細かく刻まれることになる。
だが、俺の体はノーダメージ。
目がやられると一時的に目が見えなくなるのはちょっと面倒ではあったが、ただそれだけだった。
いくら細かく刻まれようが、俺がリザードマンの体を作りたいと念じれば、元通りのリザードマンの体が出来上がる。
もちろん、目も全く問題なく見えるのだ。
いくら俺にとってダメージがないとはいえ、自分の体をバラバラにされ続けるのは気分が良くない。
という訳で、そろそろ反撃に出てみようと思う。
最初は逃げようかと思ったけど、相手が素早すぎて、逃げるのは現実的じゃないと実感したからな。
さて、どう攻めたものか……。
相手は生きている訳だし、前みたいな「捕食」以外にも何かできたりしないかな?
(巨大カマキリを「洗脳」しますか? ▶YES NO)
……えっ?
洗脳って、そんなことできちゃうのか、スライムって!?
恐ろしすぎるだろ!?
とりあえず、どうなるのか試してみるか。
答えはYESで!
俺がYESと念じると、その瞬間、俺の腕からいくつもの緑色の触手が現れ、勢いよくカマキリへと向かっていく!
触手のいくつかがカマキリの手足を拘束し、カマキリの身動きを封じた後、カマキリの口の中へと触手が伸びていった。
カマキリはしばらくその場でのたうちまわって暴れるのだが、からみついた触手は全く離れる気配はなく、カマキリの口の中にずるずると触手が入り込んでいく。
それからしばらくすると、カマキリの抵抗は次第に弱まっていき、動きは完全に止まった。
そのタイミングで、触手はカマキリの拘束を解き、スルスルと縮んでいって、俺の体の中に戻っていった。
……なんか、めっちゃグロい光景だったな、「洗脳」って。
日本でもエイリアン的な敵がそういう事をしているシーンを映画とかで見たことがあるけど、まさかそれを俺がやることになるとはな。
とはいえ、スライムの俺からすれば、そういう攻撃しかできないんだろうし、それを嫌がっていたら、今度は俺がやられる側になるだけだろうしさ。
慣れるしかないだろう。
触手が俺の体の中に戻って少し経つと、倒れたカマキリがむくりと起き上がる。
また切りかかってくるのかと身構えたのだが、カマキリは俺の方をただ見るだけで、特段襲ってくる様子はなさそうだ。
この様子を見るに、洗脳は成功したとみていいんだろうか?
まあ、襲い掛かってこないなら、これにて一件落着って感じだろうか。
俺自身に大したダメージはないし、カマキリを仲間にしたという所も良かったと思う。
だが、問題はリザードマンの装備が完全に壊れてしまったことだ。
カマキリが防具をバキバキに壊してしまった上に、防具の内側に来ていた服もズタズタになってしまった影響で、今の俺は裸である。
装備が壊れてしまって深い傷を負っているのならともかく、裸で無傷なリザードマンが歩き回っていたら、どう見ても不自然だろうな。
それは少々マズい。
スライムの不思議パワーで元通りに復元することってできたりしないかなぁ?
(防具を「復元」しますか? ▶YES NO)
……おっ、できるのか!
なら、もちろんYESで!
俺がYESと念じると、俺の腕から緑色の触手が伸び、壊れた防具の破片を次々と吸収していく。
そして、全ての破片を吸収し終え、触手が一旦俺の腕の中に戻った。
そして待つこと一分ほど。
触手が再び現れ、傷一つない防具を吐き出した!
おお、本当にできたみたいだ!
めっちゃ便利だな、「復元」の力って!
というか、この力が使えるんだったら、あの壊れたショルダーバッグも元通りに戻せるんじゃ?
(体内の素材を使ってショルダーバッグを「復元」しますか? ▶YES NO)
あっ、やっぱりできるのか。
なら、お願いしようかな。
そんな調子で、俺は次々と壊れてしまった装備を復元していき、装備一式を無事身に着けることができたのだった。
……さて、でかける準備も整ったことだし、そろそろ適当に移動してみるとしようか。
「少し移動する。ついて来い」
俺がそう話しかけて移動してみると、カマキリも同じようなスピードでゆっくりとついてきた。
……なんか無表情だし、言葉を交わす訳でもないから不気味だな。
まあ、カマキリはカマキリなんだし、意思疎通がとれなくて当然なんだろうけどさ。
先ほどまで俺を何度も切り刻んでくるような相手が、突然俺に忠実になるって、洗脳って恐ろしい技だな、本当に。
日本だったら、倫理的に色々と問題ありそうな技である。
まあ、今の俺は日本があった世界とは完全に別世界にいるみたいだし、そもそも人ですらないから、そういう常識は通じないということにしておこう。
それから俺がしばらく歩いていると、背後からグチャッという音が突然聞こえる。
何事かと思ってみれば、そこには巨大ヘビがカマキリの体を牙で貫いている様子が見えた。
……おぉ、なんという弱肉強食な世界。
あれだけ強いカマキリも格上のヘビには為す術もなく殺されてしまうのか。
そしてカマキリよりもさらにひ弱な俺も、当然ヘビの餌食になる訳で。
ギシャーァァ!
ガブリ。
素早い動きで俺の体に牙を突き刺し、俺の上半身を食いちぎって、そのままゴクリ。
俺はヘビに飲み込まれてしまった。
(「収納」されていた毒消し薬を使用して、毒を解除しますか? ▶YES NO)
迷わずYESを選択すると、紫色に変色し始めていた俺の上半身の一部が元通りになった。
……というか、毒が治ったのはいいけど、早くこの状況をなんとかしないと。
このままじゃヘビに消化されてそのまま死亡コースまっしぐらだしさ。
とはいえ、こんな巨大な相手ともなれば、捕食することなんてできる訳ないもんな……。
(巨大ヘビを「捕食」しますか? ▶YES NO)
……って、できるんかいっ!?
こんな状況でどうやって「捕食」できるのか想像つかないが、とにかくやるしかあるまい。
当然、YESで。
YESを選んだ途端、俺の視界はまっくらになり、ひたすら自分の体の範囲が広がっていくうっすらとした感覚を感じ続けることになる。
しばらくすると、その動きは止まり、リザードマンとしての体に戻った俺は、視界を取り戻した。
どうやら捕食は無事に完了したらしい。
ご丁寧に、ヘビに消化されたり壊されたはずのリザードマンの装備も無傷の状態でしっかり身についている。
恐らく、捕食をし終わってリザードマンの体に戻る時に、リザードマンの装備も同時に復元してくれたのだろう。
俺の能力、実に気が利いているものだ。
ちなみにヘビは「捕食」をしたので、リザードマンの体だけでなく、ヘビの体に「擬態」することもできるようになったらしい。
まあ、ヘビになるつもりはないけど。
ヘビとの戦いを終えた俺は、再び移動を開始する。
すると、また別の巨大生物が俺に襲い掛かってきた!
結局それからは戦いの連続で、軽く三十体ほどは倒しただろうか。
最初に戦った巨大カマキリ、巨大ヘビだけでなく、巨大クマ、巨大ウサギとかもいたな。
それだけの相手と戦ったおかげで、俺のスライムとしての能力もだいぶ分かってきた。
俺がスライムとして戦う手段は主に二つ。
洗脳と捕食だ。
洗脳は、俺の細胞の一部である触手を相手の脳まで侵入させ、相手の脳を支配する技のようだ。
使用する細胞の量によって、相手を洗脳できるスピードは変わってくるみたいだな。
あと、体が大きな相手ほど、洗脳するまでに時間がかかる傾向にあった。
これのメリットは、俺本体は大して動かずにできる所にあるな。
視界を失うこともないし、周りの状況を確認しながらできるのが非常に大きい。
あと、「洗脳」を何度か使っていくうちに、どれくらい洗脳できているのか感覚で分かるようになってきた。
見た目では全然分からないから、そういう分かる手段ができたというのはとてもありがたいな。
もう一つの能力、捕食は、相手の体を丸ごと吸収してしまうものだ。
捕食する相手の体の大きさによって、どれくらいの細胞が必要か変わってくるし、スピードももちろん変わってくる。
これのメリットは、捕食した相手そのものに「擬態」できるようになれる所にある。
その「擬態」のクオリティはすさまじく、大きさや質感とかも擬態元の生物とほとんど違いが見られないほどだ。
これのデメリットは、捕食する相手を完全に消化しきる必要があるため、洗脳に比べて必要な細胞量がとても多いこと。
つまりは、俺本体もスライム形態にならないといけない事が多く、そうなると視界はゼロ、状況も全く把握できなくなるという状況になってしまうのだ。
正直、そういう状況は危険だし、「捕食」を使うとしたら、できるだけ安全な場所でひっそりと使う位にとどめておいた方が良さそうだな。
俺がスライムとして戦う手段はそんな所だろうか。
正直まだまだ能力の使い方はあるだろうし、応用次第で相当な力になってくれそうな能力である。
だけど、この能力は表立って使うのは控えた方が良さそうだな。
これまでの相手が知性のない動物とかだったからいいものの、人間とか知性のある生物にこのことが広まったら、俺、結構危うい立場になる気がするしさ。
どう考えても危険生物だし、そのことが知性のある生物で共有されれば、まず間違いなく討伐対象になるに違いない。
そうなってしまうと、俺が安全に暮らせる場所というものがなくなってしまう。
それだけは何としても避けなくては。
俺がそう考え事をしていると、ガキンッと金属が固い物に当たる音が聞こえてくる。
その音がする方向へ近付いてみると、そこには一人のリザードマンと、巨大カマキリが対峙している様子が見えた。
……おっ、ついに同族発見か!
まあ、正確には俺はリザードマンの体を借りているだけだから同族ではないんだけれども。
どうする?
助けるべきか……?
だが、このままただやられている訳にはいかない。
今の俺はスライムだし、痛みがないことからして、もしかするとあっさりと体ってくっつくんじゃないか?
そう思った俺は、早速体がひっつくように念じる。
すると、俺の上半身と下半身から緑色の触手が多数発生し、触手同士で引き合い、みるみるうちに俺の上半身と下半身がしっかりとつながっていく。
そして数秒も経たないうちに、体自体は元通りになった。
本当にくっついちまったよ……。
恐ろしいな、スライムの体って。
真っ二つに切られても全く流血してなかったし、実質ダメージゼロじゃん、これ。
いや、そんな事を考えるのは後回しだ。
今は、目の前にいる巨大カマキリからどうやって逃げるかを考えないとな。
巨大カマキリは、切り裂いたはずの俺の体が元通りになったのを見てビビッているのか、俺から距離をおいて、じっと様子を見てきていた。
……まあ、そりゃビビるよな。
真っ二つにされたはずのリザードマンの体が、全くノーダメージで元通りになるなんて、俺が見てもビビッて動けなくなる自信があるしさ。
だが、巨大カマキリは勇敢なヤツだったらしい。
ほんの少し時間を置いたら、一気に俺の近くに近付き、ものすごい速さで俺の体をバラバラに切断してきた!?
ちょっ、それはまずいって!?
あまりに素早い動きに避けることはできず、全攻撃が俺の体に命中。
俺の体はとても細かく刻まれることになる。
だが、俺の体はノーダメージ。
目がやられると一時的に目が見えなくなるのはちょっと面倒ではあったが、ただそれだけだった。
いくら細かく刻まれようが、俺がリザードマンの体を作りたいと念じれば、元通りのリザードマンの体が出来上がる。
もちろん、目も全く問題なく見えるのだ。
いくら俺にとってダメージがないとはいえ、自分の体をバラバラにされ続けるのは気分が良くない。
という訳で、そろそろ反撃に出てみようと思う。
最初は逃げようかと思ったけど、相手が素早すぎて、逃げるのは現実的じゃないと実感したからな。
さて、どう攻めたものか……。
相手は生きている訳だし、前みたいな「捕食」以外にも何かできたりしないかな?
(巨大カマキリを「洗脳」しますか? ▶YES NO)
……えっ?
洗脳って、そんなことできちゃうのか、スライムって!?
恐ろしすぎるだろ!?
とりあえず、どうなるのか試してみるか。
答えはYESで!
俺がYESと念じると、その瞬間、俺の腕からいくつもの緑色の触手が現れ、勢いよくカマキリへと向かっていく!
触手のいくつかがカマキリの手足を拘束し、カマキリの身動きを封じた後、カマキリの口の中へと触手が伸びていった。
カマキリはしばらくその場でのたうちまわって暴れるのだが、からみついた触手は全く離れる気配はなく、カマキリの口の中にずるずると触手が入り込んでいく。
それからしばらくすると、カマキリの抵抗は次第に弱まっていき、動きは完全に止まった。
そのタイミングで、触手はカマキリの拘束を解き、スルスルと縮んでいって、俺の体の中に戻っていった。
……なんか、めっちゃグロい光景だったな、「洗脳」って。
日本でもエイリアン的な敵がそういう事をしているシーンを映画とかで見たことがあるけど、まさかそれを俺がやることになるとはな。
とはいえ、スライムの俺からすれば、そういう攻撃しかできないんだろうし、それを嫌がっていたら、今度は俺がやられる側になるだけだろうしさ。
慣れるしかないだろう。
触手が俺の体の中に戻って少し経つと、倒れたカマキリがむくりと起き上がる。
また切りかかってくるのかと身構えたのだが、カマキリは俺の方をただ見るだけで、特段襲ってくる様子はなさそうだ。
この様子を見るに、洗脳は成功したとみていいんだろうか?
まあ、襲い掛かってこないなら、これにて一件落着って感じだろうか。
俺自身に大したダメージはないし、カマキリを仲間にしたという所も良かったと思う。
だが、問題はリザードマンの装備が完全に壊れてしまったことだ。
カマキリが防具をバキバキに壊してしまった上に、防具の内側に来ていた服もズタズタになってしまった影響で、今の俺は裸である。
装備が壊れてしまって深い傷を負っているのならともかく、裸で無傷なリザードマンが歩き回っていたら、どう見ても不自然だろうな。
それは少々マズい。
スライムの不思議パワーで元通りに復元することってできたりしないかなぁ?
(防具を「復元」しますか? ▶YES NO)
……おっ、できるのか!
なら、もちろんYESで!
俺がYESと念じると、俺の腕から緑色の触手が伸び、壊れた防具の破片を次々と吸収していく。
そして、全ての破片を吸収し終え、触手が一旦俺の腕の中に戻った。
そして待つこと一分ほど。
触手が再び現れ、傷一つない防具を吐き出した!
おお、本当にできたみたいだ!
めっちゃ便利だな、「復元」の力って!
というか、この力が使えるんだったら、あの壊れたショルダーバッグも元通りに戻せるんじゃ?
(体内の素材を使ってショルダーバッグを「復元」しますか? ▶YES NO)
あっ、やっぱりできるのか。
なら、お願いしようかな。
そんな調子で、俺は次々と壊れてしまった装備を復元していき、装備一式を無事身に着けることができたのだった。
……さて、でかける準備も整ったことだし、そろそろ適当に移動してみるとしようか。
「少し移動する。ついて来い」
俺がそう話しかけて移動してみると、カマキリも同じようなスピードでゆっくりとついてきた。
……なんか無表情だし、言葉を交わす訳でもないから不気味だな。
まあ、カマキリはカマキリなんだし、意思疎通がとれなくて当然なんだろうけどさ。
先ほどまで俺を何度も切り刻んでくるような相手が、突然俺に忠実になるって、洗脳って恐ろしい技だな、本当に。
日本だったら、倫理的に色々と問題ありそうな技である。
まあ、今の俺は日本があった世界とは完全に別世界にいるみたいだし、そもそも人ですらないから、そういう常識は通じないということにしておこう。
それから俺がしばらく歩いていると、背後からグチャッという音が突然聞こえる。
何事かと思ってみれば、そこには巨大ヘビがカマキリの体を牙で貫いている様子が見えた。
……おぉ、なんという弱肉強食な世界。
あれだけ強いカマキリも格上のヘビには為す術もなく殺されてしまうのか。
そしてカマキリよりもさらにひ弱な俺も、当然ヘビの餌食になる訳で。
ギシャーァァ!
ガブリ。
素早い動きで俺の体に牙を突き刺し、俺の上半身を食いちぎって、そのままゴクリ。
俺はヘビに飲み込まれてしまった。
(「収納」されていた毒消し薬を使用して、毒を解除しますか? ▶YES NO)
迷わずYESを選択すると、紫色に変色し始めていた俺の上半身の一部が元通りになった。
……というか、毒が治ったのはいいけど、早くこの状況をなんとかしないと。
このままじゃヘビに消化されてそのまま死亡コースまっしぐらだしさ。
とはいえ、こんな巨大な相手ともなれば、捕食することなんてできる訳ないもんな……。
(巨大ヘビを「捕食」しますか? ▶YES NO)
……って、できるんかいっ!?
こんな状況でどうやって「捕食」できるのか想像つかないが、とにかくやるしかあるまい。
当然、YESで。
YESを選んだ途端、俺の視界はまっくらになり、ひたすら自分の体の範囲が広がっていくうっすらとした感覚を感じ続けることになる。
しばらくすると、その動きは止まり、リザードマンとしての体に戻った俺は、視界を取り戻した。
どうやら捕食は無事に完了したらしい。
ご丁寧に、ヘビに消化されたり壊されたはずのリザードマンの装備も無傷の状態でしっかり身についている。
恐らく、捕食をし終わってリザードマンの体に戻る時に、リザードマンの装備も同時に復元してくれたのだろう。
俺の能力、実に気が利いているものだ。
ちなみにヘビは「捕食」をしたので、リザードマンの体だけでなく、ヘビの体に「擬態」することもできるようになったらしい。
まあ、ヘビになるつもりはないけど。
ヘビとの戦いを終えた俺は、再び移動を開始する。
すると、また別の巨大生物が俺に襲い掛かってきた!
結局それからは戦いの連続で、軽く三十体ほどは倒しただろうか。
最初に戦った巨大カマキリ、巨大ヘビだけでなく、巨大クマ、巨大ウサギとかもいたな。
それだけの相手と戦ったおかげで、俺のスライムとしての能力もだいぶ分かってきた。
俺がスライムとして戦う手段は主に二つ。
洗脳と捕食だ。
洗脳は、俺の細胞の一部である触手を相手の脳まで侵入させ、相手の脳を支配する技のようだ。
使用する細胞の量によって、相手を洗脳できるスピードは変わってくるみたいだな。
あと、体が大きな相手ほど、洗脳するまでに時間がかかる傾向にあった。
これのメリットは、俺本体は大して動かずにできる所にあるな。
視界を失うこともないし、周りの状況を確認しながらできるのが非常に大きい。
あと、「洗脳」を何度か使っていくうちに、どれくらい洗脳できているのか感覚で分かるようになってきた。
見た目では全然分からないから、そういう分かる手段ができたというのはとてもありがたいな。
もう一つの能力、捕食は、相手の体を丸ごと吸収してしまうものだ。
捕食する相手の体の大きさによって、どれくらいの細胞が必要か変わってくるし、スピードももちろん変わってくる。
これのメリットは、捕食した相手そのものに「擬態」できるようになれる所にある。
その「擬態」のクオリティはすさまじく、大きさや質感とかも擬態元の生物とほとんど違いが見られないほどだ。
これのデメリットは、捕食する相手を完全に消化しきる必要があるため、洗脳に比べて必要な細胞量がとても多いこと。
つまりは、俺本体もスライム形態にならないといけない事が多く、そうなると視界はゼロ、状況も全く把握できなくなるという状況になってしまうのだ。
正直、そういう状況は危険だし、「捕食」を使うとしたら、できるだけ安全な場所でひっそりと使う位にとどめておいた方が良さそうだな。
俺がスライムとして戦う手段はそんな所だろうか。
正直まだまだ能力の使い方はあるだろうし、応用次第で相当な力になってくれそうな能力である。
だけど、この能力は表立って使うのは控えた方が良さそうだな。
これまでの相手が知性のない動物とかだったからいいものの、人間とか知性のある生物にこのことが広まったら、俺、結構危うい立場になる気がするしさ。
どう考えても危険生物だし、そのことが知性のある生物で共有されれば、まず間違いなく討伐対象になるに違いない。
そうなってしまうと、俺が安全に暮らせる場所というものがなくなってしまう。
それだけは何としても避けなくては。
俺がそう考え事をしていると、ガキンッと金属が固い物に当たる音が聞こえてくる。
その音がする方向へ近付いてみると、そこには一人のリザードマンと、巨大カマキリが対峙している様子が見えた。
……おっ、ついに同族発見か!
まあ、正確には俺はリザードマンの体を借りているだけだから同族ではないんだけれども。
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