最弱リザードマンの成り上がりをプロデュース~スライムに転生した俺が敵を洗脳して下剋上します~

絵巻とかげ

文字の大きさ
上 下
2 / 14

2.スライムの能力

しおりを挟む
 巨大カマキリによって、体を真っ二つにされた俺。
 だが、このままただやられている訳にはいかない。
 今の俺はスライムだし、痛みがないことからして、もしかするとあっさりと体ってくっつくんじゃないか?

 そう思った俺は、早速体がひっつくように念じる。
 すると、俺の上半身と下半身から緑色の触手が多数発生し、触手同士で引き合い、みるみるうちに俺の上半身と下半身がしっかりとつながっていく。
 そして数秒も経たないうちに、体自体は元通りになった。

 本当にくっついちまったよ……。
 恐ろしいな、スライムの体って。
 真っ二つに切られても全く流血してなかったし、実質ダメージゼロじゃん、これ。

 いや、そんな事を考えるのは後回しだ。
 今は、目の前にいる巨大カマキリからどうやって逃げるかを考えないとな。


 巨大カマキリは、切り裂いたはずの俺の体が元通りになったのを見てビビッているのか、俺から距離をおいて、じっと様子を見てきていた。
 ……まあ、そりゃビビるよな。
 真っ二つにされたはずのリザードマンの体が、全くノーダメージで元通りになるなんて、俺が見てもビビッて動けなくなる自信があるしさ。

 だが、巨大カマキリは勇敢なヤツだったらしい。
 ほんの少し時間を置いたら、一気に俺の近くに近付き、ものすごい速さで俺の体をバラバラに切断してきた!?
 ちょっ、それはまずいって!?

 あまりに素早い動きに避けることはできず、全攻撃が俺の体に命中。
 俺の体はとても細かく刻まれることになる。

 だが、俺の体はノーダメージ。
 目がやられると一時的に目が見えなくなるのはちょっと面倒ではあったが、ただそれだけだった。
 いくら細かく刻まれようが、俺がリザードマンの体を作りたいと念じれば、元通りのリザードマンの体が出来上がる。
 もちろん、目も全く問題なく見えるのだ。

 いくら俺にとってダメージがないとはいえ、自分の体をバラバラにされ続けるのは気分が良くない。
 という訳で、そろそろ反撃に出てみようと思う。
 最初は逃げようかと思ったけど、相手が素早すぎて、逃げるのは現実的じゃないと実感したからな。
 さて、どう攻めたものか……。
 相手は生きている訳だし、前みたいな「捕食」以外にも何かできたりしないかな?


(巨大カマキリを「洗脳」しますか? ▶YES NO)


 ……えっ?
 洗脳って、そんなことできちゃうのか、スライムって!?
 恐ろしすぎるだろ!?

 とりあえず、どうなるのか試してみるか。
 答えはYESで!


 俺がYESと念じると、その瞬間、俺の腕からいくつもの緑色の触手が現れ、勢いよくカマキリへと向かっていく!
 触手のいくつかがカマキリの手足を拘束し、カマキリの身動きを封じた後、カマキリの口の中へと触手が伸びていった。
 カマキリはしばらくその場でのたうちまわって暴れるのだが、からみついた触手は全く離れる気配はなく、カマキリの口の中にずるずると触手が入り込んでいく。
 それからしばらくすると、カマキリの抵抗は次第に弱まっていき、動きは完全に止まった。
 そのタイミングで、触手はカマキリの拘束を解き、スルスルと縮んでいって、俺の体の中に戻っていった。

 ……なんか、めっちゃグロい光景だったな、「洗脳」って。
 日本でもエイリアン的な敵がそういう事をしているシーンを映画とかで見たことがあるけど、まさかそれを俺がやることになるとはな。
 とはいえ、スライムの俺からすれば、そういう攻撃しかできないんだろうし、それを嫌がっていたら、今度は俺がやられる側になるだけだろうしさ。
 慣れるしかないだろう。


 触手が俺の体の中に戻って少し経つと、倒れたカマキリがむくりと起き上がる。
 また切りかかってくるのかと身構えたのだが、カマキリは俺の方をただ見るだけで、特段襲ってくる様子はなさそうだ。
 この様子を見るに、洗脳は成功したとみていいんだろうか?

 まあ、襲い掛かってこないなら、これにて一件落着って感じだろうか。
 俺自身に大したダメージはないし、カマキリを仲間にしたという所も良かったと思う。
 だが、問題はリザードマンの装備が完全に壊れてしまったことだ。
 カマキリが防具をバキバキに壊してしまった上に、防具の内側に来ていた服もズタズタになってしまった影響で、今の俺は裸である。
 装備が壊れてしまって深い傷を負っているのならともかく、裸で無傷なリザードマンが歩き回っていたら、どう見ても不自然だろうな。
 それは少々マズい。

 スライムの不思議パワーで元通りに復元することってできたりしないかなぁ?


(防具を「復元」しますか? ▶YES NO)


 ……おっ、できるのか!
 なら、もちろんYESで!

 俺がYESと念じると、俺の腕から緑色の触手が伸び、壊れた防具の破片を次々と吸収していく。
 そして、全ての破片を吸収し終え、触手が一旦俺の腕の中に戻った。
 そして待つこと一分ほど。
 触手が再び現れ、傷一つない防具を吐き出した!


 おお、本当にできたみたいだ!
 めっちゃ便利だな、「復元」の力って!
 というか、この力が使えるんだったら、あの壊れたショルダーバッグも元通りに戻せるんじゃ?


(体内の素材を使ってショルダーバッグを「復元」しますか? ▶YES NO)


 あっ、やっぱりできるのか。
 なら、お願いしようかな。
 そんな調子で、俺は次々と壊れてしまった装備を復元していき、装備一式を無事身に着けることができたのだった。 

 ……さて、でかける準備も整ったことだし、そろそろ適当に移動してみるとしようか。


「少し移動する。ついて来い」


 俺がそう話しかけて移動してみると、カマキリも同じようなスピードでゆっくりとついてきた。
 ……なんか無表情だし、言葉を交わす訳でもないから不気味だな。
 まあ、カマキリはカマキリなんだし、意思疎通がとれなくて当然なんだろうけどさ。
 先ほどまで俺を何度も切り刻んでくるような相手が、突然俺に忠実になるって、洗脳って恐ろしい技だな、本当に。
 日本だったら、倫理的に色々と問題ありそうな技である。
 まあ、今の俺は日本があった世界とは完全に別世界にいるみたいだし、そもそも人ですらないから、そういう常識は通じないということにしておこう。


 それから俺がしばらく歩いていると、背後からグチャッという音が突然聞こえる。
 何事かと思ってみれば、そこには巨大ヘビがカマキリの体を牙で貫いている様子が見えた。

 ……おぉ、なんという弱肉強食な世界。
 あれだけ強いカマキリも格上のヘビには為す術もなく殺されてしまうのか。
 そしてカマキリよりもさらにひ弱な俺も、当然ヘビの餌食になる訳で。


 ギシャーァァ!


 ガブリ。
 素早い動きで俺の体に牙を突き刺し、俺の上半身を食いちぎって、そのままゴクリ。
 俺はヘビに飲み込まれてしまった。


(「収納」されていた毒消し薬を使用して、毒を解除しますか? ▶YES NO)


 迷わずYESを選択すると、紫色に変色し始めていた俺の上半身の一部が元通りになった。
 ……というか、毒が治ったのはいいけど、早くこの状況をなんとかしないと。
 このままじゃヘビに消化されてそのまま死亡コースまっしぐらだしさ。
 とはいえ、こんな巨大な相手ともなれば、捕食することなんてできる訳ないもんな……。


(巨大ヘビを「捕食」しますか? ▶YES NO)


 ……って、できるんかいっ!?
 こんな状況でどうやって「捕食」できるのか想像つかないが、とにかくやるしかあるまい。
 当然、YESで。

 YESを選んだ途端、俺の視界はまっくらになり、ひたすら自分の体の範囲が広がっていくうっすらとした感覚を感じ続けることになる。
 しばらくすると、その動きは止まり、リザードマンとしての体に戻った俺は、視界を取り戻した。

 どうやら捕食は無事に完了したらしい。
 ご丁寧に、ヘビに消化されたり壊されたはずのリザードマンの装備も無傷の状態でしっかり身についている。
 恐らく、捕食をし終わってリザードマンの体に戻る時に、リザードマンの装備も同時に復元してくれたのだろう。
 俺の能力、実に気が利いているものだ。

 ちなみにヘビは「捕食」をしたので、リザードマンの体だけでなく、ヘビの体に「擬態」することもできるようになったらしい。
 まあ、ヘビになるつもりはないけど。

 ヘビとの戦いを終えた俺は、再び移動を開始する。
 すると、また別の巨大生物が俺に襲い掛かってきた!




 結局それからは戦いの連続で、軽く三十体ほどは倒しただろうか。
 最初に戦った巨大カマキリ、巨大ヘビだけでなく、巨大クマ、巨大ウサギとかもいたな。

 それだけの相手と戦ったおかげで、俺のスライムとしての能力もだいぶ分かってきた。
 俺がスライムとして戦う手段は主に二つ。
 洗脳と捕食だ。

 洗脳は、俺の細胞の一部である触手を相手の脳まで侵入させ、相手の脳を支配する技のようだ。
 使用する細胞の量によって、相手を洗脳できるスピードは変わってくるみたいだな。
 あと、体が大きな相手ほど、洗脳するまでに時間がかかる傾向にあった。

 これのメリットは、俺本体は大して動かずにできる所にあるな。
 視界を失うこともないし、周りの状況を確認しながらできるのが非常に大きい。
 あと、「洗脳」を何度か使っていくうちに、どれくらい洗脳できているのか感覚で分かるようになってきた。
 見た目では全然分からないから、そういう分かる手段ができたというのはとてもありがたいな。


 もう一つの能力、捕食は、相手の体を丸ごと吸収してしまうものだ。
 捕食する相手の体の大きさによって、どれくらいの細胞が必要か変わってくるし、スピードももちろん変わってくる。

 これのメリットは、捕食した相手そのものに「擬態」できるようになれる所にある。
 その「擬態」のクオリティはすさまじく、大きさや質感とかも擬態元の生物とほとんど違いが見られないほどだ。
 これのデメリットは、捕食する相手を完全に消化しきる必要があるため、洗脳に比べて必要な細胞量がとても多いこと。
 つまりは、俺本体もスライム形態にならないといけない事が多く、そうなると視界はゼロ、状況も全く把握できなくなるという状況になってしまうのだ。
 正直、そういう状況は危険だし、「捕食」を使うとしたら、できるだけ安全な場所でひっそりと使う位にとどめておいた方が良さそうだな。


 俺がスライムとして戦う手段はそんな所だろうか。
 正直まだまだ能力の使い方はあるだろうし、応用次第で相当な力になってくれそうな能力である。
 だけど、この能力は表立って使うのは控えた方が良さそうだな。
 これまでの相手が知性のない動物とかだったからいいものの、人間とか知性のある生物にこのことが広まったら、俺、結構危うい立場になる気がするしさ。

 どう考えても危険生物だし、そのことが知性のある生物で共有されれば、まず間違いなく討伐対象になるに違いない。
 そうなってしまうと、俺が安全に暮らせる場所というものがなくなってしまう。
 それだけは何としても避けなくては。

 俺がそう考え事をしていると、ガキンッと金属が固い物に当たる音が聞こえてくる。
 その音がする方向へ近付いてみると、そこには一人のリザードマンと、巨大カマキリが対峙している様子が見えた。

 ……おっ、ついに同族発見か!
 まあ、正確には俺はリザードマンの体を借りているだけだから同族ではないんだけれども。

 どうする?
 助けるべきか……?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」 その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。 『万能職』は冒険者の最底辺職だ。 冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。 『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。 口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。 要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。 その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...