2人の選択

僕の選択

君の微笑みは僕の心をじわじわと…確実に黒く染めていくんだ



最初は君を最後まで穏やかに看取っていくつもりだった。
君が安らかに眠りにつけるよう、そばで見守るつもりだったんだ。
君のあの願いさえなければこんな気持ちにはならなかったんだよ。

「あなたの子供が欲しい」

君は今まで穏やかに、僕を支えるように、僕と共にいてくれた。
そんな君が初めて、自己中心的な、極めて無責任な願いを僕にしてきた。

なぜ今、僕に君の一番人間的な欲望を見せるの？


すごく戸惑ったよ。
僕が君を綺麗なまま思い出のままに見送ろうとしているのに、君は僕に自分の分身を残していこうとしている。

きっと今までの僕なら笑って許していただろうね。


でもそれは君が生きていることが前提でなければならないんだよ

僕は聖人じゃないし、優しいだけの人間でもないから、君がいなくなった後まで、君を愛し続けられるはずがないんだ

だって君は僕を置いくだろう？

たった1人で旅立ってしまうんだろう？

置いていく方と置いていかれる方、どちらが辛いんだろう

君の願いは無茶苦茶だ
君がいなくなった後の指図など更々受けるつもりはない
君を愛している僕に、他の女を愛せという願いなど聞くわけないだろう

君は知らないんだ
僕がどれだけ君に依存しているか
僕がどれだけ君に執着しているか
僕がどれだけ君に…



君がいなくなった後の世界なんていらない





君が先に欲に塗れた願いを口にしたんだ、
僕のお願いも聞いてもらわないと