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2話:霧崎さんは騙される
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「何故、私は友達ができないのか」
私、霧崎 朱莉は自分の部屋で悩む。
もっと積極的に声をかけていくべきなのだろうか?
いや、そんな勇気は無い。
脳内シミュレーションでは100通りの、友人との会話をしてきている
いわば会話の達人である私でも、いきなりクラスメイトに声をかける勇気は無い。
なので受け。
そう、後の戦なのである。
だれかクラスメイトが「あ、霧崎さん!○○かわいいね!」と言ってくれれば勝ちだ。
そこからのシミュレーションは完璧である。
では、何かクラスメイトが「かわいいね」と話しかけてくれる〝何か〟が必要だ。
どうする…?リボンでも髪にくくっていくか?
―いやダメだ、10年前のヒロインだ。
今風の髪型にすればいいのか?
このネットで有名な黒髪ロング姫カットとも、おさらばするか?
霧崎さんは姿鏡の前で、髪を弄りながら
ひたすら脳内シミュレーションに没頭する。
「朱莉ー!ごはんよー!」
「はーい」
母から呼ばれ、2階の自室からリビングへ降りる。
食卓に着くと、私の好きなししゃもが並べられていた。
いただきますを済ませ、大好きなししゃもに箸を向けると母が口を開いた。
「ところで朱莉。その変な髪型まだ続けてるの?」
母の何気ない一言が、私の脳天を抉る。
「え…へ、変?」
恐る恐る、母へ尋ねてみる。
「え、だってあんた似合ってないよ?それ」
固まる私をよそに、母は優雅に味噌汁を啜る。
え?変?だってネットで、この髪形は大人気って…。
「てか、ぶっちゃけオタクっぽくない?それ」
今年大学生になった姉が、傷口に食塩をばらまくが如く抉っていく。
「え…オタク…?」
「お姉ちゃん、それは言い過ぎよ。なんかこう…マニア?マニアックなのよ」
「お母さん、それほぼ同じ意味じゃん」
母と姉は、箸と箸でお互いを指しながら談笑を始める。
そんなバカな…!ネットで大人気な髪型を検索した、あの私の4時間の努力は一体…?
目の前が真っ暗になるとは比喩ではなかったのか。
大好きなししゃもが喉を通らない。
いや、寧ろししゃもまでもが「その髪型、ししゃもでもしないぜ?」と嘲笑っているように見える。
夕飯を終えると、食器を流し台に戻し、マッハで自室へと駆け戻る。
即座に携帯で検索を始める。
〝姫カット ダサい〟
検索をかけて数秒、私の目に仰天の結果が写る。
〝ブスがすると見苦しい〟
約3秒、私の体と心がズタボロに切り刻まれる音を感じた。
紅潮する頬に、熱を帯びる体。
〝恥かしい〟その感情が一気に駆け巡る。
ベッドに携帯を投げつけ、枕に顔を埋め、足をジタバタさせ
必至に湧き上がる感情を払拭させる。
「おーい、うるさいよー朱莉ー。」
姉が気怠そうにドアを開け文句を言いに来る。
「お姉ちゃん!!」
「うわ、びっくりした。何?」
私は意を決し、姉に問いかける。
「私って美人!?」
「図に乗るな、下の中。」
姉は表情一つ変えず即答し部屋を去って行った。
そうか私は騙されたのだ…ネットに。
後日、私は髪を切った。
私、霧崎 朱莉は自分の部屋で悩む。
もっと積極的に声をかけていくべきなのだろうか?
いや、そんな勇気は無い。
脳内シミュレーションでは100通りの、友人との会話をしてきている
いわば会話の達人である私でも、いきなりクラスメイトに声をかける勇気は無い。
なので受け。
そう、後の戦なのである。
だれかクラスメイトが「あ、霧崎さん!○○かわいいね!」と言ってくれれば勝ちだ。
そこからのシミュレーションは完璧である。
では、何かクラスメイトが「かわいいね」と話しかけてくれる〝何か〟が必要だ。
どうする…?リボンでも髪にくくっていくか?
―いやダメだ、10年前のヒロインだ。
今風の髪型にすればいいのか?
このネットで有名な黒髪ロング姫カットとも、おさらばするか?
霧崎さんは姿鏡の前で、髪を弄りながら
ひたすら脳内シミュレーションに没頭する。
「朱莉ー!ごはんよー!」
「はーい」
母から呼ばれ、2階の自室からリビングへ降りる。
食卓に着くと、私の好きなししゃもが並べられていた。
いただきますを済ませ、大好きなししゃもに箸を向けると母が口を開いた。
「ところで朱莉。その変な髪型まだ続けてるの?」
母の何気ない一言が、私の脳天を抉る。
「え…へ、変?」
恐る恐る、母へ尋ねてみる。
「え、だってあんた似合ってないよ?それ」
固まる私をよそに、母は優雅に味噌汁を啜る。
え?変?だってネットで、この髪形は大人気って…。
「てか、ぶっちゃけオタクっぽくない?それ」
今年大学生になった姉が、傷口に食塩をばらまくが如く抉っていく。
「え…オタク…?」
「お姉ちゃん、それは言い過ぎよ。なんかこう…マニア?マニアックなのよ」
「お母さん、それほぼ同じ意味じゃん」
母と姉は、箸と箸でお互いを指しながら談笑を始める。
そんなバカな…!ネットで大人気な髪型を検索した、あの私の4時間の努力は一体…?
目の前が真っ暗になるとは比喩ではなかったのか。
大好きなししゃもが喉を通らない。
いや、寧ろししゃもまでもが「その髪型、ししゃもでもしないぜ?」と嘲笑っているように見える。
夕飯を終えると、食器を流し台に戻し、マッハで自室へと駆け戻る。
即座に携帯で検索を始める。
〝姫カット ダサい〟
検索をかけて数秒、私の目に仰天の結果が写る。
〝ブスがすると見苦しい〟
約3秒、私の体と心がズタボロに切り刻まれる音を感じた。
紅潮する頬に、熱を帯びる体。
〝恥かしい〟その感情が一気に駆け巡る。
ベッドに携帯を投げつけ、枕に顔を埋め、足をジタバタさせ
必至に湧き上がる感情を払拭させる。
「おーい、うるさいよー朱莉ー。」
姉が気怠そうにドアを開け文句を言いに来る。
「お姉ちゃん!!」
「うわ、びっくりした。何?」
私は意を決し、姉に問いかける。
「私って美人!?」
「図に乗るな、下の中。」
姉は表情一つ変えず即答し部屋を去って行った。
そうか私は騙されたのだ…ネットに。
後日、私は髪を切った。
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