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奪われ…奪い返す

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「見てよリリアーヌ!この前出た新作のバッグよ。かわいいでしょ」


 また始まった。私の幼馴染は新しく買った物をいつも自慢してくる。
 分かってるわよ。次はどうせ私には買えないとかなんと言うんでしょ。


「あっ!ごめん!リリアーヌじゃこんな高いバッグ買えないわよね。確かリリアーヌのお父様って私のお父様が経営する商会の組員だから、このバッグを買うのに何年分の年収がいるのかしら?」


 ほらね。この性格の悪さは小さい頃から変わってない。
 私がどれだけこの嫌がらせに耐えてきたことか…。

 でもそれも今日で終わり。明日私は婚約者の元に嫁ぎに行くの。ミドラス様っていうお貴族様。遠い場所だから幼馴染に会うこともない。
 これでやっと解放される…!


「そうだリリアーヌ!私結婚するの!相手はミドラス様っていう貴族なんだけど、知ってるわよね?だってあなたの婚約者だもの」


 待って…?何言ってるの?確かにミドラス様は私の婚約者だけど…え?結婚?


「リリアーヌったら私を差し置いて結婚なんて酷いじゃない。私悲しくって…だからお父様にどうにかしてって頼んだらミドラス様と結婚させてくれることになったの!!彼って私の超タイプだしもう最高」

「そんな…じゃあ…私はどうなるの!?」

「うーん。婚約破棄なんじゃない?まぁどうでもいいじゃないそんなこと。それよりまた買い物に付き合ってよ!荷物持ちさせてあげるからね」


 私は目の前が真っ暗になった。


◇◇◇◇


 あれから1年が経った。
 私の婚約者ミドラス様を奪い取った幼馴染は嫁ぐにあたって私を側付きとして同行させた。
 そしてわざわざ私をミドラス様に側付きだと紹介したのだ。

 あの時はミドラス様の顔すら見れないほど悔しくて…悲しかった。
 それからは極力ミドラス様を避けた。
 そうしないと心が壊れてしまいそうだったから。

 私はこっそりと屋敷を抜け出し酒屋に来ていた。


「マスター!もう一杯!!」

「お嬢さん、やめときな。飲みすぎだよ」

「いいじゃない!!私が飲みたいんだから!!」

「すまないがもう店を閉める。それで帰ってくれ」


 なによ!!私を邪魔者扱いして!!
 私がどれだけ苦しい思いをしているかも知らないくせに…。

 自然と涙がこぼれてくる。
 どうしても耐えられなくて道のわきで膝を抱えてしまった。


「ミドラス様…」

「なんだいリリアーヌ」

「え?」


 そこにいたのは見前違えるわけもない、ミドラス様本人だった。


「どうして…?」

「まずは何処か休める所に行かないか?ここだと落ち着いて話が出来ないと思うから。



◇◇◇◇

 
 連れ込み宿、所謂そう言うことをする宿に入った私とミドラス様。

 え?なんで私ミドラス様とこんなところに…だってミドラス様は結婚して…。


「君が彼女の側付きとして来たときは驚いたよ。君の父親から君が婚約破棄を望んでいるって言い渡されたばかりだから」

「婚約破棄?私はそんなこと望んでいません!!だって私は今でも…!!」

「……君が必要以上に私を避けるから何かあるのかと思って部下に探らせたんだ。そしたら君の幼馴染が裏で糸を引いていたことが分かった。実を言うと僕あの子のこと全く好きじゃないんだよ。ただ身を固めるためにって呼ばれただけの子だしね」


 ミドラス様は彼女のことが好きじゃないんだ。
 それを聞けて今まで溜まっていたどす黒い何かが綺麗に流された気分だった。

 ミドラスは胸をなでおろすリリアーヌに覆いかぶさる様にベットに倒れこんだ。


「ミ、ミドラス様?」

「ごめんリリアーヌ。僕はまだ君のことが好きなんだ。なのに好きでもない女と結婚させられて…この一年清いままだったんだよ。でも君を見ていたら…もう我慢できないんだ」

「…私もこうなることを心待ちにしておりました。来てください」




 2人が宿を出たのは2日後の夜だった。


「どこ行っていましたのミドラス様!!私がどれだけ心配して…どうしてリリアーヌと一緒にいますの?何で手をつないでいますの?」

「見ての通りだよ。僕が好きなのはリリアーヌなんだ」

「嘘ですわ!!!リリアーヌ!これは何の冗談ですの?」

「嘘じゃないわ。私はミドラス様が好きだし、ミドラス様は私を好いてくれている。それが事実なのよ」


 彼女は顔を真っ赤にしながら憤怒し、目に涙を浮かべながら走り去っていった。
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