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小噺集
1月1日、午前0時
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結界整備師はだいたい秋の終わりから冬にかけてが忙しい。
まず、11月に行われる新嘗祭。
五穀の収穫を祝うと同時に、土地の精霊に感謝を捧げる儀礼祭だ。
土地の精霊……つまりは、妖魔のことだけれど。
この日はどこの寺社も、地域ごとに一番近い帷の方角に向かって土地の安寧の祈る。
次に2月、節分。
2月は土地の霊力数値が帷側に偏ってどうしても妖魔が活発になってしまう。
なので、必要以上に妖魔側へ霊力が行かないように、妖魔を「邪気」と捉えて退ける儀礼祭になっている。
11月は崇め奉り、2月は祓い清める。
たった3ヶ月の移り変わりで、こうも妖魔の在り方も変わっていく。
まあ、でも。
妖魔が精霊であれ、邪気であれ、結界整備師の仕事は変わらない。
大結界を所有する寺社に行って、数値を見て整備を行う。
件数が増えて忙しくなるけれど、土地の霊力の流れに注意すれば、新嘗祭も節分も仕事のやり方に違いはない。
11月と2月はそれでなんとかなる。
けれど、それ以上に大変な時を今まさに迎えていた。
「うーん……」
年の瀬という土地全体が不安定になりがちな時期。
そして、人が一箇所に集中することに起こる呪詛の発生。
これら2つを懸念して行う大晦日の結界整備が、最も難しいと言われている。
12月31日、夜の10時15分。
神仏習合の思想を持つ土地見衆の関東域本部。
本堂を中心に広がった屋台や山車など、年始に向けての準備に活気付いていく。
その周囲を覆う大結界で、私は寒さに耐えながら仕事をしていた。
本部を中心に4つの門が東西南北に点在し、霊力の流れを潤滑させる四門式。
その流れに異常の通知が出たので、みんなで大結界の周辺の点検業務に追われてる。
「本当に、どれ?」
電柱のように連なる配線柱は(略称で配線)、門から供給された霊力を繋ぐ配線だ。
門には異常は無かったので、配線の影響で異常が出ていると分かっている。
けれど、具体的な場所を知るにはこの手元にある数値計で探すしかない。
本部を囲う配線の総数は312本。
4つのエリアに区分けして、1エリア78本で見回ってはいるものの、どうしても気が滅入ってはさまう。
なにせ、すごく寒い。
会社から支給されているジャケットは防寒着にはなっているけれど、真冬の風が吹き抜ければ途端に寒さが勝ってしまう。
もう何度も何度も風に煽られて、顔の痛みと一緒に冷えていくのがよくわかる。
作業用の軍手を手袋代わりにしないと、手がかじかんでしまいそうだ。
「さっぶいよぅ」
「なっさけねぇなぁ」
「いいね……大先生はあったかそうで」
ジャケットの内ポケットにはカイロを忍ばせ、そこから大先生の元気そうな声が聞こえてくる。
その間にも強い風が吹きつけて、私は冷たい痛みに晒されながら次の配線へと向かう。
「早く見つからないかなぁ」
異常のある配線を見つけたら、耳元に付いた無線から発見の通達があるはず。
けれど、今だに音沙汰がないから、みんなまだ頑張って探しているということだ。
「ったく、こんなチマチマやりやがって。俺様の糸で一発じゃねぇか」
「そんなことしたら私が捕まっちゃうよ」
個人が所有する妖魔を、土地見衆の所有する霊術装置に術をかける。
緊急時でもないのにそんなことをやってしまったら、対災禍条例に触れかねない。
危ない橋を渡るより、今はまず目の前の配線。
柱についた操作盤のカバーを外し、数値計と接続する。
日付を跨ぐ午前0時までには全ての整備工程を終えないといけない。
それは配線の異常を見つけるで終わりではなくて、大結界の鬼門に要石を装填して霊力数値を安定させるまでが仕事だ。
大結界はここ以外にも2箇所あり、もし時間が過ぎてしまえばそこで働く整備師や土地見衆に迷惑をかけてしまう。
そろそろ異常のある配線を見つけたいところだけど……あっ、
「あった」
手元の数値計は15と表示され、アラートの赤いライトが点滅している。
数値が低いということは、ここだけ霊力の流れが止まっている証拠だ。
寒さで震える手をこらえながら中を覗くと、気になる箇所も見受けられる。
誰だろう、ここの配線をいじったのは。
「見つけました。場所は北-12。配線班、至急修理をお願いします」
修理もできないわけじゃないけれど、ここで私がいじってしまえば面倒ごとが増えてしまう。
手短に無線で連絡すれば、すぐに土地見衆の配線班がやってきた。
「ここ。間違ったところに刺さっていて、霊力がうまく流れていません」
「本当だ。おい昼間に点検したヤツは誰だ」
配線班の一人……多分班長だと思うけれど、苛立さを残しながら二人の部下に指示を出す。
それからは黙々と、手際が良く連携が取れた修理工程が始まっていく。
ずっとここで見ていても仕方がないし、あとは任せて大丈夫そうかな。
ほかにも異常がある配線があるかもしれないと、その場を去ろうとした時だった。
『桜下君、聞こえるか?』
無線から聞こえた見知った声。
私が勤めている会社の部長、西村さんだ。
「はい、聞こえます。どうしましたか?」
『すぐに戻ってきてくれ。君はそろそろ最終調整に入らないと間に合わないだろう』
あとは土地見衆やほかの整備師に任せれば大丈夫だと、西村さんは気遣ってくれている。
そうでした。配線探しに気取られてしまったけれど、ここからが私にとっての正念場。
大晦日に行う、鬼門の担当。
結界整備師にとっては誉高く、そして最も重圧のかかる仕事だ。
「……わかりました、鬼門に戻ります」
あぁ、胃がキリキリする。
ここで緊張したって仕方のないのに、どうしても体は反応してしまう。
そのせいもあって。
あれほど寒いと感じていた夜風も、今は火照りを冷やすくらいに心地よく感じられた。
◉
大結界、鬼門の制御室。
私は防寒用のジャケットから整備用の繋ぎへ着替え、愛用する頭巾を巻く。
数多くの配線とモニターでひしめき合う空間で最終調整を行っていた。
時刻は10時半を回り、与えられた1時間半はじわじわと削られていく。
『今回は時間ある方だぞ。俺の時なんて、あと15分で仕上げろっていうから無茶も過ぎたわ』
「信野さん、あれは伝説として語り継がれるべきですよ」
去年まで大晦日の鬼門整備は信野さんがされていて、配線と四門の両方に異常を見つけて大幅に時間を押してしまってた過去がある。
けれど、その残された15分で信野さんは大結界の整備を完全に成し遂げる伝説を生み出す。
逆境のプロ、信野整備師。
そんな彼から一週間前に「よし。今回から、お前に任せるわ」と言われてしまい、正直たまったものじゃなかった。
鬼門整備の担当に任されることは多くあれ、大晦日の整備は今回が初めてだ。
『何度も言ってるけれどよ、やり方はいつもと変わんねぇよ。ただ例年より土地の数値がぶれているから、そこは考えて調整してしなきゃな』
私は無線から聞こえる信野さんの声に頷き、もう一度モニターの数値を確認する。
東西南北に分かれた門にはそれぞれ霊力が供給され、極度な偏りを起こしてはならない。
現在北と南は安定しているけれど、西と東……特に西の門が30まで数値が下がってきてしまっている。
「鳥前さん、出力上げて」
『やってるけど、これ以上は南にも影響出るよ。どこか落とした方がいいんじゃない?』
いつもなら、ここで南を落として様子を見る。
けれど、土地の霊力のブレと人口の集中がちょううど南に重なっていた。
下手に南を調整したらほかの3門にも影響が出るかもしれない。
それと、東の数値も動きが気になる。
「西村さん、北の数値をゆっくり落としましょうか」
『お、こっちか。了解』
西村さんは短い返答のあと、すぐに出力を上げていく。
すると、東の数値も動きを止めて徐々に安定していった。
あとは南を下げれば、四門すべて整うはず。
『さぁく! 南がやばいって!』
そんな私の浅はかな考えはアラートと共に打ち消される。
南が急激な変動を見せ、無線を伝って占田さんの慌てた声が響き渡った。
「西村さん、ここで止めましょう。鳥前さんは20未満で下げて、信野さんはピンキリ6上げで」
『りょーかい』
『6って、微妙な数値だな……』
鳥前さんが西門、信野さんが東門をそれぞれ調整してくれる。
そのおかげで、南門のアラートは止まったけれど、さっきよりも数値が安定しない。
しかも南以外の3つの門も、先ほどと比べると上がったり下がったり……数値の振れ幅が大きくなってしまった。
「うーん……」
これが大晦日の悪戦地帯。
昼間に何度も確認しても、人の密集時間の変化や土地の数値によってがらりと覆される。
結局その後、四門の振れ幅の修正に専念し最低限のラインまでは整えた。
費やした時間は30分ほど。
けれど、南が全く安定せず、ほかの門を動かせばまた警報がまた鳴ってしまうかもしれない。
現在南を除いて、ほかの方角の数値は平均で40。
これでは土地の供給と釣り合わないから平均60には持っていきたい。
南を安定させながら、あと20数値を上げる工程に苦難を強いられる。
それと、同時に。
『桜下君、人の流れも見ないと。時間押してくるよ』
無線から聞こえる淡々とした西村さんの声。
焦った気持ちを一度締め直し、モニター画面を土地側から人側へ切り替える。
すると、人が集中するポイントが点検開始前の倍以上の範囲へ膨れ上がっていた。
迫る元旦に合わせて増える人口密度。
土地の霊力の溝がまだ掴めていない今、もたついていたらさらに整備がし辛くなる。
さて、どうしましょうか。
『今年、土地のブレ凄くない? 南の数値、どうしてこうなったし』
『まあ年末だからね、当り前と言えばそうだけど。今年はやばいね』
『さくがんばれ、超がんばれ』
『さく氏ぃ、ふぁいとぉ』
占田さんと鳥前さんの応援が無線を伝って心にしみる。
ありがとうございます、と言葉を返したかったけれど、土地と人を見るのに精いっぱい。
なかなか雑談を挟む余力が無かった。
その最中で、
『そういえば何年か前にもあったよね』
占田さんが何気なく呟いた一言が、自分の心に波紋を広げる。
『あぁ、あったね。あんま印象残んなかったけど……というか若葉氏のインパクトがデカすぎて、何も全部かき消されたって感じだったけど』
『その時と同じくらいだ、今日の土地の霊力』
鳥前さんも占田さんの言葉で思い出し、二人そろって感慨にふけていた。
今から8年ほど前の話。
大晦日の大結界を最年少で成し遂げた結界整備師がいる。
名前は智徳若葉。
奴がまだ18歳の時に鬼門の担当に任命され、今と同じような状況下で整備を完遂させた。
しかも、一発で。
当時の私は、まだ鬼門はおろか大結界の整備には入れなかった新米整備師。
配線の点検に回っていたあの時の自分でも、要石を装填した後に調整を全くしない「一発」の凄さは鈍器で頭を殴られるぐらいの衝撃を覚えていた。
『おいこら、雑談は終わってからにしろ。無線で長々と喋るんじゃねぇ』
信野さんの苛立った声に、話していた二人の先輩は「はーい」と陽気な受け答えをして話を終える。
正直、二人の会話に心を落ち着かせていたところもあり、しんみりと静まり返ってしまった空間がかえって居心地が悪い。
沈黙によって流れて行ってしまう時間。
いつもの癖で口元に指を添えながら、ずっとモニターを見てしまう。
けれど、画面を見つめる先は土地の数値でも人の流れでもなく、在りし日の奴の姿だった。
『さあ桜下君、どうする?』
痺れを切らせた西村さんが私に問いかける。
もうこれ以上思いつめても、得することは何もないのに。
天才と謳われた後に、魔の海域に境界を踏み入れた開拓者。
土色のくせっ毛を靡かせるアイツの勇姿が、ますます私の波紋を乱していく。
「……ふぅ」
こうなったら仕方がない。
緩んだ頭巾を一度力強く結びなおし、私は覚悟を決める。
アイツのように出来るか分からないけれど、土地の振れ幅と人の波を見るにあたってこれが一番の最善だった。
「一気に行きます。東と西、それぞれ合図と共に20まで上げてください」
『……マジか』
信野さんと鳥前さんがそれぞれ同じように息を飲んだのが分かった。
何故彼らが驚いたのか分からなかったけれど、私の指示に快く頷いてくれる。
『よし、こっちはいつでもいい。タイミングは任せる』
『さく氏、バシッと決めちゃって』
「はい、それと西村さん」
横はこれでいい。問題は一番影響が出てしまう南だ。
普段なら西と連動させて調整を行うけれど、この考えていってさっきはアラートが出てしまった。
だから、北を動かすタイミングが勝敗を左右する。
「北は東と西の調整中、タイミングをずらして出力を上げます。聞き逃さないようにお願いします」
『了解。さくっと終わらせよう』
「お願いします。そして、占田さん」
この3つの門を調整中、きっと南の数値が上がったり下がったり振れ幅がすごいことになるだろう。
きっと占田さんは驚いてしまうかもしれないから、前もって言う必要があった。
「南の振れ幅がすごいことになっても鬼門でなんとかします。どうか慌てないで、私が声をかけるタイミングで動いてください」
『お、おう。わかった!』
これで皆さんに指示は出し終えた。
あとは私が無線越しに合図を出せば、火ぶたが切られる。
一切の動作の漏れや隙を見せてはいけない、一勝負。
「……始めます。信野さん、鳥前さん。いいですか?」
『オーケー。いつでも来い』
『右に同じく!』
二人の最終準備を確認し、私は手元にあった木箱を取り出す。
5センチほどの小さな木箱を開ければ、中には黒く光る要石が現れる。
ソレを私は操作盤のすぐ近くに置き、これで全ての準備は整った。
「号令、5……、4……、3……、2……、1……」
黒瑪瑙の石に見つめられ、私は開戦の狼煙を上げる。
身に着ける軍手の中では手汗がにじみ出し、心地がいいとは感じられない。
けれど、当時のアイツもコレを味わったのかと思うと、不快にも思えなかった。
「ゼロ」
合図と共に上がる、東と西の霊力数値。
上昇し続ける二つの方角と共に、南の数値もブレ始める。
その幅はどんどん広がりを見せ、揺れる振り子みたいだった。
「西村さん、準備をお願いします」
『応』
南の振れ幅の中間地点、ここを狙って北を上げていく。
幅の差10を狙って、私は号令を出す。
「3……、2……、1……、ゼロ」
『オラッ』
西村さんが北の出力を増加させ、数値が50までに跳ね上がる。
その頃、東と西は45。
出力は最大値まで上げているけれど、南のブレが阻害して安全装置が働いている証拠だ。
『さぁく氏、上がんないよぉ!』
「そのまま上げ続けて下さい、北が上がれば一緒に行くはずです」
ここまでは想定内。
西村さんも理想的なタイミングを的中させて、南の振れ幅も許容内に収めてくれた。
北の数値が上がるにつれて東と西もゆっくり上がっていく。
ゆっくりと、しかし確実に。
3つの門の数値がすべて50を超えたその時、
『さ、さく!』
慌てる占田さんの声と同時に、南に異常があるとアラートが鳴りだした。
すぐさま私は別のモニターを視線の前に移動させ、配線を切り替える。
同時並行して左手でレバーを掴み、門全体の出力も微調整。
アラートは止まったけれど、南の振れ幅は広がるばかり。
出力を出し続ける3門は50は越えてもその先へ行かない。
思わずモニターを睨みつけるように見てしまい、また配線を切り替える。
「いきます」
切って紡いで、その度に人と土地を隈なく見渡す。
霊力の振れ幅に左右され、時折アラートは鳴ってしまう。
流れを微調整しながら、門の様子も鑑みる。
頭の中でパズルを描いて、バラシて。それを組み立てていくような難解さがあった。
配線の切り替えが忙しなく、複数のモニターから得る情報に精いっぱい。
文字通り、手と目が足りないといった状況だ。
けれど、本当に。1単位の僅かな数値ではあるけれど。
南の振れ幅が徐々に安定を見せている。
『うお、数値が上がってきた』
喜び交じりで驚く、信野さんの声。
51から動きを見せていなかった東の数値が、ぐんと目標である60にまで到達する。
同時に、北の数値も後を追って東と同じ数値に並び、西はまだもう一越え。
南が影響して動きずらくなっているから、
「南、10下げて」
『りょ、了解!』
占田さんが霊力を調整し、反比例して西の数値が上がっていく。
その様子をモニターで見ながら、私は配線を2本切り替え。
結果、西も60にまで到達した。
「占田さん、一気に上げて」
私はもう一度レバーの上に手を置き、南の数値が上がると一緒に後ろに引いた。
あれほど振れ幅がすごかった南の数値が、すっと綺麗な直線が描けたように。
全くブレを見せず、ほかの3門と同じ基準値に合わさった。
『……いった』
四門が揃った霊力循環に、西村さんが感嘆に息を飲む。
私は手にはめていた軍手を外し、いつでも装填できるように準備をしていた要石に手を伸ばす。
黒く艶やかな石の滑らかな硬さは、自分の左手を伝い確かな感触を実感させる。
「号令、5……、4……、3……、2……、1……」
大結界の要石を、配線が集中する中央にかざす。
起動させるまでのラスト5秒の後、私は石に命じた。
「急急如律令」
装填と共に、大地の息吹が吹き返される。
金色の霊力が満ち溢れ、狭い空間がひと時の幻想に色づいていく。
その光景に惚ける余裕は全くないので、現実的にモニターで四門の数値を確認する。
数値が若干ブレることがほとんどだから、門に合わせて数値を下げるように指示を出して……
……あれ?
『……一発、マジか』
驚嘆に漏れた信野さんの声が、はっきりと無線を通じて私に届く。
ほかの3人も言葉はなかったけれど、息を飲む気配がなんとなく分かる。
要石を装填しても、動きを見せない四門の数値。
初めて起こした不動の完成に、私は驚きや嬉しさよりもどっと疲労を滲ませた。
「はぁああ……、なんとかなったぁ……」
◉
怒涛の結界整備が終わり、しばらくして。
安心しすぎてお腹が空いた私は、屋台で販売されていた蕎麦を持って鬼門を上っていた。
門と言っても、鬼門の形状は塔にしか見えない。
東西南北に設置された四門は楼門造りであるけれど、鬼門に至っては三重もしくは五重の塔。
現場によって木製、鉄製の違いはあっても、鬼門が塔であることは一貫している。
そんな関東域の土地見衆が直轄で管理する大結界、この中にある鬼門は「塔婆」のような形をしていて、ほかの木造の鬼門と比べると随分変わっていた。
建物の造りは大きく分けて、1階と2階。そして、大きな三角の屋根の頂上には周囲の霊力を計測する霊波計がシンボルとしてよく目立つ。
1階は八万大菩薩を崇める木像が並び、地下に続く階段を降りるとさっきまで私がいた制御室に続いている。
そして、2階は外の様子を一望できる展望場となっていて、ぐるっと一周輪を描くように辺りを見わたせる造りだ。
配線異常を探していた時は強風に苛まれ酷い思いをしたけれど、今はだいぶ風も落ち着いた。
「うん、大丈夫そうだね」
腕に巻いていた頭巾を解くと、黒の布地がちょうど自分ひとりぐらいのスペースまで伸びていく。
物質の原理を越えて広がっていく漆黒。
未だに私は理解が出来ないけれど、もうとやかく追究する気も失せていた。
「いただきます」
半透明の蓋を開くと、温まった湯気が一斉に立ち昇る。
箸を取って蕎麦をすすると、優しいしょうゆ味が染みわたりほっと気が休まっていく。
柵から落ちないように大きく開かれた隙間から外を見れば、年始に向けて人は列を作り賑わいを見せていた。
ほんとよかった、この人の波が来る前に無事に整備が終わって。
「けっ。こんな寒い中よくもまあ続々と」
賑わう街並みを、大先生はあったかいカイロの上に乗りながら上機嫌に見渡している。
理由は至って簡単で、屋台で売っていた金平糖を私が(渋々ながら)買い与え、脚で転がしながら味わっているからだ。
「大先生、美味しい?」
「ふん、本当はあのリンゴ飴が良かった。これで譲歩する俺様を敬うんだなっ」
ハエトリ蜘蛛の貴方が、あんな大きなリンゴ飴買ったって食べきれないでしょう?
そんなことを言ってしまえば機嫌を損ねてしまえかねない。
私はぐっと言葉を抑え、ふと目の前の景色を眺めた。
重く響く除夜の鐘が数を刻み、次々と人が川を作り本堂へと進んでいく。
新年の活気に色づく街の衆。
華々しい山車や飾りも用意され、あとは新年を待つばかり。
それがどこか温かく見えてしまい、私はもう一口蕎麦をすすった。
細いけれどコシのある麺が噛み応えあって、しかもえび天が乗っている。
出汁がしみ込んだ衣が程よいやわらかさと風味をもたらす。
「ああ、美味しい」
大先生は金平糖に夢中になり、私は蕎麦で温まる。
囃子と時折聞こえる除夜の鐘に耳を傾けながら、静かに年を越していく。
そうなるだろうと、思っていたけれど。
「……うん?」
ジャケットの胸ポケットから伝わる振動音。
中にあった携帯端末を取り出し、表示された画面を確認した。
……いや、してしまったと言った方が正しいかもしれない。この場合に限っては。
電話に表示された名前は、若葉。
せっかく蕎麦を食べて忘れていたのに。
頭から抜けていた時に現れたヤツに、私はひどく苛立っていた。
『お疲れぇ、桜下くぅん! 今、暇だろ? 暇だよなっ。整備終わったって西村さんから聞いたから言い逃れは出来ないぞぉお?』
「何の用?」
酷くぶっきら棒に、あえてトゲを残して電話に出る。
若葉はいつにも増して馬鹿な調子で、だいぶコイツも疲れているんだなと反面教師にして見習おう。
『何の用って……何の用もねえけど、オレ出張、今広島。遠くにきてメランコリック、ちょっとかまって』
「やだ。じゃあね」
通話終了を押して、若、即、断。
人差し指が画面に触れる直前で、スピーカーから大声が響く。
『うそ、うそ! ちょっとだけ用があった。お願い、桜下大明神! ご慈悲を~!』
「はぁ。本当に何?」
真面目な話、こいつは会社の社長。
曲がりなりにも引継ぎ事項があるんじゃないかと、ぎりぎりのところで踏みとどまる。
携帯端末を床に置き、スピーカーからハンズフリーへ。
両手の自由がきき、蕎麦が食べやすくなったところで若葉の話を一応聞いてみた。
『今そこでさ、正月限定の千鳥サブレーが売ってるはずなんだ。金色のカンのやつ、それ買ってきてくんない?』
「ほんとバカじゃないの?」
千鳥サブレ―というのは、この辺りで有名な銘菓のことだけど。
いやそうではなくて、なんで大晦日に混み合う人を搔い潜って行かなきゃならないんだ。
若葉の考えと、老舗メーカーの商法に踊らされれてたまるか。
『頼むよぅ、金はオレから出すから』
「それは当り前」
『広島には瀬戸内レモンがいっぱいよ~』
「私はね、柑橘系のすっぱいのはいいんだよ。嫌いじゃないけどどうせ甘いし、お前が有利じゃないか」
すっぱいはすっぱいでも、どうせ貰うならお酢で浸したモノがいい。「やっちゃん」とか「すだこくん」とか。
甘いモノが好きなヤツにとって、こんなの不公平だ。
ずるずると、蕎麦を啜りながら私はなんだか負けた気分になってしまう。
『あー分かってる、お酢ね。スっ! 良さそうなお土産あったら買ってくるよ』
「うん」
『ところで、お前なんか食ってる?』
「お蕎麦」
『あーいいな。オレもさっき大結界の整備終わったばかりで、まだ何も食ってねぇんだ』
広島にも海に面した大規模な結界があり、若葉は今回そこの土地見衆から依頼を受けて単独で鬼門の整備を任されていた。
社長に就任して出張や会議が多くなってしまったけれど、「若葉でないと出来ない」と判断されれば整備師として各地に赴く。
自分たち以上に多忙な日常をこなし、それでも天才というスタンスは崩すことはない。
『そういえば、お前一発でやったんだな。おめでとう』
「どうも」
『なんだ、嬉しくないのかよ』
「お前に言われてもね、くやしいだけだよ」
あれをお前は8年前には経験してやってのけているんだ。
今日だって必死で焦ったところもあるし、若葉だったらもっと勝手が違ったかもしれない。
天才との差は、どうしてもかけ離れてしまう。
『さく』
すると、スピーカーから私を呼ぶ声が聞こえる。
さっきまでの調子声はどこに言ったんだろう、若葉は諭すようにゆっくりと語りかけていく。
『ビビったのが、今日お前がやったやり方。あの時、オレがやった調整とまんま一緒だったんだよ』
「……え?」
『しかもオレの一発はめっちゃ悩んだ上で決めたから、時間がもっと押しちまった。鬼門の上で蕎麦すする時間なんて無ぇよ』
最後の方は、投げやりな感じで。若葉は私に言葉を掛けた。
東と西の出力を同時に上げると決めて、信野さんと鳥前さんが驚いた様子でいたのはそういうこと。
合点がいったと思ったのもつかの間、私は箸を進める手が止まってしまう。
『だからさ、オレが珍しくデレてるんだ。ちゃんと受け取れ、アホ』
アホは余計だ。
けれど、結界に妥協を許さない若葉がこう言っているのは相当珍しい。
胸の奥からトクトクと流れてくる鼓動を、私はどう言い表せばいいんだろう。
「若葉、私は……」
戸惑いながら、言葉を探そうとしたその直後。
わっと、本堂の方角から、ひと際大きな歓声が聞こえてきた。
賑やかな祭囃子と、華やかな祭り衣装の舞師たち。
彼らが舞殿に登場し、鮮やかな舞を披露する。
『うぉー、上がった』
一方電話先のスピーカーからは、若葉が声を上げた直後にドンと音が鳴り響く。
爆発するような音は連なり、こちらも遠くから歓声が聞こえてる。
きっとこれは、花火なのだろうか。
すると、
『さく、あけましておめでとう』
若葉は花火の音に負けないぐらいハッキリと、新年の節目を祝った。
「うん。あけましておめでとう」
『それだけ言いたかっただけだから。じゃあな』
なんだ、結局ちゃんとした用があるじゃないか。
新年の挨拶すると、あっさりと電話が切れて携帯端末は待ち受け画面に戻る。
すっかり静まってしまった鬼門の展望台。
上を見上げれば、鬼門の霊波計が0時に合わせて稼働し、それより遥か彼方では数多の星が輝きを見せている。
「……さて」
すぐに視線を落とし、いざ人込みに紛れる決意を身に固める。
理由は、私の気の迷いで。
老舗メーカーの商法に踊らされるのも、元旦ぐらいは悪くないと思ってしまったからだ。
まず、11月に行われる新嘗祭。
五穀の収穫を祝うと同時に、土地の精霊に感謝を捧げる儀礼祭だ。
土地の精霊……つまりは、妖魔のことだけれど。
この日はどこの寺社も、地域ごとに一番近い帷の方角に向かって土地の安寧の祈る。
次に2月、節分。
2月は土地の霊力数値が帷側に偏ってどうしても妖魔が活発になってしまう。
なので、必要以上に妖魔側へ霊力が行かないように、妖魔を「邪気」と捉えて退ける儀礼祭になっている。
11月は崇め奉り、2月は祓い清める。
たった3ヶ月の移り変わりで、こうも妖魔の在り方も変わっていく。
まあ、でも。
妖魔が精霊であれ、邪気であれ、結界整備師の仕事は変わらない。
大結界を所有する寺社に行って、数値を見て整備を行う。
件数が増えて忙しくなるけれど、土地の霊力の流れに注意すれば、新嘗祭も節分も仕事のやり方に違いはない。
11月と2月はそれでなんとかなる。
けれど、それ以上に大変な時を今まさに迎えていた。
「うーん……」
年の瀬という土地全体が不安定になりがちな時期。
そして、人が一箇所に集中することに起こる呪詛の発生。
これら2つを懸念して行う大晦日の結界整備が、最も難しいと言われている。
12月31日、夜の10時15分。
神仏習合の思想を持つ土地見衆の関東域本部。
本堂を中心に広がった屋台や山車など、年始に向けての準備に活気付いていく。
その周囲を覆う大結界で、私は寒さに耐えながら仕事をしていた。
本部を中心に4つの門が東西南北に点在し、霊力の流れを潤滑させる四門式。
その流れに異常の通知が出たので、みんなで大結界の周辺の点検業務に追われてる。
「本当に、どれ?」
電柱のように連なる配線柱は(略称で配線)、門から供給された霊力を繋ぐ配線だ。
門には異常は無かったので、配線の影響で異常が出ていると分かっている。
けれど、具体的な場所を知るにはこの手元にある数値計で探すしかない。
本部を囲う配線の総数は312本。
4つのエリアに区分けして、1エリア78本で見回ってはいるものの、どうしても気が滅入ってはさまう。
なにせ、すごく寒い。
会社から支給されているジャケットは防寒着にはなっているけれど、真冬の風が吹き抜ければ途端に寒さが勝ってしまう。
もう何度も何度も風に煽られて、顔の痛みと一緒に冷えていくのがよくわかる。
作業用の軍手を手袋代わりにしないと、手がかじかんでしまいそうだ。
「さっぶいよぅ」
「なっさけねぇなぁ」
「いいね……大先生はあったかそうで」
ジャケットの内ポケットにはカイロを忍ばせ、そこから大先生の元気そうな声が聞こえてくる。
その間にも強い風が吹きつけて、私は冷たい痛みに晒されながら次の配線へと向かう。
「早く見つからないかなぁ」
異常のある配線を見つけたら、耳元に付いた無線から発見の通達があるはず。
けれど、今だに音沙汰がないから、みんなまだ頑張って探しているということだ。
「ったく、こんなチマチマやりやがって。俺様の糸で一発じゃねぇか」
「そんなことしたら私が捕まっちゃうよ」
個人が所有する妖魔を、土地見衆の所有する霊術装置に術をかける。
緊急時でもないのにそんなことをやってしまったら、対災禍条例に触れかねない。
危ない橋を渡るより、今はまず目の前の配線。
柱についた操作盤のカバーを外し、数値計と接続する。
日付を跨ぐ午前0時までには全ての整備工程を終えないといけない。
それは配線の異常を見つけるで終わりではなくて、大結界の鬼門に要石を装填して霊力数値を安定させるまでが仕事だ。
大結界はここ以外にも2箇所あり、もし時間が過ぎてしまえばそこで働く整備師や土地見衆に迷惑をかけてしまう。
そろそろ異常のある配線を見つけたいところだけど……あっ、
「あった」
手元の数値計は15と表示され、アラートの赤いライトが点滅している。
数値が低いということは、ここだけ霊力の流れが止まっている証拠だ。
寒さで震える手をこらえながら中を覗くと、気になる箇所も見受けられる。
誰だろう、ここの配線をいじったのは。
「見つけました。場所は北-12。配線班、至急修理をお願いします」
修理もできないわけじゃないけれど、ここで私がいじってしまえば面倒ごとが増えてしまう。
手短に無線で連絡すれば、すぐに土地見衆の配線班がやってきた。
「ここ。間違ったところに刺さっていて、霊力がうまく流れていません」
「本当だ。おい昼間に点検したヤツは誰だ」
配線班の一人……多分班長だと思うけれど、苛立さを残しながら二人の部下に指示を出す。
それからは黙々と、手際が良く連携が取れた修理工程が始まっていく。
ずっとここで見ていても仕方がないし、あとは任せて大丈夫そうかな。
ほかにも異常がある配線があるかもしれないと、その場を去ろうとした時だった。
『桜下君、聞こえるか?』
無線から聞こえた見知った声。
私が勤めている会社の部長、西村さんだ。
「はい、聞こえます。どうしましたか?」
『すぐに戻ってきてくれ。君はそろそろ最終調整に入らないと間に合わないだろう』
あとは土地見衆やほかの整備師に任せれば大丈夫だと、西村さんは気遣ってくれている。
そうでした。配線探しに気取られてしまったけれど、ここからが私にとっての正念場。
大晦日に行う、鬼門の担当。
結界整備師にとっては誉高く、そして最も重圧のかかる仕事だ。
「……わかりました、鬼門に戻ります」
あぁ、胃がキリキリする。
ここで緊張したって仕方のないのに、どうしても体は反応してしまう。
そのせいもあって。
あれほど寒いと感じていた夜風も、今は火照りを冷やすくらいに心地よく感じられた。
◉
大結界、鬼門の制御室。
私は防寒用のジャケットから整備用の繋ぎへ着替え、愛用する頭巾を巻く。
数多くの配線とモニターでひしめき合う空間で最終調整を行っていた。
時刻は10時半を回り、与えられた1時間半はじわじわと削られていく。
『今回は時間ある方だぞ。俺の時なんて、あと15分で仕上げろっていうから無茶も過ぎたわ』
「信野さん、あれは伝説として語り継がれるべきですよ」
去年まで大晦日の鬼門整備は信野さんがされていて、配線と四門の両方に異常を見つけて大幅に時間を押してしまってた過去がある。
けれど、その残された15分で信野さんは大結界の整備を完全に成し遂げる伝説を生み出す。
逆境のプロ、信野整備師。
そんな彼から一週間前に「よし。今回から、お前に任せるわ」と言われてしまい、正直たまったものじゃなかった。
鬼門整備の担当に任されることは多くあれ、大晦日の整備は今回が初めてだ。
『何度も言ってるけれどよ、やり方はいつもと変わんねぇよ。ただ例年より土地の数値がぶれているから、そこは考えて調整してしなきゃな』
私は無線から聞こえる信野さんの声に頷き、もう一度モニターの数値を確認する。
東西南北に分かれた門にはそれぞれ霊力が供給され、極度な偏りを起こしてはならない。
現在北と南は安定しているけれど、西と東……特に西の門が30まで数値が下がってきてしまっている。
「鳥前さん、出力上げて」
『やってるけど、これ以上は南にも影響出るよ。どこか落とした方がいいんじゃない?』
いつもなら、ここで南を落として様子を見る。
けれど、土地の霊力のブレと人口の集中がちょううど南に重なっていた。
下手に南を調整したらほかの3門にも影響が出るかもしれない。
それと、東の数値も動きが気になる。
「西村さん、北の数値をゆっくり落としましょうか」
『お、こっちか。了解』
西村さんは短い返答のあと、すぐに出力を上げていく。
すると、東の数値も動きを止めて徐々に安定していった。
あとは南を下げれば、四門すべて整うはず。
『さぁく! 南がやばいって!』
そんな私の浅はかな考えはアラートと共に打ち消される。
南が急激な変動を見せ、無線を伝って占田さんの慌てた声が響き渡った。
「西村さん、ここで止めましょう。鳥前さんは20未満で下げて、信野さんはピンキリ6上げで」
『りょーかい』
『6って、微妙な数値だな……』
鳥前さんが西門、信野さんが東門をそれぞれ調整してくれる。
そのおかげで、南門のアラートは止まったけれど、さっきよりも数値が安定しない。
しかも南以外の3つの門も、先ほどと比べると上がったり下がったり……数値の振れ幅が大きくなってしまった。
「うーん……」
これが大晦日の悪戦地帯。
昼間に何度も確認しても、人の密集時間の変化や土地の数値によってがらりと覆される。
結局その後、四門の振れ幅の修正に専念し最低限のラインまでは整えた。
費やした時間は30分ほど。
けれど、南が全く安定せず、ほかの門を動かせばまた警報がまた鳴ってしまうかもしれない。
現在南を除いて、ほかの方角の数値は平均で40。
これでは土地の供給と釣り合わないから平均60には持っていきたい。
南を安定させながら、あと20数値を上げる工程に苦難を強いられる。
それと、同時に。
『桜下君、人の流れも見ないと。時間押してくるよ』
無線から聞こえる淡々とした西村さんの声。
焦った気持ちを一度締め直し、モニター画面を土地側から人側へ切り替える。
すると、人が集中するポイントが点検開始前の倍以上の範囲へ膨れ上がっていた。
迫る元旦に合わせて増える人口密度。
土地の霊力の溝がまだ掴めていない今、もたついていたらさらに整備がし辛くなる。
さて、どうしましょうか。
『今年、土地のブレ凄くない? 南の数値、どうしてこうなったし』
『まあ年末だからね、当り前と言えばそうだけど。今年はやばいね』
『さくがんばれ、超がんばれ』
『さく氏ぃ、ふぁいとぉ』
占田さんと鳥前さんの応援が無線を伝って心にしみる。
ありがとうございます、と言葉を返したかったけれど、土地と人を見るのに精いっぱい。
なかなか雑談を挟む余力が無かった。
その最中で、
『そういえば何年か前にもあったよね』
占田さんが何気なく呟いた一言が、自分の心に波紋を広げる。
『あぁ、あったね。あんま印象残んなかったけど……というか若葉氏のインパクトがデカすぎて、何も全部かき消されたって感じだったけど』
『その時と同じくらいだ、今日の土地の霊力』
鳥前さんも占田さんの言葉で思い出し、二人そろって感慨にふけていた。
今から8年ほど前の話。
大晦日の大結界を最年少で成し遂げた結界整備師がいる。
名前は智徳若葉。
奴がまだ18歳の時に鬼門の担当に任命され、今と同じような状況下で整備を完遂させた。
しかも、一発で。
当時の私は、まだ鬼門はおろか大結界の整備には入れなかった新米整備師。
配線の点検に回っていたあの時の自分でも、要石を装填した後に調整を全くしない「一発」の凄さは鈍器で頭を殴られるぐらいの衝撃を覚えていた。
『おいこら、雑談は終わってからにしろ。無線で長々と喋るんじゃねぇ』
信野さんの苛立った声に、話していた二人の先輩は「はーい」と陽気な受け答えをして話を終える。
正直、二人の会話に心を落ち着かせていたところもあり、しんみりと静まり返ってしまった空間がかえって居心地が悪い。
沈黙によって流れて行ってしまう時間。
いつもの癖で口元に指を添えながら、ずっとモニターを見てしまう。
けれど、画面を見つめる先は土地の数値でも人の流れでもなく、在りし日の奴の姿だった。
『さあ桜下君、どうする?』
痺れを切らせた西村さんが私に問いかける。
もうこれ以上思いつめても、得することは何もないのに。
天才と謳われた後に、魔の海域に境界を踏み入れた開拓者。
土色のくせっ毛を靡かせるアイツの勇姿が、ますます私の波紋を乱していく。
「……ふぅ」
こうなったら仕方がない。
緩んだ頭巾を一度力強く結びなおし、私は覚悟を決める。
アイツのように出来るか分からないけれど、土地の振れ幅と人の波を見るにあたってこれが一番の最善だった。
「一気に行きます。東と西、それぞれ合図と共に20まで上げてください」
『……マジか』
信野さんと鳥前さんがそれぞれ同じように息を飲んだのが分かった。
何故彼らが驚いたのか分からなかったけれど、私の指示に快く頷いてくれる。
『よし、こっちはいつでもいい。タイミングは任せる』
『さく氏、バシッと決めちゃって』
「はい、それと西村さん」
横はこれでいい。問題は一番影響が出てしまう南だ。
普段なら西と連動させて調整を行うけれど、この考えていってさっきはアラートが出てしまった。
だから、北を動かすタイミングが勝敗を左右する。
「北は東と西の調整中、タイミングをずらして出力を上げます。聞き逃さないようにお願いします」
『了解。さくっと終わらせよう』
「お願いします。そして、占田さん」
この3つの門を調整中、きっと南の数値が上がったり下がったり振れ幅がすごいことになるだろう。
きっと占田さんは驚いてしまうかもしれないから、前もって言う必要があった。
「南の振れ幅がすごいことになっても鬼門でなんとかします。どうか慌てないで、私が声をかけるタイミングで動いてください」
『お、おう。わかった!』
これで皆さんに指示は出し終えた。
あとは私が無線越しに合図を出せば、火ぶたが切られる。
一切の動作の漏れや隙を見せてはいけない、一勝負。
「……始めます。信野さん、鳥前さん。いいですか?」
『オーケー。いつでも来い』
『右に同じく!』
二人の最終準備を確認し、私は手元にあった木箱を取り出す。
5センチほどの小さな木箱を開ければ、中には黒く光る要石が現れる。
ソレを私は操作盤のすぐ近くに置き、これで全ての準備は整った。
「号令、5……、4……、3……、2……、1……」
黒瑪瑙の石に見つめられ、私は開戦の狼煙を上げる。
身に着ける軍手の中では手汗がにじみ出し、心地がいいとは感じられない。
けれど、当時のアイツもコレを味わったのかと思うと、不快にも思えなかった。
「ゼロ」
合図と共に上がる、東と西の霊力数値。
上昇し続ける二つの方角と共に、南の数値もブレ始める。
その幅はどんどん広がりを見せ、揺れる振り子みたいだった。
「西村さん、準備をお願いします」
『応』
南の振れ幅の中間地点、ここを狙って北を上げていく。
幅の差10を狙って、私は号令を出す。
「3……、2……、1……、ゼロ」
『オラッ』
西村さんが北の出力を増加させ、数値が50までに跳ね上がる。
その頃、東と西は45。
出力は最大値まで上げているけれど、南のブレが阻害して安全装置が働いている証拠だ。
『さぁく氏、上がんないよぉ!』
「そのまま上げ続けて下さい、北が上がれば一緒に行くはずです」
ここまでは想定内。
西村さんも理想的なタイミングを的中させて、南の振れ幅も許容内に収めてくれた。
北の数値が上がるにつれて東と西もゆっくり上がっていく。
ゆっくりと、しかし確実に。
3つの門の数値がすべて50を超えたその時、
『さ、さく!』
慌てる占田さんの声と同時に、南に異常があるとアラートが鳴りだした。
すぐさま私は別のモニターを視線の前に移動させ、配線を切り替える。
同時並行して左手でレバーを掴み、門全体の出力も微調整。
アラートは止まったけれど、南の振れ幅は広がるばかり。
出力を出し続ける3門は50は越えてもその先へ行かない。
思わずモニターを睨みつけるように見てしまい、また配線を切り替える。
「いきます」
切って紡いで、その度に人と土地を隈なく見渡す。
霊力の振れ幅に左右され、時折アラートは鳴ってしまう。
流れを微調整しながら、門の様子も鑑みる。
頭の中でパズルを描いて、バラシて。それを組み立てていくような難解さがあった。
配線の切り替えが忙しなく、複数のモニターから得る情報に精いっぱい。
文字通り、手と目が足りないといった状況だ。
けれど、本当に。1単位の僅かな数値ではあるけれど。
南の振れ幅が徐々に安定を見せている。
『うお、数値が上がってきた』
喜び交じりで驚く、信野さんの声。
51から動きを見せていなかった東の数値が、ぐんと目標である60にまで到達する。
同時に、北の数値も後を追って東と同じ数値に並び、西はまだもう一越え。
南が影響して動きずらくなっているから、
「南、10下げて」
『りょ、了解!』
占田さんが霊力を調整し、反比例して西の数値が上がっていく。
その様子をモニターで見ながら、私は配線を2本切り替え。
結果、西も60にまで到達した。
「占田さん、一気に上げて」
私はもう一度レバーの上に手を置き、南の数値が上がると一緒に後ろに引いた。
あれほど振れ幅がすごかった南の数値が、すっと綺麗な直線が描けたように。
全くブレを見せず、ほかの3門と同じ基準値に合わさった。
『……いった』
四門が揃った霊力循環に、西村さんが感嘆に息を飲む。
私は手にはめていた軍手を外し、いつでも装填できるように準備をしていた要石に手を伸ばす。
黒く艶やかな石の滑らかな硬さは、自分の左手を伝い確かな感触を実感させる。
「号令、5……、4……、3……、2……、1……」
大結界の要石を、配線が集中する中央にかざす。
起動させるまでのラスト5秒の後、私は石に命じた。
「急急如律令」
装填と共に、大地の息吹が吹き返される。
金色の霊力が満ち溢れ、狭い空間がひと時の幻想に色づいていく。
その光景に惚ける余裕は全くないので、現実的にモニターで四門の数値を確認する。
数値が若干ブレることがほとんどだから、門に合わせて数値を下げるように指示を出して……
……あれ?
『……一発、マジか』
驚嘆に漏れた信野さんの声が、はっきりと無線を通じて私に届く。
ほかの3人も言葉はなかったけれど、息を飲む気配がなんとなく分かる。
要石を装填しても、動きを見せない四門の数値。
初めて起こした不動の完成に、私は驚きや嬉しさよりもどっと疲労を滲ませた。
「はぁああ……、なんとかなったぁ……」
◉
怒涛の結界整備が終わり、しばらくして。
安心しすぎてお腹が空いた私は、屋台で販売されていた蕎麦を持って鬼門を上っていた。
門と言っても、鬼門の形状は塔にしか見えない。
東西南北に設置された四門は楼門造りであるけれど、鬼門に至っては三重もしくは五重の塔。
現場によって木製、鉄製の違いはあっても、鬼門が塔であることは一貫している。
そんな関東域の土地見衆が直轄で管理する大結界、この中にある鬼門は「塔婆」のような形をしていて、ほかの木造の鬼門と比べると随分変わっていた。
建物の造りは大きく分けて、1階と2階。そして、大きな三角の屋根の頂上には周囲の霊力を計測する霊波計がシンボルとしてよく目立つ。
1階は八万大菩薩を崇める木像が並び、地下に続く階段を降りるとさっきまで私がいた制御室に続いている。
そして、2階は外の様子を一望できる展望場となっていて、ぐるっと一周輪を描くように辺りを見わたせる造りだ。
配線異常を探していた時は強風に苛まれ酷い思いをしたけれど、今はだいぶ風も落ち着いた。
「うん、大丈夫そうだね」
腕に巻いていた頭巾を解くと、黒の布地がちょうど自分ひとりぐらいのスペースまで伸びていく。
物質の原理を越えて広がっていく漆黒。
未だに私は理解が出来ないけれど、もうとやかく追究する気も失せていた。
「いただきます」
半透明の蓋を開くと、温まった湯気が一斉に立ち昇る。
箸を取って蕎麦をすすると、優しいしょうゆ味が染みわたりほっと気が休まっていく。
柵から落ちないように大きく開かれた隙間から外を見れば、年始に向けて人は列を作り賑わいを見せていた。
ほんとよかった、この人の波が来る前に無事に整備が終わって。
「けっ。こんな寒い中よくもまあ続々と」
賑わう街並みを、大先生はあったかいカイロの上に乗りながら上機嫌に見渡している。
理由は至って簡単で、屋台で売っていた金平糖を私が(渋々ながら)買い与え、脚で転がしながら味わっているからだ。
「大先生、美味しい?」
「ふん、本当はあのリンゴ飴が良かった。これで譲歩する俺様を敬うんだなっ」
ハエトリ蜘蛛の貴方が、あんな大きなリンゴ飴買ったって食べきれないでしょう?
そんなことを言ってしまえば機嫌を損ねてしまえかねない。
私はぐっと言葉を抑え、ふと目の前の景色を眺めた。
重く響く除夜の鐘が数を刻み、次々と人が川を作り本堂へと進んでいく。
新年の活気に色づく街の衆。
華々しい山車や飾りも用意され、あとは新年を待つばかり。
それがどこか温かく見えてしまい、私はもう一口蕎麦をすすった。
細いけれどコシのある麺が噛み応えあって、しかもえび天が乗っている。
出汁がしみ込んだ衣が程よいやわらかさと風味をもたらす。
「ああ、美味しい」
大先生は金平糖に夢中になり、私は蕎麦で温まる。
囃子と時折聞こえる除夜の鐘に耳を傾けながら、静かに年を越していく。
そうなるだろうと、思っていたけれど。
「……うん?」
ジャケットの胸ポケットから伝わる振動音。
中にあった携帯端末を取り出し、表示された画面を確認した。
……いや、してしまったと言った方が正しいかもしれない。この場合に限っては。
電話に表示された名前は、若葉。
せっかく蕎麦を食べて忘れていたのに。
頭から抜けていた時に現れたヤツに、私はひどく苛立っていた。
『お疲れぇ、桜下くぅん! 今、暇だろ? 暇だよなっ。整備終わったって西村さんから聞いたから言い逃れは出来ないぞぉお?』
「何の用?」
酷くぶっきら棒に、あえてトゲを残して電話に出る。
若葉はいつにも増して馬鹿な調子で、だいぶコイツも疲れているんだなと反面教師にして見習おう。
『何の用って……何の用もねえけど、オレ出張、今広島。遠くにきてメランコリック、ちょっとかまって』
「やだ。じゃあね」
通話終了を押して、若、即、断。
人差し指が画面に触れる直前で、スピーカーから大声が響く。
『うそ、うそ! ちょっとだけ用があった。お願い、桜下大明神! ご慈悲を~!』
「はぁ。本当に何?」
真面目な話、こいつは会社の社長。
曲がりなりにも引継ぎ事項があるんじゃないかと、ぎりぎりのところで踏みとどまる。
携帯端末を床に置き、スピーカーからハンズフリーへ。
両手の自由がきき、蕎麦が食べやすくなったところで若葉の話を一応聞いてみた。
『今そこでさ、正月限定の千鳥サブレーが売ってるはずなんだ。金色のカンのやつ、それ買ってきてくんない?』
「ほんとバカじゃないの?」
千鳥サブレ―というのは、この辺りで有名な銘菓のことだけど。
いやそうではなくて、なんで大晦日に混み合う人を搔い潜って行かなきゃならないんだ。
若葉の考えと、老舗メーカーの商法に踊らされれてたまるか。
『頼むよぅ、金はオレから出すから』
「それは当り前」
『広島には瀬戸内レモンがいっぱいよ~』
「私はね、柑橘系のすっぱいのはいいんだよ。嫌いじゃないけどどうせ甘いし、お前が有利じゃないか」
すっぱいはすっぱいでも、どうせ貰うならお酢で浸したモノがいい。「やっちゃん」とか「すだこくん」とか。
甘いモノが好きなヤツにとって、こんなの不公平だ。
ずるずると、蕎麦を啜りながら私はなんだか負けた気分になってしまう。
『あー分かってる、お酢ね。スっ! 良さそうなお土産あったら買ってくるよ』
「うん」
『ところで、お前なんか食ってる?』
「お蕎麦」
『あーいいな。オレもさっき大結界の整備終わったばかりで、まだ何も食ってねぇんだ』
広島にも海に面した大規模な結界があり、若葉は今回そこの土地見衆から依頼を受けて単独で鬼門の整備を任されていた。
社長に就任して出張や会議が多くなってしまったけれど、「若葉でないと出来ない」と判断されれば整備師として各地に赴く。
自分たち以上に多忙な日常をこなし、それでも天才というスタンスは崩すことはない。
『そういえば、お前一発でやったんだな。おめでとう』
「どうも」
『なんだ、嬉しくないのかよ』
「お前に言われてもね、くやしいだけだよ」
あれをお前は8年前には経験してやってのけているんだ。
今日だって必死で焦ったところもあるし、若葉だったらもっと勝手が違ったかもしれない。
天才との差は、どうしてもかけ離れてしまう。
『さく』
すると、スピーカーから私を呼ぶ声が聞こえる。
さっきまでの調子声はどこに言ったんだろう、若葉は諭すようにゆっくりと語りかけていく。
『ビビったのが、今日お前がやったやり方。あの時、オレがやった調整とまんま一緒だったんだよ』
「……え?」
『しかもオレの一発はめっちゃ悩んだ上で決めたから、時間がもっと押しちまった。鬼門の上で蕎麦すする時間なんて無ぇよ』
最後の方は、投げやりな感じで。若葉は私に言葉を掛けた。
東と西の出力を同時に上げると決めて、信野さんと鳥前さんが驚いた様子でいたのはそういうこと。
合点がいったと思ったのもつかの間、私は箸を進める手が止まってしまう。
『だからさ、オレが珍しくデレてるんだ。ちゃんと受け取れ、アホ』
アホは余計だ。
けれど、結界に妥協を許さない若葉がこう言っているのは相当珍しい。
胸の奥からトクトクと流れてくる鼓動を、私はどう言い表せばいいんだろう。
「若葉、私は……」
戸惑いながら、言葉を探そうとしたその直後。
わっと、本堂の方角から、ひと際大きな歓声が聞こえてきた。
賑やかな祭囃子と、華やかな祭り衣装の舞師たち。
彼らが舞殿に登場し、鮮やかな舞を披露する。
『うぉー、上がった』
一方電話先のスピーカーからは、若葉が声を上げた直後にドンと音が鳴り響く。
爆発するような音は連なり、こちらも遠くから歓声が聞こえてる。
きっとこれは、花火なのだろうか。
すると、
『さく、あけましておめでとう』
若葉は花火の音に負けないぐらいハッキリと、新年の節目を祝った。
「うん。あけましておめでとう」
『それだけ言いたかっただけだから。じゃあな』
なんだ、結局ちゃんとした用があるじゃないか。
新年の挨拶すると、あっさりと電話が切れて携帯端末は待ち受け画面に戻る。
すっかり静まってしまった鬼門の展望台。
上を見上げれば、鬼門の霊波計が0時に合わせて稼働し、それより遥か彼方では数多の星が輝きを見せている。
「……さて」
すぐに視線を落とし、いざ人込みに紛れる決意を身に固める。
理由は、私の気の迷いで。
老舗メーカーの商法に踊らされるのも、元旦ぐらいは悪くないと思ってしまったからだ。
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