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折れた大剣と新しい旅の仲間。
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「使い魔登録を行うには、それなりの規模のギルドがある町に行かなければならない」
「小さな町や村では無理ってこと?」
「昔は王都か領都にあるテイマーギルドまで出向かねばならなかったのだがな」
「さすがに今領都に戻るわけにはいかないわね」
「そこから逃げて来たのだとすれば当たり前だ。だとすると次に近い町といえば」
アシュリーは地図の上の指を動かし、途中の村を越えその道の先にある町を示すマークを指さす。
「このラドルク領の一番端のタスパまで行かねばギルドは無い」
「えっと一サンチメルで徒歩一日ということは……いち、に、さん、し……」
今居る森と、アシュリーの指さすタスパの間をなぞりながらディアナがブツブツと呟く。
そしてその指がアシュリーの指に触ったところでディアナは素っ頓狂な声を上げた。
「ええっ! ここからタスパまで二十日もかかるじゃない!!」
『だが我が本気を出せば一日もかからん。が、お主を背負った状態ではそうもいかんな』
「どうしましょう。お金も無いのに」
『食べ物は我が狩るとして、夜は野宿でもするしか無かろう。ただしお主は料理禁止だぞ』
「私、生の肉とか食べられないわよ」
『我とて生などくそ不味くて喰いたくは無いのだぞ』
「貴女と違って私は生のままの肉なんて食べたら死んでしまうわよ!」
額をぶつけ合って喧々諤々。
そんな二人を呆れたような表情で見ていたアシュリーだったが、さすがに見かねたのか間に入る。
「お前たち、いい加減にしろ。とりあえず私の話を聞け!!」
かなりの剣幕に一瞬ビクッとしたディアナはその場に正座し、一方のフォルディスは『ふんっ』と鼻を鳴らし不満げに伏せた。
それを確認してアシュリーは彼女たちの前にどっかり座り込むと、地面に一振りの大剣を置く。
少し前に彼女がマウンテンボアを切り倒したあの大剣である。
だが、その大剣は――。
「折れてる……よね」
真ん中辺りから二つに折れ曲がって、それは無残な姿になっていた。
あの時フォルディスが咥え、その後地面で踏みつけたせいだろう。
『ふむ。それがどうした』
「ちょっとフォル。あなたアシュリーさんの食器とかだけじゃ無く大剣まで壊しておいてその態度はないんじゃない?」
『そもそもお主が馬鹿な真似をしたせいではないか。それに問答無用で襲いかかってきたその女も悪い』
またもや言い争い始めた二人を「静かにっ!!」とアシュリーは一喝すると二人を見据える。
「別に私は誰が悪いだとか、この剣や食器を弁償しろだなんて言うつもりは無い」
『当たり前だ』
「フォルは黙ってて! あ、アシュリーさん続けて」
尊大に答えたフォルディスの鼻先をペチンと叩くとディアナが話の続きを即す。
不満げながら口をつぐむフォルディスとディアナの力関係に少し不思議な物を感じながらもアシュリーは口を開く。
「見ての通り私の武器である大剣は使い物にならなくなってしまった。手元にある物では先ほど料理に使っていた数種類の包丁位しか無い状況だ」
そして彼女の大剣を直すためには大きな町にある鍛冶屋に行かねばならないという。
簡単な刃物であれば修理できる人は多いが、大剣となるとなかなか難しいらしい。
「さすがの私でも包丁だけで一人旅を続けるのは危険なんだ」
「アシュリーさんみたいに強くても?」
「例えば先ほどのマウンテンボアを相手にするには包丁では無理だ。それに女の一人旅だとおかしな輩も襲ってくるからな」
一人や二人程度なら問題なくあしらえるが、集団となるとさすがに彼女でも手を焼くという。
しかも今は主装備である大剣も使えない。
「そこでお前たちに提案があるのだが。町まで私と旅路を共にするというのはどうだろう」
「小さな町や村では無理ってこと?」
「昔は王都か領都にあるテイマーギルドまで出向かねばならなかったのだがな」
「さすがに今領都に戻るわけにはいかないわね」
「そこから逃げて来たのだとすれば当たり前だ。だとすると次に近い町といえば」
アシュリーは地図の上の指を動かし、途中の村を越えその道の先にある町を示すマークを指さす。
「このラドルク領の一番端のタスパまで行かねばギルドは無い」
「えっと一サンチメルで徒歩一日ということは……いち、に、さん、し……」
今居る森と、アシュリーの指さすタスパの間をなぞりながらディアナがブツブツと呟く。
そしてその指がアシュリーの指に触ったところでディアナは素っ頓狂な声を上げた。
「ええっ! ここからタスパまで二十日もかかるじゃない!!」
『だが我が本気を出せば一日もかからん。が、お主を背負った状態ではそうもいかんな』
「どうしましょう。お金も無いのに」
『食べ物は我が狩るとして、夜は野宿でもするしか無かろう。ただしお主は料理禁止だぞ』
「私、生の肉とか食べられないわよ」
『我とて生などくそ不味くて喰いたくは無いのだぞ』
「貴女と違って私は生のままの肉なんて食べたら死んでしまうわよ!」
額をぶつけ合って喧々諤々。
そんな二人を呆れたような表情で見ていたアシュリーだったが、さすがに見かねたのか間に入る。
「お前たち、いい加減にしろ。とりあえず私の話を聞け!!」
かなりの剣幕に一瞬ビクッとしたディアナはその場に正座し、一方のフォルディスは『ふんっ』と鼻を鳴らし不満げに伏せた。
それを確認してアシュリーは彼女たちの前にどっかり座り込むと、地面に一振りの大剣を置く。
少し前に彼女がマウンテンボアを切り倒したあの大剣である。
だが、その大剣は――。
「折れてる……よね」
真ん中辺りから二つに折れ曲がって、それは無残な姿になっていた。
あの時フォルディスが咥え、その後地面で踏みつけたせいだろう。
『ふむ。それがどうした』
「ちょっとフォル。あなたアシュリーさんの食器とかだけじゃ無く大剣まで壊しておいてその態度はないんじゃない?」
『そもそもお主が馬鹿な真似をしたせいではないか。それに問答無用で襲いかかってきたその女も悪い』
またもや言い争い始めた二人を「静かにっ!!」とアシュリーは一喝すると二人を見据える。
「別に私は誰が悪いだとか、この剣や食器を弁償しろだなんて言うつもりは無い」
『当たり前だ』
「フォルは黙ってて! あ、アシュリーさん続けて」
尊大に答えたフォルディスの鼻先をペチンと叩くとディアナが話の続きを即す。
不満げながら口をつぐむフォルディスとディアナの力関係に少し不思議な物を感じながらもアシュリーは口を開く。
「見ての通り私の武器である大剣は使い物にならなくなってしまった。手元にある物では先ほど料理に使っていた数種類の包丁位しか無い状況だ」
そして彼女の大剣を直すためには大きな町にある鍛冶屋に行かねばならないという。
簡単な刃物であれば修理できる人は多いが、大剣となるとなかなか難しいらしい。
「さすがの私でも包丁だけで一人旅を続けるのは危険なんだ」
「アシュリーさんみたいに強くても?」
「例えば先ほどのマウンテンボアを相手にするには包丁では無理だ。それに女の一人旅だとおかしな輩も襲ってくるからな」
一人や二人程度なら問題なくあしらえるが、集団となるとさすがに彼女でも手を焼くという。
しかも今は主装備である大剣も使えない。
「そこでお前たちに提案があるのだが。町まで私と旅路を共にするというのはどうだろう」
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魔王のアイランド ~わざと追放された僕は秘密のスキル【クラフト】で領地開拓しながら楽しくスローライフを目指します~
よくある追放物と違い、貴族家の跡取りに成りたくなくて【自ら望んでわざと追放されるように仕向けた】主人公が、のんびりとしたスローライフをするために数少ない家臣と無人島(?)を自らのスキル【クラフト】を使って開発していく、まったりとしたお話です。
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水しか出ない神具【コップ】を授かった僕は、不毛の領地で好きに生きる事にしました
改稿・新規エピソードの追加、そしてもきゅ先生の素晴らしいイラスト等でWeb版よりかなり読みやすく面白くなっておりますので、書店等でお手に取ってくださいますと幸いです。
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