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第一話
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「あなたのような下賤の者を大聖女にするわけには行かないわ」
大聖堂に繋がる扉から荷物と共に外に放り出されるように押し出されたリディアに冷たい声が追い打ちを掛ける。
孤児院に生まれ、七年前の十歳の時に先代の大聖女に見いだされた彼女
そんな彼女に枢機卿とともに並んだ幾人もの聖女候補の中の一人、エヴィアンがそう告げた。
「……でも」
「あなた勘違いしてるんじゃ無いの?」
「勘違い?」
「そうよ。先代の大聖女様に目を掛けて貰って、自分は特別だと思っているのでしょう?」
「そんなことは……」
「残念ね。貴女の力は私たちの内の誰よりも弱いの。それに身分だって、ねぇ」
エヴィアンの言葉に続くようにクスクスと小さな笑い声が広がる。
確かに今この場にいる聖女候補は皆、それなりに身分の高い家の令嬢ばかりだ。
そんな中、一人孤児院育ちのリディアはいつも肩身の狭い思いをしてきた。
だけど、それでもずっと彼女を大事にしてくれていたのは先代の大聖女イリアーナだった。
「とにかく貴女にはもう居場所はないのよ。わかったらとっとと孤児院にでも戻りなさい!」
ギギギギと大きな音をたてリディアの目の前で大聖堂の扉が閉まる。
その扉の向こうで、これから行われるはずの次期大聖女を決める試験。
それに参加することすらかの上には許されていない。
「イリアーナ様……私、貴女のあとを継げませんでした……ごめんなさい」
理不尽な目に遭いながらも彼女が口にしたのは恨み言でも愚痴でもなく。
ただ自分を見出してくれたイリアーナへの謝罪の言葉だけであった。
自然とその瞳に涙が浮かび、そして落ちた。
「働く場所と、住む所……探さなきゃ……」
だが何時までも嘆いてばかりは居られない。
少しのお金は渡されたものの、そんなものはすぐに尽きてしまうだろう。
幸い孤児院時代に色々な仕事へ付けるように職業訓練はしていた。
どこか住み込みで働ける場所を探そう。
リディアは涙を拭いそう決意すると大聖堂をあとにした。
その日、イジェス王国に新たな大聖女エヴィアンが誕生したという知らせが世界中に伝わった。
同時に彼女以外の聖女候補たちは国の重要な地へ恵みをもたらすため派遣されること。
そしてその蔭でひっそりと、リディアという聖女候補が聖女の力があると嘘をついた罪で放逐されたということが発表されたのであった。
大聖堂に繋がる扉から荷物と共に外に放り出されるように押し出されたリディアに冷たい声が追い打ちを掛ける。
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「……でも」
「あなた勘違いしてるんじゃ無いの?」
「勘違い?」
「そうよ。先代の大聖女様に目を掛けて貰って、自分は特別だと思っているのでしょう?」
「そんなことは……」
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確かに今この場にいる聖女候補は皆、それなりに身分の高い家の令嬢ばかりだ。
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「とにかく貴女にはもう居場所はないのよ。わかったらとっとと孤児院にでも戻りなさい!」
ギギギギと大きな音をたてリディアの目の前で大聖堂の扉が閉まる。
その扉の向こうで、これから行われるはずの次期大聖女を決める試験。
それに参加することすらかの上には許されていない。
「イリアーナ様……私、貴女のあとを継げませんでした……ごめんなさい」
理不尽な目に遭いながらも彼女が口にしたのは恨み言でも愚痴でもなく。
ただ自分を見出してくれたイリアーナへの謝罪の言葉だけであった。
自然とその瞳に涙が浮かび、そして落ちた。
「働く場所と、住む所……探さなきゃ……」
だが何時までも嘆いてばかりは居られない。
少しのお金は渡されたものの、そんなものはすぐに尽きてしまうだろう。
幸い孤児院時代に色々な仕事へ付けるように職業訓練はしていた。
どこか住み込みで働ける場所を探そう。
リディアは涙を拭いそう決意すると大聖堂をあとにした。
その日、イジェス王国に新たな大聖女エヴィアンが誕生したという知らせが世界中に伝わった。
同時に彼女以外の聖女候補たちは国の重要な地へ恵みをもたらすため派遣されること。
そしてその蔭でひっそりと、リディアという聖女候補が聖女の力があると嘘をついた罪で放逐されたということが発表されたのであった。
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