34 / 35
第34話 やっぱ邪神なんじゃね?
しおりを挟む
「森へお帰り。あの街はお前の住む場所じゃ無いの」
『グギャウ』
魔瘴の森の奥へノッシノッシと歩いて行くドラゴンを見送り、俺は一仕事を終えたスッキリした気分で街への帰路につく。
契約を解除された途端にドラゴンブレスを吐こうとしたので一撃入れてしまったが、おかげで大人しく森へ帰って行ってくれた。
これでもう人里には下りこないだろう。
たぶん。
「しかしマキエダは御者もできるんだな」
「私の名前はマキエダではなく――」
「でもさすが執政官の執事ともなると街の出入りに無駄な検閲が無くて快適だわ」
なんせドラゴンを運んでいたのだ。
馬車の中を調べられたら大騒ぎになっていただろう。
「はぁ……もうマキエダでかまいませんが。貴方様は本当に何者なのですか?」
「ただの旅人だよ」
「魔結界とドラゴンを素手で打ち破る旅人は『ただの旅人』とは言いませんが」
「そんなこと言われてもな。山奥のド田舎から世界を旅しようと出て来た世間知らずのただの田舎者だって言ってるのに、誰も信じてくれないんだもんな」
言いたいことはわかるが女神様に無敵な体を貰ったなんて言っても信じて貰えないだろうし、もし信じたとしたらそれはそれで面倒なことになりそうだ。
「女神教とか出来たりしてな」
なので俺はこれからも適当にはぐらかして生きていくつもりである。
が、ふと思ったのだがこの世界で宗教はどんな形になっているのだろう。
もしアレが本当にこの世界の女神だったら、すでに女神教は存在しているのではないだろうか。
俺は気になって街に着くまでの間、マキエダにこの世界の宗教について聞いて見た。
どうやらこの世界には五つの大陸があるらしい。
そしてその大陸ごとに崇める神が違い、今いるこの大陸ではエルラードという魔力を司る神を崇めているとか。
「エルラード様は魔瘴の森の奥深くで眠られておられると伝わっております」
「へぇ。つまり魔瘴の森が魔力にあふれかえってるのはその神様が眠っているせいって言い伝えられてんだ」
「そういうことですね。そしていつか目覚められた時には……」
「どうなるのさ」
「世界が滅ぶと言われております」
「邪神じゃん!!」
俺は思わず大きな声でツッコミを入れてしまった。
今は眠っていて目覚めると世界が滅ぶってあれでしょ。
封印されし邪神の設定でしょ?
しかもその邪神、多分もう目覚めてるし余計なことしちゃってるけど?
「魔瘴の森の近くでそのようなことを口になされてはいけません」
かなり焦った様子のマキエダを見る限り本当に彼らは邪神のことを実在するものと考えているらしいことがわかった。
「で、その邪し……エルラード様ってのは女神なんだよね?」
「見目麗しき女神様と伝えられておりますが、それが何か?」
見目麗しき……。
実際に見た訳じゃ無いから否定は出来ないけど肯定もしたくない。
「いや、気になっただけさ」
とりあえずこれで俺が何故この世界に転生させられたときにあんな森の中だったのかはわかった。
あの女神は自分の本拠地に俺を放り込んだだけだったのだ。
「ありがとう、勉強になった」
俺はそう言って荷台に寝転ぶ。
荷台にはドラゴンを抑えていた魔結界を作る魔道具が転がっていたが邪魔なので脇に追いやる。
これ一つで家が二軒は建つ代物らしいがどうでもいい。
「それならさ」
俺は寝転びながらマキエダに尋ねる。
「なんですか?」
「街にもその女神様を奉ってる教会みたいなのがあるんだろ?」
「ありますが」
「それじゃあ帰りはその教会の前で降ろしてくれ」
そういった場所であればあの女神と連絡が取れるかも知れない。
獲れたところで何をする訳でもないが、何か用事が出来たときに連絡手段があると便利だろうという程度の話だ。
「わかりました」
「着いたら起してくれ。おやすみ」
俺はそう言って目を閉じる。
目が覚めたら檻の中とか森に捨てられてる可能性も考えたが契約紋で縛られているマキエダにそんなことは出来ない。
まぁ、別にそうされたところで無敵なので問題ないだろうけど。
「ふわぁぁ。ここのところ忙しかったからなぁ」
別に眠らなくても無敵の体に支障は出ないが、こういうときは眠りたくなるのがサガというもの。
がたごとがたごと揺れる馬車の荷台で俺は、その音を子守歌代わりに夢の中へ沈んでいったのだった。
***いつものようなあとがき***
女神は邪神だった!?
いや、しらんけど。
というわけでなんとか週末更新!
活動報告にも書いたのですが、アルファポリスの次世代ファンタジーカップの受賞とか、書籍として発売している『水しか出ない神具【コップ】』の文庫版の発売発表などもあってバタバタしております。
更新が止まっていた理由である仕事はまた別のものなのですが、そちらはまだ終わってないのでしばらくは不定期更新になると思います。
とりあえず無敵については一章があと何話かで完結しますのでそこまでは更新したいなと考えてます。
その後はしばらく他作品の更新と仕事の方に集中することになるはず。
たぶん。
きっと。
それでは次回またお会いしましょう。
『グギャウ』
魔瘴の森の奥へノッシノッシと歩いて行くドラゴンを見送り、俺は一仕事を終えたスッキリした気分で街への帰路につく。
契約を解除された途端にドラゴンブレスを吐こうとしたので一撃入れてしまったが、おかげで大人しく森へ帰って行ってくれた。
これでもう人里には下りこないだろう。
たぶん。
「しかしマキエダは御者もできるんだな」
「私の名前はマキエダではなく――」
「でもさすが執政官の執事ともなると街の出入りに無駄な検閲が無くて快適だわ」
なんせドラゴンを運んでいたのだ。
馬車の中を調べられたら大騒ぎになっていただろう。
「はぁ……もうマキエダでかまいませんが。貴方様は本当に何者なのですか?」
「ただの旅人だよ」
「魔結界とドラゴンを素手で打ち破る旅人は『ただの旅人』とは言いませんが」
「そんなこと言われてもな。山奥のド田舎から世界を旅しようと出て来た世間知らずのただの田舎者だって言ってるのに、誰も信じてくれないんだもんな」
言いたいことはわかるが女神様に無敵な体を貰ったなんて言っても信じて貰えないだろうし、もし信じたとしたらそれはそれで面倒なことになりそうだ。
「女神教とか出来たりしてな」
なので俺はこれからも適当にはぐらかして生きていくつもりである。
が、ふと思ったのだがこの世界で宗教はどんな形になっているのだろう。
もしアレが本当にこの世界の女神だったら、すでに女神教は存在しているのではないだろうか。
俺は気になって街に着くまでの間、マキエダにこの世界の宗教について聞いて見た。
どうやらこの世界には五つの大陸があるらしい。
そしてその大陸ごとに崇める神が違い、今いるこの大陸ではエルラードという魔力を司る神を崇めているとか。
「エルラード様は魔瘴の森の奥深くで眠られておられると伝わっております」
「へぇ。つまり魔瘴の森が魔力にあふれかえってるのはその神様が眠っているせいって言い伝えられてんだ」
「そういうことですね。そしていつか目覚められた時には……」
「どうなるのさ」
「世界が滅ぶと言われております」
「邪神じゃん!!」
俺は思わず大きな声でツッコミを入れてしまった。
今は眠っていて目覚めると世界が滅ぶってあれでしょ。
封印されし邪神の設定でしょ?
しかもその邪神、多分もう目覚めてるし余計なことしちゃってるけど?
「魔瘴の森の近くでそのようなことを口になされてはいけません」
かなり焦った様子のマキエダを見る限り本当に彼らは邪神のことを実在するものと考えているらしいことがわかった。
「で、その邪し……エルラード様ってのは女神なんだよね?」
「見目麗しき女神様と伝えられておりますが、それが何か?」
見目麗しき……。
実際に見た訳じゃ無いから否定は出来ないけど肯定もしたくない。
「いや、気になっただけさ」
とりあえずこれで俺が何故この世界に転生させられたときにあんな森の中だったのかはわかった。
あの女神は自分の本拠地に俺を放り込んだだけだったのだ。
「ありがとう、勉強になった」
俺はそう言って荷台に寝転ぶ。
荷台にはドラゴンを抑えていた魔結界を作る魔道具が転がっていたが邪魔なので脇に追いやる。
これ一つで家が二軒は建つ代物らしいがどうでもいい。
「それならさ」
俺は寝転びながらマキエダに尋ねる。
「なんですか?」
「街にもその女神様を奉ってる教会みたいなのがあるんだろ?」
「ありますが」
「それじゃあ帰りはその教会の前で降ろしてくれ」
そういった場所であればあの女神と連絡が取れるかも知れない。
獲れたところで何をする訳でもないが、何か用事が出来たときに連絡手段があると便利だろうという程度の話だ。
「わかりました」
「着いたら起してくれ。おやすみ」
俺はそう言って目を閉じる。
目が覚めたら檻の中とか森に捨てられてる可能性も考えたが契約紋で縛られているマキエダにそんなことは出来ない。
まぁ、別にそうされたところで無敵なので問題ないだろうけど。
「ふわぁぁ。ここのところ忙しかったからなぁ」
別に眠らなくても無敵の体に支障は出ないが、こういうときは眠りたくなるのがサガというもの。
がたごとがたごと揺れる馬車の荷台で俺は、その音を子守歌代わりに夢の中へ沈んでいったのだった。
***いつものようなあとがき***
女神は邪神だった!?
いや、しらんけど。
というわけでなんとか週末更新!
活動報告にも書いたのですが、アルファポリスの次世代ファンタジーカップの受賞とか、書籍として発売している『水しか出ない神具【コップ】』の文庫版の発売発表などもあってバタバタしております。
更新が止まっていた理由である仕事はまた別のものなのですが、そちらはまだ終わってないのでしばらくは不定期更新になると思います。
とりあえず無敵については一章があと何話かで完結しますのでそこまでは更新したいなと考えてます。
その後はしばらく他作品の更新と仕事の方に集中することになるはず。
たぶん。
きっと。
それでは次回またお会いしましょう。
1
お気に入りに追加
2,505
あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた
こばやん2号
ファンタジー
とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。
気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。
しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。
そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。
※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる