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第32話 尻に刻まれし契約紋
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「これで契約成立てことでいいんだな?」
「……」
「い・い・ん・だ・な?」
「はい。これでアンリヴァルト様と私との契約は成立でございます」
ばちーん!
俺は手にした『わからせ棒2号くん』でルブレド子爵の尻を叩いた。
思ったよりいい音がしたことに満足しながら。
「男の尻なんて見たくないからさっさと仕舞ってくれ」
そう言って、手のひらをパタパタとさせる。
「わかりました。すぐに仕舞います」
子爵の尻の片側。
俺がひっぱたいた反対側には所謂魔方陣というモノが描かれていた。
「しかし本当にこんなに簡単に契約できちゃうんだな。怖い怖い」
その魔方陣の正式名称は『契約紋』という。
契約紋はその名からわかる通り契約を交す時に使われるもので、大抵は平等な取引がきちんと行われる保証として使われるものらしい。
契約者同士がお互いに契約内容を魔力の籠もったインクで羊皮紙に書いて、その内容をお互い履行するまで契約の絆が結ばれる。
もし契約を履行しなかった場合は、契約時に取り決められたペナルティを負うことになるという、わかりやすいものである。
「古代魔法文明ってこんな技術が普通に使われてたってんだからねぇ」
契約紋。
その存在自体は今も文献に残されている。
だが実際には遙か昔に存在したという『古代魔法文明』の崩壊と共に失われた技術だったのだそうだ。
そして子爵はこの契約紋によってドラゴンを契約で縛り付け、自らの使役獣として支配下に置いていた。
その技術を偶然にこの街の冒険者が静香の森の奥地にある遺跡で見つけてきた。
しかしそれは一見するとそれほど重要には思えない、誰かが書いた日記の様な文面の中に隠されていたのだという。
「私は古代魔法文明のことを若かりし頃から研究していてね。だからそれがただの日記では無いことに気が着いたのだよ」
自慢げに話す子爵はまだ尻丸出しだ。
もったいぶる様にズボンを引き上げながら子爵は続ける。
「私はこの失われし秘術を手に入れたことで我を失っていたのかも知れない」
子爵はズボンのベルトを締め直しながらそんなことを呟く。
言ってることは格好いいのに残念な姿である。
「さて次はお坊ちゃんだな。マキエダ、さっさと契約紋を刻んじゃって」
「は、はいっ」
驚いたことに子爵の手伝いで実際にドラゴンに契約紋を刻んだのは執事のマキエダだった。
彼の本名は未だに聞いていないが、もうマキエダでいいだろう。
多分彼も好きで子爵にしたがっている訳では無いのかもしれないが、それはそれこれはこれである。
「いやだーっ、助けてーっ! 僕はパパの言いつけを守っただけなんだよー!」
鼻水を垂れ流し大声で泣きわめきながらジグスが縛り付けられた机の上で暴れる。
さすが貴族家の立派な机だ。
これだけ暴れているのにビクともしない。
「別に契約紋を刻まれたくないならそれでいいけどさ」
俺は尻を丸出しにして暴れるジグスの前に回り込むと、その耳元に囁く。
「その時はドラゴンの餌になっちゃうよ?」
「ヒイッ」
暴れていた手足がピタリと止まる。
大きく目を見開いて俺を見るその顔は顔面蒼白で。
この姿を見たらきっとウラニアたちもスッキリしてくれるに違いない。
記録しておくことが出来ないのが残念で成らない。
「マキエダ」
「はいっ、すぐに」
既にマキエダと俺の間には契約が結ばれている。
その時に契約紋を描いたのはルブレド子爵である。
オッサンがオッサンの尻に筆で魔方陣を画く光景は思い出したくは無いが……。
「それじゃあ契約書はこれね」
俺は俺のものとジグスのもの、二枚の契約書をジグスの背中に置く。
そこに書かれている内容が契約紋によって結ばれる契約だ。
「うぐぐっ」
顔を机に伏せ呻くジグスの尻に容赦なくマキエダの筆が走った。
そしてその筆が最後の線を繋いだ瞬間。
「うっ」
描かれた契約紋がぼんやりと光を放ったかと思うと、ジグスの背中に置いた契約書が灰のように崩れ去って消えていった。
「これで契約成立です」
「お疲れさん。それじゃあ一発かましますか」
俺はマキエダを下がらせると『わからせ棒2号君」をジグスの尻めがけて振り下ろす。
「これはウラニアたちの分!」
びたー-ん!
「ぎゃああああああっ」
父親の時より幾分緩んだような音と悲鳴が部屋に響く。
「これは子供たちの分!
びたー-ん!
「そしてこれはク……スラム街の人たちの分だーっ!」
ばちーーーん!
最後の一撃は少しだけ力を込めたせいかいい音が鳴った。
よほど痛かったのだろう、ジグスの口からは悲鳴は出ず、代わりに空気を求めるかの様にパクパクと動いているだけで。
「本当ならお前らに迷惑をかけられた全員に叩かせたかったけど、それじゃあこのあとの統治に支障が出るだろうからな」
俺は契約書の写しを手にしながら呟くとマキエダに「ジグスの拘束を解いてやってくれ」と告げてルブレド子爵の執務机に向かう。
そしていかにも高級そうな椅子に腰掛けると机の上に契約書を並べて部屋の中に視線を向ける。
ルブレド子爵。
ジグス。
マキエダ。
三つの契約書が三人を文字通り縛り付けている。
だからこの部屋から逃げ出すことは出来ない。
俺はジグスが痛む尻を無理矢理ズボンに仕舞い込むのを待って三人に向かって口を開いた。
「それじゃあ契約通りちゃんとしたスラム救済計画を始めて貰おうかな」
****ちょいあとがき****
今日も時間が無いので手短に。
お尻ペンペンよ!
でもオッサンの尻とか誰得なんだよ?
「俺得」って人いる?
いないよね?
うん。よかった。ねっちりじっとり書かなくて。
とりあえずコレで子爵と息子と、ついでにマキエダ(本名不詳)はアンリくんの操り人形になりました。
やったねアンリくん! 手駒が増えるよ!
というわけで次回はなんとか明日更新したいけどお仕事の方もヤバくてピンチなのでもしかするとアレがこうなっちゃうかもしれません。
「頼む・・・間に合ってくれっ」と願いながら待っていて下さいませ。
それではアディオス!
「……」
「い・い・ん・だ・な?」
「はい。これでアンリヴァルト様と私との契約は成立でございます」
ばちーん!
俺は手にした『わからせ棒2号くん』でルブレド子爵の尻を叩いた。
思ったよりいい音がしたことに満足しながら。
「男の尻なんて見たくないからさっさと仕舞ってくれ」
そう言って、手のひらをパタパタとさせる。
「わかりました。すぐに仕舞います」
子爵の尻の片側。
俺がひっぱたいた反対側には所謂魔方陣というモノが描かれていた。
「しかし本当にこんなに簡単に契約できちゃうんだな。怖い怖い」
その魔方陣の正式名称は『契約紋』という。
契約紋はその名からわかる通り契約を交す時に使われるもので、大抵は平等な取引がきちんと行われる保証として使われるものらしい。
契約者同士がお互いに契約内容を魔力の籠もったインクで羊皮紙に書いて、その内容をお互い履行するまで契約の絆が結ばれる。
もし契約を履行しなかった場合は、契約時に取り決められたペナルティを負うことになるという、わかりやすいものである。
「古代魔法文明ってこんな技術が普通に使われてたってんだからねぇ」
契約紋。
その存在自体は今も文献に残されている。
だが実際には遙か昔に存在したという『古代魔法文明』の崩壊と共に失われた技術だったのだそうだ。
そして子爵はこの契約紋によってドラゴンを契約で縛り付け、自らの使役獣として支配下に置いていた。
その技術を偶然にこの街の冒険者が静香の森の奥地にある遺跡で見つけてきた。
しかしそれは一見するとそれほど重要には思えない、誰かが書いた日記の様な文面の中に隠されていたのだという。
「私は古代魔法文明のことを若かりし頃から研究していてね。だからそれがただの日記では無いことに気が着いたのだよ」
自慢げに話す子爵はまだ尻丸出しだ。
もったいぶる様にズボンを引き上げながら子爵は続ける。
「私はこの失われし秘術を手に入れたことで我を失っていたのかも知れない」
子爵はズボンのベルトを締め直しながらそんなことを呟く。
言ってることは格好いいのに残念な姿である。
「さて次はお坊ちゃんだな。マキエダ、さっさと契約紋を刻んじゃって」
「は、はいっ」
驚いたことに子爵の手伝いで実際にドラゴンに契約紋を刻んだのは執事のマキエダだった。
彼の本名は未だに聞いていないが、もうマキエダでいいだろう。
多分彼も好きで子爵にしたがっている訳では無いのかもしれないが、それはそれこれはこれである。
「いやだーっ、助けてーっ! 僕はパパの言いつけを守っただけなんだよー!」
鼻水を垂れ流し大声で泣きわめきながらジグスが縛り付けられた机の上で暴れる。
さすが貴族家の立派な机だ。
これだけ暴れているのにビクともしない。
「別に契約紋を刻まれたくないならそれでいいけどさ」
俺は尻を丸出しにして暴れるジグスの前に回り込むと、その耳元に囁く。
「その時はドラゴンの餌になっちゃうよ?」
「ヒイッ」
暴れていた手足がピタリと止まる。
大きく目を見開いて俺を見るその顔は顔面蒼白で。
この姿を見たらきっとウラニアたちもスッキリしてくれるに違いない。
記録しておくことが出来ないのが残念で成らない。
「マキエダ」
「はいっ、すぐに」
既にマキエダと俺の間には契約が結ばれている。
その時に契約紋を描いたのはルブレド子爵である。
オッサンがオッサンの尻に筆で魔方陣を画く光景は思い出したくは無いが……。
「それじゃあ契約書はこれね」
俺は俺のものとジグスのもの、二枚の契約書をジグスの背中に置く。
そこに書かれている内容が契約紋によって結ばれる契約だ。
「うぐぐっ」
顔を机に伏せ呻くジグスの尻に容赦なくマキエダの筆が走った。
そしてその筆が最後の線を繋いだ瞬間。
「うっ」
描かれた契約紋がぼんやりと光を放ったかと思うと、ジグスの背中に置いた契約書が灰のように崩れ去って消えていった。
「これで契約成立です」
「お疲れさん。それじゃあ一発かましますか」
俺はマキエダを下がらせると『わからせ棒2号君」をジグスの尻めがけて振り下ろす。
「これはウラニアたちの分!」
びたー-ん!
「ぎゃああああああっ」
父親の時より幾分緩んだような音と悲鳴が部屋に響く。
「これは子供たちの分!
びたー-ん!
「そしてこれはク……スラム街の人たちの分だーっ!」
ばちーーーん!
最後の一撃は少しだけ力を込めたせいかいい音が鳴った。
よほど痛かったのだろう、ジグスの口からは悲鳴は出ず、代わりに空気を求めるかの様にパクパクと動いているだけで。
「本当ならお前らに迷惑をかけられた全員に叩かせたかったけど、それじゃあこのあとの統治に支障が出るだろうからな」
俺は契約書の写しを手にしながら呟くとマキエダに「ジグスの拘束を解いてやってくれ」と告げてルブレド子爵の執務机に向かう。
そしていかにも高級そうな椅子に腰掛けると机の上に契約書を並べて部屋の中に視線を向ける。
ルブレド子爵。
ジグス。
マキエダ。
三つの契約書が三人を文字通り縛り付けている。
だからこの部屋から逃げ出すことは出来ない。
俺はジグスが痛む尻を無理矢理ズボンに仕舞い込むのを待って三人に向かって口を開いた。
「それじゃあ契約通りちゃんとしたスラム救済計画を始めて貰おうかな」
****ちょいあとがき****
今日も時間が無いので手短に。
お尻ペンペンよ!
でもオッサンの尻とか誰得なんだよ?
「俺得」って人いる?
いないよね?
うん。よかった。ねっちりじっとり書かなくて。
とりあえずコレで子爵と息子と、ついでにマキエダ(本名不詳)はアンリくんの操り人形になりました。
やったねアンリくん! 手駒が増えるよ!
というわけで次回はなんとか明日更新したいけどお仕事の方もヤバくてピンチなのでもしかするとアレがこうなっちゃうかもしれません。
「頼む・・・間に合ってくれっ」と願いながら待っていて下さいませ。
それではアディオス!
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