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第28話 自己紹介は大事だよ
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「おいこいつ訳のわからんことを言い出したぞ」
「しかも警棒に名前まで付けてる」
「なんだ『わからせ』って」
「バカなのか」
兵士たちの顔にさっきとは別の困惑が広がっていく。
もしかしてこいつらには自分のものに名前を付けるという文化は存在しないのだろうか。
「どうでも良い。さっさとこいつら全員ぶちのめして牢屋にぶち込んでやれ!!」
一歩離れた場所で腕を組んだまま様子を見ていた男が叫ぶ。
やっぱりアイツがこの場の責任者らしい。
「いつでもどうぞ」
俺はわからせ棒一号くんで肩を軽く叩きながら兵士たちに向かって空いている方の手でクイクイッと挑発ポーズをかます。
一度くらいはやってみたかったこの仕草。
「畜生!」
「ナメやがって!」
ガスガスガスッ。
ゴガッ。
バキッ。
ドドドッ。
計算通り一気に頭に血が上る彼らの顔、腹、尻、足、腕に俺の相棒こと『わからせ棒一号くん』が次々に痛撃を与えていく。
ところで『相棒』の『棒』って、何かかかってる感じでいいよね?
「ぐふっ」
「なんだこいつ。これだけ殴られても平気な顔してやがる」
「殺すつもりで殴ってるのに傷一つ付かないなんておかしいだろ!」
もちろん俺が相手を殴る数倍の数の警棒が俺の体を激しく打ち据えていた。
だがこちらはノーダメである。
これぞ肉を切らせて骨を断つ戦法!
「って、微妙に違うか」
気がつくとで俺の目の前には、さっきまで元気に俺を殴り続けていた男たちがうめき声を上げて屍を晒していた。
一応急所は外したつもりだし手加減もしたから死んでないと思うけど。
「とりあえずこれで静かになったな。さてと」
俺は白目を剥いてもう動けそうに無い兵士たちから視線を外すと。
「これで誰にも邪魔されずにお前たちと話せるってわけだ」
そう言って背後でブルブルと生まれたての子鹿ちゃんのように震えている四人に微笑みかけ。
そして両手を挙げて敵意が無いことを示しつつ歩み寄り。
「確認するけど、サンテアが言ってた兵士に連れて行かれたお兄ちゃんお姉ちゃんってのはお前らのことだよな?」
俺は相棒を腰のベルトに差し込みながら尋ねた。
そうだとするならこいつらは俺の敵というより仲間と行った方が良い立場だからだ。
「そ、そのサンテアって子があたしたちの知ってるサンテアだとしたら間違いないわよ」
「どうしてお前がサンテアを知ってるんだよ!」
少女の方は少し落ち着いてくれたが、少年の方は無駄にうるさい。
後の二人は俺の話を聞ける状態では無いし。
だが現状を考えるとそれも仕方が無いことかもしれない。
しかしそれでもうるさいものはうるさいので俺は少女にだけ答えることにした。
「サンテアとパレア、ランラ、ニア、ロンゴ。これで全員で間違いないな?」
「は、はい」
良かった。
もし彼女たちがいなくなってから俺が子供たちと出会う前に、既に亡くなってしまった子供が居たらと考えていたが大丈夫だったようだ。
「俺は今、あの子たちの世話を君たちに代わってしてるアンリヴァルトってケチな遊び人でね」
「名前は知ってますけど……というか遊び人?」
おっと。
つい格好を付けて余計なことを言ってしまったようだ。
「ケチなのかよ」
「そういう意味じゃない」
でもまぁ遊び人というのもあながち嘘でも無いか。
なんせ俺は絶賛無職の身なのだから。
「子供たちにはアンリ兄ちゃんって呼ばれてる」
「じゃああたしたちもアンリって呼ぶわね」
俺がサンテアたちの世話をしていると聞いて安心したのか、少女の顔に笑顔が浮ぶ。
隣りの少年の顔は逆に少し歪んだが、これはもしかして俺に焼いているのかもしれないな。
パレアとロンゴのことを思い出し、俺はついニヤニヤしてしまった。
「何気持ち悪い顔してんだよ」
「ああん? 誰の顔が気持ち悪いだってぇ小僧っ!」
「お前だよお前っ。ウラニアに色目使ってんじゃねーよ!」
ほう。
この少女の名前はウラニアっていうのか。
もしかして泣き虫のニアのお姉さんだったりしてな。
「ちょっとディード! 助けて貰ったのに失礼じゃ無いっ」
ウラニアに叱られてあからさまにシュンッとするディード。
好きな子に叱られたらそうなるよね。
「とりあえず俺は自己紹介したんだ。お前らも名前くらいは教えてくれても良いんじゃないか?」
いつまでも少年少女では訳がわからなくなる。
一応二人の名前は掛け合いのおかげでわかったが、他の二人の名前はまだわからない。
「そ、そうだね。じゃああたしから」
「ウラニアだろ?」
「うっ……いきなり話の腰を折らないでよ」
恨みがましい目で睨んでくるウラニアに謝りつつ全員の名前を教えて貰った。
まず紅一点の少女はウラニア。
16歳で魔法を使うことが出来る。
俺を火だるまにしようとした件については散々に謝られてしまったが、元来気の良い娘らしい。
そしてニアとは別に姉弟ではなかった。
次にウラニアが好きなのにツンツンしちゃうツンデレくんの本名はディードリアス。
なんとメンバー最年少の14歳で剣士だ。
年上好きか。
多分一生懸命大人ぶろうと強気なふりをしているんだろうけど。
少年よ。
その道は茨の道ぞ。
残る二人はここまで余り話していないので影も薄いが、二人とも15歳の少年だ。
まず自分の体ほどもある大盾を背負っているのがファンといって見た目通りパーティのタンク役。
そうやらドワーフの血が混じっているらしく、そのせいで小柄だが力は普通の人間より強く。
スラム街でもよく力仕事をまかされていたとのこと。
後の一人はエンダルという回復と補助の魔法が使える細身の少年だ。
彼を一言で言い表すと「格好を付けようとして毎回失敗するキザ男」だろうか。
どうやら自分の魔法にはかなり自信があるらしい。
「怪我をしたなら治してあげようか?」などと言ってきたので「間に合ってます」と即断ってやったらしょんぼりしていたのは年相応か。
でも本当に俺には回復魔法は必要ないのだからしかたがない。
俺はあからさまに落ち込んだそぶりを見せるエンダルに『かまってちゃん属性』を感じてしまう。
なのであえて慰めの声をかけることも無く放置する事にする。
「さてと」
とりあえずこれでお互いの自己紹介は終わった。
俺とウラニアたちの目的は一緒。
連れ去られたスラム街の人々を――子供たちを助け出すことだ。
「さっき皆は牢に入れられてるってアイツが言ってたよな」
「うん、そう言ってたわね」
「だとすると軍の牢か」
「でも前に行った時に見たけど、あそこに入れるのは精々10人位よ」
どうやらこの街の牢は思ったより小さいようだ。
冒険者が作った街だというから荒くれ者が暴れてしょっちゅう収監されているのかと思っていたがそうでも無いのか。
「だったらどこに連れてかれたってんだよ! アイツが嘘を言ってたのか?」
焦りすぎて好きな子相手だというのに語気が強くなりすぎて居るぞ少年よ。
それは嫌われるパターンだ。
ここは大人の俺が助けてやろうじゃないか。
「まぁまて。そんなことをウラニアに聞いてもわかるはずが無いし、ここに居る誰も知らない場所だったらどうしようもないだろ」
話に割り込んだ俺の方を見る二人に向かって俺は指を指す。
「だったらさ」
そしてその指をそのままぐるりと回してから一点を――子爵の屋敷を指し示して。
「絶対に知っているヤツに聞けば良いんだよ」
そう言ったのだった。
◆◆すぐに消すかもしれないあとがき◆◆
逃げて!
子爵逃げてー!
このままじゃわからせられちゃう~!!
というわけで次回もレッツわからせ!!!
しかしウラニアとディード以外の二人が空気過ぎる。
ファンは元々無口な力持ち設定なので喋らないんだけど、エンダルはビビリくんなのでアンリ無双を見て怖くてずっと震えていたわけなんで仕方ないですけどね。
それでは次回こんどこそ本当に『お前の様なド○○○がいるか!』を乞うご期待。
(実は前回に出す予定だったキャラのことだったんだけど予定が延びちゃった)
※注意※
ネタが古いの(ry
「しかも警棒に名前まで付けてる」
「なんだ『わからせ』って」
「バカなのか」
兵士たちの顔にさっきとは別の困惑が広がっていく。
もしかしてこいつらには自分のものに名前を付けるという文化は存在しないのだろうか。
「どうでも良い。さっさとこいつら全員ぶちのめして牢屋にぶち込んでやれ!!」
一歩離れた場所で腕を組んだまま様子を見ていた男が叫ぶ。
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ドドドッ。
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ところで『相棒』の『棒』って、何かかかってる感じでいいよね?
「ぐふっ」
「なんだこいつ。これだけ殴られても平気な顔してやがる」
「殺すつもりで殴ってるのに傷一つ付かないなんておかしいだろ!」
もちろん俺が相手を殴る数倍の数の警棒が俺の体を激しく打ち据えていた。
だがこちらはノーダメである。
これぞ肉を切らせて骨を断つ戦法!
「って、微妙に違うか」
気がつくとで俺の目の前には、さっきまで元気に俺を殴り続けていた男たちがうめき声を上げて屍を晒していた。
一応急所は外したつもりだし手加減もしたから死んでないと思うけど。
「とりあえずこれで静かになったな。さてと」
俺は白目を剥いてもう動けそうに無い兵士たちから視線を外すと。
「これで誰にも邪魔されずにお前たちと話せるってわけだ」
そう言って背後でブルブルと生まれたての子鹿ちゃんのように震えている四人に微笑みかけ。
そして両手を挙げて敵意が無いことを示しつつ歩み寄り。
「確認するけど、サンテアが言ってた兵士に連れて行かれたお兄ちゃんお姉ちゃんってのはお前らのことだよな?」
俺は相棒を腰のベルトに差し込みながら尋ねた。
そうだとするならこいつらは俺の敵というより仲間と行った方が良い立場だからだ。
「そ、そのサンテアって子があたしたちの知ってるサンテアだとしたら間違いないわよ」
「どうしてお前がサンテアを知ってるんだよ!」
少女の方は少し落ち着いてくれたが、少年の方は無駄にうるさい。
後の二人は俺の話を聞ける状態では無いし。
だが現状を考えるとそれも仕方が無いことかもしれない。
しかしそれでもうるさいものはうるさいので俺は少女にだけ答えることにした。
「サンテアとパレア、ランラ、ニア、ロンゴ。これで全員で間違いないな?」
「は、はい」
良かった。
もし彼女たちがいなくなってから俺が子供たちと出会う前に、既に亡くなってしまった子供が居たらと考えていたが大丈夫だったようだ。
「俺は今、あの子たちの世話を君たちに代わってしてるアンリヴァルトってケチな遊び人でね」
「名前は知ってますけど……というか遊び人?」
おっと。
つい格好を付けて余計なことを言ってしまったようだ。
「ケチなのかよ」
「そういう意味じゃない」
でもまぁ遊び人というのもあながち嘘でも無いか。
なんせ俺は絶賛無職の身なのだから。
「子供たちにはアンリ兄ちゃんって呼ばれてる」
「じゃああたしたちもアンリって呼ぶわね」
俺がサンテアたちの世話をしていると聞いて安心したのか、少女の顔に笑顔が浮ぶ。
隣りの少年の顔は逆に少し歪んだが、これはもしかして俺に焼いているのかもしれないな。
パレアとロンゴのことを思い出し、俺はついニヤニヤしてしまった。
「何気持ち悪い顔してんだよ」
「ああん? 誰の顔が気持ち悪いだってぇ小僧っ!」
「お前だよお前っ。ウラニアに色目使ってんじゃねーよ!」
ほう。
この少女の名前はウラニアっていうのか。
もしかして泣き虫のニアのお姉さんだったりしてな。
「ちょっとディード! 助けて貰ったのに失礼じゃ無いっ」
ウラニアに叱られてあからさまにシュンッとするディード。
好きな子に叱られたらそうなるよね。
「とりあえず俺は自己紹介したんだ。お前らも名前くらいは教えてくれても良いんじゃないか?」
いつまでも少年少女では訳がわからなくなる。
一応二人の名前は掛け合いのおかげでわかったが、他の二人の名前はまだわからない。
「そ、そうだね。じゃああたしから」
「ウラニアだろ?」
「うっ……いきなり話の腰を折らないでよ」
恨みがましい目で睨んでくるウラニアに謝りつつ全員の名前を教えて貰った。
まず紅一点の少女はウラニア。
16歳で魔法を使うことが出来る。
俺を火だるまにしようとした件については散々に謝られてしまったが、元来気の良い娘らしい。
そしてニアとは別に姉弟ではなかった。
次にウラニアが好きなのにツンツンしちゃうツンデレくんの本名はディードリアス。
なんとメンバー最年少の14歳で剣士だ。
年上好きか。
多分一生懸命大人ぶろうと強気なふりをしているんだろうけど。
少年よ。
その道は茨の道ぞ。
残る二人はここまで余り話していないので影も薄いが、二人とも15歳の少年だ。
まず自分の体ほどもある大盾を背負っているのがファンといって見た目通りパーティのタンク役。
そうやらドワーフの血が混じっているらしく、そのせいで小柄だが力は普通の人間より強く。
スラム街でもよく力仕事をまかされていたとのこと。
後の一人はエンダルという回復と補助の魔法が使える細身の少年だ。
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「怪我をしたなら治してあげようか?」などと言ってきたので「間に合ってます」と即断ってやったらしょんぼりしていたのは年相応か。
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「うん、そう言ってたわね」
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「でも前に行った時に見たけど、あそこに入れるのは精々10人位よ」
どうやらこの街の牢は思ったより小さいようだ。
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「だったらどこに連れてかれたってんだよ! アイツが嘘を言ってたのか?」
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それは嫌われるパターンだ。
ここは大人の俺が助けてやろうじゃないか。
「まぁまて。そんなことをウラニアに聞いてもわかるはずが無いし、ここに居る誰も知らない場所だったらどうしようもないだろ」
話に割り込んだ俺の方を見る二人に向かって俺は指を指す。
「だったらさ」
そしてその指をそのままぐるりと回してから一点を――子爵の屋敷を指し示して。
「絶対に知っているヤツに聞けば良いんだよ」
そう言ったのだった。
◆◆すぐに消すかもしれないあとがき◆◆
逃げて!
子爵逃げてー!
このままじゃわからせられちゃう~!!
というわけで次回もレッツわからせ!!!
しかしウラニアとディード以外の二人が空気過ぎる。
ファンは元々無口な力持ち設定なので喋らないんだけど、エンダルはビビリくんなのでアンリ無双を見て怖くてずっと震えていたわけなんで仕方ないですけどね。
それでは次回こんどこそ本当に『お前の様なド○○○がいるか!』を乞うご期待。
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