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第25話 それはエリクサーでは無い。エリだ。
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「どうして裸なんですかっ!」
「いや……これには深い訳があって」
「約束の時間はとっくに過ぎてるんですよ?」
街の門の前で兵士と一緒に俺を待っていたマーシュに、着いて早々怒られた。
どうやら俺が約束の日の入りに後れたせいで、保証人のマーシュは危うく牢に入れられるところだったとか。
まさかそこまで街の出入りの仕組みが厳しいとは思わなかった。
しかし俺だって後れたくて後れたわけじゃない。
「本当はちゃんと間に合うはずだったんですよ。だけどね――」
俺は帰り道に出くわしたことについてマーシュに話した。
さすがに兵士が居るところで『子爵の息子に襲われた』なんて言えない。
なので適当に火を吐く魔物に襲われたことにした。
「それならそうと先に言って下さいよ」
「言う暇有った?」
「……そうでした。わたくしとしたことが取り乱してしまいましたね」
マーシュは俺に頭を下げて謝ると「ご無事で良かった」と苦笑いを浮かべた。
「ちゃんと『素材』も手に入ったんですね」
「それはもちろん。そうじゃなきゃ帰ってきてませんって」
「……本当に帰ってきてくれて良かったと心底思いましたよ」
もし俺が死の茸を探すのに手間取って、帰りが明日になっていたらどうなってただろう。
俺はマーシュと檻の中で再開する羽目になっていたかも知れない。
「とにかくその格好では街には入れませんね」
「さすがに着替えは持って来てないよね」
「裸で帰ってくるなんて思いませんもの」
結局俺は門の兵士たちが予備に持っていた服をかなりの高値で買うことになった。
といっても俺にとってははした金なので痛くもかゆくも無い。
「それじゃあお医者様の所までここからは私の馬車で行きましょう」
門から街へ入った所にある広場。
そこで門の出入り前に荷物や身分証、通行証を確認することになっている。
なので一時的に馬車を馬ごと駐めておくことも出来るらしい。
「大体3日くらいまでは置いておけるんですよ」
場合によっては審査に数日かかったりすることもあるらしい。
なので馬のための飼葉や水などもきっちり準備されている。
そんな広場の片隅の見慣れた馬車に俺とマーシュは乗り込んだ。
「出発っ」
御者台に座ったマーシュのかけ声と共にゆっくりと馬車は動き出す。
この速度なら俺が全速力で走った方が速いのだが、迷惑をかけてしまったマーシュの好意を無駄には出来ない。
それに病院に着くまでに荷台でススまみれの体を出来るだけ綺麗にしておきたかったというのもある。
街中で走りながらでは出来ないことだ。
「それじゃあお願いします」
「荷台に置いてあるタオルを使って下さい」
「あとで新しいのを買って返します」
「気にしないで下さい」
荷台の中。
もう一度全裸になった俺は、マーシュから貰ったタオルで体中を拭く。
といっても水などある訳が無いので乾拭きだが。
そうしてなんとか体中を拭き、真っ黒になったタオルを馬車の隅に置いて服を着た所で馬車の速度がゆっくりと落ちていく。
「着きました」
「こっちもちょうど服を着たところですよ」
俺は馬車の後ろから飛び降りると御者台のマーシュに「今日はありがとうございました」とお礼を言ってから急いで治療院に飛び込んだ。
「死の茸の茎を採ってきましたっ!」
日もすっかり落ちた院内に俺の声が響く。
すると。
ぎぃぃぃ。
油を差してない扉の軋む音と共に、廊下に一筋の光が漏れ出し。
「なんだその顔は」
開いた扉から医者が顔を出し、室内灯の漏れた灯りで浮び上がった俺の顔を見て開口一番。
「なんだその顔は。煙突掃除でもしてきたのか?」
そう不思議そうに聞いて来たのだった。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
「本当に採ってきたのか?」
医師の顔には疑惑の二文字がくっきりと刻まれている。
どうやら彼は俺が採ってくると言った言葉を信じ切っては居なかったようで少し寂しく思う。
「これですよね?」
俺はそんな思いを振り切って収納袋から死の茸の茎を1個取り出し、手のひらに乗せて医者に差し出した。
「……たしかに。これは昔一度だけみたことがあるものと同じものだ。まさかまた目にすることが出来るとは」
手のひらの上を覗き込んだ医者は声を震わせてそう言うと。
「本当にこれを使ってもいいんだな?」
などと意味不明なことを聞いてきた。
「当たり前じゃ無いですか。何のために持って来たと思ってるんです?」
医者の話ではこの茎は万能薬――エリクサーにも使われる素材の一つで、国中の金持ちや貴族、それどころか王族までもが手に入れたがっているらしい。
話を聞いたときは「エリクサーって本当にあったんだ!?」と思わず興奮してしまったが、幼熱病の薬はその効能の一部だけを再現するものらしい。
きっと彼は『こんな貴重な素材をスラム街の孤児になんて使っていいのか?』と言いたかったのだろう。
だけどそれをはっきりとは口にしないところが、彼の善良さを表しているんだと思う。
「それで調合が終わるまでどれくらい待てばいいでしょう?」
なので俺は彼を信じて貴重な素材を預ける。
きっと彼ならサンテアを助けてくれるはずだと信じられたから。
「すでにもう他の素材は全部調合し終えている。だから一時間くらいで完成するはずだ」
「思ったより早く出来るんですね」
彼はなんだかんだ言って俺を信じてくれていたのだ。
調合を済ませてくれていたということはそういうことなのだろう
さっき感じた寂しさは既に無敵の心が霧散させてしまっていたが、今の喜びの気持ちは保ち続けさせて欲しいと願う。
「そっか……そうなると……」
しかし困った。
一時間程度しか時間が無いのでは服屋で服を買い直す時間は無いだろう。
かといって体中スス汚れで病床のサンテアの元に向かうのは気が引ける。
どうしたもんかと悩んで居ると。
「それではお風呂にだけ行きましょうか」
後ろから聞こえたその声は。
「マーシュさん。帰ってなかったんですか?」
さっき別れを告げ、馬車で走り去ったはずのマーシュだったのである。
◆◆すぐに消すかもしれないあとがき◆◆
どうせあれでしょ?
ラスボス戦でも結局エリクサーを使わないタイプでしょ?
そ れ は わ た し で す ! !
エリクサーとかインベントリの肥やしにしかならねぇっ!(自業自得)
それでは次回『おまえは今まで潰した虫けらの数をおぼえているのか?』を乞うご期待。
※注意※
ネタが古いの(ry
「いや……これには深い訳があって」
「約束の時間はとっくに過ぎてるんですよ?」
街の門の前で兵士と一緒に俺を待っていたマーシュに、着いて早々怒られた。
どうやら俺が約束の日の入りに後れたせいで、保証人のマーシュは危うく牢に入れられるところだったとか。
まさかそこまで街の出入りの仕組みが厳しいとは思わなかった。
しかし俺だって後れたくて後れたわけじゃない。
「本当はちゃんと間に合うはずだったんですよ。だけどね――」
俺は帰り道に出くわしたことについてマーシュに話した。
さすがに兵士が居るところで『子爵の息子に襲われた』なんて言えない。
なので適当に火を吐く魔物に襲われたことにした。
「それならそうと先に言って下さいよ」
「言う暇有った?」
「……そうでした。わたくしとしたことが取り乱してしまいましたね」
マーシュは俺に頭を下げて謝ると「ご無事で良かった」と苦笑いを浮かべた。
「ちゃんと『素材』も手に入ったんですね」
「それはもちろん。そうじゃなきゃ帰ってきてませんって」
「……本当に帰ってきてくれて良かったと心底思いましたよ」
もし俺が死の茸を探すのに手間取って、帰りが明日になっていたらどうなってただろう。
俺はマーシュと檻の中で再開する羽目になっていたかも知れない。
「とにかくその格好では街には入れませんね」
「さすがに着替えは持って来てないよね」
「裸で帰ってくるなんて思いませんもの」
結局俺は門の兵士たちが予備に持っていた服をかなりの高値で買うことになった。
といっても俺にとってははした金なので痛くもかゆくも無い。
「それじゃあお医者様の所までここからは私の馬車で行きましょう」
門から街へ入った所にある広場。
そこで門の出入り前に荷物や身分証、通行証を確認することになっている。
なので一時的に馬車を馬ごと駐めておくことも出来るらしい。
「大体3日くらいまでは置いておけるんですよ」
場合によっては審査に数日かかったりすることもあるらしい。
なので馬のための飼葉や水などもきっちり準備されている。
そんな広場の片隅の見慣れた馬車に俺とマーシュは乗り込んだ。
「出発っ」
御者台に座ったマーシュのかけ声と共にゆっくりと馬車は動き出す。
この速度なら俺が全速力で走った方が速いのだが、迷惑をかけてしまったマーシュの好意を無駄には出来ない。
それに病院に着くまでに荷台でススまみれの体を出来るだけ綺麗にしておきたかったというのもある。
街中で走りながらでは出来ないことだ。
「それじゃあお願いします」
「荷台に置いてあるタオルを使って下さい」
「あとで新しいのを買って返します」
「気にしないで下さい」
荷台の中。
もう一度全裸になった俺は、マーシュから貰ったタオルで体中を拭く。
といっても水などある訳が無いので乾拭きだが。
そうしてなんとか体中を拭き、真っ黒になったタオルを馬車の隅に置いて服を着た所で馬車の速度がゆっくりと落ちていく。
「着きました」
「こっちもちょうど服を着たところですよ」
俺は馬車の後ろから飛び降りると御者台のマーシュに「今日はありがとうございました」とお礼を言ってから急いで治療院に飛び込んだ。
「死の茸の茎を採ってきましたっ!」
日もすっかり落ちた院内に俺の声が響く。
すると。
ぎぃぃぃ。
油を差してない扉の軋む音と共に、廊下に一筋の光が漏れ出し。
「なんだその顔は」
開いた扉から医者が顔を出し、室内灯の漏れた灯りで浮び上がった俺の顔を見て開口一番。
「なんだその顔は。煙突掃除でもしてきたのか?」
そう不思議そうに聞いて来たのだった。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
「本当に採ってきたのか?」
医師の顔には疑惑の二文字がくっきりと刻まれている。
どうやら彼は俺が採ってくると言った言葉を信じ切っては居なかったようで少し寂しく思う。
「これですよね?」
俺はそんな思いを振り切って収納袋から死の茸の茎を1個取り出し、手のひらに乗せて医者に差し出した。
「……たしかに。これは昔一度だけみたことがあるものと同じものだ。まさかまた目にすることが出来るとは」
手のひらの上を覗き込んだ医者は声を震わせてそう言うと。
「本当にこれを使ってもいいんだな?」
などと意味不明なことを聞いてきた。
「当たり前じゃ無いですか。何のために持って来たと思ってるんです?」
医者の話ではこの茎は万能薬――エリクサーにも使われる素材の一つで、国中の金持ちや貴族、それどころか王族までもが手に入れたがっているらしい。
話を聞いたときは「エリクサーって本当にあったんだ!?」と思わず興奮してしまったが、幼熱病の薬はその効能の一部だけを再現するものらしい。
きっと彼は『こんな貴重な素材をスラム街の孤児になんて使っていいのか?』と言いたかったのだろう。
だけどそれをはっきりとは口にしないところが、彼の善良さを表しているんだと思う。
「それで調合が終わるまでどれくらい待てばいいでしょう?」
なので俺は彼を信じて貴重な素材を預ける。
きっと彼ならサンテアを助けてくれるはずだと信じられたから。
「すでにもう他の素材は全部調合し終えている。だから一時間くらいで完成するはずだ」
「思ったより早く出来るんですね」
彼はなんだかんだ言って俺を信じてくれていたのだ。
調合を済ませてくれていたということはそういうことなのだろう
さっき感じた寂しさは既に無敵の心が霧散させてしまっていたが、今の喜びの気持ちは保ち続けさせて欲しいと願う。
「そっか……そうなると……」
しかし困った。
一時間程度しか時間が無いのでは服屋で服を買い直す時間は無いだろう。
かといって体中スス汚れで病床のサンテアの元に向かうのは気が引ける。
どうしたもんかと悩んで居ると。
「それではお風呂にだけ行きましょうか」
後ろから聞こえたその声は。
「マーシュさん。帰ってなかったんですか?」
さっき別れを告げ、馬車で走り去ったはずのマーシュだったのである。
◆◆すぐに消すかもしれないあとがき◆◆
どうせあれでしょ?
ラスボス戦でも結局エリクサーを使わないタイプでしょ?
そ れ は わ た し で す ! !
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