無敵チートで悠々自適な異世界暮らし始めました

長尾 隆生

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第24話 逮捕されちゃうぞ?

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「やっぱただの物理パンチじゃ魔法は消せないよなぁ」

 そりゃそうだ。

 魔瘴の森で魔物にファイヤーブレスみたいなのを喰らったときも同じだったのだ。
 俺自身は無敵でも、別に魔法を弾く力を持っているわけじゃ無い。
 ただ単に当たっても平気というだけなのだ。

「って、そんなこと言ってる場合じゃ無いっ!!」

 俺自身、炎を暖かい程度に感じていたので気がつかなかった。

「俺の服、燃えてんじゃん!!! っていうか収納袋が燃えちまうっ!!」

 俺は慌てて腰の収納袋二つを引きちぎる様に外すと、道の端へ投げた。
 ちなみに1個は俺ので、もう一つはマーシュに借りたものだ。

「借りたものを燃やしちゃったとかシャレにならん」

 中にはお金と魔石と、それになにより今一番大事な死の茸デスマッシュルームの茎が入っている。
 そのまま身につけていては俺と一緒に燃えて仕舞いかねない。

 幸い収納袋自体が魔道具なおかげだろうか。
 不思議と炎はまだ燃え移ってはいなかったので見かけは大丈夫そうだが。

 中身も無事であってくれよ。

 俺がそう願っていると。

「あははははっ。燃えてる燃えてるっ。慌てたってもう無駄なのにねぇ」

 心底楽しそうな哄笑の主はわかっている。
 ジグスだ。

 どうやら燃え上がる火の玉ファイヤーボールの炎のせいで今の俺の姿は彼らからよく見えてないらしい。
 俺が慌てている姿を、炎に巻かれて苦しんで暴れていると思ったらしいが。

「狂ってんな、あいつ」

 無邪気なその笑い声は、とてもでは無いが人が目の前で燃えている時に出すものじゃない。
 こいつは異常だ。

火の玉ファイヤーボールを避けずに殴りかかるなんてバッカじゃないの? それともやっぱりこの指輪は効いてってことかな」

 燃え上がる炎の向こうで、ジグスが自分の指に嵌まった指輪をうっとり見つめているのが見える。
 彼の言葉から想像するに、どうやらあの指輪はただの指輪ではなかったようだ。

「ランドを倒してパパの誘いも断った凄い人って聞いてたのに、ただのお間抜けさんだったなんて拍子抜けだよねぇ。あははははっ」

 心底愉快そうな笑い声が暗くなってきた街道に響く。

 俺の体を燃やし続ける炎のおかげで辺りは明るくなっていたが、このままでは門限に間に合わない。

 それにしてもこの炎、なかなか消えないんだが。
 魔法の炎ってエグくない?

 俺じゃ無きゃ確実に死んでたね。

「でもやっと消えそうだな」

 徐々に視界から赤い火の色が薄れ、周囲がよく見える様になっていく。
 すると――

「ヒッ」

 若い女の子の息をのむ様な悲鳴は、俺に向かって火の玉ファイヤーボールを放った魔法使いだ。

「まだ動けるのか」

 彼女の横で神官服の様な男が不気味なものを見る様な目を俺に向ける。
 同時にその二人の前に剣士と大きい盾を持った少年二人が少女を庇う様に前に出る。

「なるほど、前衛二人と後衛二人の理想的なパーティだな。うん、羨ましい」

 俺も冒険者になってそういうパーティを組みたかった人生だった。
 しかし女の子1人に男の子3人のパーティか……将来色々揉めそうだな。

 っと、余計な妄想を膨らませている場合じゃ無い。

 炎が消え、すっかり暗くなった街道。
 空には既に星がきらめき始めている。

「日の入りまでって約束だったのに間に合いそうに無いな」

 それでも子爵の息子たちと一緒なら問題なく街には入れるだろう。
 そう思って彼らと話をしながら街に向かっていたというのに、まさか殺されかけるなんてな。

 ま、殺されても死なないんだけど。

 不意打ち。
 しかも効果ははわからないが指輪型の謎魔道具を使って俺を弱体化させてから殺そうとした所を見ると。

「お前たち。もしかして俺を殺すために追いかけてきたの?」

 思い当たることがあるとすれば子爵と会ったときのことだ。
 俺は子爵の誘いを断った。
 その上街の暗部とも言えるスラム街をなんとか助けてやって欲しいとまで要求した。

 もしかしてそれが彼の逆鱗に触れてしまったのだろうか。
 そんな雰囲気は微塵も感じなかったが彼も貴族だ。

 きっと内心を顔に出さないなんてのはお手の物だろう。

「ジグス。君って子爵の息子だったよな?」

 驚愕の表情を固めたまま俺を見ているジグスに視線を向け質問する。

「そ、そうだけど。僕に手を出したらどうなるかわかってるよね?」

 精一杯虚勢を張った声は震えていて。
 つい今し方まだ俺がモヤされているのを笑いながら見ていたのと同じ人物とは思えない。

「もし子爵の差し金だったら伝えておいてくれないか」
「パパに?」
「もう二度と俺に手を出そうとするなってな」

 俺はそれだけ言うと、さっき収納袋を投げ捨てた道の脇まで歩いて行く。

「無事そうだ」

 そして二つの袋を拾い上げると。

「それじゃあ俺は急ぐから先に行くわ」

 後ろも振り返らずそれだけ言い残して街へ向かって全力で走り出す。

 問題は今のこの姿で街に入れて貰えるかどうかだ。
 なんせ今の俺は――

「全裸ですすだらけの男なんて絶対に逮捕案件だよなぁ」

 服だった燃えかすをまき散らしながら。
 俺はマーシュにまた迷惑をかけてしまいそうだと心の中で謝るのだった。




◆◆すぐに消すかもしれないあとがき◆◆

ざんねん!
全裸の呪いからは逃げられない!!

「俺は悪くねぇ! 全裸になったのは彼奴らのせいだ!」

まぁあれですよね。
アンリくん、ジグスの服でも奪えばいいのにって。

でも人が着ていた服。
しかも脱ぎたてほやほやヌクモリティの残ったものなんて着たくないんでしょうね。

 あ、因みにジグスくんはあとできちんとボコられる予定なのでお楽しみにね!(何を?)
 無敵の心さんは怒りの気持ちも消火しちゃうのでアンリくんの怒りは持続しないというね。

 というわけでへっぽこ女神の「わたしのかんがえたさいきょうのむてき」には色々問題がありまして……あ、女神様はそのうちまた出て来る予定なのでお待ちを。

それでは次回『○×△◆☆は本当にあったんだ お医者さんは嘘つきじゃなかった』を乞うご期待。

※注意※
ネタが古いのは仕(ry
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