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第23話 今だ!真剣白刃取りっ!!
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「どうしてあんなに慌ててギルドを出て行ったのかずっと気になってたんだよね」
少年は無邪気な笑顔で俺の顔を覗き込む。
今の俺が大体身長は170ちょいちょいくらいだから、少年は160前後くらいか。
年齢的にこれから成長するかも知れないが、それにしても小柄だ。
「あ、ああ。ちょっと急用を思い出してね」
「ふーん」
「とってもとっても大事な用だったから」
しどろもどろになりながら適当なことを並べ立てる俺の話を少年はずっと笑顔で聞いていた。
自分でも言い訳になってないなと思う内容で。
だから彼もそれが本当のことじゃないくらいは気がついていたはずだ。
「そうだったんだ。それじゃあ仕方ないね」
少年はあっさり引き下がると俺に向かって手を差し伸べてきた。
「僕の名前はジグス。君の名前も教えてくれるかな?」
どう見ても年下の子供に『君』と呼ばれるのは違和感がある。
だけどせっかく相手が友好的に接してくれようとしているのだ。
それを無下にする必要もないだろう。
「俺はアンリヴァルト。アンリと読んでくれて構わない」
ジグスの手を握ぎろうと手を伸ばしながら、俺は自分の名を告げた。
彼の細い女の子の様な指は、とても冒険者とは思えないもので。
中指に嵌まった金色の指輪が更にそれを引き立てている。
「よろしくジグス」
おれは改めてそう言うと彼の手を握り返す。
その時。
一瞬ジグスの後ろに控えていた彼の仲間たちに緊張が走った気がしたが気のせいだろうか。
もしかしてこの世界では握手は別の意味があったり?
白旗が降伏だと思ったら、実は相手からすると徹底抗戦の意味だったとか。
そんなアニメを見た様な気もする。
「どうしたの?」
「い、いや。何か君の仲間たちが怒ってる様な気がして」
「そうなの?」
ジグスは不思議そうに首を傾げてから後ろの仲間たちを振りかえる。
そして「余計なことはしないでね」と釘を刺した。
そう、彼のその言葉は仲間に対してというより部下に対して命令する様な声音で。
言われた彼らは無言のまま一歩後ろへ退いた。
「ジグス……君たちは冒険者仲間じゃないのか?」
「え? そんなわけ無いじゃ無い。この子たちはパパが僕のために用意してくれた護衛兼雑用係だよ」
「護衛……雑用……?」
俺は思わず無邪気なジグスの顔から目線を後ろの四人に向ける。
しかし彼らは一歩下がったあと視線を下に落としたまま俺と目を合わそうともしない。
「あっ。隠しておくつもりだったのに言っちゃった」
「隠すって何を」
「ま、いいや」
ジグスは笑いながらちょろっと舌を出して。
「僕の名前はジグス=ルブレド。未来のルブレド子爵様さ」
そう名乗りを上げたのだった。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
「そっかぁ。アンリはそんな遠くの国から来たんだ」
「そうだ。だからこのあたりの常識には詳しくなくてな。失礼があったらすまない」
「いいよいいよ。僕はそんなの気にしないから」
今から自分たちも街に帰るところだから一緒に帰ろう。
そう言われて俺たちは今、ジモティの街へ向かって六人で歩いている。
といっても俺とジグス以外の四人は少し後ろから付いてくるといった感じだが。
「それでマーシュって人の荷物は見つかったの?」
「いや、見つからなかったんだ。多分誰かが拾っていったか、動物か魔物に持って行かれたんだと思う」
「残念だったね」
マーシュとの打ち合わせで決めたとおり「探し物は見つからなかった」と告げる。
実際マーシュのものはなにも探してないのだから、そう言った方がボロが出ないだろう。
「それでジグスは――おわぁっ」
どすん。
よそ見をして話ながら歩いていたからだろう。
俺は道に落ちていた少し大きめの石に躓いて転んでしまった。
しかも完全に顔から地面に突っ込むという情けない姿でだ。
「いやぁ、こんな所に石があるなんてわかんなかっ――」
俺は照れ隠しに笑いながら地面から顔を上げ後ろを振り向き。
「!?」
目の前に突然夕日を反射させた鋭い刃が迫ってくるのが見え。
「ごめんなさいっ」
同時に聞こえた苦悶に満ちた声と共に俺の頭は真っ二つに。
ガンッ!!
なるわけはない。
「いったい何の真似なんだ」
俺は両手で挟み込んだ剣の刃を思いっきり引っ張って持ち主から奪い取ると森の中へ投げ捨てる。
ちなみに真剣白刃取りをしようとして失敗したのは内緒だ。
モロに頭に当たってから手で挟んだのだが気付かれてなければ良いなと思いつつ。
「説明して貰おうかジグス」
いつの間にか少し離れた所で驚いた表情でこちらを見ていたジグスにそう問い掛けた。
「あれれ? おっかしーなー」
しかしジグスから返ってきたのはそんな言葉で。
それは心底不思議なことが起こったと言わんばかりの声音を纏っていた。
「もしかしてアンリって耐性持ち? それとも魔道具でも持ってるのかな?」
「何を言ってるんだお前は」
俺はジグスに近づこうと足を踏み出す。
しかしそこに向かって。
「炎よ!!」
そんな超えと共に人の頭ほどありそうな火の玉が俺に向かって飛んできたのである。
「危ないだろっ!」
内心初めて見る本物の攻撃魔法にワクワクしながらも、なんとかそれが顔に出るのを抑えて叫ぶ。
もちろん当たった所で何のダメージも受けないのは魔瘴の森でもっとでかい炎を魔物に喰らわされた経験から知ってはいるが。
「せいっ!」
俺は向かってきた火の玉に向けてパンチを繰り出す。
「まさか! 拳で火の玉を止めるつもりなのっ!?」
悲鳴の様な声は火の玉を放った本人の発したもので。
どうやら彼女は俺が避けると思っていたらしい。
直後、俺の拳と炎が正面衝突する。
「うわおっ」
俺の脳内シミュレーションでは、拳が当たった瞬間に火の玉は爆発四散する予定だった。
だが実際は俺の拳に当たった所で火の玉は一切消えはせず。
そのまま真正面からぶち当たり、俺の体を炎が包み込み。
「あったかーい」
無敵の体に心地よい暖かさに、俺はついそんな呟きを漏らしてしまったのだった。
◆◆すぐに消すかもしれないあとがき◆◆
魔法使いちゃんのファイヤーボール、あたたかいナリィ。
「お、お前・・・子爵の息子だったのかよ!」という前回の後書きの伏線も偶然回収いたしました。
昨日はホトラン1位到達でモチベーションが上がったせいで気がつくと1話が3000文字を超えてしまっていたので切りが良いところで区切りました。
なのであったけぇまま次回へ続きます。
しかしアンリくん。
さっさと帰らないと、王に人質にされてるマーシュンティヌスがしょけいされてしまいますゾ。
走れアンリ!
というわけでこれからも頑張って書いていきますので引き続き応援よろしくお願いいたします。
それでは次回『俺は悪くねぇ!!』を乞うご期待。
※注意※
ネタが古いのは仕(ry
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だから彼もそれが本当のことじゃないくらいは気がついていたはずだ。
「そうだったんだ。それじゃあ仕方ないね」
少年はあっさり引き下がると俺に向かって手を差し伸べてきた。
「僕の名前はジグス。君の名前も教えてくれるかな?」
どう見ても年下の子供に『君』と呼ばれるのは違和感がある。
だけどせっかく相手が友好的に接してくれようとしているのだ。
それを無下にする必要もないだろう。
「俺はアンリヴァルト。アンリと読んでくれて構わない」
ジグスの手を握ぎろうと手を伸ばしながら、俺は自分の名を告げた。
彼の細い女の子の様な指は、とても冒険者とは思えないもので。
中指に嵌まった金色の指輪が更にそれを引き立てている。
「よろしくジグス」
おれは改めてそう言うと彼の手を握り返す。
その時。
一瞬ジグスの後ろに控えていた彼の仲間たちに緊張が走った気がしたが気のせいだろうか。
もしかしてこの世界では握手は別の意味があったり?
白旗が降伏だと思ったら、実は相手からすると徹底抗戦の意味だったとか。
そんなアニメを見た様な気もする。
「どうしたの?」
「い、いや。何か君の仲間たちが怒ってる様な気がして」
「そうなの?」
ジグスは不思議そうに首を傾げてから後ろの仲間たちを振りかえる。
そして「余計なことはしないでね」と釘を刺した。
そう、彼のその言葉は仲間に対してというより部下に対して命令する様な声音で。
言われた彼らは無言のまま一歩後ろへ退いた。
「ジグス……君たちは冒険者仲間じゃないのか?」
「え? そんなわけ無いじゃ無い。この子たちはパパが僕のために用意してくれた護衛兼雑用係だよ」
「護衛……雑用……?」
俺は思わず無邪気なジグスの顔から目線を後ろの四人に向ける。
しかし彼らは一歩下がったあと視線を下に落としたまま俺と目を合わそうともしない。
「あっ。隠しておくつもりだったのに言っちゃった」
「隠すって何を」
「ま、いいや」
ジグスは笑いながらちょろっと舌を出して。
「僕の名前はジグス=ルブレド。未来のルブレド子爵様さ」
そう名乗りを上げたのだった。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
「そっかぁ。アンリはそんな遠くの国から来たんだ」
「そうだ。だからこのあたりの常識には詳しくなくてな。失礼があったらすまない」
「いいよいいよ。僕はそんなの気にしないから」
今から自分たちも街に帰るところだから一緒に帰ろう。
そう言われて俺たちは今、ジモティの街へ向かって六人で歩いている。
といっても俺とジグス以外の四人は少し後ろから付いてくるといった感じだが。
「それでマーシュって人の荷物は見つかったの?」
「いや、見つからなかったんだ。多分誰かが拾っていったか、動物か魔物に持って行かれたんだと思う」
「残念だったね」
マーシュとの打ち合わせで決めたとおり「探し物は見つからなかった」と告げる。
実際マーシュのものはなにも探してないのだから、そう言った方がボロが出ないだろう。
「それでジグスは――おわぁっ」
どすん。
よそ見をして話ながら歩いていたからだろう。
俺は道に落ちていた少し大きめの石に躓いて転んでしまった。
しかも完全に顔から地面に突っ込むという情けない姿でだ。
「いやぁ、こんな所に石があるなんてわかんなかっ――」
俺は照れ隠しに笑いながら地面から顔を上げ後ろを振り向き。
「!?」
目の前に突然夕日を反射させた鋭い刃が迫ってくるのが見え。
「ごめんなさいっ」
同時に聞こえた苦悶に満ちた声と共に俺の頭は真っ二つに。
ガンッ!!
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俺は両手で挟み込んだ剣の刃を思いっきり引っ張って持ち主から奪い取ると森の中へ投げ捨てる。
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モロに頭に当たってから手で挟んだのだが気付かれてなければ良いなと思いつつ。
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「あれれ? おっかしーなー」
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それは心底不思議なことが起こったと言わんばかりの声音を纏っていた。
「もしかしてアンリって耐性持ち? それとも魔道具でも持ってるのかな?」
「何を言ってるんだお前は」
俺はジグスに近づこうと足を踏み出す。
しかしそこに向かって。
「炎よ!!」
そんな超えと共に人の頭ほどありそうな火の玉が俺に向かって飛んできたのである。
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内心初めて見る本物の攻撃魔法にワクワクしながらも、なんとかそれが顔に出るのを抑えて叫ぶ。
もちろん当たった所で何のダメージも受けないのは魔瘴の森でもっとでかい炎を魔物に喰らわされた経験から知ってはいるが。
「せいっ!」
俺は向かってきた火の玉に向けてパンチを繰り出す。
「まさか! 拳で火の玉を止めるつもりなのっ!?」
悲鳴の様な声は火の玉を放った本人の発したもので。
どうやら彼女は俺が避けると思っていたらしい。
直後、俺の拳と炎が正面衝突する。
「うわおっ」
俺の脳内シミュレーションでは、拳が当たった瞬間に火の玉は爆発四散する予定だった。
だが実際は俺の拳に当たった所で火の玉は一切消えはせず。
そのまま真正面からぶち当たり、俺の体を炎が包み込み。
「あったかーい」
無敵の体に心地よい暖かさに、俺はついそんな呟きを漏らしてしまったのだった。
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