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第1話 はじまりの森
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※初日は一段落がつく六話目まで投稿いたします。
※更新時間は大体7時・9時・12時・15時・18時・20時頃を予定しております。
※ぜひ「お気に入り登録」や読了ツイートなどで応援よろしくおねがいいたします。
~はじまり~
その日、俺はどことも知れない森の中で目が覚めた。
しかも全裸でである。
「えっ……ここどこ? それに服は?」
辺りを見回す。
しかし薄暗い森の中、湿った地面にには服らしき物は無い。
幸い暑くも寒くもない季節らしく、風邪を引くことは無さそうなのが救いだ。
だがそれはそれとして俺はいったいなぜこんな所で裸で眠っていたのか。
「えっと。たしか昨日は三日連続の休日出勤が終わって、夜中に駅から原付でアパートに帰ったはずだよな」
段々と頭が冴えてきて昨日の出来事が思い出されてくる。
両親を亡くし、親戚の家で厄介になりながら中学を卒業後すぐ就職。
折しも就職氷河期の最中、中卒で雇ってくれる所は少なかった。
それでもなんとか五年ほど勤めた会社だったが、ある日突然給料も払わず夜逃げ。
既に親戚の家を出ていた俺は僅かな貯金がなくなるまでになんとか次の就職を決めた。
「選択肢がなかったとはいえ、あんなブラック企業だったとは」
★★★★★★★★★★★★★★★
週休2日。
アットホームな会社です。
研修も充実。
初心者大歓迎。
★★★★★★★★★★★★★★★
そんなうたい文句の全ては嘘だと知ったのは既に貯金がなくなる寸前のこと。
今更辞めて他の会社を探すことも出来ず、それでもなんとかなるだろうと頑張った。
「まだ若いからって無茶な仕事ばかり押しつけられるんだからたまったもんじゃないよ」
そして昨日の夜中。
原付で帰る途中、突然飛び出してきた女の子を避けようとして――
「そうだ……ガードレールにぶつかって、俺は道路の外へ飛んで」
その後の記憶が曖昧なのは頭を打ったからだろうか。
「たしかその後に何か自分のことを『女神』だとかいう痛い子と会ったような……」
『誰が痛い子ですかっ』
「うぇぁっ」
とつぜん脳内に響き渡った少女の甲高い声に、思わず声を上げてしまった。
『わたしは本物の女神なんですよぅ。それを痛い子なんてひどいですぅ』
「ご、ごめん……って、女神様?」
思わず謝ったあと、その声が口にした言葉を聞き返してしまう。
『そうですよぅ。ちゃんと説明したじゃないですかぁ』
「なんのことだかさっぱりわからないんだけど」
『もしかして忘れちゃってますぅ?』
「ちょっと待って。何か思い出せそうな気がする」
『うーん、転生させた時にちょっと失敗しちゃったのかも。記憶の一部が欠けちゃってるみたいだねぇ』
怖いことを言い出した。
『でもそれ以外はきちんとアナタの希望通りの体にはしてあげたはずだよぉ』
希望通りって言われても俺はいったい何を希望したのだろうか。
そのことを聞いてみると。
『それも忘れちゃったんだぁ。あなたが望んだのはねぇ、無敵の体よぉ』
「無敵の……体?」
『うん、無敵の体』
そんな小学生でも言わない様なことを俺は女神様に頼んだのか。
いや、まてよ。
もしかして。
「その時の俺ってどんな感じでしたか?」
俺は少し思い当たる節があった。
なのでその時の状況を詳しく聞くと。
『死んだばかりだったからかなぁ。何かうわごとみたいに【自分は無敵だ。無敵だからどんな困難でも乗り切れる。自分は無敵。無敵】とか言ってたよぉ』
やっぱりだ。
その言葉を俺は仕事が余りに辛かったとき、自分自身に言い聞かせる様に呟いていた。
たしかヤオチューブの動画で知った自己暗示の言葉だったはずだ。
しかし、そんな言葉が自然に出てしまうとは。
思った以上に効いていたらしい。
『だからてっきり【無敵】になりたいんだなぁって思って、その体を作る時にずっと【無敵になぁれ、無敵になぁれ】って言いながら作ってあげたんだよぉ』
そんなメイドカフェじゃあるまいし。
口に出したからって美味しくなったり、ましてや無敵になったりするわけが……。
『あれぇ? 疑ってますねぇ?』
「いや、だって信じろって方が無理があるでしょ」
『だったら試してみればいいんじゃないですかぁ。きちんと心も体も無敵になってるはずですよぉ』
「試すって言われても、どうすれば」
『そこに落ちてる尖った石で自分の胸を刺してみるとかですかねぇ』
「そんな趣味はないよっ!」
とはいえ自分が無敵になっているかどうか調べるにはそれが一番簡単ではある。
だが俺に自傷行為をする気は無い。
『あっ』
「どうした?」
『そろそろ無料通話量が限界みたいなので通信を切りますぅ』
「ちょっ――俺、まだ無敵ってこと以外何も聞いてな――」
ガチャッ。
ツーツーツー。
唐突に女神との通信……というか通話が切れてしまった。
****後書きとお願い****
誤字脱字などございましたら感想欄にてお知らせいただけますと修正させていただきますのでよろしくおねがいいたします。
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その日、俺はどことも知れない森の中で目が覚めた。
しかも全裸でである。
「えっ……ここどこ? それに服は?」
辺りを見回す。
しかし薄暗い森の中、湿った地面にには服らしき物は無い。
幸い暑くも寒くもない季節らしく、風邪を引くことは無さそうなのが救いだ。
だがそれはそれとして俺はいったいなぜこんな所で裸で眠っていたのか。
「えっと。たしか昨日は三日連続の休日出勤が終わって、夜中に駅から原付でアパートに帰ったはずだよな」
段々と頭が冴えてきて昨日の出来事が思い出されてくる。
両親を亡くし、親戚の家で厄介になりながら中学を卒業後すぐ就職。
折しも就職氷河期の最中、中卒で雇ってくれる所は少なかった。
それでもなんとか五年ほど勤めた会社だったが、ある日突然給料も払わず夜逃げ。
既に親戚の家を出ていた俺は僅かな貯金がなくなるまでになんとか次の就職を決めた。
「選択肢がなかったとはいえ、あんなブラック企業だったとは」
★★★★★★★★★★★★★★★
週休2日。
アットホームな会社です。
研修も充実。
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★★★★★★★★★★★★★★★
そんなうたい文句の全ては嘘だと知ったのは既に貯金がなくなる寸前のこと。
今更辞めて他の会社を探すことも出来ず、それでもなんとかなるだろうと頑張った。
「まだ若いからって無茶な仕事ばかり押しつけられるんだからたまったもんじゃないよ」
そして昨日の夜中。
原付で帰る途中、突然飛び出してきた女の子を避けようとして――
「そうだ……ガードレールにぶつかって、俺は道路の外へ飛んで」
その後の記憶が曖昧なのは頭を打ったからだろうか。
「たしかその後に何か自分のことを『女神』だとかいう痛い子と会ったような……」
『誰が痛い子ですかっ』
「うぇぁっ」
とつぜん脳内に響き渡った少女の甲高い声に、思わず声を上げてしまった。
『わたしは本物の女神なんですよぅ。それを痛い子なんてひどいですぅ』
「ご、ごめん……って、女神様?」
思わず謝ったあと、その声が口にした言葉を聞き返してしまう。
『そうですよぅ。ちゃんと説明したじゃないですかぁ』
「なんのことだかさっぱりわからないんだけど」
『もしかして忘れちゃってますぅ?』
「ちょっと待って。何か思い出せそうな気がする」
『うーん、転生させた時にちょっと失敗しちゃったのかも。記憶の一部が欠けちゃってるみたいだねぇ』
怖いことを言い出した。
『でもそれ以外はきちんとアナタの希望通りの体にはしてあげたはずだよぉ』
希望通りって言われても俺はいったい何を希望したのだろうか。
そのことを聞いてみると。
『それも忘れちゃったんだぁ。あなたが望んだのはねぇ、無敵の体よぉ』
「無敵の……体?」
『うん、無敵の体』
そんな小学生でも言わない様なことを俺は女神様に頼んだのか。
いや、まてよ。
もしかして。
「その時の俺ってどんな感じでしたか?」
俺は少し思い当たる節があった。
なのでその時の状況を詳しく聞くと。
『死んだばかりだったからかなぁ。何かうわごとみたいに【自分は無敵だ。無敵だからどんな困難でも乗り切れる。自分は無敵。無敵】とか言ってたよぉ』
やっぱりだ。
その言葉を俺は仕事が余りに辛かったとき、自分自身に言い聞かせる様に呟いていた。
たしかヤオチューブの動画で知った自己暗示の言葉だったはずだ。
しかし、そんな言葉が自然に出てしまうとは。
思った以上に効いていたらしい。
『だからてっきり【無敵】になりたいんだなぁって思って、その体を作る時にずっと【無敵になぁれ、無敵になぁれ】って言いながら作ってあげたんだよぉ』
そんなメイドカフェじゃあるまいし。
口に出したからって美味しくなったり、ましてや無敵になったりするわけが……。
『あれぇ? 疑ってますねぇ?』
「いや、だって信じろって方が無理があるでしょ」
『だったら試してみればいいんじゃないですかぁ。きちんと心も体も無敵になってるはずですよぉ』
「試すって言われても、どうすれば」
『そこに落ちてる尖った石で自分の胸を刺してみるとかですかねぇ』
「そんな趣味はないよっ!」
とはいえ自分が無敵になっているかどうか調べるにはそれが一番簡単ではある。
だが俺に自傷行為をする気は無い。
『あっ』
「どうした?」
『そろそろ無料通話量が限界みたいなので通信を切りますぅ』
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