無敵チートで悠々自適な異世界暮らし始めました

長尾 隆生

文字の大きさ
上 下
1 / 35

第1話 はじまりの森

しおりを挟む
※初日は一段落がつく六話目まで投稿いたします。
※更新時間は大体7時・9時・12時・15時・18時・20時頃を予定しております。
※ぜひ「お気に入り登録」や読了ツイートなどで応援よろしくおねがいいたします。



~はじまり~

 その日、俺はどことも知れない森の中で目が覚めた。

 しかも全裸でである。

「えっ……ここどこ? それに服は?」

 辺りを見回す。
 しかし薄暗い森の中、湿った地面にには服らしき物は無い。

 幸い暑くも寒くもない季節らしく、風邪を引くことは無さそうなのが救いだ。
 だがそれはそれとして俺はいったいなぜこんな所で裸で眠っていたのか。

「えっと。たしか昨日は三日連続の休日出勤が終わって、夜中に駅から原付でアパートに帰ったはずだよな」

 段々と頭が冴えてきて昨日の出来事が思い出されてくる。

 両親を亡くし、親戚の家で厄介になりながら中学を卒業後すぐ就職。
 折しも就職氷河期の最中、中卒で雇ってくれる所は少なかった。

 それでもなんとか五年ほど勤めた会社だったが、ある日突然給料も払わず夜逃げ。
 既に親戚の家を出ていた俺は僅かな貯金がなくなるまでになんとか次の就職を決めた。

「選択肢がなかったとはいえ、あんなブラック企業だったとは」


★★★★★★★★★★★★★★★

 週休2日。
 アットホームな会社です。
 研修も充実。
 初心者大歓迎。

★★★★★★★★★★★★★★★


 そんなうたい文句の全ては嘘だと知ったのは既に貯金がなくなる寸前のこと。
 今更辞めて他の会社を探すことも出来ず、それでもなんとかなるだろうと頑張った。

「まだ若いからって無茶な仕事ばかり押しつけられるんだからたまったもんじゃないよ」

 そして昨日の夜中。
 原付で帰る途中、突然飛び出してきた女の子を避けようとして――

「そうだ……ガードレールにぶつかって、俺は道路の外へ飛んで」

 その後の記憶が曖昧なのは頭を打ったからだろうか。
 
「たしかその後に何か自分のことを『女神』だとかいう痛い子と会ったような……」
『誰が痛い子ですかっ』
「うぇぁっ」

 とつぜん脳内に響き渡った少女の甲高い声に、思わず声を上げてしまった。

『わたしは本物の女神なんですよぅ。それを痛い子なんてひどいですぅ』
「ご、ごめん……って、女神様?」

 思わず謝ったあと、その声が口にした言葉を聞き返してしまう。

『そうですよぅ。ちゃんと説明したじゃないですかぁ』
「なんのことだかさっぱりわからないんだけど」
『もしかして忘れちゃってますぅ?』
「ちょっと待って。何か思い出せそうな気がする」
『うーん、転生させた時にちょっと失敗しちゃったのかも。記憶の一部が欠けちゃってるみたいだねぇ』

 怖いことを言い出した。

『でもそれ以外はきちんとアナタの希望通りの体にはしてあげたはずだよぉ』

 希望通りって言われても俺はいったい何を希望したのだろうか。
 そのことを聞いてみると。

『それも忘れちゃったんだぁ。あなたが望んだのはねぇ、無敵の体よぉ』
「無敵の……体?」
『うん、無敵の体』

 そんな小学生でも言わない様なことを俺は女神様に頼んだのか。
 いや、まてよ。
 もしかして。

「その時の俺ってどんな感じでしたか?」

 俺は少し思い当たる節があった。
 なのでその時の状況を詳しく聞くと。

『死んだばかりだったからかなぁ。何かうわごとみたいに【自分は無敵だ。無敵だからどんな困難でも乗り切れる。自分は無敵。無敵】とか言ってたよぉ』

 やっぱりだ。

 その言葉を俺は仕事が余りに辛かったとき、自分自身に言い聞かせる様に呟いていた。
 たしかヤオチューブの動画で知った自己暗示の言葉だったはずだ。

 しかし、そんな言葉が自然に出てしまうとは。
 思った以上に効いていたらしい。

『だからてっきり【無敵】になりたいんだなぁって思って、その体を作る時にずっと【無敵になぁれ、無敵になぁれ】って言いながら作ってあげたんだよぉ』

 そんなメイドカフェじゃあるまいし。
 口に出したからって美味しくなったり、ましてや無敵になったりするわけが……。

『あれぇ? 疑ってますねぇ?』
「いや、だって信じろって方が無理があるでしょ」
『だったら試してみればいいんじゃないですかぁ。きちんと心も体も無敵になってるはずですよぉ』
「試すって言われても、どうすれば」
『そこに落ちてる尖った石で自分の胸を刺してみるとかですかねぇ』
「そんな趣味はないよっ!」

 とはいえ自分が無敵になっているかどうか調べるにはそれが一番簡単ではある。
 だが俺に自傷行為をする気は無い。

『あっ』
「どうした?」
『そろそろ無料通話量が限界みたいなので通信を切りますぅ』
「ちょっ――俺、まだ無敵ってこと以外何も聞いてな――」

 ガチャッ。

 ツーツーツー。

 唐突に女神との通信……というか通話が切れてしまった。




****後書きとお願い****

誤字脱字などございましたら感想欄にてお知らせいただけますと修正させていただきますのでよろしくおねがいいたします。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...