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※予約設定日付を間違ってました。
※次話は10分後に公開予定です。

「今までお世話になりました」

 私はこれから辺境の修道院へ送り出されます。
 その地に一度でも送られた者は、一生その辺境の地から出ることは出来ない人生の最果ての地。

 そんな絶望を背負いながらも私は、今までお世話になった聖女の館の皆に頭を下げて、無理やり作った笑顔で別れの言葉を告げました。

「わたしゃ、レオン様が異端者だったなんて、今でも信じられないんだよ」

 門の所まで送ってくれた聖女の館での最高責任者であるウィーラが小さな声で呟きました。
 もし、その言葉が門の外で待つ教会関係者にでも聞かれていたら、彼女も私と同じように……いえ、最悪極刑に処されて仕舞うかもしれません。
 私は慌てて彼女に「それ以上は止めてください」と答えました。

「ですけどリアリス様」
「私はもう様と呼ばれるような者ではありません。異端者によって聖女に祭り上げられた偽聖女ですわ」
「いいえ、貴方様こそ本物の聖女様です。今まで貴方様が見せてくれた数々の奇跡がその証拠です」
「それはもう忘れてください。あれは全て私とレオン様がでっち上げた仕込み……ということになりましたので」

 私は尚も言い募りそうな彼女の言葉を遮るように声を上げます。

「ここまでで結構です。本当に。本当にありがとうございました」

 そして深く一度だけ頭を下げると、門の外に止まっている送迎用の馬車に飛び乗りました。
 送迎用と言っても、サスペンションも何も無い酷いものでしたが。

 窓から外に目を向けます。

 遠ざかっていく聖女の館、その前でウィーラがこちらをずっと見送ってくれる姿が見えました。
 ただの村娘でしかなかった私を、立派な聖女として育ててくれた彼女に私はもう一度感謝の念を贈ります。

 するとどうでしょう。
 ウィーラの周りをほのかな白い光が包んだかと思うと、その体の中に光が吸い込まれていきました。
 自分でもよくわからない聖女の力とやらが発揮されてしまったようです。

 私が知らなかっただけでウィーラも体のどこかを病んでいたのかもしれません。
 あの光で包まれると、たちどころに体の悪い部分が治ると言うことを私は経験上知っていました。

「最後にお礼が出来たようですね」

 私はその事に満足して、酷く揺れる馬車の中で瞳を閉じます。
 数日前から昼も夜も無く、散々枢機卿を含む審問官たちによって質問攻めにされた疲れが限界を超えたのでしょう。
 癒やしの力を持つ私ですが、自らを癒やすことは未だに出来ないでいるのです。

「おやすみなさい」

 私は誰にとも無くそう呟くと夢の中へ旅立ったのでした。
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