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モブは勇者パーティの陰のリーダーになる
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「これでいいのか?」
「たぶん。僕も初めてだから上手く出来るかどうか解らないけど」
神秘的な泉の光の中、俺はミラと手を繋いで見つめ合っていた。
「私も初めてー」
もちろんリベラもいるので二人っきりではない。
俺たちは三人でそれぞれ手を繋いで輪を作っている状況だ。
これがこの世界でのパーティの組み方らしい。
「それじゃあ契約の言葉を一緒に言うんだけど大丈夫かい?」
「もちろんだ。リベラも覚えたか?」
「うーん……たぶん」
首を傾げるその姿に俺は心配になってしまう。
「言い間違えても大丈夫なんだよな?」
「大丈夫だと思うよ」
それなら何度かやり直せばいいか。
俺は一つ大きく息を吐くと「それじゃあ、せーのでいくぞ」と二人に最後の確認をする。
「ああ」
「うん、わかった」
「よし。せーのっ」
俺の合図に合わせて三人の声が森に響く。
『我らはともに同じ道を進む者としてここに今絆を結ぶことを誓う!』
最後の一言を口にしたとたん、俺の中に不思議な感覚が広がる。
それはレベルアップの時に毎回感じるものに似ていた。
「ふわぁっ」
「んっ」
二人も同じ感覚を覚えたのだろう。
それぞれの口から吐息が漏れた。
「これがパーティを組むってことか」
「よかった。ちゃんと出来たみたいだね」
「なんだか不思議な気分」
別に自分自身が強くなった気はしない。
ただなんだろう。
不思議と二人との絆が深まったような気がする。
しかし今さらだけどゲームではただのモブ村人だった俺が勇者パーティに入って大丈夫なんだろうか。
もしこの世界でもパーティ上限が決まっているなら、俺が入ったことでゲームで最後に仲間になる『賢者』がパーティに加われないとかなったら……。
「あのさ、ミラ」
「なんだい?」
「冒険者のパーティって何人まで入れるのか知ってるか?」
もしゲームと同じく三人までだとしたら、レベル上げが終わり次第に俺はパーティを抜ける必要があるだろう。
今感じている二人との絆がなくなるのは寂しいが致し方ない。
「上限? 別にないはずだけど」
「そうなのか」
「だって王都とかの大きなクランなんて何十人もいるらしいからね」
クランというのは冒険者たちが集まって作り上げる集団のことだ。
他のゲームではそれをギルドと呼ぶことも多いが、ドラファンではギルドは冒険者全体の組織の名前だからクランになっているのだろう。
たしかゲーム内でもクランがらみのクエストがいくつもあったが、あの集まりを冒険者パーティだと認識してはいなかったのだ。
しかし言われて見ればクランやギルドというのは大規模の冒険者パーティに違いない。
「じゃあそいつらも全員輪になってさっきの『宣言』をしてるんだな」
何十人むさ苦しいガチムチどもが手を繋ぎ合ってパーティ宣言をする光景が頭に浮ぶ。
正直加わりたくはない。
「うーん、たしかパーティに入るときはリーダーと宣言を交せばいいだけだったと思う」
「リーダーってパーティリーダーのことか?」
「そうだよ」
この場合はクランマスターとかギルドマスターと言った方が正しいのかもしれないが。
なるほど、それなら大規模クランを作る時も問題なく全員をパーティとして扱える訳か。
俺がガチムチ祭りを脳内から削除していると、続けてミラの口から爆弾発言が飛び出した。
「ちなみに僕らのリーダーは君だからね」
「は?」
「だってパーティリーダーは呼びかけ人がなるものだって決まってるからさ」
いやいやいや。
勇者パーティのリーダーは勇者だろ。
どうして勇者パーティのリーダーがモブ村人なんだよ。
おかしいだろ。
「いや、それは……だって普通リーダーは勇者がなるものだろ?」
「そうでもないよ。今までだって魔王を封印したパーティのリーダーが勇者じゃないことはあったみたいだし」
確かにゲームでも勇者じゃなくその父親とか盟友が主人公という作品もある。
そういうゲームではパーティリーダーはその主人公で、勇者は仲間の一人という形だ。
だけどドラファンでは明確に勇者がリーダーだったはずだ。
「もう一度パーティを組み直さないか?」
「いやだよ」
「どうして!」
「だって僕より強い人がリーダーじゃないなんておかしいじゃないか」
うっ。
「リベラちゃんもアーディがリーダーの方がいいよね?」
「うん。アーディがリーダーなんてかっこいいし」
「決まりだね」
ぐぬぬ。
どうやら俺がどれだけ頼み込んでもリーダー変更はしてくれない様子だ。
「はぁ……わかった、やるよ。でももしどうしてもパーティリーダーを変更しなきゃいけないような事態が起こったときはミラがリーダーになることを約束してくれ」
「どういう状況でそんなことになるのかは解らないけど……うん、約束するよ」
これでもし『賢者』が仲間に加われなかった場合もなんとかなるだろう。
そのときは俺はパーティ外のサポート役にまわればいい。
「それじゃあパーティも組めたことだし早速レベル上げを始めるぞ!」
俺はそういって例の籠の方に一歩踏み出したところで大事なことを聞いておくのを忘れたことに気がついてミラを振り返り尋ねた。
「パーティ組んだら取得経験値って共有されるのか?」
「たぶん。僕も初めてだから上手く出来るかどうか解らないけど」
神秘的な泉の光の中、俺はミラと手を繋いで見つめ合っていた。
「私も初めてー」
もちろんリベラもいるので二人っきりではない。
俺たちは三人でそれぞれ手を繋いで輪を作っている状況だ。
これがこの世界でのパーティの組み方らしい。
「それじゃあ契約の言葉を一緒に言うんだけど大丈夫かい?」
「もちろんだ。リベラも覚えたか?」
「うーん……たぶん」
首を傾げるその姿に俺は心配になってしまう。
「言い間違えても大丈夫なんだよな?」
「大丈夫だと思うよ」
それなら何度かやり直せばいいか。
俺は一つ大きく息を吐くと「それじゃあ、せーのでいくぞ」と二人に最後の確認をする。
「ああ」
「うん、わかった」
「よし。せーのっ」
俺の合図に合わせて三人の声が森に響く。
『我らはともに同じ道を進む者としてここに今絆を結ぶことを誓う!』
最後の一言を口にしたとたん、俺の中に不思議な感覚が広がる。
それはレベルアップの時に毎回感じるものに似ていた。
「ふわぁっ」
「んっ」
二人も同じ感覚を覚えたのだろう。
それぞれの口から吐息が漏れた。
「これがパーティを組むってことか」
「よかった。ちゃんと出来たみたいだね」
「なんだか不思議な気分」
別に自分自身が強くなった気はしない。
ただなんだろう。
不思議と二人との絆が深まったような気がする。
しかし今さらだけどゲームではただのモブ村人だった俺が勇者パーティに入って大丈夫なんだろうか。
もしこの世界でもパーティ上限が決まっているなら、俺が入ったことでゲームで最後に仲間になる『賢者』がパーティに加われないとかなったら……。
「あのさ、ミラ」
「なんだい?」
「冒険者のパーティって何人まで入れるのか知ってるか?」
もしゲームと同じく三人までだとしたら、レベル上げが終わり次第に俺はパーティを抜ける必要があるだろう。
今感じている二人との絆がなくなるのは寂しいが致し方ない。
「上限? 別にないはずだけど」
「そうなのか」
「だって王都とかの大きなクランなんて何十人もいるらしいからね」
クランというのは冒険者たちが集まって作り上げる集団のことだ。
他のゲームではそれをギルドと呼ぶことも多いが、ドラファンではギルドは冒険者全体の組織の名前だからクランになっているのだろう。
たしかゲーム内でもクランがらみのクエストがいくつもあったが、あの集まりを冒険者パーティだと認識してはいなかったのだ。
しかし言われて見ればクランやギルドというのは大規模の冒険者パーティに違いない。
「じゃあそいつらも全員輪になってさっきの『宣言』をしてるんだな」
何十人むさ苦しいガチムチどもが手を繋ぎ合ってパーティ宣言をする光景が頭に浮ぶ。
正直加わりたくはない。
「うーん、たしかパーティに入るときはリーダーと宣言を交せばいいだけだったと思う」
「リーダーってパーティリーダーのことか?」
「そうだよ」
この場合はクランマスターとかギルドマスターと言った方が正しいのかもしれないが。
なるほど、それなら大規模クランを作る時も問題なく全員をパーティとして扱える訳か。
俺がガチムチ祭りを脳内から削除していると、続けてミラの口から爆弾発言が飛び出した。
「ちなみに僕らのリーダーは君だからね」
「は?」
「だってパーティリーダーは呼びかけ人がなるものだって決まってるからさ」
いやいやいや。
勇者パーティのリーダーは勇者だろ。
どうして勇者パーティのリーダーがモブ村人なんだよ。
おかしいだろ。
「いや、それは……だって普通リーダーは勇者がなるものだろ?」
「そうでもないよ。今までだって魔王を封印したパーティのリーダーが勇者じゃないことはあったみたいだし」
確かにゲームでも勇者じゃなくその父親とか盟友が主人公という作品もある。
そういうゲームではパーティリーダーはその主人公で、勇者は仲間の一人という形だ。
だけどドラファンでは明確に勇者がリーダーだったはずだ。
「もう一度パーティを組み直さないか?」
「いやだよ」
「どうして!」
「だって僕より強い人がリーダーじゃないなんておかしいじゃないか」
うっ。
「リベラちゃんもアーディがリーダーの方がいいよね?」
「うん。アーディがリーダーなんてかっこいいし」
「決まりだね」
ぐぬぬ。
どうやら俺がどれだけ頼み込んでもリーダー変更はしてくれない様子だ。
「はぁ……わかった、やるよ。でももしどうしてもパーティリーダーを変更しなきゃいけないような事態が起こったときはミラがリーダーになることを約束してくれ」
「どういう状況でそんなことになるのかは解らないけど……うん、約束するよ」
これでもし『賢者』が仲間に加われなかった場合もなんとかなるだろう。
そのときは俺はパーティ外のサポート役にまわればいい。
「それじゃあパーティも組めたことだし早速レベル上げを始めるぞ!」
俺はそういって例の籠の方に一歩踏み出したところで大事なことを聞いておくのを忘れたことに気がついてミラを振り返り尋ねた。
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