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モブは二度と戦えない体になってしまう
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俺がどれだけレベルを上げても習得できなかった魔法をミラはいとも簡単に使って見せた。
といっても今ミラが使った火魔法くらいなら村でも何人か使うことが出来る人は居る程度のものだったりする。
わかりやすく言えば生活魔法といった所だろうか。
生活魔法は他にも水を出したり土を固めたり色々あって、人によって使える属性は違う。
だが共通して言えるのは、その魔法が使えるからと言って劇的に何かが変わるわけではないということだ。
なんせ普通の人が使える魔法は火魔法で言えばせいぜいライターの火くらいしか出せない。
とてもではないが魔物と戦えるようなものではない。
「ちょっと聞きたいんだが」
「なんだい?」
「ミラって今どんな魔法が使えるんだ?」
しかしミラは勇者である。
ゲームでも序盤から弱めの火魔法であるファイヤーボールを覚えることが出来たし、最終的にはとんでもない火力の魔法も使えるようになっていた。
「火と光の生活魔法は使えるよ。火魔法のファイヤーボールも。あと回復なら初級までなら使えるよ」
「もう回復魔法も使えるのか」
「リベラちゃんの回復魔法に比べたら全然だけどね」
そりゃ回復専門の聖女様と比べちゃいけないが、それでも今の段階で回復魔法が使えるのは驚きだ。
なぜなら俺がドラファンをプレイしていたとき、勇者が回復魔法を覚えたのは聖女を助けて次の町に向かう頃だったからだ。
当時のプレイヤーからは「今頃回復魔法なんて覚えてももう遅い!」とか言われてたっけか。
なんせ既に聖女という回復役が仲間になった後である。
それ以前であればまだ使い道はあったというのに。
「やっぱりミラもリベラと同じでゲームのスタート時点より強くなってるんだな」
「ん? 何か変だったかな?」
俺の呟きが耳に入ったのかミラが心配げな声を上げる。
「いや、さすが勇者様だなって思ってな」
「やめてよね。君まで僕のことを勇者様とか言わないで欲しいよ。はい、松明」
俺はミラから火の付いた松明を受け取ると洞窟の中を照らす。
一本の松明では見える範囲は精々十メートルほど先までだ。
「ねぇねぇ、ミラって光魔法も使えるんでしょ?」
「うん、まぁ少しだけどね」
さっきの話を聞いていたリベラが俺とミラの話が終わったのを見て話しかけてきた。
「じゃあさ、松明なんて使わなくても光魔法でこの穴の中を明るくすれば良くない?」
「あっ」
「はっ」
そこに気がつくとは。
やはり天才か。
というか俺たちが間抜け過ぎただけだが。
「出来そうか?」
「覚えたばかりだからまだ余り使ったことないけど、とりあえずやってみるよ」
「光魔法って見たこと無いからわくわくするね!」
スミク村には生活魔法でも光魔法を使える人は居ない。
なので俺も光魔法で通路の中を照らすという考えが頭からすっぽりと抜けていたのだ。
「それじゃあいくよ! なるべく魔力を込めて――ライト!!」
「ふわぁっ」
「うおっ、眩しっ」
ミラが光魔法を発動したとたん、目の前でフラッシュを焚かれたような鮮烈な光が生まれた。
どんなものだろうかと注視していた俺はそのせいで完全に目が眩んでしまったのである。
「だ、大丈夫かい?」
「もう駄目かも知れない……あとは頼む」
完全に網膜が焼かれたと確信した。
これではもう二度と戦うことは出来ないだろう。
鬱ゲーモブ、完!
「アーディィィィィィィ!!!!」
俺はその場にばったりと倒れ込む。
そんな俺にリベラはトコトコと近づく。
「はいはい。回復回復っと」
そして回復魔法で一瞬にして目を治すと。
「アーディは昔から大袈裟だよね」
そう呆れた表情で俺を見下ろすのだった。
といっても今ミラが使った火魔法くらいなら村でも何人か使うことが出来る人は居る程度のものだったりする。
わかりやすく言えば生活魔法といった所だろうか。
生活魔法は他にも水を出したり土を固めたり色々あって、人によって使える属性は違う。
だが共通して言えるのは、その魔法が使えるからと言って劇的に何かが変わるわけではないということだ。
なんせ普通の人が使える魔法は火魔法で言えばせいぜいライターの火くらいしか出せない。
とてもではないが魔物と戦えるようなものではない。
「ちょっと聞きたいんだが」
「なんだい?」
「ミラって今どんな魔法が使えるんだ?」
しかしミラは勇者である。
ゲームでも序盤から弱めの火魔法であるファイヤーボールを覚えることが出来たし、最終的にはとんでもない火力の魔法も使えるようになっていた。
「火と光の生活魔法は使えるよ。火魔法のファイヤーボールも。あと回復なら初級までなら使えるよ」
「もう回復魔法も使えるのか」
「リベラちゃんの回復魔法に比べたら全然だけどね」
そりゃ回復専門の聖女様と比べちゃいけないが、それでも今の段階で回復魔法が使えるのは驚きだ。
なぜなら俺がドラファンをプレイしていたとき、勇者が回復魔法を覚えたのは聖女を助けて次の町に向かう頃だったからだ。
当時のプレイヤーからは「今頃回復魔法なんて覚えてももう遅い!」とか言われてたっけか。
なんせ既に聖女という回復役が仲間になった後である。
それ以前であればまだ使い道はあったというのに。
「やっぱりミラもリベラと同じでゲームのスタート時点より強くなってるんだな」
「ん? 何か変だったかな?」
俺の呟きが耳に入ったのかミラが心配げな声を上げる。
「いや、さすが勇者様だなって思ってな」
「やめてよね。君まで僕のことを勇者様とか言わないで欲しいよ。はい、松明」
俺はミラから火の付いた松明を受け取ると洞窟の中を照らす。
一本の松明では見える範囲は精々十メートルほど先までだ。
「ねぇねぇ、ミラって光魔法も使えるんでしょ?」
「うん、まぁ少しだけどね」
さっきの話を聞いていたリベラが俺とミラの話が終わったのを見て話しかけてきた。
「じゃあさ、松明なんて使わなくても光魔法でこの穴の中を明るくすれば良くない?」
「あっ」
「はっ」
そこに気がつくとは。
やはり天才か。
というか俺たちが間抜け過ぎただけだが。
「出来そうか?」
「覚えたばかりだからまだ余り使ったことないけど、とりあえずやってみるよ」
「光魔法って見たこと無いからわくわくするね!」
スミク村には生活魔法でも光魔法を使える人は居ない。
なので俺も光魔法で通路の中を照らすという考えが頭からすっぽりと抜けていたのだ。
「それじゃあいくよ! なるべく魔力を込めて――ライト!!」
「ふわぁっ」
「うおっ、眩しっ」
ミラが光魔法を発動したとたん、目の前でフラッシュを焚かれたような鮮烈な光が生まれた。
どんなものだろうかと注視していた俺はそのせいで完全に目が眩んでしまったのである。
「だ、大丈夫かい?」
「もう駄目かも知れない……あとは頼む」
完全に網膜が焼かれたと確信した。
これではもう二度と戦うことは出来ないだろう。
鬱ゲーモブ、完!
「アーディィィィィィィ!!!!」
俺はその場にばったりと倒れ込む。
そんな俺にリベラはトコトコと近づく。
「はいはい。回復回復っと」
そして回復魔法で一瞬にして目を治すと。
「アーディは昔から大袈裟だよね」
そう呆れた表情で俺を見下ろすのだった。
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