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モブは鈍感系主人公ムーブをかます
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「どうしてミラがいるんだ」
彼……いや、彼女の姿が目に入った瞬間、俺はその場で固まって動けなくなった。
「剣を持ってるってことは護衛だよな? でも彼女はまだ十四歳のはず」
この世界には前世的な意味での成人という区切りはない。
だがこのあたりの地域では十五歳を区切りとして危険な仕事を任されるようになる。
つまり俺が護衛としてハシク村へ行くことが出来たのは十五歳になったからで、十四歳のミラが護衛として商隊に付き添ってくるはずがない。
「もしかしてもう十五歳になったのか? いや、そうだとしても彼女が護衛役に任命されるなんてありえないだろ」
冒険者ギルドの雑用をこなし、村周辺で既に狩りをしているといっても彼女は女の子である。
そして例の事件で体を見たかぎり、とてもではないが護衛として戦えるような鍛え方をしてるとは思えなかった。
「あっ」
そんなことを考えてぼーっとミラの姿を見ていたせいだろうか。
馬車から降りて来た彼女と目が合ってしまった。
「アーディ!」
俺を見つけた途端、ミラは輝くような笑顔を浮かべ大きく手を振る。
それから雇い主であろう商人に何か一言二言残してから俺の方へ駆けてきた。
「ミラ。どうしてここに?」
戸惑いつつも俺はミラにそう尋ねる。
だが目の前までやって来た彼女は突然俺に向かって深々と頭を下げると
「ごめん!」
予想外に謝罪の言葉を口にした。
「あのあと君が倒れて大変なことになったって聞いたのにお見舞いに行けなくてごめん……」
「えっ、いや、あれは俺の自業自得だし、むしろ俺の方こそごめんな」
まさか謝らないといけないとずっと思っていた相手に先に謝られて俺は慌てて同じように頭を下げた。
俺がのぼせて倒れてしまったのは完全に俺自身の責任だ。
その原因となった彼女の裸を見てしまったことも含めてミラには一切落ち度はない。
「ミラが女の子だなんて知らなかった……なんて言い訳にもならないんだろうけど」
俺はミラを連れて広場の片隅にあるベンチに座る。
「とにかくあれは全て俺が悪い。だから謝られると逆に困る」
それからもう一度改めて謝罪の言葉を口にした。
「それならこっちも同じだよ。キミからの謝罪は手紙で十分受け取ったからね」
「手紙、読んでくれたんだな」
「……うん」
何故だろう。
手紙の話になった途端にミラの表情が変わって、俺から目を反らしてもじもじと指を動かし始めた。
「手紙の内容覚えてるかい?」
「なんか滅茶苦茶謝罪文を書きまくった記憶はあるけど」
スミク村に帰る日。
まだ俺は完全に復調出来ていなかった。
「熱が治まってなかったから何を書いたかまでは覚えてないんだ。ごめん」
「そっか」
「何か変なことでも書いてあったのか? だったら」
「いや、べ、べつに変なこと何て何も書いてなかったよ」
慌てた様にミラはそう行って両手を自分の顔の前で振る。
その態度があからさまにおかしくて、俺はいったい何を書いてしまったのだろうかと不安になった。
たしか手紙を出す前に内容はフェルラに確認して貰ったはずだ。
ミラが手紙の内容を教えてくれないなら、あとでフェルラに聞いて見るしかない。
しかし一体俺は熱で呆けた頭で一体何を書いてしまったのだろうか。
「何を書いちゃったんだろ。ヤバいな」
そんな風に焦っている俺の動きがよほどおかしかったのだろう。
何故か少し顔を赤くしたミラが俺を見て小さく笑う。
「むしろ嬉しいことしか――」
そしてその口元が微かにそんな言葉を紡いだことに俺は気付かなかったのだった。
彼……いや、彼女の姿が目に入った瞬間、俺はその場で固まって動けなくなった。
「剣を持ってるってことは護衛だよな? でも彼女はまだ十四歳のはず」
この世界には前世的な意味での成人という区切りはない。
だがこのあたりの地域では十五歳を区切りとして危険な仕事を任されるようになる。
つまり俺が護衛としてハシク村へ行くことが出来たのは十五歳になったからで、十四歳のミラが護衛として商隊に付き添ってくるはずがない。
「もしかしてもう十五歳になったのか? いや、そうだとしても彼女が護衛役に任命されるなんてありえないだろ」
冒険者ギルドの雑用をこなし、村周辺で既に狩りをしているといっても彼女は女の子である。
そして例の事件で体を見たかぎり、とてもではないが護衛として戦えるような鍛え方をしてるとは思えなかった。
「あっ」
そんなことを考えてぼーっとミラの姿を見ていたせいだろうか。
馬車から降りて来た彼女と目が合ってしまった。
「アーディ!」
俺を見つけた途端、ミラは輝くような笑顔を浮かべ大きく手を振る。
それから雇い主であろう商人に何か一言二言残してから俺の方へ駆けてきた。
「ミラ。どうしてここに?」
戸惑いつつも俺はミラにそう尋ねる。
だが目の前までやって来た彼女は突然俺に向かって深々と頭を下げると
「ごめん!」
予想外に謝罪の言葉を口にした。
「あのあと君が倒れて大変なことになったって聞いたのにお見舞いに行けなくてごめん……」
「えっ、いや、あれは俺の自業自得だし、むしろ俺の方こそごめんな」
まさか謝らないといけないとずっと思っていた相手に先に謝られて俺は慌てて同じように頭を下げた。
俺がのぼせて倒れてしまったのは完全に俺自身の責任だ。
その原因となった彼女の裸を見てしまったことも含めてミラには一切落ち度はない。
「ミラが女の子だなんて知らなかった……なんて言い訳にもならないんだろうけど」
俺はミラを連れて広場の片隅にあるベンチに座る。
「とにかくあれは全て俺が悪い。だから謝られると逆に困る」
それからもう一度改めて謝罪の言葉を口にした。
「それならこっちも同じだよ。キミからの謝罪は手紙で十分受け取ったからね」
「手紙、読んでくれたんだな」
「……うん」
何故だろう。
手紙の話になった途端にミラの表情が変わって、俺から目を反らしてもじもじと指を動かし始めた。
「手紙の内容覚えてるかい?」
「なんか滅茶苦茶謝罪文を書きまくった記憶はあるけど」
スミク村に帰る日。
まだ俺は完全に復調出来ていなかった。
「熱が治まってなかったから何を書いたかまでは覚えてないんだ。ごめん」
「そっか」
「何か変なことでも書いてあったのか? だったら」
「いや、べ、べつに変なこと何て何も書いてなかったよ」
慌てた様にミラはそう行って両手を自分の顔の前で振る。
その態度があからさまにおかしくて、俺はいったい何を書いてしまったのだろうかと不安になった。
たしか手紙を出す前に内容はフェルラに確認して貰ったはずだ。
ミラが手紙の内容を教えてくれないなら、あとでフェルラに聞いて見るしかない。
しかし一体俺は熱で呆けた頭で一体何を書いてしまったのだろうか。
「何を書いちゃったんだろ。ヤバいな」
そんな風に焦っている俺の動きがよほどおかしかったのだろう。
何故か少し顔を赤くしたミラが俺を見て小さく笑う。
「むしろ嬉しいことしか――」
そしてその口元が微かにそんな言葉を紡いだことに俺は気付かなかったのだった。
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