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モブは幼馴染とイチャコラする
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「ねぇアーディ。もうそろそろわたしも修行に連れていってくれない?」
満月の夜にレベル上げのためこっそり村を抜け出していることがバレてから数ヶ月、俺は時々リベラにそう頼まれるようになっていた。
あのときは村の外は危険で、は彼女を連れてはいけないと説得をした。
しかも目的地までの山道は険しく、十二歳の彼女の体力ではとてもたどり着けないからと告げると、彼女は渋々ながら諦めてくれたのだが。
「わたしだってずっと体を鍛えてたんだからね!」
そう言って腕をまくり、力こぶを見せつけるように腕を曲げるリベラに、おれは苦笑いを浮かべる。
彼女はあの日以来、俺の言葉を真に受けてしまったらしく彼女なりに体を鍛え続けていたらしい。
たしかに十三歳になったリベラは以前よりも体力も増え、力仕事もそれなりに出来るようになっていた。
それに合わせて回復魔法の効果も上がっているとも聞いている。
「でも、まだプニプニじゃないか」
俺は自慢げに見せつけてきたリベラの腕を指でつまんだ。
マシュマロのような柔らかさが指を伝わってくる。
いったいこの腕のどこに筋肉が隠されているのか謎なくらいだ。
「もうっ。女の子の腕を簡単に触らないでよっ」
「女の子って……ちょっと前まで一緒に風呂入ってただろうに」
「ちょ……ちょっと前って、何年前のことよ!」
真っ赤になって怒るリベラに腕を振り払われながら、俺はそのときのことを思い出そうとした。
が、色々な方面でアウトになりそうなので止めた。
「とにかく最近はわたしもみんなと一緒に山菜採りとか一日中してても疲れないくらいにはなったんだから、もう連れてって貰ってもいいよね?」
照れ隠しなのだろうか。
怒った顔のまま俺に向かって指を突きつけて迫るリベラに俺はあいまいな笑みを返す。
実際今の俺なら彼女を守りながら狩り場に向かうどころか、彼女を背負って行くことも可能だろう。
村の中ではゲームの強制力のせいかそこまで力が出せないが、外でなら片手でリベラを抱えて戦闘することも出来るはずだ。
でもリベラにあのコックルを見せるのは躊躇われる。
男の俺ですら初めてコックルの実物を見たときの衝撃はかなりのものだった。
人によっては一生もののトラウマになりかねないアレを見せていいのだろうか。
そんなことを考えながらリベラの追求をのらりくらりと躱しているときだった。
「あっ」
「テイラーさん。こんにちは」
「二人とも、相変わらず仲がいいな」
村の中央広場から警備長のテイラーがやってくると、笑いながらそう言った。
「べつに仲良くなんてないもん」
慌てた様に離れるリベラ。
「そうか? 俺には仲良くじゃれ合ってる様にしか見えなかったがな」
「じゃれあっ……」
何か反論しようとしたリベラだったが、それを遮るようにテイラーは俺の方を向いて話を切り出す。
「っと、そんなことを言いに来たわけじゃない。アーディ、そろそろ出発する時間だろ?」
「あっ、忘れてた」
「忘れてたじゃないだろ。お前が自分でハシク村までの護衛を志願したんだろうが」
ごちん。
頭にテイラーのゲンコツが落ちた。
「痛てて……何も殴ることないじゃない」
軍隊にいたせいか考え方も行動も体育会系なテイラーは子供相手でも容赦はしない。
といっても別に本気で殴っているわけではないし理不尽に暴力を振るうわけでもないのだが。
「フェルラもポグルスも東門の前でずっとお前を待ってるんだぞ」
まだ神託を受け覚醒する前の勇者が住んでいる隣村ハシク。
雑魚敵相手に戦闘訓練をする必要は無くなった俺だが、それでも一度この世界の勇者を見ておきたいとハシク村へ向かう荷馬車の護衛役として志願したのである。
「す、すぐにいきます! リベラ、話の続きは帰ってからな」
「仕方ないわね。でも帰ってきたら絶対に連れてって貰うからね」
「考えとくよ」
俺はリベラにこう答えた後テイラーに向き直ると「すみません。すぐにいきます」と頭を下げた。
「いつも素直に謝るのはお前のいいところだが……まぁいい。死ぬんじゃないぞ」
「またまた大袈裟な」
十五歳になった俺は既に一端の狩人として村の人たちには認識されるようになっていた。
そして馬車の護衛は村の狩人が交代交代に行う。
本来であれば俺の担当はまだ数ヶ月先の予定だったが、早く勇者を確認したい俺は無理矢理お願いして今回の任務を任せて貰ったのである。
「それがな。このまえ村に来た冒険者から聞いたんだが、最近各地で魔物の数が増えているらしくてな」
「数が……」
「このあたりは俺が巡回した限りまだ変化は見られないが、一応用心しておいた方がいい」
魔王が軍を上げて、この村を先兵が襲うまであと三年。
すでに魔王がその準備を始めていてもおかしくない時期だ。
「わかりました。十分気を付けていって来ます」
俺はテイラーにそう言ってもう一度頭を下げると急いで村の出口へ向かった。
しかしこの時の俺は知らなかった。
その先に待っている出会いによってこの世界が大きく揺らいでしまうことを。
満月の夜にレベル上げのためこっそり村を抜け出していることがバレてから数ヶ月、俺は時々リベラにそう頼まれるようになっていた。
あのときは村の外は危険で、は彼女を連れてはいけないと説得をした。
しかも目的地までの山道は険しく、十二歳の彼女の体力ではとてもたどり着けないからと告げると、彼女は渋々ながら諦めてくれたのだが。
「わたしだってずっと体を鍛えてたんだからね!」
そう言って腕をまくり、力こぶを見せつけるように腕を曲げるリベラに、おれは苦笑いを浮かべる。
彼女はあの日以来、俺の言葉を真に受けてしまったらしく彼女なりに体を鍛え続けていたらしい。
たしかに十三歳になったリベラは以前よりも体力も増え、力仕事もそれなりに出来るようになっていた。
それに合わせて回復魔法の効果も上がっているとも聞いている。
「でも、まだプニプニじゃないか」
俺は自慢げに見せつけてきたリベラの腕を指でつまんだ。
マシュマロのような柔らかさが指を伝わってくる。
いったいこの腕のどこに筋肉が隠されているのか謎なくらいだ。
「もうっ。女の子の腕を簡単に触らないでよっ」
「女の子って……ちょっと前まで一緒に風呂入ってただろうに」
「ちょ……ちょっと前って、何年前のことよ!」
真っ赤になって怒るリベラに腕を振り払われながら、俺はそのときのことを思い出そうとした。
が、色々な方面でアウトになりそうなので止めた。
「とにかく最近はわたしもみんなと一緒に山菜採りとか一日中してても疲れないくらいにはなったんだから、もう連れてって貰ってもいいよね?」
照れ隠しなのだろうか。
怒った顔のまま俺に向かって指を突きつけて迫るリベラに俺はあいまいな笑みを返す。
実際今の俺なら彼女を守りながら狩り場に向かうどころか、彼女を背負って行くことも可能だろう。
村の中ではゲームの強制力のせいかそこまで力が出せないが、外でなら片手でリベラを抱えて戦闘することも出来るはずだ。
でもリベラにあのコックルを見せるのは躊躇われる。
男の俺ですら初めてコックルの実物を見たときの衝撃はかなりのものだった。
人によっては一生もののトラウマになりかねないアレを見せていいのだろうか。
そんなことを考えながらリベラの追求をのらりくらりと躱しているときだった。
「あっ」
「テイラーさん。こんにちは」
「二人とも、相変わらず仲がいいな」
村の中央広場から警備長のテイラーがやってくると、笑いながらそう言った。
「べつに仲良くなんてないもん」
慌てた様に離れるリベラ。
「そうか? 俺には仲良くじゃれ合ってる様にしか見えなかったがな」
「じゃれあっ……」
何か反論しようとしたリベラだったが、それを遮るようにテイラーは俺の方を向いて話を切り出す。
「っと、そんなことを言いに来たわけじゃない。アーディ、そろそろ出発する時間だろ?」
「あっ、忘れてた」
「忘れてたじゃないだろ。お前が自分でハシク村までの護衛を志願したんだろうが」
ごちん。
頭にテイラーのゲンコツが落ちた。
「痛てて……何も殴ることないじゃない」
軍隊にいたせいか考え方も行動も体育会系なテイラーは子供相手でも容赦はしない。
といっても別に本気で殴っているわけではないし理不尽に暴力を振るうわけでもないのだが。
「フェルラもポグルスも東門の前でずっとお前を待ってるんだぞ」
まだ神託を受け覚醒する前の勇者が住んでいる隣村ハシク。
雑魚敵相手に戦闘訓練をする必要は無くなった俺だが、それでも一度この世界の勇者を見ておきたいとハシク村へ向かう荷馬車の護衛役として志願したのである。
「す、すぐにいきます! リベラ、話の続きは帰ってからな」
「仕方ないわね。でも帰ってきたら絶対に連れてって貰うからね」
「考えとくよ」
俺はリベラにこう答えた後テイラーに向き直ると「すみません。すぐにいきます」と頭を下げた。
「いつも素直に謝るのはお前のいいところだが……まぁいい。死ぬんじゃないぞ」
「またまた大袈裟な」
十五歳になった俺は既に一端の狩人として村の人たちには認識されるようになっていた。
そして馬車の護衛は村の狩人が交代交代に行う。
本来であれば俺の担当はまだ数ヶ月先の予定だったが、早く勇者を確認したい俺は無理矢理お願いして今回の任務を任せて貰ったのである。
「それがな。このまえ村に来た冒険者から聞いたんだが、最近各地で魔物の数が増えているらしくてな」
「数が……」
「このあたりは俺が巡回した限りまだ変化は見られないが、一応用心しておいた方がいい」
魔王が軍を上げて、この村を先兵が襲うまであと三年。
すでに魔王がその準備を始めていてもおかしくない時期だ。
「わかりました。十分気を付けていって来ます」
俺はテイラーにそう言ってもう一度頭を下げると急いで村の出口へ向かった。
しかしこの時の俺は知らなかった。
その先に待っている出会いによってこの世界が大きく揺らいでしまうことを。
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