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そろそろ幕引きとさせていただきます
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決着はあっけなくつきました。
常に外敵と戦い続けていた私たちと違い、王国軍も、王国軍に急遽招聘された国民兵も脆弱すぎて話にもなりません。
戦が始まってすぐに王国軍は私たち辺境領軍によってあっさりと蹴散らされてしまいました。
しかも私が最初に兵たちに命じていたおかげで、ほとんど相手方に死人は出ていません。
これは相当な実力差があるということなのですが、愚かなイグニス王子はそれを全く理解していない様子で、敗走する味方に酷い罵詈雑言を浴びせ続けていました。
「お前たち! 逃げたら家族ともども死刑にしてやるぞ! 戦え!! 死ぬまで戦えぇぇぇ!!!」
さすがに聞くに堪えないと思った私は、一人彼の乗る無駄に豪華な馬車に飛び乗ると馬車の上からイグニス王子を引っ張り出し地面に投げ捨てました。
「うるさいですわね。少し静かにしてくださいまし」
「ぶべっ」
無様な悲鳴を上げて必死に逃げる彼の姿はあまりに滑稽で、無理矢理徴兵されてきた国民兵たちの中にはその姿を指さし嗤う者さえ出てくる始末でした。
「お、お前たち! 早くその女を殺せぇぇぇぇ!!」
周りで狼狽える近衛たちに大声で怒鳴ります。
ですが、彼らも私が視線を少し向けるだけで怯えて斬りかかっても来ません。
これで王族を守る近衛というのだから情けない。
「貴方の命令なんて、誰も聞きたがらないみたいでしてよ」
「お前たち! 帰ったら極刑だぞ! 家族どころか一族全て斬首刑にしてやるっ!!」
私の言葉を聞いたイグニス王子は顔を真赤にして叫びます。
流石に極刑だと言われては彼らも命令に逆らうことは出来ないようで、私に剣を向けながらじりじりと迫ってきました。
ですが二十人ほどもいる近衛兵の中で、誰一人先陣を切ろうという者はいないようで。
「何をしている!」
「で、ですが王子。この化け物はたった一人で我が軍の兵士たちをなぎ倒すほどの猛者ですぞ」
「それがどうした。たかが女一人では無いか!」
王子が口から血の混じった唾を飛ばしながら怒鳴り続けます。
どうやら先ほど私が地面に引きずり下ろした時に口の中でも切ってしまったようでした。
「そのたかが女一人にこんな大軍を差し向けたのは貴方ではありませんか。イグニス王子」
私はイグニス王子を見下ろしながら嘲笑を浴びせます。
しかし、王子と近衛の相手をするのにも飽きてきました。
ばきっ。
私は途中で農民兵から奪った槍の矛先を手で引きちぎって簡易的な棍を作り上げます。
「それでは、そろそろ幕引きとさせていただきますわ」
そう宣言すると、棍を構えて一瞬で近衛の懐に飛び込み次から次へと鎧の上から殴りつけていきます。
ゴン! ゴン! ゴン!
一見するとただの棍なので、立派な近衛たちの鎧には何の効果も無いように思えます。
ですが、私は密かに棍に自らの魔力をまとわせていました。
「ぐわっ」
「ぎゃああっ」
私の魔力をまとった棍は、当たった場所からその丈夫な鎧の内部に衝撃を直接伝えるのです。
なので、どれだけ丈夫な防具を着けていても全く意味はありません。
「弱すぎますわ……」
数瞬も掛からず、二十名余りの近衛兵たちは地面に転がりました。
のこるはイグニス王子のみです。
「お待たせしましたわね」
私は震えながら座り込み、みっともなくも失禁している様子のイグニス王子の元へ棍を片手に歩み寄ると。
「楽しい楽しいおしおきの時間ですわ」
そう言って笑いかけたのでした。
常に外敵と戦い続けていた私たちと違い、王国軍も、王国軍に急遽招聘された国民兵も脆弱すぎて話にもなりません。
戦が始まってすぐに王国軍は私たち辺境領軍によってあっさりと蹴散らされてしまいました。
しかも私が最初に兵たちに命じていたおかげで、ほとんど相手方に死人は出ていません。
これは相当な実力差があるということなのですが、愚かなイグニス王子はそれを全く理解していない様子で、敗走する味方に酷い罵詈雑言を浴びせ続けていました。
「お前たち! 逃げたら家族ともども死刑にしてやるぞ! 戦え!! 死ぬまで戦えぇぇぇ!!!」
さすがに聞くに堪えないと思った私は、一人彼の乗る無駄に豪華な馬車に飛び乗ると馬車の上からイグニス王子を引っ張り出し地面に投げ捨てました。
「うるさいですわね。少し静かにしてくださいまし」
「ぶべっ」
無様な悲鳴を上げて必死に逃げる彼の姿はあまりに滑稽で、無理矢理徴兵されてきた国民兵たちの中にはその姿を指さし嗤う者さえ出てくる始末でした。
「お、お前たち! 早くその女を殺せぇぇぇぇ!!」
周りで狼狽える近衛たちに大声で怒鳴ります。
ですが、彼らも私が視線を少し向けるだけで怯えて斬りかかっても来ません。
これで王族を守る近衛というのだから情けない。
「貴方の命令なんて、誰も聞きたがらないみたいでしてよ」
「お前たち! 帰ったら極刑だぞ! 家族どころか一族全て斬首刑にしてやるっ!!」
私の言葉を聞いたイグニス王子は顔を真赤にして叫びます。
流石に極刑だと言われては彼らも命令に逆らうことは出来ないようで、私に剣を向けながらじりじりと迫ってきました。
ですが二十人ほどもいる近衛兵の中で、誰一人先陣を切ろうという者はいないようで。
「何をしている!」
「で、ですが王子。この化け物はたった一人で我が軍の兵士たちをなぎ倒すほどの猛者ですぞ」
「それがどうした。たかが女一人では無いか!」
王子が口から血の混じった唾を飛ばしながら怒鳴り続けます。
どうやら先ほど私が地面に引きずり下ろした時に口の中でも切ってしまったようでした。
「そのたかが女一人にこんな大軍を差し向けたのは貴方ではありませんか。イグニス王子」
私はイグニス王子を見下ろしながら嘲笑を浴びせます。
しかし、王子と近衛の相手をするのにも飽きてきました。
ばきっ。
私は途中で農民兵から奪った槍の矛先を手で引きちぎって簡易的な棍を作り上げます。
「それでは、そろそろ幕引きとさせていただきますわ」
そう宣言すると、棍を構えて一瞬で近衛の懐に飛び込み次から次へと鎧の上から殴りつけていきます。
ゴン! ゴン! ゴン!
一見するとただの棍なので、立派な近衛たちの鎧には何の効果も無いように思えます。
ですが、私は密かに棍に自らの魔力をまとわせていました。
「ぐわっ」
「ぎゃああっ」
私の魔力をまとった棍は、当たった場所からその丈夫な鎧の内部に衝撃を直接伝えるのです。
なので、どれだけ丈夫な防具を着けていても全く意味はありません。
「弱すぎますわ……」
数瞬も掛からず、二十名余りの近衛兵たちは地面に転がりました。
のこるはイグニス王子のみです。
「お待たせしましたわね」
私は震えながら座り込み、みっともなくも失禁している様子のイグニス王子の元へ棍を片手に歩み寄ると。
「楽しい楽しいおしおきの時間ですわ」
そう言って笑いかけたのでした。
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