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メインディッシュをいただきに参ります
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「このっ!! このっ!!! 何故当たらぬっ!!!」
無様にも何度も何度も長刀を大振りするガラハッド。
「その長刀はこの前のガラクタより少しはマシなものですの?」
「貴様ぁぁぁ!!」
「唾を飛ばさないでいただけます? 不潔ですわ」
私の簡単な挑発にすら乗ってしまうガラハッド。
本当にこんな男が最強であるわけがありません。
王都で定期的に行われる武闘会で何度優勝したのかはわかりませんが、辺境の守りを担っている四大辺境伯領からは誰もそれには出場しておりません。
というのも、伝統ある武闘会に辺境の野蛮人など出場させては格式が下がると先々代の王が出場を禁止したせいなのですが。
そのおかげでこのような勘違い男が生まれたのでしょう。
「さぞかしルールがあるお上品な遊戯ではお強かったのでしょうけれど」
私はそう口にしながらガラハッドの振るった長刀を足の裏でたたき落とします。
少しはしたないですが、実戦ではそんなことを考えていたら即命取りでございますし。
「ぐあっ!」
蹴った長刀に引きずられるように馬上から落ちそうになるのを必死にこらえるガラハッド。
ですがそのよろめいた彼の顎は、私にとっては絶好の獲物でした。
「がふっっっううっ」
私は愛馬を操り狙いを定めると長刀をたたき落とした足とは逆の足で、軽くガラハッドの顎を蹴り上げます。
同時に、彼の口から何本かの歯が飛んでいくのが見えました。
「手加減しましたのに」
なんという脆さでしょう。
これでしたら北の国の兵士の方がまだ頑丈ですわ。
「がはっ、きひゃまっ」
歯が抜けてしまったせいでしょうか。
ガラハッドの言葉がかわいらしくなってしまわれました。
ですが、今度は唾だけでなく血まで飛んで来るではありませんか。
「下品な血で汚されてはかないませんわね。イザベルたちの方もそろそろ終わりそうですし、貴方との遊びもこれくらいにしますわ」
「なんひゃと!!」
「だって弱すぎてぜんぜん面白くないんですもの」
「びゃっ、びゃきゃにしゅるにゃあああ!!」
私はガラハッドが飛ばす血の混じった唾を避けながら愛馬の背を蹴って彼の馬に飛び移ります。
「なっ!」
そして驚きの表情のガラハッドの後ろに乗り込むと、その後頭部を拳で殴り地面にたたき落としました。
「っっっ!!!????!!!???」
言葉にならない声を上げて地面をのたうち回るガラハッドを、私は彼の乗っていた馬の上から見下ろします。
この馬も中央では名馬なのでしょうが、この辺りの訓練された馬と比べると貧相と言わざるを得ませんわね。
「こんな馬、奪っても仕方ありませんわね」
私は馬から飛び降りると、馬から馬具を一瞬で取り外し野に帰してあげました。
「がふっ」
「あら、ごめんあそばせ」
馬から飛び降りた拍子にガラハッドの背中の上に乗ってしまったけれど、こんな所に寝ている方が悪いのです。
「アンネ様」
「ちょうど良かったわイザベル。このゴミをテントに放り込んでおいて」
「それでは他の者たちと同じく拘束してから運ぶように部下たちに指示しておきます。それでお嬢様はこれから王族の元へ行かれるのでございましょう?」
「もちろんですわ。あの人たちに、いったい今まで誰がこの国を守ってきて、そして誰に弓を引いたのかわからせてあげないといけませんもの」
私はそう言ってイザベルに笑いかけるとフォルスト領軍がバリケードを築いている方へ目を向ける。
そこでは既に領軍と王国軍との戦いが始まっているようで、剣戟の音がここまで聞こえてきます。
「さて、メインディッシュをいただきに参りますわよイザベル」
「お供します」
私たちはそう言って頷き合うと、王族が率いている王国軍へ向けて走り出しました。
無様にも何度も何度も長刀を大振りするガラハッド。
「その長刀はこの前のガラクタより少しはマシなものですの?」
「貴様ぁぁぁ!!」
「唾を飛ばさないでいただけます? 不潔ですわ」
私の簡単な挑発にすら乗ってしまうガラハッド。
本当にこんな男が最強であるわけがありません。
王都で定期的に行われる武闘会で何度優勝したのかはわかりませんが、辺境の守りを担っている四大辺境伯領からは誰もそれには出場しておりません。
というのも、伝統ある武闘会に辺境の野蛮人など出場させては格式が下がると先々代の王が出場を禁止したせいなのですが。
そのおかげでこのような勘違い男が生まれたのでしょう。
「さぞかしルールがあるお上品な遊戯ではお強かったのでしょうけれど」
私はそう口にしながらガラハッドの振るった長刀を足の裏でたたき落とします。
少しはしたないですが、実戦ではそんなことを考えていたら即命取りでございますし。
「ぐあっ!」
蹴った長刀に引きずられるように馬上から落ちそうになるのを必死にこらえるガラハッド。
ですがそのよろめいた彼の顎は、私にとっては絶好の獲物でした。
「がふっっっううっ」
私は愛馬を操り狙いを定めると長刀をたたき落とした足とは逆の足で、軽くガラハッドの顎を蹴り上げます。
同時に、彼の口から何本かの歯が飛んでいくのが見えました。
「手加減しましたのに」
なんという脆さでしょう。
これでしたら北の国の兵士の方がまだ頑丈ですわ。
「がはっ、きひゃまっ」
歯が抜けてしまったせいでしょうか。
ガラハッドの言葉がかわいらしくなってしまわれました。
ですが、今度は唾だけでなく血まで飛んで来るではありませんか。
「下品な血で汚されてはかないませんわね。イザベルたちの方もそろそろ終わりそうですし、貴方との遊びもこれくらいにしますわ」
「なんひゃと!!」
「だって弱すぎてぜんぜん面白くないんですもの」
「びゃっ、びゃきゃにしゅるにゃあああ!!」
私はガラハッドが飛ばす血の混じった唾を避けながら愛馬の背を蹴って彼の馬に飛び移ります。
「なっ!」
そして驚きの表情のガラハッドの後ろに乗り込むと、その後頭部を拳で殴り地面にたたき落としました。
「っっっ!!!????!!!???」
言葉にならない声を上げて地面をのたうち回るガラハッドを、私は彼の乗っていた馬の上から見下ろします。
この馬も中央では名馬なのでしょうが、この辺りの訓練された馬と比べると貧相と言わざるを得ませんわね。
「こんな馬、奪っても仕方ありませんわね」
私は馬から飛び降りると、馬から馬具を一瞬で取り外し野に帰してあげました。
「がふっ」
「あら、ごめんあそばせ」
馬から飛び降りた拍子にガラハッドの背中の上に乗ってしまったけれど、こんな所に寝ている方が悪いのです。
「アンネ様」
「ちょうど良かったわイザベル。このゴミをテントに放り込んでおいて」
「それでは他の者たちと同じく拘束してから運ぶように部下たちに指示しておきます。それでお嬢様はこれから王族の元へ行かれるのでございましょう?」
「もちろんですわ。あの人たちに、いったい今まで誰がこの国を守ってきて、そして誰に弓を引いたのかわからせてあげないといけませんもの」
私はそう言ってイザベルに笑いかけるとフォルスト領軍がバリケードを築いている方へ目を向ける。
そこでは既に領軍と王国軍との戦いが始まっているようで、剣戟の音がここまで聞こえてきます。
「さて、メインディッシュをいただきに参りますわよイザベル」
「お供します」
私たちはそう言って頷き合うと、王族が率いている王国軍へ向けて走り出しました。
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