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美肌の秘密
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「あるにきまってんだろ。風呂だってあるぜ」
中世というか昔のお風呂のイメージだと、お湯や水に浸した布で体を拭くとか、井戸の水を浴びるとか。
良くて蒸し風呂のイメージだったのだが驚きだ。
「じゃあルリジオンさんの次に入っていいですか?」
「構わねぇけどこの世界の風呂の使い方はわかるか?」
「わかりません」
「だろうな。じゃあ、ついてこい。教えてやる」
俺はルリジオンの後に付いて家の奥へ向かう。
リビングから奥へ延びる廊下の右側には二つの部屋があり、その片方は寝室。
もう片方は物置らしい。
左側の手前はトイレで、仕組みは昔懐かしボットン便所だ。
といっても和式じゃ無く洋式の座るタイプなのが逆に新鮮だった。
因みにトイレ後の始末ついては……水が使い放題で良かったとだけしか言わないでおこう。
この簡易洋式便器。
日本ではなかなかお目にかかれないが、実は俺は昔一度だけこれに似た洋式風ボットン便所を使ったことがあった。
休日に突然会社から呼び出され向かった先の現場にあったもので、元々は和式便座だったものの上に無理矢理洋式の便座を乗せたものだった。
どうやら洋式が出回り始めた頃にトイレ全体をリフォームするのは大変だからと作られた仕組みらしい。
そのトイレの横には小さめの物置があり、さらにその先にあるのが風呂場だった。
「こっちだこっち」
ルリジオンは脱衣所の中から手を振って俺を呼び寄せる。
俺は急いで彼の後を折って脱衣所へ入った。
大人二人が入れる程度の脱衣所には籐の籠らしきものが二つ置かれていて、右側についた扉を開くと石畳の上に大人一人がなんとか入れる程度の木製の風呂桶がたしかに存在していた。
しかも驚くことに固定式だがシャワーらしきものまで洗い場に付いている。
「凄い……」
「だろ? 普通の家にはこんなものは無いんだがな」
ルリジオンが自慢げに語った所によると、どうやらこの小さな家は元々開拓村に駐屯していた軍が建てたものだったそうだ。
住んでいたのは開拓軍を率いていた貴族の末子で、王国の中での身分はかなり低い立場だったせいでこんな辺境に送られたものの、待遇的にはかなり優遇されていたらしい。
「俺たちが来た時にはかなりボロボロだったし魔石も無かったんだが、ひと月くらいかけて全部俺様が修理したってわけだ」
「ルリジオンさんってなんでも出来るんですね」
「ん? 何でもは出来ねぇよ。ただ旅神官なんて根無し草やってると一人である程度のことは出来なきゃ野たれ死ぬだけだからな。必至で色々覚えただけだ」
ルリジオンはそう言いながらいきなり服を脱ぎだした。
「えっ」
「なんだよ。今から風呂入るんだから服着たままじゃ濡れちまうだろうが」
「あっ、そうか」
脱いだ服を雑にぽんぽんと籠に放り込んでいくルリジオン。
その体はまさに細マッチョといった感じで、ひと目見て鍛えられているのがわかる。
「ルリジオンさんって神官なんですよね?」
「それ以外に見えるか?」
「むしろそれ以外にしか見えませんが……」
神官というイメージからはかけ離れた鍛えられた体を見ながら俺は即答する。
「これでも昔は兄ちゃんのような体だったんだけどな。旅神官になって、生きるためには鍛えなきゃならなかったんだよ」
「なるほど。でも綺麗な体してますよね」
「なんだよ気持ち悪いこと言うんじゃねぇ」
そう言ってからルリジオンは突然俺から一歩離れると僅かに怯えた表情を浮かべ。
「ま、まさか兄ちゃん……そっちのケがあんのか?」
「そんなわけ無いでしょ!」
「だ、だよな……良かった」
「ただ単に魔物とも戦いながら旅して鍛えてるって言うのに、体は傷一つ無いなって思っただけで」
そうなのだ。
今まで聞いた話から想像するにルリジオンはかなりの修羅場をくぐり抜けてきている。
それこそ命の危機に陥ったことも一度や二度では無いはずだ。
だというのに目の前の彼の体にはそこにも傷らしい傷は見えない。
むしろ子供の頃に負った火傷の傷や、遊んでいて負った傷も残っている俺の方が多いくらいだ。
「そりゃお前。俺様はファロスの神官だぞ」
「?」
「お前さんにも書けてやったろうが。回復魔法だよ、回復魔法」
なるほど、合点がいった。
俺はルリジオンに直して貰った手に目を向ける。
あの時、かなり深くざっくりと切ってしまったはずなのに全く傷一つ無い手に。
「致命傷でも無けりゃ傷くらい自分ですぐに治せるからな。ファロスの神官で、それなりに回復魔法が使えるヤツなら大抵美肌だぜ?」
「美肌……」
30過ぎのおっさんが綺麗な肌を見せつけてくる。
「とりあえずルリジオンさんの体の秘密はわかったのでお風呂の使い方を教えてくださいよ」
「んあ、そうだったな。じゃあ風邪ひく前に教えてやるよ」
そうして洗い場と浴槽があるおかげで更衣室よりは広い風呂場でルリジオンから基本的な風呂の使い方を教わった。
大体は今まで使った魔道具と同じで、そのものに触れながら動けと念じるだけで良く。
シャワーも温度や湯量を脳内で念じればそれに合わせてお湯を出してくれる。
風呂桶は空っぽなので今日はシャワーで我慢するしか無いが、明日はせっかくなので久々にお湯を張ってくれるらしい。
そういう所は欧米っぽいなと思いつつ、日本人的にはシャワーだけだと疲れが取れる気がしないのでありがたい。
「出来れば毎日風呂には浸かりたいんですけど」
「んじゃ明日からお前が風呂係な」
という流れで俺はこの家の風呂係になし崩し的に決まってしまったのだった。
※回復魔法には美肌効果もあります 次回、湯上がりお食事会(予定)
中世というか昔のお風呂のイメージだと、お湯や水に浸した布で体を拭くとか、井戸の水を浴びるとか。
良くて蒸し風呂のイメージだったのだが驚きだ。
「じゃあルリジオンさんの次に入っていいですか?」
「構わねぇけどこの世界の風呂の使い方はわかるか?」
「わかりません」
「だろうな。じゃあ、ついてこい。教えてやる」
俺はルリジオンの後に付いて家の奥へ向かう。
リビングから奥へ延びる廊下の右側には二つの部屋があり、その片方は寝室。
もう片方は物置らしい。
左側の手前はトイレで、仕組みは昔懐かしボットン便所だ。
といっても和式じゃ無く洋式の座るタイプなのが逆に新鮮だった。
因みにトイレ後の始末ついては……水が使い放題で良かったとだけしか言わないでおこう。
この簡易洋式便器。
日本ではなかなかお目にかかれないが、実は俺は昔一度だけこれに似た洋式風ボットン便所を使ったことがあった。
休日に突然会社から呼び出され向かった先の現場にあったもので、元々は和式便座だったものの上に無理矢理洋式の便座を乗せたものだった。
どうやら洋式が出回り始めた頃にトイレ全体をリフォームするのは大変だからと作られた仕組みらしい。
そのトイレの横には小さめの物置があり、さらにその先にあるのが風呂場だった。
「こっちだこっち」
ルリジオンは脱衣所の中から手を振って俺を呼び寄せる。
俺は急いで彼の後を折って脱衣所へ入った。
大人二人が入れる程度の脱衣所には籐の籠らしきものが二つ置かれていて、右側についた扉を開くと石畳の上に大人一人がなんとか入れる程度の木製の風呂桶がたしかに存在していた。
しかも驚くことに固定式だがシャワーらしきものまで洗い場に付いている。
「凄い……」
「だろ? 普通の家にはこんなものは無いんだがな」
ルリジオンが自慢げに語った所によると、どうやらこの小さな家は元々開拓村に駐屯していた軍が建てたものだったそうだ。
住んでいたのは開拓軍を率いていた貴族の末子で、王国の中での身分はかなり低い立場だったせいでこんな辺境に送られたものの、待遇的にはかなり優遇されていたらしい。
「俺たちが来た時にはかなりボロボロだったし魔石も無かったんだが、ひと月くらいかけて全部俺様が修理したってわけだ」
「ルリジオンさんってなんでも出来るんですね」
「ん? 何でもは出来ねぇよ。ただ旅神官なんて根無し草やってると一人である程度のことは出来なきゃ野たれ死ぬだけだからな。必至で色々覚えただけだ」
ルリジオンはそう言いながらいきなり服を脱ぎだした。
「えっ」
「なんだよ。今から風呂入るんだから服着たままじゃ濡れちまうだろうが」
「あっ、そうか」
脱いだ服を雑にぽんぽんと籠に放り込んでいくルリジオン。
その体はまさに細マッチョといった感じで、ひと目見て鍛えられているのがわかる。
「ルリジオンさんって神官なんですよね?」
「それ以外に見えるか?」
「むしろそれ以外にしか見えませんが……」
神官というイメージからはかけ離れた鍛えられた体を見ながら俺は即答する。
「これでも昔は兄ちゃんのような体だったんだけどな。旅神官になって、生きるためには鍛えなきゃならなかったんだよ」
「なるほど。でも綺麗な体してますよね」
「なんだよ気持ち悪いこと言うんじゃねぇ」
そう言ってからルリジオンは突然俺から一歩離れると僅かに怯えた表情を浮かべ。
「ま、まさか兄ちゃん……そっちのケがあんのか?」
「そんなわけ無いでしょ!」
「だ、だよな……良かった」
「ただ単に魔物とも戦いながら旅して鍛えてるって言うのに、体は傷一つ無いなって思っただけで」
そうなのだ。
今まで聞いた話から想像するにルリジオンはかなりの修羅場をくぐり抜けてきている。
それこそ命の危機に陥ったことも一度や二度では無いはずだ。
だというのに目の前の彼の体にはそこにも傷らしい傷は見えない。
むしろ子供の頃に負った火傷の傷や、遊んでいて負った傷も残っている俺の方が多いくらいだ。
「そりゃお前。俺様はファロスの神官だぞ」
「?」
「お前さんにも書けてやったろうが。回復魔法だよ、回復魔法」
なるほど、合点がいった。
俺はルリジオンに直して貰った手に目を向ける。
あの時、かなり深くざっくりと切ってしまったはずなのに全く傷一つ無い手に。
「致命傷でも無けりゃ傷くらい自分ですぐに治せるからな。ファロスの神官で、それなりに回復魔法が使えるヤツなら大抵美肌だぜ?」
「美肌……」
30過ぎのおっさんが綺麗な肌を見せつけてくる。
「とりあえずルリジオンさんの体の秘密はわかったのでお風呂の使い方を教えてくださいよ」
「んあ、そうだったな。じゃあ風邪ひく前に教えてやるよ」
そうして洗い場と浴槽があるおかげで更衣室よりは広い風呂場でルリジオンから基本的な風呂の使い方を教わった。
大体は今まで使った魔道具と同じで、そのものに触れながら動けと念じるだけで良く。
シャワーも温度や湯量を脳内で念じればそれに合わせてお湯を出してくれる。
風呂桶は空っぽなので今日はシャワーで我慢するしか無いが、明日はせっかくなので久々にお湯を張ってくれるらしい。
そういう所は欧米っぽいなと思いつつ、日本人的にはシャワーだけだと疲れが取れる気がしないのでありがたい。
「出来れば毎日風呂には浸かりたいんですけど」
「んじゃ明日からお前が風呂係な」
という流れで俺はこの家の風呂係になし崩し的に決まってしまったのだった。
※回復魔法には美肌効果もあります 次回、湯上がりお食事会(予定)
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