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二部1章 ラビニット

ガリュム国陥落

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ガリュム国には、敗残の兵から王の死の報告を受けていた。

「ギリス宰相殿、如何致しますか?」

「次の王ですかー。」

「第一王子リコウ様か、第二の王子サリュウ様に?」

「カーテル軍務卿とデゲル財務卿との争いになりますな。」

「ガスもライドも一つ忘れてますよ。」

「まさか・・・」

「第三王子ザルサ様?」

「第四妃サバンサにも日が降りるのが、次の王戦になるぞ。」

このように報告を受けた王族達の裏の攻防が、密かに始まった。
ガリュム王の死は、新たな王を決める為の儀式の様なのでもある。
これが、普通の討伐して返り討ちされた場合ならば。

この敗残の残存兵の数は減っておらず、ほぼ行った時と変わらない。
王だけ討たれて、帰って来ただけだと考えていた。
上層部は、だ。

だから、次の王は?とか、王の墓をどうするか?程度の議題で紛糾などで遺体の帰りを待っていたのだろう。

まさか、帰って来る間に国が乗っ取られるとは思わなかっただろう。
増えた兵達が、死の森に近い村や街に行って奴隷紋章を使うとは思う事は無いし、奴隷紋章って何だろうという知識しか無い。
よって、その数が数百万の大軍となって王都に押し寄せる考えも無い。

いや、そんな知識があればこの世界を支配している者が居ただろう。
篤郎が日本に転生して、思いつきで改変した奴隷紋章。この紋章の恐ろしさが、密かに広がっていたのだ。

「クリカラ様、ガリュム国に入りましたがどうするのですか?」

「サムリュウ伯爵、既に準備は進んでいます。」

「このまま進軍で?」

「はい。早目に国を獲りますよ。」

「はっ!」

敗走して3日目で、ガリュム国の大半の住民に奴隷紋章を施していた。

4日目には、何千万の民が王都に移動を開始していた。

5日目には、敗残の兵達が王都に着いた。

この兵の戻りが早いのに疑問を抱いたのは、ギリス宰相だけであった。
何故なら、ガリュム国は暗躍の為に動いているからだ。

「ギリス宰相様、サムリュウ伯爵が面会を求めております。」

「ふむ、会おう。」

ガスがサムリュウ伯爵と兵を連れて、ギリス宰相の待つ部屋に入った。

「サムリュウ伯爵をお連れしました。」

「王の遺体を運びました。」

「ご苦労、サムリュウ伯爵。」

「はっ。」

「それで、兵士達の被害が少ないのは?」

それまで、気配を消していた兵が前に出てきた。

「何か?」

「お話しをします。」

「・・・述べよ。」

「兵の被害が少ないのは、加減を試した結果です。ガリュム王の死は、加減したのに巻き込まれただけです。それが、今回の攻めた代償を貰いに来ました。」

「はっ?」

「私では、ルナお姉様の力に及びませんので、数名を立てなければなりませんでした。」

「な、何がだ?」

ギリス宰相の意思は、そこまでであった。

いや、ギリスだけで無く王都全ての意思が止まったのだ。

奴隷紋章という術式が、王都を覆い尽くした。
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