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二部1章 ラビニット

リバクゼル軍出陣

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リバクセル8世は、壇上に上がると、

「親愛する我が友よ!我が王朝は、何代も栄華と滅亡を繰り返した。三代前に、リグゼント家から王朝を取り返したが、安定を求めた訳ではない!それは龍の力を取り戻し、我が家が統一せんが為の事だった。そう、夢だった事が夢では無くなったのだ!遂に、我が悲願たる龍の宝を持ち出した輩が現れた!」

どよめき出す兵士達だが、

「幸運な盗人のようだが、宝を取り返し最強な国になるのだ!よって、この遠征は遊びでは無い!大陸中の領土を手にし支配する、そして統一国家になるのだ!」

一瞬、静かになったが壮大な夢を語られた王の姿に、重臣達から拍手がならされる。
その後から、慌てる様に兵士達からも惜しみ無い拍手と王を称える言葉が出される。

が、リバクセル8世が拳を突き出すと、歓声が止まった。

「此れより第一陣から出撃せよ!立ち塞ぐ者を蹴散らし、我が覇道を切り開くのだ!」

兵の歓声が、おう!との声で統一されると、第一陣が出陣を開始した。

第一陣は、騎馬隊五千に弓兵が一千、歩兵二千の大部隊である。この隊は猛将たるスデゥーデン伯爵が率いる。

第二陣は、騎馬隊二千に歩兵六千の後続の為の地均し部隊は、リッキー男爵が率いる。

第三陣は、リバクセル8世が率いる。騎馬隊三千に弓兵一千と歩兵が六百になる。二万の軍勢を率いての出陣である。
普通なら、盗賊には過ぎたる部隊である。

普通なら。
そして、考えるべきだったのだ。
龍から宝を盗める者が、数万年間にただの一人も居なかった事に。







ーーーーーーーーー







「うーん、情報が足らんな。」

既に南東西から人を集めたが、詳しい情勢等は分からなかった。
金龍の頭にも、世間の事が分からなかった。
人も分からない。
軍人を集める方が良いのだろうが、そんな簡単には手に入るモノではない。

「そんな簡単には無理だな。帰した兵士も、情報はそんなに持って無かったし。」

大抵のこの世界の一般的な常識は手に入れたが、そんな常識を守る事は不可能だ。
誰かが上に立つのは良いが、種が上に立つのは要らない。
それも賢い馬鹿になると、侵略を繰り返して宗教や民族だけで争うとなれば、馬鹿なである。
主義主張よりも、隣人と仲良くしたいだけだ。
もちろん、それは互いを尊重しあい尊敬できる事が重要である。
非難やさげずむや暴言、暴力をする人とは仲良くは出来ない。

宗教や肌の色でも同様だ。

もっと馬鹿なのは、何でも戦争や占領をしたがる国家だ。

前の世界では、遊びで何となく治める結果だった。今回はー、今回も、勢いで弱い者を守るなんて。

「うあぁぁぁ!」

何でだろう?日本に居た時は、真面目な普通の高校生だった(異常です。変わり者常習犯篤郎:旧友談)のに、元の世界では懐かしさに託つけて、色々な事をしたんだっけ。
でも、この世界では手を出さない様にしたかったのに、こんなに難民を引き取るとか・・・・馬鹿だよねー。

「うー。ま、いっか。さて、時期が春らしいから、今から食糧を植えていかないと。他に甜菜とかの栽培もしたいな。」

篤郎は気分を変えるべく、栽培の事を考える。

「何で救うかなー。」

過去の自分から考えれば、甘い事をしている。ルナ達のサポートも無いのに、人助けとかは甘い。
負けるとかよりも、死を迎えたら終わりだ。何の因果だが、記憶が在るから人よりちょっと賢いだけだ。
その賢さも、人助けしてるのだから馬鹿でしかない。

「やっぱり、あれからだな。うん、だとしたらこの甘さも仕方ないのか。」

本来、人は自身の過去を振り返らない。
書物を読めばそれは間違いで、自分の過去を振り返り研鑽する事で豊かな人生を歩む事が出来る。
が、やらないので何度も失敗を重ねてしまう。

対策は必要だ。
特に知らない場所では、自分を見失うと死んでしまう。遅かれ、自分の過去を振り返り研鑽をする時が来た。

「あー、静かに暮らすのは無理だな。騒ぎを大きくしないで、この森でのんびりしてみるか。」

そう、誓うのであった。
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