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二部1章 ラビニット

動きだした

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「な、なんだと・・・・」

マティア・リリクゼ・リバクセル8世王は、飲み掛けの杯を落とした。
脳内に、龍の宝を持ち出された事を告げられたからだ。

「誰か!誰か居るか!」

「はっ!」

兵士が入ると、リバクセル8世は、

「急ぎ兵を集めろ!」

「は、はっ!」

と命令すると、外を見つめた。
龍人の悲願でもある、龍の宝が世に出たのだ。

数千年も龍に守られた宝を狙い、死の森に数百、数千万が死んだ。その死の地から死の森と呼ばれる様になった。

そこから宝が出たのだから、千載一遇のチャンスでもある。

龍に成れる近道になのだ。このチャンスを逃す為には、軍を動かさなくてはならない。

「この時が来るとは。必ず宝は我が手に!」

リバクセル8世の血が騒いだ。






ーーーーーーー





死の森の南、フォレスト王国のフォレスト王もその事を知った。
知ると襖を開けて、

「エンブリを呼べ!」

「はっ!」

と号を撃った。

「父上!」

「ラグドールか。」

「龍玉の伝えが!」

「分かっておる。そち等も仕度を済ませよ。」

「はっ!」

フォレスト王は、庭を見つめていた。
龍の宝が動いたとなると、戦が始まる。避ける為にも、宝は奪わなくてはならない。他所の国に奪われたら、我が国の民も死ぬだろう。

いや、幾つの国が生かされるのか、考えただけでも憂鬱になる。

影が揺れた。

「森の見張りからは?」

「狼煙は上がっておりません。」

「くっ!先に森に入るか。」

「恐れながら、無用に森に入るのは如何かと。」

「しかしだな。」

影の手が上がった。

「梟より、木菟と島梟を放ちました。焦ってはいけません。」

「情報が先か?」

「龍が倒されたとも聞こえません。」

「なるほどー、良し、情報を集めよ。」

「はっ。」

影が消えると、エンブリが現れ膝を突いた。

「お呼びにて。」

「エンブリ、軍の仕度を整えよ。」

「何故にですか!」

「龍玉が世に放たれた。」

「ま、真で?」

「3日後に出陣する。」

「はっ!」

エンブリは礼をしてから、下がった。

「戦乱の世に移るのか。」

フォレスト王は、一滴の泪を流した。





ーーーーーーー





「ふ、ふはははははっ。」

膝を叩いて、ライバ・フォー・ランバルト王は笑い出した。

「王!」

「とうとう、狂ったか?」

家臣が、ため息を付いた。

「ひどくね!俺は王様なのよ?」

「なら仕事してください。」

「書類の後は面談ですよ。」

「いやいや、それ処じゃ無いんだよ?龍の宝が取られたみたいだけど。」

「なんですと!」

「い、一大事では無いですか!」

「どうしようか?」

「何を言ってるのですか?」

「王なのですから、先陣を切りなさい。」

「あ、姉上~。」

「む、今来ましたね。」

「軍を手配します。貴方は書類を仕上げておきなさい。」

「は、はい。」

家臣として、弟の補佐をしていた姉達は燃えていた。
もちろん、ランバルト王はそんな姉上達の姿を見るのは初めてだ。

とりあえず、書類に目を通していく。

獰猛な姉達の姿に、逆らう気も無い。





ーーーーーーー





西の暴君、ガリュム王は血を拭いながら聞いていた。

「くくくくっ、宝が盗まれたか。あっはははははは!」

そう言うと、マントを羽織る。

「退屈な日々から、戦の日々になるな。今度は人間よりも歯応えのある武人と戦いたいな!」

部屋から外に出ていく。
部屋の中から、無機質な目が幾つもガリュム王の姿を見ていた。

こうして、死の森に隣接した4つの国が動く事になった。
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