鴉喰の華 ～日本に転生したのに、異世界に転移させられた！～

第１１章 モンスター

面倒な逃避行 ９

「んっ、はっ！晩飯ー！」

篤郎が飛び起きたのだが、そこには日が昇る光景があった。
その雄大な光景に、暫し篤郎は飲み込まれていた。

「おおー！」

闇から赤い光と黄い光と変わり、そして日の光へと変わる。
どんなに人が背伸びしようが、その絶対的な風景には勝てない事を悟のだった。

「おはようございます、魔王様。」

「おはよう。」

魅力された風景に、言葉は無い。
いや、言葉を出せば、その風景を汚してしまう。
言葉で表せない風景はある。
だが、臨場感や風、匂いや気温は誰にも表現は不可能だろう。
あの風景は、今だけのモノなのだから。

「上りましたね。」

「良し、さあーしよう！」

何をとぬらりひょんは思ったが、篤郎がカバンに向かうのを見て何をするのか理解した。

「あんな事があったのに、流石です魔王様。」

ぬらりひょんの目に、光るモノがあった。
が、篤郎は倒れた事により忘れていたのだ。何で倒れたのかを・・・・

「ふんん♪」

と朝は、フレンチトーストと厚ベーコンに野菜、飲み物は牛乳とフルーツジュースでと準備を進めていた。
匂いにしても普通な物なのだが、何故か三人が近寄っているのだ。

「パンの中にチーズを入れて、玉子を潜らせてからホットサンドに挟む。ベーコンは茹でてから、弱火で焼き最後に塩コショウで仕上げる。」

「お皿は、どのような？」

「出来れば、ワンプレートにしたいな。大皿よりも長方形の皿かな。」

「分かりました。色は白で宜しいですか？」

「それで。」

野菜で、花を意識した並べてトーストを盛りベーコンを乗せる。

少し味気無いので、小松菜をペーストにして、バルサミコ酢と塩を混ぜた簡単ソースを飾りに垂らす。例えば、ハートの形を何個も並べてから真ん中につまようじみたいな物で筋を付ければ、高級フレンチの様な感じになる。

「うん、出来た！」

「テーブルの準備も出来ております。」

「では、並べようか。」

テーブルに並べ出した時に、ぬらりひょんが、

「お嬢様方は、顔を洗って髪を整え服を着替えないと、ご飯は抜きですぞ。」

と言うと、篤郎の周りにあった異様な雰囲気が消えた。

「こ、こえー。」

「困った奴等ですな。」

「こ、困った？」

「ええ、女達が魔王様をじっと見ておりました。」

「えっ？」

「あの雰囲気は、餓鬼と同じでした。」

篤郎の背筋に寒気が走る。

「何か恐いな。」

「早目に対策をしませんと、諸々と危ないかと思います。」

「嘘でしょ？」

真面目な顔をするぬらりひょんを見て、今後の対応に不安が出てきた。
何か対策をかと篤郎は黙ってしまった。

「魔王様。」

「すまん、少し外す。」

篤郎は、テーブルから離れた。
今後の対応の前に、この事態となった事が何なのか？が分からないのだ。

答えを耳にしたのに、過度の恐怖により答えが分からなくなる事がある。篤郎とて、なったら精神的にやられて忘れてしまう。

解らない篤郎は、結局は面倒に着き纏われる事となった。

そう、恐怖と付き合わなければならない。

「魔国に帰りたい・・・・」