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第11章 モンスター
妙手
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ワンブーヘ王からの魅惑の招待状が、各貴族と商人達に届いた。
それは、『聖女の御披露目会』という、夜会が行われると言うものだ。
此れには、断る貴族や商人は居ない。
ワンブーヘ王の夜会なら断りもあったろうが、今をときめく聖女と会えるとなれば、話が違う。
貴族達は、後の作戦と顔を抑える為に会う必要があるし、商人達は聖女の価値に有用性を見いだしていた。
「やはり、上手くいったか。」
「第一段階です。此処からが肝ですぞ。」
「うむ。聖女の方は?」
「何でも、紙とインクを求められてから部屋にとじ込もっているとか。」
「そうか。メイドに時間までに仕上げる様に伝えよ。」
「分かりました。」
「酒は?」
「上物の赤ワインと白ワインがあります。」
「水、そう、水も頼む。」
「分かりました。」
「後は、時間だけか。」
ワンブーヘ王は、広い執務室で一人ごちていた。
最大のショーとなるか、阿鼻叫喚となるかの賭けなのだから。
リザリテ宰相は、細々な指示をしていた。
料理の味付けから人の配置に、招待した客の確認までをこなしていた。
「宰相、ラクター商会よりワインが届きました。」
「ほう、味は?」
「中々いけるとか。」
「味見をしてないのか?誰か、盃を持て!」
メイドが持って来た盃に、リザリテは酒を酌んでから匂いを確認した。
「匂いは良いが、少し色が悪いな。此れは、振る舞い酒として扱おう。ラナリック商会からは?」
「まだ届いていません。」
「来たら、味見をしますので。」
「分かりました。」
リザリテは動いた。開場の汚れを見たり、兵達の振る舞いにも注意をしていた。
そう、ワンブーヘ王とその日から会う事をしなかったのだ。
王の報告にも怪しい動きもなく、正常に動いていたのだ。
王など構っている時間が無い程の、量をこなしていた。
この動きに貴族達も、今回の夜会は安全なものと確信した。
一部には、王の交代を囁く者もいたが、特段なにも起こらず準備は続いていた。
そして、大貴族の中でも有能なトムハンクス公爵は、晴れぬ疑いにやきもきしていた。
「何を企んでいるのだ、ワンブーヘめ!」
「落ち着いて下さい。」
「リザリテは何か策を練っているはずだ!」
「密偵の報告では、勤勉に動いている様ですが。」
「それに、厠にも供を連れて行くので、暗躍は出来ませんぞ。」
「暗躍しても、王宮の内外には我等の手の者がいますし、商人達の引き込みも上手くいってます。他に何を疑うのですか?」
「ワンブーヘの様子は?」
「はい。書状作りと、挨拶文の作成に掛かってるとか。」
「ほう、内政の動きは?」
「今は、止まっている様です」
「何を企んでいるのだ!」
「公爵様、ワンブーヘ王はまだ何かを仕掛けると?」
「仕掛けるに何も、王の味方は宰相殿のみ。居なくなれば、招待状を書くだけの王とは、わははははははっ!」
「「「わははははははっ!」」」
トムハンクス公爵以外は笑った。いや、笑いたいのだが、まだ笑えない気持ちが勝っていた。
「笑えるか!」
「落ち着いて下さい、公爵様!」
「なんだ!」
「リザリテ宰相とワンブーヘ王には監視者が着いて居るのです。その上に、此方の手の者も動いているのに、何を心配するのですか?」
「それは、そうだが。」
「万が一でも何かあっても、我等の私兵も城に来てる手筈になっております。逃げ場が無いのに、王だけで、どうにかなるとでも?」
「それもそうか。」
「私達は貴方様を王として崇め、聖女を旗に大国に昇るのです!ワンブーヘ王の治世で事は出来ませんぞ!」
「そうか。そうだな。」
この時が、トムハンクス公爵の分岐点であった。
誰かの意見に任せるのでは無く、自分の考えを通す事を重要だと考えるべきであった。
そして、配下に自分と同様かそれ以上の心配性の者が居れば、別の話もあっただろう。
最初のミスが、自身のみならず全ての者の失敗になる事、なんて事とは思わなかっただろう。
生死とは、実は簡単な事なのかもしれない。
それは、『聖女の御披露目会』という、夜会が行われると言うものだ。
此れには、断る貴族や商人は居ない。
ワンブーヘ王の夜会なら断りもあったろうが、今をときめく聖女と会えるとなれば、話が違う。
貴族達は、後の作戦と顔を抑える為に会う必要があるし、商人達は聖女の価値に有用性を見いだしていた。
「やはり、上手くいったか。」
「第一段階です。此処からが肝ですぞ。」
「うむ。聖女の方は?」
「何でも、紙とインクを求められてから部屋にとじ込もっているとか。」
「そうか。メイドに時間までに仕上げる様に伝えよ。」
「分かりました。」
「酒は?」
「上物の赤ワインと白ワインがあります。」
「水、そう、水も頼む。」
「分かりました。」
「後は、時間だけか。」
ワンブーヘ王は、広い執務室で一人ごちていた。
最大のショーとなるか、阿鼻叫喚となるかの賭けなのだから。
リザリテ宰相は、細々な指示をしていた。
料理の味付けから人の配置に、招待した客の確認までをこなしていた。
「宰相、ラクター商会よりワインが届きました。」
「ほう、味は?」
「中々いけるとか。」
「味見をしてないのか?誰か、盃を持て!」
メイドが持って来た盃に、リザリテは酒を酌んでから匂いを確認した。
「匂いは良いが、少し色が悪いな。此れは、振る舞い酒として扱おう。ラナリック商会からは?」
「まだ届いていません。」
「来たら、味見をしますので。」
「分かりました。」
リザリテは動いた。開場の汚れを見たり、兵達の振る舞いにも注意をしていた。
そう、ワンブーヘ王とその日から会う事をしなかったのだ。
王の報告にも怪しい動きもなく、正常に動いていたのだ。
王など構っている時間が無い程の、量をこなしていた。
この動きに貴族達も、今回の夜会は安全なものと確信した。
一部には、王の交代を囁く者もいたが、特段なにも起こらず準備は続いていた。
そして、大貴族の中でも有能なトムハンクス公爵は、晴れぬ疑いにやきもきしていた。
「何を企んでいるのだ、ワンブーヘめ!」
「落ち着いて下さい。」
「リザリテは何か策を練っているはずだ!」
「密偵の報告では、勤勉に動いている様ですが。」
「それに、厠にも供を連れて行くので、暗躍は出来ませんぞ。」
「暗躍しても、王宮の内外には我等の手の者がいますし、商人達の引き込みも上手くいってます。他に何を疑うのですか?」
「ワンブーヘの様子は?」
「はい。書状作りと、挨拶文の作成に掛かってるとか。」
「ほう、内政の動きは?」
「今は、止まっている様です」
「何を企んでいるのだ!」
「公爵様、ワンブーヘ王はまだ何かを仕掛けると?」
「仕掛けるに何も、王の味方は宰相殿のみ。居なくなれば、招待状を書くだけの王とは、わははははははっ!」
「「「わははははははっ!」」」
トムハンクス公爵以外は笑った。いや、笑いたいのだが、まだ笑えない気持ちが勝っていた。
「笑えるか!」
「落ち着いて下さい、公爵様!」
「なんだ!」
「リザリテ宰相とワンブーヘ王には監視者が着いて居るのです。その上に、此方の手の者も動いているのに、何を心配するのですか?」
「それは、そうだが。」
「万が一でも何かあっても、我等の私兵も城に来てる手筈になっております。逃げ場が無いのに、王だけで、どうにかなるとでも?」
「それもそうか。」
「私達は貴方様を王として崇め、聖女を旗に大国に昇るのです!ワンブーヘ王の治世で事は出来ませんぞ!」
「そうか。そうだな。」
この時が、トムハンクス公爵の分岐点であった。
誰かの意見に任せるのでは無く、自分の考えを通す事を重要だと考えるべきであった。
そして、配下に自分と同様かそれ以上の心配性の者が居れば、別の話もあっただろう。
最初のミスが、自身のみならず全ての者の失敗になる事、なんて事とは思わなかっただろう。
生死とは、実は簡単な事なのかもしれない。
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