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第11章 モンスター

帰れる者

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「争いはどうなっている?」

「ほぼ、戦乱状態になってます。」

「旅に出ても?」

「ロケットですか?」

「うおぉぉい!」

「Jー1改の試作機か、Iー35の試作機をお薦め致します。」

「お、おかしいよね?おかしいよね!」

「緯度経度はランダム、発射準備万端ですお姉様。」

「誤差は・・・・マスターですから。」

「安心ですね。」

「ええっ!安心じゃないよね!お、おい?き、聞いてる?」

篤郎は、毎回の事を思い出していた。
この三姉妹は、親を研究材料に見る時がある。
特に、人体実験を行う時などは篤郎を使う。
前の実験から二月も経ったのに、試験を行うんだと思った。いや、危機感を感じていた。

「マスターを放出するのに問題は?」

「任せない、マスターは私がサポートします。」

「流石はお姉様です!」

「・・・・・・・」

話を聞かされて、安心などは出来ない。寧ろ、絶望を受け入れる感じを受けてしまう。
篤郎にとっての三姉妹だが、三姉妹だから篤郎を好きに扱えると、思っている節がある。
いや、そんな事を出来るのは、この娘達だからだ。と言うか、それを許している篤郎が馬鹿なだけなのだが。

因みに、答えは聞いてくれない。

返答よりも逃亡を。
判断を誤るのは、時の一瞬である。
瞬間でも良いのだが、逃げる時は逃げる方が良い。(多分、後悔するのだが。) もちろん、篤郎はソロリと逃げる。

ゆっくりと離れて行って、そこから普通に扉を開けて出れば完全に逃げれる。

こう思うと、何故か全てが速くて遅く感じる。
心臓がドクッドクッドクッと、頭は全てを感じているのに体が重たく鈍い。

あと一歩。そこから、普通に歩く。
歩いているのだが、歩みは遅い。
扉まで五歩の時に、それは起きた。

ムニッ。

「えっ?」

目の前が暗く、柔らかい物に包まれた篤郎は何が起きたのか解らず、止まってしまった。

「はっ?へっ?」

「えーと?」

目の前の柔らかい物を退けようと、篤郎は右手で触った。

ムニュ。

「柔らかい?何だこれ?」

ムニュムニュして柔らかい物?しかも、この柔らかさに残念な気分になるのは?

「何だ?なんの感触だろう?」

右手の揉み方を速くしてみる。気持ちいよりも、握り潰したいのが本音だ。

「潰しても良いか?」

「ヤーメーテー!それは、恐いので許して下さい!」

「あっ?だれ?」

「篤郎様、私です!」

私と言われても、見えないので誰か分からない。そんな状況を理解してるのか?

「理解しました!お待ち下さい!」

スポンッと、篤郎の頭から柔らかい物が離れた。
篤郎は、ミネルシルバから離れたのだが、右手をワキワキさせていた。

「篤郎様、分かった?」

「もしかしてー。」

「そう、偽乳。」

「なっ!ローファ!」

「大神のくせに少しずつ乳を盛ってる。」

「あー、だから、あの感触だったんだ。」

「見張り大神。」

「偽乳大神。」

「イヤーッ!張らさないでよ!」

「アルテウルに嫉妬した。」

「したんだ。」

篤郎とローファの二人で、ミネルシルバを責めた。

「な、情けないです、ミネルシルバ様。」

「仕事しないで、何をしてるんスか。」

バウゼントとグルタンは呆れていた。

「で、何か用か、偽乳。」

「報告したら、盛乳。」

「うがー!ちょっと位良いじゃない!こちとら、アルテウルの後始末やら演算やらをこなしてるのにぃぃぃぃ!」

「嘘泣きか、偽乳。」

ミネルシルバはローファに任せておこう。
予定が変わったが、神が揃って居るのだから何か報告があるのだろう。

「で?」

「やっと、別のお仲間の世界が特定が出来ました。」

「そうか!ルナ、彼等を呼べ!」

元の世界に帰れる。一大事の話である。

「篤郎様、その事でお伝えしなければならない事があります。」

ガルテアとバウゼントは、暗い顔をして篤郎を見た。

「四人を帰すと、篤郎様を元の世界に戻せなくなります。」

「そう。でも、良かった~!」

「あ、あの篤郎様?」

「ん?」

「篤郎様だけが、帰れないのですよ?」

「いや、俺が帰れるなんて出来るか?無責任な事は出来ないからな。」

「篤郎様・・・・」

「それに、神の教育も残っているしな。」

「「「ひっ!」」」

篤郎の笑顔の中に、えもいわれぬ黒いモノがあった。
その事よりも、

「バウゼント。」

「はい?」

「異世界を渡るのに、此処での能力はリセット出来るか?」

「可能ですね、魔石を使えば。」

「魔法は?」

「アマテラス様が処理をします。あ、ミネルシルバ様、貸し1だそうです!」

と、バウゼントが報告をしたが、聞いてるのか不明だ。
口乳戦争は続いているのだから。

「これで、一つ方が着きました。」

「まだ、安心は出来ませんが。」

「何か不安があるのか、バウゼント?」

「はい、異世界同士の往き来に注意をしないと、穴に誰かが落ちる可能があります。」

「注意してくれよ?」

「大神がアレですから・・・・」

「あー・・・・」

四人の別の次元の友(弟子)が、元の世界に戻れる事には喜んだ一同だが、ミネルシルバを見て安心は出来ないと悟った。

「偽乳、偽乳!」

「キー!」

大丈夫か、この世界?
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