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第10章 アルテウル

混乱してます!

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「報告です!」

兵から書類を受け取った、ラドミラル・エバンス・ライター卿は何気なく目を通した。

その書類を何時もの通りに『確認済み』の箱に入れてから、元の仕事に戻った。

今の仕事は忙しくて、人手を必要としていた。

ダクネト国に蔓延した病魔による所が大きかったのだ。倒れた人の多さが、今のライター卿にも大きな負担となっていたからだ。

「近くの町で回復しても、此処が回復してくれんと私が持たないわ。たくっ・・・・」

ライター卿は苛立ちながら、次の書類に目を通していた。その瞬間に、『確認済み』の箱に入れた書類を慌てる様にして手にしていた。

「回復!治っただと?これは重大だぞ!陛下にお知らせをせねば!」

その一報は、カミテッド・エリ・ファイナー子爵に報告した。

「な、何だと!そなたは至急報告を纏めよ!」

「はっ!」

「私も報告に行かねば!」

ライター男爵と別れたファイナー子爵は、急いでファンガリウス・エボック・エスミカル公爵に報告をした。

「そんな!裏付けを取りたまえ!そんな・・・・此れは報告をせねば!」

「分かりました!」

ファイナー子爵の言葉も聞かずに、エスミカル公爵はカラミカル・エス・ファボク宰相と面談した。

「急な事ですね、エスミカル公爵。」

「挨拶よりも此を見てくれ。」

「何を慌ててるのですか?」

「兎に角、見ろ。」

エスミカル公爵は真面目にファボク宰相に詰め寄ったのだ。
眼鏡を掛けてから、書類を受け取ったファボク宰相は、

「何々?ふーむ、ふむ?なっ、何だと!此れは裏付けを取って要るのですか?」

「今、ファイナー子爵が走っている。」

「もし、治せる人が居るなら探すのです!」

「分かった!」

「此れは、一大事だ!陛下ー!陛下に取り次げ!」

このようにして、カーデナル・エリオット・エボット・ファ・ダクネト19世に報告されたのだ。

「治せるのか!」

「はい!陛下。」

「その医術は何処に?」

「暫くお待ち下さい!全力で捜索しておりますれば。」

「悠長な!それでは、奥が助からないぞ!」

「今暫くのご辛抱です!それよりも、この後はどうないますか?」

「白い花か赤い花。」

「分かりました。」

「今は蕾か・・・・堪えてくれ。」

ダクネト王は祈りを捧げていた。
アルテウル神に。







ーーーーーーーーーー







篤郎はリーシャルトの屋敷に居た。
椅子に座り、対面にはリーシャルトのおっさんが居た。

「領内全ての患者の治療を終えただと?」

「ああ。」

「戻ってから1日しか経っていないのにか?」

「調べてみな。」

「それは今行っている。それよりも、レオン殿をどうにかしてください!」

おっさんがテーブルに頭をつけた。

「・・・・上、かなり薄いぞ。」

「うるさい!それよりもレオン殿だ!」

「知らん。」

「いや!あなたはレオン殿と一緒だったから分かっているでしょう?」

「いや、知らんって!あいつ、何かしたのか?」

篤郎の答えに、落胆の顔をしてるおっさん。

「では、何故にレオン殿は機嫌が悪いのか?をお答え願いたい。」

「そんなん、知るかー!」

「知るかではない!お陰で兵の半数が病気から復帰したのに、潰されました!もう、手に終えません!」

おっさんはおいおいと泣き出した。
その姿は気持ちが悪い。
どうも、人間性が薄っぺらい人の泣く姿は、心には響かない。

篤郎は、報告も終わったのでお暇をしようと行動に移していた。
逃げれるチャンスと思った。

しかし・・・・


バキッ!

と窓を割ってレオンが飛び込んで来たのだ!

「なんだー!」

「うおっ!」

「アツロウー!」

おっさんは、男二人の姿を見て何かを悟ったのだろう。

「暫くは、誰も入って来ませんから、どうぞごゆっくり。」

そう言って、おっさんは出て行った。

「アツロウー!」

「離せレオン!待て、違う!違うんだー!」

篤郎の腰に引っ付くレオン。

男二人として考えたら・・・・

篤郎、合掌。
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