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第10章 アルテウル

出会う

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「に、逃げれた?」

篤郎は、後ろを振り向いた。
逃亡生活を続けて、何日経ったのだろう。
逃げる先に人(叫ぶ)が居たのに、今は居ないのだ。

篤郎(魔王様)は、ここの所は会話どころか、悲鳴か謝る事だけを大声で叫ぶ日々を過ごしていた。

「まさか?」

疑う心が板に付いたのか、茂みや木の裏も探索してしまっていた。
人(叫ぶ)が居ない事に、篤郎は喜んでいたのだ。
人が寄り付かなくなり、話せる人を探していたのに、人に追われる日々になり、やっと追われる事が終わったのだ。

「自由だ!もう!魔物や人拐いや盗賊には間違われないぞ!」

篤郎の歓喜は、凄まじかった。
では、何故、篤郎は魔物に間違われたのか?
答えは、極大の魔力と神力を篤郎の身体に乗せた事により、魔物以上の魔力が篤郎の周りにまとわり付き、人の認識を狂わせた結果なのだ。

そうとは知らない篤郎は、逃亡生活に落ちたのだ。

「ヒャホー!」

いや、違った。
歓喜では無く、狂喜の様に叫んでいた。
なにせ上半身の服を脱いで、辺りをスキップをしているのだ。

道で出会っても、ヤバいやつだ。

それでも篤郎は嬉しいので、それを一時間も費やしたのだ。

普通なら疲れたので止めるが、疲れを知らない今は、何となく止めるまで続いてしまうのだ。
しかも、止めた理由が飽きたからだ。

落ち着いた篤郎は、テーブルを取り出して料理を始めた。

外で半裸ときたら、焼き肉だろうという篤郎理論でしてるのだ。

篤郎はタレを作り出した。

味噌と醤油、唐辛子に砂糖、酒に果物を混ぜる。味噌が溶けるまで、一心不乱にただ混ぜる。

次に肉を一口よりも大きく切り別ける。雑菌などは『クリーン』で殺菌できる。
魔法万能説は有効だ。
生のレバーも食えるだろう。
でも、あれは臭かったよな?何で昔は生を食べたのだろうか?

因みに、レバニラは好きだが、焼き肉のレバーは嫌いだ。

腸とかセンマイとかは、赤肉と同等に好きだ。
ただし、腸は焼き方を間違うと、ゴムの様になる。
焼き過ぎには、注意が必要だろう。

切った肉は、タレに漬け込む。
野菜も漬け込むのが好みだ。

それを約30分寝かす。
本当は二時間は寝かしたいが、直ぐに食べたいので短時間にしたのだ。

炭火を用意をして、一人焼き肉を始める。

「ほっ。」

火魔法で着火さして、風魔法で火を起こす。
一気に火が起きない様にして、肉を焼く。
ジューと言う音と、タレの匂いが鼻腔の奥にくる。
お腹がグーとなったが、我慢して焼けるのを待つ。

古い肉や怖い肉なら良く焼くが、熟成肉で殺菌も完全(腹痛の場合は治癒魔法で!)だから、軽く焼く。
薄い肉なら何秒だが、厚みが一センチなので片面2分で焼く。
両面4分で完成だ。

温かご飯に、焼いた肉を乗せてから食べる。

噛み締めると、肉の油とタレの旨味が口を攻めて来るので、肉を乗せいた場所のご飯を食べる!タレの旨味が染みたご飯ほど旨いモノは無い!

そこからは、肉→ご飯→肉→ご飯→野菜→肉→ご飯のルーティンを繰り返していた。

その焼き肉の匂いは、周辺に漂う。
旨い物の匂いなら、当然ながら魔物達が動いていた。
唸り声や雄叫びがあがっても、篤郎は平然とーいや、聞ける状況では無い。
黙々と、焼いて食べていた。

そうして、篤郎の周りに不穏な影がやってきたようだ。

近くの茂みが、ガサガサと鳴り動いていた。
普通なら対応策を仕込んでいるのに、今回は対応はしてない。料理を始めた時点で、食べる事だけを考えての行動になっていた。

そう、うっかりしていた。

黒い影は、茂みから走り出すと篤郎に向けて、一直線に向かったのだ。

その俊敏な行動を、篤郎は対応しなかった。いや、出来なかった。
だが、

「アツ!う、アツ!うううー!」

両方の指を口に加えて、怨めしそうに篤郎を見たのだ。

「馬鹿かお前は?網の上の肉を手掴みしたら、そうなるわ!」

そう、篤郎は返した。言いながら、篤郎は間抜けな男を見ていた。そして、

「腹が減っているのか?」

ぐぅうううう!と大きな腹の虫が答え、男が頷いた。

「たく、分けてやるから。取り敢えず、こっちに来な。」

と、焼けた肉を網の端に避けてから、座る場所を作り出し男に進めた。

男は、素直に座った。

取り敢えず、飲み物をコップに入れて男に渡して、ご飯とフォークを準備した。

男が水を飲み干すまでに、どんぶりに焼けた肉をご飯の上に乗せて男の前に置いた。

男は水を空けると、直ぐにどんぶりに食い付いた。フォークを持っても、犬食いスタイルなのはお腹が空いているからなのは分かる。

篤郎はニコリとしていた。久しぶりに誰かとご飯を食べる事が出来て嬉しかったのだった。
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