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第10章 アルテウル

美形と醜男の差

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レオンは考えていた。

今、目の前に居る裸の女の事を。
盗賊に襲われていたので、助けた。お礼と言われたので女の家に行っただけなのに。
レオンは女よりも、お腹が減っているのだ。
何時ものように、お礼ならば食事が先なのに。

「どうしたの?」

自分のお腹をさわるレオンに、女は、

「もしかして、お腹が空いているの?」

レオンは頷いた。
女はくすりと笑うと、ケルトを羽織り、

「もう、少し待ってね。食事は用意してあるの。」

の言葉に、レオンは先に出せよ!と思ったが、喋らない。
顔が良くても、会話が無ければと思うだろうが、本当に美形に弱いのは、女も変わらない。
むしろ、露骨な程に可愛らしく尽くす。絶対に尽くそうとする。

顔が美形で金と力も有るのだ。無敵に違い。
そして、無口だが、その目で見つめられると・・・・


夜を待たずして、床を共にする。
女の喘ぐ声が木霊する。
その夜中に、レオンは出立する。
何かを何時も感じて、女と寝屋を共にしたら良く行う行動になっていた。



一つの町に留まる事はしない。

何故と言われても困るが、直感としか言えない。

夜中に町を離れても、何も言われないのも美形だからか?

そして、次の町を目指すのだ。







ーーーーーーーーーーー





篤郎は森から町に逃げたのだが、自警団にも追われていた。

「居たぞ!悪党を逃すなー!」

「うっそ!何で見つかるのー!」

「追い込め!逃がすな!」

「向こうにも人を行かせろ!門は閉めておけ!」

篤郎が逃げる所に人が来る。
そして、出会えば、

「悪党が!悪党が居るぞ!」

と言われ、女なら、

「ギャー!痴漢よー!」

子供達には、

「怖いよー!ママー!」

と叫ばれるのだ。
憔悴を越えてしまいたくなっていた。
正にどん底に居た。まごう事無い、どん底に。

魔国では、無かった虐めが今の此処にはあった。

逃げても、逃げても、人が追い掛けて来るのだ。

それも、魔物から悪党と呼ばれ、痴漢となり、怖がられる存在となっていた。

どんな気丈な篤郎でも、心はささくれる手前であった。

いや、心を壊したいと思う様になっていたのだが、奥底にある、人を傷付けたくは無い心がブレーキを掛けていた。
しかも、篤郎が逃げて居ても、カップルがイチャ付くのを見たりするので、かなりヤバイ事にもなっていたのだ。

切れる寸前よりも悪いのだ。

心が黒に染まるようなものかも知れない。
どす黒い何かに。
手を繋いでいるのを見れば、く○までひいてやろう的な感じだ。
つ○をはいて手を汚してやろう的なものだ。

逃げながら、心が黒に染まっていくのか?

篤郎にも分からない。

今の篤郎は、逃げる事しか出来ないでいた。

あの、ベッド争奪戦が輝いて見える気がしたが、今はカップルを呪うのであった。

ただ、悪党を潰しながらなのだが、誰にも感謝はされずに、逆に悪党呼ばわりされてだ

篤郎は気付いて無いが、痴漢と認識されていた。
そう、魔物から人に近づいている事に。
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