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第10章 アルテウル

朝のアリテウル

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死体を見て、正気を保てるのは難しい。

例え異種族でも、人に近い存在の者の死体を扱うのもキツイ。それが、病気等の疫病とか、飢饉でとかなら、心を保つのも容易だ。

ボロ雑巾の様に、切り殺された遺体を扱うのは、信徒にはキツイ。

一晩で百人もの獣人を殺した。

それは、誰にも言えない秘密。

やがて、携わった信徒は心を壊す。死んだ者の顔が、叫びや、泣く声が。耳から離れないのだ。

白い心に、吐くことも許され無い為に、黒く染まってしまう。関わった信徒17名が心の病となった。

それは、安らぎを得たエリザベートも変わりは無い。愛した者の闇を受ければ、白い者も黒く染まる。人は悪く無いと云う言葉を免罪符にしながらも、染まる事に罪悪感を感じ無い。同じ場所に居て、愛し合ったのだから、身体も黒く染まる。

だが、今は愛し合ったアリテウルを信じて罪を犯して行く。

人は弱い。

自分は、悪く無いと心の何処かに思いながら、人の責任にして、罪を犯す。罪とは、人の中の教えと言うが、それは万物に通じる道の教えだ。知恵が有るものに、同じ様に降り注ぐ。

罪の重さは等しい。神に使えていようといまいと。ただ、長さは違う。

それが、神が定めた罪なのだから。





ーーーーーーーーーー





エリザベートは、掛け布団から火照った身体をさらした。

「もう行かれるのですか、アリテウル様。」

「何だ、元気が残っていたか?」

「今日はアリテウル様の晴れの舞台。このエリザベートが居なくては、舞台の幕は上がりませんよ。」

「そうか。」

「それよりも、レベルは良いのですか?」

「アルテウルからは30あれば良いと聞いた。今は50なのだから、心配なぞいらない。」

エリザベートは心配をしていたが、アリテウルは魔王と戦う事の方が楽しみだった。今のアリテウルは、神が認めた英雄であり、自分の欲望を満たす狩り場に居る、狩人だと思っている。
それは、間違いでは無い。アルテウルが与えた狩り場に居るのだから。

「安心してはなりませんが、警戒だけはして下さいまし。」

エリザベートは、アリテウルだけが心配なのだ。他の者に対してなどは考えもいない。
アリテウルの背中に、身体を温もりを与える。

「俺に勝てる存在が居ると?」

「いえ。でも、アリテウル様の身体に誰かの爪痕が出来たらと思うと、私は我慢できませんわ。」

「お前だけだ。俺に爪を立てられるのは。」

「嬉しい・・・・」

エリザベートは涙を流して嬉しさを出していたが、アリテウルは嫌そうな顔をしていた。愛などは無い。ただ、久しぶりの女に吐き出したかっただけの物に愛などは無い。

「風呂に入れ。取り敢えず、準備をするぞ。」

「・・・・はい。」

部屋を出て、そのまま外へと向かう。

風呂に入るよりも、水を浴びる為だ。元から風呂に入る行為に馴れてない人に、入る風呂など無い。汗を流すのは、水で十分なのである。

そして、

「さて、魔王とやらを見に行くか。」

裸で水浴びをする。
朝の陽射しを浴びながらである。人通りの多い中庭で浴びる。
信者達は見ない様に、端に避けて過ぎ去る事になる。

カルチャーショックをも感じ無いアリテウルであった。
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