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第9章 ミネルシルバ

逃げたい

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クリスとスベールの日常は、朝に来て書類を晩まで片付けている。来日も来日もだ。

二人で片付けれるレベルでは無いが、優秀な二人は可能になった。『した』のでは無い、『なった』のである。

次いで言うが、優秀になった二人だ。

極限に陥れば、大抵の怠け者が化ける要因になる。これにより、優秀な人材へとなった。

二人の驚異的な計算と書類の仕上げにより、アルケニー国の税務は何とかなっているのだ。

だが、問題は経理課と上司の二人だ。

経理課はクリスとスベールには基本的に関係無いのだが、上司はそうも言ってられない。

1人はベンツ・ハルウエット税務経理副上官。

もう、1人はパーロット・ヴェンツ税務経理上官だ。

ベンツ副上官は、基本的に経理課にベッタリでもこちらにも関わるのだ。問題はパーロット上官だ。22歳の若さなのに貴族の三男坊なのに使えない。口も立たない、やる気も無い、仕事も出来ない、ナイナイずくしのダメ上官なのだ。

ダメな分だけ、逃げる事には長けている。逃げる上官でも、判子だけは押してくれる。

何かと役には立っているが、仕事はしないのだ。

だから、税務課に行く上司は居ない。

間違いが有ってはならないが、二人にのし掛かっては居るのが辛い。しかし、港町から数ヶ月前から伝わった「珠算」と言う物が入って来て、間違いが減った事が大きかった。ただ、何処の港町から伝わったのか等の詳細な事は分からない。

「お、終わったー。」

「お疲れ。よし、合った。」

「お疲れ様。」

パッチンの音が終わりを告げた様になった。
のんびりと身体をほぐし、書類を纏めていた。少し早めに終わる事が出来るので、二人は喜んでいた。

「クリス、経理課は終わった?」

「あー、見てくる。段取りを頼む。」

トイレに行く次いでに、経理課を見るのだが、見なくても殆ど仕事に追われていた。
クリスは早足で戻ると、

「ヤバい、経理課は終わってない。」

「あー、又か。飯を食べて準備をするか。」

「帰らないの?」

「残業して来いって、嫁に言われてる。」

税務課が早くて、経理課が遅い理由は、経理課には貴族が多い。
便利な道具も庶民から伝わった為に、貴族からは倦厭されているのだ。プライドが「珠算」と言う道具を使えないのだ。

使えないから、計算違いや間違いは終わらない。一度目が合っていても、二度目は合わない事が多い。

経理課に人数が多く居るが、副上官を入れなければ終わらないのも事実だ。
結果として、税務課の二人に応援に行かなくてはならない。

「取り敢えず食事するか。」

「だな。」

ゆっくり出来る時間は少ないが、食事にありつく。これから何度目かのデスマーチに付き合わなくてはならないのだ。食べておかなければ、次の朝まで御預けになるのだから。
例え、嫌味を言われようとも、貴族様には逆らえないのも辛い。


もっとも辛いのは、先伸ばしにした国の行く末なのだが。
誰も先を見ない振りをしている。酷い未来しかないのだから。
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