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第9章 ミネルシルバ

怒りを溜めるのは危険です

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「はぁ~。」

何度目のため息だろうか。ホテルに戻って、お風呂に直行してから、服を着替えて椅子に座る。セキちゃんとチャーミーと言えば、仲が良い時は凄く良い。何時も悪いなら怒れるのだが、何時も不意に起こるから始末が悪い。

「飲み物でも飲むか。チャーミーとセキは?」

「私はレッドチェリーで、チャーミーはレモネードをお願いします。」

「みぃ!」

微笑まし風景がある。が、これも明日の仕事の最中には悪くなる。
繰り返し起こるのは、原因がある。のだが、篤郎は考え無いようにしていた。
考えるだけで頭が痛くなる。

「了解。」

でも、セキちゃんとチャーミーのジャレ合う姿は、心が休まる。

子供が犬と戯れるようなモノと考えて貰えれば良いだろう。

でも、1ヶ月経って、変わらない生活には篤郎も我慢の限界なのかもしれない。良く耐えていると思われるのは、飼い主の責任の為だろう。

傍若無人な人間と見られるが、篤郎は自分の力を知って、行うのは抑えてきた。たまに、我儘な人々のお蔭で、軍を率いた人を引いたり、力加減を間違ってスプラッターにしたりはあるが、自分の為には怒らない。人の為だけにしていると言う自負はある。

自負が、世間一般と同じでは無いのが、珠に傷なのだが。

怒りを貯めて爆発させる。それが篤郎なのだが、その貯蔵庫は大きい。大きいから決壊した時が問題なのだ。

何故そんな事を言うかといえば、今がその時だからだ。

この事態は、アイもルナもレディも今知った所だ。

で、何が起きているかと言えば、魔素を狂わしていて、一般の人は魔法が使い辛い状態になっている。それは、弱小の魔法に関してなら、使い辛い程度だが、高等な魔法は干渉が酷く、使えない状況になっていた。三人が『テレポート』や『念話』、虫やゴーレムを使えない状況になっているのだ。

チャーミーもセキちゃんも、篤郎の側にいるために、そのヤバい状況は分からないでいた。

「はい、飲み物。」

「ありがとございます。」

「みぃ。」

ほのぼのとした風景なのだが、緊急事態になっているとは三人は知らない。

そう、篤郎とて怒りで被害を出しているとは思って無いだろう。

もちろん、ルナを筆頭にレディの防衛ラインは必死にフル稼働しているが、篤郎の側には行けないのだ。

何故なら広範囲で魔素の消失等が起きてしまい、軽々しく行ける状態でも無いからだ。それに、篤郎とのラインも薄くなっているからだろう。

ルナは慌てていた。篤郎の心を癒そうと、人の中に入れたのだが、癒されずに怒りを溜めていたのだ。取り返しがつかい事も有るのだと記憶したのだ。

ルナはレディとアイと並列して、今後の事を議論しだした。

現在のルナ達は諦めるしか、道は残ってないのだから。

もっと言えば、魔国の消滅かもしれないのだ。

戦々恐々の中、当の本人である篤郎はご飯を作っていた。
篤郎は寒い冬でも、丼を作る事にした。何かを閃いたのだろう。

「今日は柔らか角煮丼でいくか。」

と、早速に豚肉のロースの塊肉をぶつ切りにしていく。

圧力鍋に切った肉と生姜とニンニクを入れて炭酸水(コーラならOK。ダイエットNG)と砂糖を加えて、ネギ(青い部分)も加えてから煮る。中火にして二時間。肉が柔らかくなったら、別の鍋に肉を出して、別に作った茹で卵を加えて、酒、醤油、味醂、砂糖、昆布だしのもとで味を整えて、更に弱火で煮る。

普通なら肉を休める作業もあるので、工程時間は五時間以上掛かるが、魔法を使えば早く終わる。煮る工程で、前工程では、肉の臭みと程好い柔らかいを加速。後工程では、味が染み渡り肉が柔らかくなる様にする。を意識して行えば簡単クッキングが出来るのだ!(篤郎のみ可能です。)

これをご飯の上に肉を並べ、煮玉子を半分にして加え、汁をかけて、刻み紅生姜をトッピングすれば、食欲深まる男の柔らか豚角煮丼の完成だ。

味噌汁は赤だしで作るワカメ味噌汁で良かですよね?

「出来たよー。」

テーブルに並べて、セキちゃんとチャーミーも座る。

「さぁ、召し上がれ。」

「いただきます!」

「みぃ!」

一口、タレの掛かったご飯を食べると、二人は勢い良く食べ出した。

篤郎も、豚の角煮を食べた。出汁が染みた肉は、噛まなくてもホロホロほどけて、口の中へジワーと溶ける様に消えてしまう。その後をご飯を入れると、次の肉かご飯を求めてしまう。

そこを堪えて煮玉子を口に入れると、出汁の染みた白身と染みかけたトロリとした黄身が口を別な物へと変えてしまう。
丼のテロップやーと、心で叫びながら、口に放り込んで行く。

しかし、篤郎は言わなくてはならない。

「お代わりあるからね。」

その言葉でチャーミーとセキちゃんの食べる速さが速まり、篤郎が食べるよりも、先にお代わりを言われたのだ。

食の戦いは、出汁が無くなるまで続いたのだ。

結果。

篤郎の怒りは解けたのでした。

『本格的にマスターの心の癒しを、リサーチしないといけませんね。』
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