鴉喰の華 ～日本に転生したのに、異世界に転移させられた！～

第７章 魔王進行

厚木デレる

文雄は異世界ハーレムを夢見ていた。竹下は既に彼女だが、美人である。難点は胸が大きく無いが、美人である。
で、そうなると、梅花高校の美人会長の厚木さんを加えれたらハーレムは最高なのだが、世の中は上手くいかない。

「厚木君。」

「なに？」

「そろそろ、離れないか？」

「い、や。」

と、甘い空気をかもし出している。なんとも、荒木さんの行動が厚木さんの心を掴んだ。いや、掴み過ぎですよ！
こちとら、やることやっても、デレが短かったんだよ！親友を亡くしたり、この世界に飛ばされたりと、恋人気分を味わって無いんだぞ！

もげろ荒木！

怨みの念を送る文雄の背中に、竹下の手と頭が寄りかかってきた。

「ねぇ、文雄。」

「うぉい？」

「たまには、良いよ？」

「ぶうぉぉ！」

甘い一言だ。甘過ぎる一言だ。長い、とても長い間、待たされた一言である。甘美ある一言なんだ！

「よし、あっちに行こう、直ぐ行こう～。」

「やん♪」

と、こそこそ動こうとしたが、

「竹下さん。」

「な、何ですか、厚木さん？」

「まだ、日は暮れて無いですよ。」

「そうですね。」

「安全な町に着くまでは、守ってね。」

「はい？」

「だから・・・・・ねぇ？」

「あっ、はぁーん。田渕氏は腰を振りにいきたかったのですか。」

荒木の一言に、文雄、竹下、厚木の顔は赤くなった。

「な、何を言ってるの荒木君！」

「な、な、なんすかっ！」

「バ、バカね！厚木さん達が、お熱いから気を利かしたのよ！」

竹下の言葉に、

「お熱いのは竹下さん達では？恋人同士だし。こっちは恋人にもなって無いから、そんな事はしませんぞ？」

文雄と竹下は即座に理解出来た。この人は恋愛をしたことがないんだと。
厚木も荒木に引っ付きながら、青い顔をしていた。
竹下は直ぐ頭に『クラッシャー荒木』の表示が出ていた。

「僕は厚木君が好きだ。今の厚木君は更に好きだ。大事に思っているが、釣り合う男ではない。僕に告白出来る資格も無いが、今の状態は最高なんだ。」

「あ、荒木君。」

涙目の厚木、茫然とする竹下。文雄は感動している。

「田渕氏。済まないが、厚木君が恐がるので、離れないでくれないか。頼む。」

「荒木さん、男ですね。」

文雄は荒木に、親指を立てた。荒木も親指を立てて返す。

「荒木君、私も好きだから！荒木君が好き！」

と、荒木の胸で泣いた。
少しいびつな告白が成立した。拍手をしたいが、固まる竹下を見た文雄は頭をかくしかなかった。

「大丈夫か、雪絵。」

「うん。」

竹下は焚き火の前で、踞る様にして体育座りをしていた。
文雄は何となく察していたが、触れない様にしていた。今、竹下を慰めると荒木は精神的に死ぬ。厚木が庇おうと、精神的に堪えれない。
竹下の横に座って、頭を撫でた。親友がしていた立ち位置になって、死ぬ前に言われた大変さが分かった。

もう１つの言葉、大人になれよの意味も理解が出来てきた。

「荒木く～ん♪」

「厚木く、くん。」

イチャイチャしている、二人に対して怨む顔を出さない様に辛抱も出来るのだから。