鴉喰の華 ～日本に転生したのに、異世界に転移させられた！～

第４章 冒険の始まり

リリスの町を制覇

料理を真剣に教えたのは二度目であったし、カロスも真剣に学んだ。
エミーの稼ぐはカロスの為であった。よくある、弟の為ならってやつで、店を良くしたいと新しい味を探すのが、旅の目的でもあった。篤郎の料理に引かれたのも、この為である。
指導を初めて二時間過ぎた頃に、篤郎とカロスは同じ料理を持って来た。

「みんな、食べてみてよ。」

カロスの顔を見るよりも、料理に目がいってしまう。先程と違う、スパイシーな匂いが鼻に漂ってきていた。無言で肉を食べ出した。いや、無言で取り合いを始めたのだ。
肉と野菜の水煮が高級で深みのある食べ物に変わっていたのだ。

「先生、ありがとうございます！」

「礼を言われるのは、まだ早い。此れからが本番だ。」

「はい！先生。」

篤郎が皮紙の束を取り出した。

「此を見ることを許す。良く学びなさい。」

震える手で束をを受け取り、中身を見ていた。

「頑張ります、先生。」

カロスの目に涙があった。

「今日は此で、俺も宿屋に戻る。」

「先生、また明日！」

カロスは篤郎に手を振った。

「ね、カロス。アツロウさんを先生って？」

「姉ちゃん、凄いよ！」

「えっ？」

「新しい料理を教えてくれる先生を見つけてくれるなんて！ありがとう、姉ちゃん。」

カロスは羨望の眼差しでエミーを見ていた。

「そ、そうだろう。アツロウさんを見つけたんで、直ぐに帰って来たのさ！」

偉そうにしているエミーに対して、みんなが口を押さえて顔を背けていた。

「姉ちゃん、俺も頑張るよ！先生に認めてもらう料理になるために！」

「頑張るんだよ！」

カロスは厨房に戻っていった。エミーも段々と顔に赤みを帯びてきたのだ。たまらず、五人は吹き出していた。

「お前ら、笑うな！」

「頑張るんだよ！だってー、あはははははは。」

「アツロウさんを連れてって、がはははははは。」

「馬鹿だよ、エミー、いひひひひひひ。」

「で、カロスに言うのか？」

「何をだい、ラッツ。」

「借金百枚を越えて奴隷になりましたって、ぷっははははははははは。」

「あっ。忘れていた。」

「「「どははははははははは。」」」

カロスの『ホルラ』も明るい声が響いていた。
篤郎が通りを宿屋とは反対の方に歩いていた。そこから細く暗い道を選んで進んだ。人通りも段々と少なくなってくると、悪そうな顔が沢山と近付いてきた。

「おい、そこの兄ちゃん待ちなよ。」

の言葉から前からも人が現れた。

「雇い主は来てないのか？」

篤郎はゆっくりとボスらしき人の目を見ていた。

「さぁね。」

「何のようだい？」

「何だと思う？やれ。」

の言葉に男達は篤郎に襲い掛かった。
男達にとって必勝のパターンであった。此で大抵の、脅しや殺し、誘拐等をしてきたのだから。
だが、この日は違っていた。１人が間合いを詰めて飛び込んだのだが、棒で後ろに飛ばされたのだ。それだけで終わらない。次の男を棒で絡めるとボスの方へ投げ飛ばしたのだ。ボスらしき男を巻き込んで倒されると、次々に男達がその上に飛んで来たのだ。

「くくくくく。さぁ、始めるか。」

篤郎は容赦なく奴隷にしていった。『赤い羽根』と違う奴隷紋章を仕込んでいったのだ。

「軽く終わると思うなよ。１人１人の罪を吐いて貰うからな。」

と、サクサク奴隷にしていった。

「お前達は命を掛けて罪を償うのさ。」

最後の１人から聞きたい事を聞き出すと、男達に命令した。

「雇い主の所に連れて行くこと。」

「「「はっ！」」」

篤郎の反撃が始まったのだ。
ビヒットにすれば多かが冒険者の１人である。表は良い商人で裏は悪党のビヒットに掛かれば、死ぬも奴隷も思いのままにしてきたのだ。エミー、デュース、ハルには、貴族からも妾にと打診を受けていた。その為に優しい商人を演じていた。カロスの売れない料理にしても資金を出していた。搦め手で封じ込める予定が狂ったのだ。許せなかった。
たかが、人を１人消すことは簡単だと思っていた。そしてそれを忠実に遂行する手下も居るのだ。絶対にミスが起こらないはずであった。
ビヒットはワインを口に含んだ。
暫くして、何時もの鈴がなった。

「ゴーデル、首尾は？」

ビヒットは、ワインを高く上げながら聞いたのだが、何時もの答えがなかった。

「ゴーデル！」

「うるさいよ。」

ビヒットの前に篤郎がいた。

「なっ！」

篤郎は魔法を展開してビヒットの四肢を撃ち抜いて動けなくした。

「あがががががががっ！」

「よっ、小悪魔党。」

「きさま、こんな事をして許されると思うのか？」

「思っているよ。」

篤郎は新しい奴隷紋章をビヒットに施していく。

「何を？あががががががが！」

「お、これも良いねー。」

ビヒットは頭を押さえていた。いや、押さえてるは不可能なので、のたうち回っていた。

「俺に殺意や罵詈雑言等を思ったり、言ったりしたらそうなるの。考えなくても動作をしても同じなんだ。どう？怖いでしょ。」

「あががががががが！」

「頭が壊れる前に痛みが止まって、直ぐに痛みが走るんだ。」

「ぐぎががががががが！」

「さあ、罪を一つづつ償わなければ、その痛みから逃れなれないよ。」

「あががががががが！」

「ふふっ、苦しむだけか。じゃ、その間にちょっと周ってくるわ。『命令』ここで待っていること。」

と、部屋を出て行った。
何故、篤郎は外で絡まられたのかは、ラッツによる情報収集の結果であった。ビヒットのする事に泥を塗った者の行く末を聞き込んでもらったのだが、大抵は謎の死に繋がっていたのだ。後は簡単だった。テレビドラマ以下の手下の行動の予想と、屑な事を気取ってやる親分を締めるだけになっていた。
後の行動は追加ボーナスだな。屑の手下も屑なんだしね。男も女も容赦なく、篤郎の奴隷紋章を使ったのだった。



今回の奴隷紋章の人数：５６,８７９人