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第3章 バイシュ国の内乱

一撃

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バイゼルは覇気を出して答えたのだが、

「バイゼルね。強いの?」

不思議な質問に覇気も消えてしまう。

「つ、強いぞ。」

「へー。どれくらい?」

「Sランクなんだが。」

「ほー、Sか。この時代のSってどれ位か、真面目にやるかな。」

篤郎はマトックをバイゼルに突き出した。

「まてまてまて!鉱山じゃあるまいし、なんでマトック?!」

「・・・・・・」

「なんか言えよ!」

「持ち易かったから。」

「へっ?」

「扱いに馴れたかった。」

「馬鹿か!」

「うるさいな。」

マトックを肩に担ぐと、

「先に進みたいんだが。」

篤郎の気質が変わる、あの圧を受けて汗が出て居る。

「へっ。此れは本気で殺らんとな。行くぜアツロウ。」

バイゼルは駆け出していた。
普段のゼウントなら動かなかっただろう。バイゼルの対人はカウンター込みの受けの剣技だからだ。なのに駆け出したのには、バイゼル自身が驚いていた。しかし、留まる事は出来ないので本気で撃ち込んでいた。

「うおおおぉぉぉぉぉ!」

剣は篤郎には触れもせずに、空振りしたので直ぐに旋回して横に振るった。

「ふーん。まぁまぁだな。得意な得物できなさい。それでは俺に届かないから。」

バイゼルの後ろから聞こえる篤郎の声に、バイゼルは笑顔になりながら、

「はははははは。本気でと言いながら、本気では無かったな。」

バイゼルは剣を捨てて、袋から大剣を取り出した。

「魔剣:ロッグラグナー。俺の相棒だ。」

「待った!」

篤郎は真剣になっていた。

「なんだ?怖じ気ついたのか。俺の相棒に。」

バイゼルは低い体勢になりながら言ったが、

「その、腰の袋はなんだ?」

「は?」

「ふーくーろ!袋だよ!」

篤郎は腰を指差しながら、バイゼルにジェスチャーをしていた。

「これって、『旅袋』か?オメーも持っているだろ?」

「いやいや、持ってないから。それ欲しいな。」

「はっ?言ってろ。」

「何処で売ってる?いくらするんだ?」

「俺に勝てたらくれてやるよ。」

バイゼルは集中していた。大剣からの突き、鋭くて早く全身を使った突きを狙っていた。篤郎はマトックを杖のようにして、のんびりしていた。
誰が見ても戦っているのを忘れた男の行動としていた。(格下に思っていろ。)と心で呟いて、間合いを少しずつ詰めていた。

「勝ったらかー。」

篤郎はマトックを肩に乗せてツカツカと近付いた。バイゼルは幸いと動きに出した。

「魔技・狼牙!」

瞬時に篤郎の胴体を突き斬ったのだ。しかし、アツロウは居なかった。

「うーん。紋章?見た事がないなー。」

バイゼルの右腰から声が聞こえた。

「しっ!」

蹴りを繰り出したが、あっさりと篤郎にかわされ距離を離された。

「そうかー、勝ったら貰えるのかー。悪くないな。うん。おまけを付けよう。」

篤郎は笑顔になりバイゼルを見ていた。

「剣のお稽古だ。」

バイゼルは身体能力を上げる薬を取り出して飲み、身体能力を上げるスクロールを開いた。
対人不可にしていた、対モンスター用の切り札。身体能力を五倍まで増やした状態での、狼牙を狙っていた。

「お前を殺す。」

低い体勢と引き絞ったバネの様な手足。距離は篤郎が詰めだしていた。至近距離からの狼牙は初めて出した。言葉も無く、ただ突いた。白い風景を初めてみた。体がふわりとした。

「はい、お疲れ。」

ドスン。地面に落とされていた。
ゼウントは何が起こったのか分からないが、最高の剣技が篤郎に通用しなかった事を理解した。

「うわあぁぁぁ!」

ゼウントは未知の恐怖から剣を振り回していた。それを余裕で、ステップのみで交わしていた。

「こらこら。身体能力と剣がバラバラだぞ、それでは。」

篤郎の言葉も耳を貸せない状態で、駄々っ子の様に振り回していた。

「駄目だね。」

篤郎は交わしていた動きから攻めの動きをした。バイゼルの目にはそれだけしか分からなかった。次に見えたのは空だった。雲が近く手が届くと思った瞬間、遠退いて行った。

ドオスゥゥン。

「い、痛い。」

バイゼルは地面に横たわっていた。
篤郎が近付いて、バイゼルの腰から袋を取った。

「総評だが、動きは50点、剣は30点。必殺技は0点。最後の技もバネの様に筋肉を使ったら駄目ね。突くなら身体を軽く、動作も少なくするのがコツだからね。てな事で貰うよ。」

篤郎はそそくさとリヒッテットの後を追った。

バイゼルは初めて人に敗北をした。しかも対竜用の大技も難なく交わされて、剣を合わす事無く負けたのだ。

「化け物・・・・・」

そして意識を手放した。

篤郎は新しい息吹きに感動していた。まだまだ荒削りで贅肉が付いた剣技だ。狼牙とか言う技も昇華すれば必殺技になるだろう。て、いっても先の話しだが。負けて落ちてから登ればねー。
と、ニマニマして走っていた。
未来にも良い人材が居ることに喜びを感じれたのだから。
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