転生国主興国記

hinomoto

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本章

キャンプふたたび

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「大人達の意識が戻るのは、いつか分からないよ。」

ピアは悲しい顔で子供達に言う。
疲れと異常なモノを見てしまった為の思考の停止が、キャラバンに襲っていた。
子供達はどうすれば良いのか悩んでいた。
ハリスの判断を待っているが、ハリスはナインの判断を待っていた。
ナインはと云うと、

「あーん。モグモグ、ゴックン。」

[味はどうでしょう、マスター?]

(旨いな。ちょっと肉質は固いかな。やっぱり野生だからかな?熟成させるか?あ、この子達の肉は出してねー。)

[肯定。]

夕方なので火を起こしておいて、テントを出す。子供達の馬車を改造して大人達を転がす。
馬車を二台にして、休憩場所に戻ってきた。

「ハリス、どうしたの?」

「いや、これからどうしたら良いのか・・・」

「分からないと?」

コックンと頷くと三角座りをしていた足の間に頭を入れる。

「ふむ、よし!少し黙って聞け!」

の声に皆がナインを見る。

「まず、ピア。」

「は、はい。」

「お前は何処の世界出身だ?」

「えっ!?」
「「「はっ?」」」

「俺は地球のにほんの出だが後は知らない。前世の名前は分からないし記憶は少ない。サラリーマンだろう、結婚はしてないが甥か姪を見ていたようだ、年は四十過ぎだろうなのが俺の前だ。」

ピアは驚いていたが、他は何が始まったのか分からなかった。

「俺も日本だ。名前は不二結城で16才だった。医者を目指していた。前は女だったよ。」

「俺はお前をどうこうする訳では無い。自分の人生を全うして欲しいし、俺の人生に関わらせれない。」

「そ、そんな!俺も連れて行ってくれよ!」

「俺にお前は何かしたか?俺の力を借りたがるノミに貸す力はないがな。」

「ぐっ。」

「お前達も貸しても返すあても無いだろう。しかし、お前達は俺の力を知らずに甘えている。それも駄目だ。生きろ。その為の事をしようじゃないか。」

「そんな、君がすれば!ヒィ!」

俺の威圧に気圧されて声が出せないでいた。

「よし!赤子を。」

篭を受け取り、赤子の額に手を置くと青い光が輝く。やがて光が消えると、

「飯にしよう。明日の朝から大変だからな。」

その日のご飯は美味しいとも言えずに腹を満たして眠りについた。訳が分からないが寝れたのだ。

朝にはまだ暗いうちに起こされる。
大きな音に起こされると、ピアが怖がっていた。

「外に早く出てこい。」

ナインの声が聞こえた。その声には何とも云えない威厳と聞かなければいけない事の様に聞こえていた。
直ぐに外に出ると、

「遅い!此から先、俺の指示が優先事項だ!俺の事に従わない場合は、こうなる。」

ナインは後ろに手をかざすと、手が急に輝き光が飛んで行く。
呆然と見てたら、光が地面に落ちると、

ドゴゴゴゴゴ

の音と衝撃波を食らう。「うわー」と後ろに飛ばされるが、起き上がると天に届く炎を見ていた。
茫然となっていたが理解はした。
絶対に逆らってはいけない人と云う事を。

「分かった?次はないからな。」

頷く子供達を見て笑顔になり、

「では此処から良しと云うまで走る事!では、走れ!」

走るしかなかった。ピアも何も言わずに走り出した。
しかし、一時間もしないうちに息が上がる。甘やかしはしない、生きる為にやらすのだから、頑張ってもらおう。ふふっ、痛みは再生に欠かせないよね。
魔力で砂をトゲに変えると、

「いたーい!」

お尻を抑えながら立ち上がる。
もう、無理とか言わせないよ。

「走れー。」

「土魔法!?」

「止まると痛いぞー。」

遠くから言われてる事に更にびっくりするピア。しかし、

「痛いー!」

ピアは慌てて走り出した。
だが、疲れと疲労のピークがきてしまっている肉体が悲鳴を上げていた。

「うーん、やっぱり基本では無理だな。うん、よし。」

屍になっている子供達の側に来る。子供達は涙目になりながらもなかないように耐えていた。

「こんな事で疲れてたら死ぬぞ?」

少し肉体に回復魔法を施す。

「次は棒振だ。」

其々の場所に棒が現れる。回復魔法が効いたのか棒を手にして立ち上がる。

「さあ、走るよりは少しはもつかな?始め。」

出来ていない振りだが、降り始めて10回で重たく感じてしまう。実際に重たいのだが、20回も振る前に疲れて動かなくなる。普通ならそのままの疲れた体を回復魔法で勝手に回復させて振らしていく。とにかく早く下地を作るために、眠らさず、疲れたら回復し、精神と根性を鍛える。
棒振の後はまた走らせる。
次に闇の中で棒振をする。
その日の晩には闇の中で走る、棒振を繰り返し行う。
一時間で交互にやらすし、重さを増やしていく。
回復を多様する事で超回復状態を手に入れるが子供達は知らない。もちろんナインも知らないがアイがプログラムしたことで恐ろしく十年の修行と同じ成果になる。
精神は一度壊す。
底辺に落として引き上げる事で精神は成長する。そこに精神と肉体を限界に追い込んだ時にやるべき事、守る事、許す事と倫理を植え付け直す。
これを一時間交代で頭に流すと二日で新たな精神と肉体が得れる。

「良くやった。次に魔物と戦え。」

全て格上の魔物を当てていく。問答無用で一人に一匹で行なわす。時間が掛かるのも戦って行くことで戦い方を何回もさせていくし、違う魔物で慌てない事も学ぶ。
二日後に武器に変えて戦わす。棒から槍、剣、エピックにこん棒、他節棍、シャムールなど合う物から合わないモノまで扱わせていた。
既に子供達の実力は、一端の戦士ではなく歴戦の勇者クラスになっていた。サンドステリオンを一匹づつ宛がい戦わして行く。
時間はばらついたが全員クリアできた。
ピアも軟弱な物言いでは無くなり、ついナインに楯突いた。

「これならナインに追いついたんじゃねえ?」

笑って許されない一言を子供達は笑っていた。

「強くなった?ふーん。」

子供達に武装させて立たす。

「それでは本気でかかって来なさい。」

「武器も防具もなしで今の俺達に勝てると?」

「君達に俺は倒せないよ?」

「みてろ!」

七人がナインに襲いかかった。
ピアが槍で突くが槍を引っ張られて殴られ、アンバの剣を拳で壊されてから蹴られ、ハエルのシャムールも握られると刃先があっさり折られて体を蹴り上げられ、ハリスも蹴りで剣を壊されてぶっ飛ばされ、エピの槍が右の拳で壊され左の拳で殴られ、バートは裏拳でリタイア、アイルの剣も指で折られてビンタされて終わったのだ。
七人は汗だくに対してナインは汗もかいていない。
実力も違う事も分からないが強くなってはいた。

「まー、型になったな。今日は寝て良し。」

そう言って赤子をあやす。
ナインの仕事は多い、赤子と大人達の世話をしていたからだ。
ま、大人は点滴と紙おむつで対応しているので簡単だ。
寝返りだけ注意しとけば良いしね。
次の日、七人は集めれて、

「良く耐えた。それなりに戦える様にした。では、卒業試験を開始する。」

身構える七人に対してナインは何もしない。
そのうち、一人一人が汗をかいて足が震えていた。ピアも皆がナインを見ていたので同じ様に見た。
勝てない。と思うと同時に恐怖が襲ってきた。
七人が四つんばになり汗を滴らせていたのを見て解除された。

「勝つ、勝てる傲りを持つな、慢心こそ死、欺瞞も死だ。逃げる事も大事と知れ。」

「「「はい!」」」

「よし、合格だ。お前達はオアシスに帰れ。」

「そんな!」

「もっと強くしてください!」

「強く?強さを求めて俺を倒すか?」

全員が首を振る。

「強さは力ではない。有限の時間の中で答えを探せ。」

「そんな...」

「ピア!お前は前世の記憶があるなら、その記憶と教えと自己の経験をもっと身に付けて、砂漠を纏めろ。力がお前の世界だったか?」

「違います!」

「ハリス!お前は皆の兄である。兄として悩め。間違った弟を正せる事を目指せる男になれ。」

「はい!」

「アイルは逃げる心に勝てるようになれ!その上で支える女になりなさい。」

「はい!」

「バートは急がずに落ち着く事を心がけよ。」

「は、はい!」

「アンバは頼ることは出来るが、人に任せ過ぎだ。もっと自分でやる事と家事もしろよ!」

「はい!」

「ハエルは問題点が無いようで自分で何でも抱える事を見直す事。頼る事を覚えろ。そしてアンバを働かせろ!」

「肝に命じます!」

「ひ、ひどい。」

「卒業おめでとう。お別れだ。」

「そんな!あ!呪い!」

「ん、呪いは解いておいた。安心して帰ればいい。」

「本当に何でもありですね。」

「去らばだ。」

後ろを向くとダッシュで去って行く。
恐ろしい程の速さに驚くしかなかった。

「はやい...」

「ははは、帰るぞ!」

「「「おお!」」」

この後に大人達が起きてオムツに落ち込んだり、呪いが解けて喜んだりしていた。
七人の成長は凄く、後に『みどりの七英雄』として昔話になるのだが、別のお話。
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