転生国主興国記

hinomoto

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本章

アトミッククロー

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小心者は何処にもいるものだ。
二日で獣国の領地の中にミニック国がある事が分かったので、王や他の貴族達にも連絡を入れるよりも先にウエルゲンの元に来たりもしていた。
裏切り者だから地下牢に閉じ込めるのは普通なのだが、即座にウエルゲンとデペックの親子を地下からは救い出したが、地上の牢屋に移しただけとなる。
ともかく、小心者は土下座をしていた。
王や貴族に報告を上げたのだが、一向に取り合わなかった。
寧ろ、旧タイク帝国の使者と和やかに楽しんでいたのだ。降った後の処遇とか、支配権とかなどを話していた。
デテュート親子の処遇は決まっていた。
契約後に斬首することで。
四日後に形が整ったので、書状にしますの段階で北から軍が来たとの報告があった。
てっきり、タイク帝国の軍隊だと思い手出し無用としていた。

首都に三万の軍が現れたのだ。
旗も姿もタイク帝国軍と違っていた。
何とも云えない軍隊が現れていた。
それが首都の門を軽く越えてしまい、民衆には肉体的な被害はないが精神被害は多大になった。
城を襲い出すと、場内の兵や貴族は笑っていた。
武器も持たず、防具も薄い屈強な男達がいたからだ。
軍隊としたら笑うしかない。
防具も薄くて当たり前で、下着しか身につけていなかった。
ウエルゲンはただ震えていた。
気が付いたデペックは、

「どうした!ウエルゲン、大丈夫か?」

の答えが、

「この臭い、この熱気、あいつらだ。あいつらが来たんだ。」

と、同じ言葉を繰り返し呟いていた。
何がとデペックは思った。
臭いと聞いて、嗅いでみた。
甘い匂いが匂う?花とは違う変わった匂いがしていたのだ。
息子は一体なにを恐がっているのか?
デペックには不思議であった。
そして、笑いの後に絶叫を聞いた。

城門では、兵の嘲笑も気にせずに数人が門にお尻を向けた。
何をするのか分からないが男が何ももたないで数人がいるとか、普通に考えて異常だった。
それが恐怖に変わったのは直ぐであった。
お尻で門を破壊すると、男達は寡黙に城に侵入した。
女の悲鳴ならどんなに書けただろう。
城では男の悲鳴が挙がっていた。
デペックも痛烈な獣国の戦いなのかと思っていたが、気になる事が多々あった。
戦いなのだが、剣撃の音が鳴らないし、血の臭いも少ない。
寧ろすえた臭いがする。
男の声が近づくとウエルゲンは一層脅えていた。

「どうした!ウエルゲン!」

「父上、あいつらが来ています!あの悪魔がいます!」

唐突に牢屋に男が来た。
男の身体は屈強なのだが、武具を装備せず、肌着を来ていた。
身体はテカテカしていて、甘ったるい臭いもした。そして立っているのに、なしかしらのポーズをしていた。

「ウエルゲンちゃん!」

「ギャー!来たー!」

ウエルゲンは脅えていた。
近くに来られないように奥に逃げていた。

「あ、あのー、済まないが、息子とどういったご関係かな?」

冷静にデペックは訪ねていた。
あの冷静かつ頭の良い息子が脅える人間とも見えてないからだ。
武具を装備してないのが気にはなっていたが。

「あらー!ナイスガイも居たのー!ウエルゲンちゃんのお父様なんだー。こ・ん・ば・ん・はぁ!」

「はあ。」

デペックは何か可笑しな人だと思った。

「ご免なさいねー。鍵は外すけど、外には出ないでねー。」

「おお、外してくださるか。して、外に出るなとは?」

「やだー。外にいたら喰っちうもん!」

「はあ?」

「じゃ、ごめんあそばせー!」

後ろ向きになり、鍵を尻に挟むと、

「どおぉりゃ!」 

と、野太い声で鍵を壊した。

「後でねー!」

手を振りながら出て行ったが、

「お前!それはあたいのよー!」

と、太い声と細い声が聞こえた。

「ウエルゲン、お前の知り合いなのか?」

「違います!」

耳を押さえて兎に角小さくなりながら脅える息子を見ながら、デペックも動けないでいた。
外の声を聞かないように考えの渦へと思考を沈めていた。

外では、阿鼻叫喚な地獄絵図が起きていた。
腐女子諸君なら甘美の宴だろう。
ノンケには心臓に悪いモノがある。
ホモの楽園がそこにあった。
どうゆう理由か分からないが、敵対している男達が襲われていた。
その場にいたデペック配下の兵は誘導されて無事に逃げれたが、そうでない者や中立とした者には容赦がなかったのだ。
他に助かった者とは女性と子供なのだが、男は洗礼だけ受けたのだ。
この時の性で口付け恐怖症になった子も多かったとか。
特に元王子達は恐がっていた。
さて、宴だが、本当に壮絶であった。
剣は尻に挟まれて折られ、魔法も効かない。槍ならと向かうが尻に挟まれ折られるのだ。
無駄がない動きで翻弄されて、口付けからの取り込みが恐ろしい。
蛇の様に舌が這い廻り、鎧を簡単に外されて下着を取られ、アトミッククローが放り込まれるのだ。逃げる事も泣く事も許されない。
凶悪の権現としか云えない程の襲い込みが行われた。
城は男達の喘ぎ声と歓喜の声で満たされていた。
それは、逃げても追われるのだ。
その追い込みは必要以上に探された。
一人も逃がさない構えだろう。
城からはすえた臭いで一杯であったし、近付く者もいなかった。居るはずもなかったのだ。
あの惨劇を見たものは居ない。
知ったものは、全て元の世界には戻れなくなったのだ。
いや、戻れなくなった。
信じる神でさえすべからず逃げていったのだろう。
信じる神は何だったのだろうか。
次の日の朝に王は獣国に降伏した。
男に抱かれながら、しなだる王の宣言であった。

ミニック国に合掌。
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