転生国主興国記

hinomoto

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夢のあと

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日差しが目に突き刺さるように眩しく映り、目が覚めてしまったのだ。
ベッドの上で喉が渇いたデテュート宰相は、迷わず水差しから水を飲んだ。
一頻り水を飲んでから、今の自分に考えが及んだ時に声を掛けられた。

「父上、目が覚めたようですね。食事の支度をさせましょう。」

その人物を見て、更にパニックなってしまう。
自分の息子、ウエルゲンが居たのだ。

「お前、いや、連絡をー、いや、元気か?」

「はい、元気ですよ。」

ウエルゲンの笑顔に現実が受け入れなくような感じで会話を続けた。

「夢を見たよ。サンガ連合もタイク帝国も倒れされてしまう夢を。」

ありがとうと温かいお茶をもらい、息で冷ましながら口をつけようとした。

「ああ、父上、違いますよ。」

「ん?夢の話か。」

「ええ、夢の話です。」

「夢に間違いとは、我が息子ながら情けない。」

「いえいえ、夢が間違いなのですよ、父上。」

「間違いな・ぞ・」

飲む前に記憶が繋がり、ウエルゲンの顔を見てしまう。

「サンガ連合はここ以外は現実ですよ、タイク帝国は既に首都を囲んでいます。後数日で倒れるでしょう。」

「お、お前は確か獣国に...」

「あ、私は獣国の使者になって参りました。どうです?凄いでしょう。」

「なっ!お前が使者だと!」

「ええ、もう少し話が必要ですね。」

ウエルゲンは椅子をベッドの側に置いて座ると、父上、デペック・デテュートを見た。
デペックは息子であるウエルゲンの顔が息子の顔から男の顔に変わるのを見た。

「...頼む。」

「ありがとうございます。まず、先に今回の戦は神たる者に手を挙げた帝国への怨みです。決して同盟の救援ではありません。」

「か、神?まさか。」

「信じなくても直ぐに分かります。その上で聞いて下さい。フォゴット部隊を神の臣兵たる方々が討ち取りました。それを聞いた獣人が怒り狂ってしまい、二十五万の兵となり出たそうです。しかも、国が主体で行う前に出てしまったのです。怒った信徒の進撃は学舎で学問をしていた私にも届きました。おの話も併せてですが、、、」

先ほどまで冷静であったウエルゲンが震えだした。

「な、話せ!い、いや、話してくれないか?」

「人族に三万の強力な軍隊も、進軍していました。信徒とは別の親衛隊。彼等の一人に会いましたが、....あれはダメです。ダ、ダメ、なん、で、す。」

「まて、大丈夫か!落ち着くんだ!」

「はー、はー、はー。んっ、済みません。焦ってしまい、申し訳ございません。」

「いや、構わんが、何があったのか教えてくれないか?」

「はい。今回の戦闘は獣国ではなくて信徒が行ってると言いました。信徒は旧サンガ連合を潰しましたが、親衛隊はタイク帝国に進軍してしまいました。現在、タイク帝国首都に居るのが親衛隊です。後は軍が後方支援に入りました。二日目でレビット国が降伏。」

「なんと!」

「後はこの国が落ちたらと、親衛隊が狙っております。」

「その親衛隊とは、どんな軍隊だ!」

「おかまです。」

「はっ?」

「オカマの軍隊です。」

「おかまの軍隊?」

「はい。旧レイク王国の軍隊でファフレミア国を侵略した軍隊でした。軍隊が神に倒されてオカマの親衛隊になったと聞いております。」

「して、おかまの親衛隊とは、旧レイク王国の敗残兵なのか?」

「敗残。確かに敗残ですが、あれは悪魔の軍隊です。あれに狙われたら最後なんです!」

「そんなにか!そんなに恐ろしいのか!」

「恐ろしいです。あれが我々のみに襲うのですから、早めに降伏をお勧めします。」

「なんと!同盟国なのに!」

「私はこの国も好きですが、あれに狙われて生きる気はしません。それなら、この国を捨てます!」

「な、お前にそんな事を言わすとは、、」

椅子からウエルゲンは立ち上がると、

「私は使者の務めをいたします。父上にはご忠告と仔細を伝えました。父上の仕事に満身してください。」

礼をデペックにすると、部屋を出て行った。
デペックは一回りも二回りも大きくなった姿に感動はしたが、親衛隊の事に頭を動かしたのであった。
それは、大国になった事と大国に貴族や奴隷制度が無いことが問題であった。商人としても販路も取られる可能性もある。
こうなると、守る存在をどうするか。
何を大事にするかを考えていた。

暫くして王の召喚があり、王の間に入る。
王と貴族が集まっていた。

「宰相、デテュートよ。この度の使者の事を聞いたか?」

「はっ!我が息子、ウエルゲンであります。」

貴族達からは陰口を言われているのがわかるが、無視を決め込みある考えに至った。
デテュートとは息子との対峙する前に、王に聞いてみた。

「王よ。私は王に使えているため如何様な事にも従いますが、一つだけお聞かせください。」

「おま、なんだ。聞きたい事とな?」

「はい。民衆の事でございます。」

「ふむ、最後の宰相の要望ですか。王よお聞きなさいますか?」

「聞いてみよう。デテュートよ、なんぞ?」

「はっ!失礼して、陛下は民の王でありますが、王にとって民とはなんでございましょう?」

少し考えてから王は語った。

「儂にとって民とは足手まといの存在じゃな。守って貰うのが当たり前とか抜かす、ただのゴミじゃな。」

「なっ!それが真の答えですか?」

「そうじゃな。昔からそなたは、なんだかんだと民に味方していたが、儂は嫌いじゃた。国の守りをしてたから、聞いていたがな。それも終わりじゃ。」

「解りました。それでは好きなように。」

「衛兵!デテュートを引っ捕らえろ!」

兵に連れられて王の間を出て行った。決して兵に捕まれる事がなく、自らの足で歩いて出て行ったのだ。
しばらくして、獣国の使者が来た。
部屋に宰相が居ない事を知ると、臣下の礼をとらなかった。

「ふむ、獣国の使者になったか、裏切り者よ。」

「裏切り者ですか。事の前に情勢をご存知ですかな、ミニック王。」

「ふふ、獣国の使者は知らんようだが、我らにはダクレよりタイク帝国の使者が来ているが何か?」

「古い。余りにも古い。」

ウエルゲンは頭を振りながら、駄目ですとジェスチャーをした。

「古いとは何をだ!二日前から来ておられるのだぞ!」

「はー。それが古いのです。」

「なんだと!」

「では聞きますが、私は獣国の使者ですが、どうやってミニック国に来たでしょうか?」

「えっ....」

誰も答えれなかった。
ふとミニック王は聞きたくなったのだろう。

「裏切り者がどうやって来たのか教えてみよ。」

「ええ、良いでしょう。我が国は二日前に属国ファフレミアにタイク帝国から進軍がありましたが、即座に壊滅させました。その日の内に元レイク側より進軍を開始して、昨晩にはミニック国を除く領地を制圧し、現在はタイク帝国の首都を制圧にかかってるでしょう。」

「「な!....」」

「無理だ!そんなに速く攻めれまい!」

「では、私が今日の朝に居たのでしょうか。私共の馬車をみたのですか?」

「馬車がどうした?そんな事に騙されるか!」

「そうだ、捕まえて親子共々殺してしまえ!」

「「そうだ!意義なし!」」

「衛兵!捕まえよ!」

ウエルゲンは抵抗もせずに兵に捕まった。そして、何も言わずに連れて行かれたのである。
王の間に残った王と貴族は笑っていた。
本当の事を、誰も知ろうとは思わなかったのだ。
四日後に、恐ろしい事になることを身をもって知る事になるのだから。
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