転生国主興国記

hinomoto

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本章

なみだくんさよなら

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エルクは最後の送り出した兵の後ろ姿を見ていた。
生きて、生きて、一人でも多く助けて欲しいと心で願った。
二千の兵から五百は城に送った。
死兵として五百人も集まった。
この町で死ぬことだろう。
千人の兵も防衛の為だが、無傷とはならないが生かして送りたい。
恨みはあるが、この国がしてきた事も知った今では、攻められても仕方がない。
だから死んでも良い訳でもない。
ナイン様のご厚意もどうにも成らなかったのが悔やまれるが仕方がない。
少しでも、仲間を国民を多く逃がす事を考えるべきだ。
千名の後続隊に、逃げる場所と後詰めを頼んだ。
城の先に逃がす事を忘れていたのだ。
後何時間で起こるか分からない戦闘を考えて、飯の用意に入る。
敵側も炊事の煙が立ち上っている。
サンガ連合の近くに町や村はないので逃げるのは早いだろう。
商人の国もこの戦いに参戦するだろう。
どうにか頑張ってもらいたい、生き残る戦いだから。
『アニァータ。後は任せた。』
そう願い、飯を食べた。
不味いと思った。
死ぬ前に旨いものを食べれない事に涙を流してしまう。
声も出さず、涙を流して飯をたべたのだ。
残兵全てが同じ涙を流した。
思いは違うのだが。



ーーーーーーーーーーーーーーー


昼になり、伝令が来た。
第三軍は予定より遅いが二時間以内で到着とあった。
飯をのんびりと食べてから、釜戸や寝床を片付けさせた。
ゆっくりするのは城に入ってからと軍に広めると、一気に闘志を沸かせていた。
後少しの時間で終わるのだから。
ゆっくりと軍儀も始める。
ファフレミア国の次はサンガ連合を攻めるか獣国なのかを話していた。
サンガ連合を攻めるのに反対と賛成をのんびりと争わせた。
その後の軍事行動がレイク王国の次の一手となる。
獣国との戦争にはならないが、サンガ連合から要求を止める事が大事だ。
一歩進めて兵を境界まで進軍させて要求を跳ね退けてしまう予定だ。
出来るなら侵略されたで賠償を払わしたいのが本音だ。
ファフレミア国は手に入るので、しばらくはファフレミアを開拓しなくてはいけないと思う。
4年あれば獣国の侵略も出来る。
ブリュッセル将軍の頭で皮算用が弾かれる。

予定よりも早く第三軍が到着した。
第三軍に後詰めを託し、陣形を整えた。
後詰め約一万、進軍約二万対敵兵約二千。
勝利まで、一声で終わるだろう。
その時、ブリュッセル将軍は感じた事が無い程の高揚感に襲われていた。
毛穴が開いたような、そして、背中からゾクゾクするような感覚もある。
強者が弱者を食べるかのごとく、優越感に浸ってもいた。

一時五十分、その時が来た。
伝令からの準備完了を聞いて、彼は言った。

「攻撃!全て蹂躙せよ!!」

そして、思った。
ナニシテタッケオレ?



ーーーーーーーーーーーーーーー


同時刻前。
エルクは濃厚な敗戦を悟っていた。
死兵を残して、残りを引き揚げさせた。
逃げる為の兵を傷も無いように送り出した。
決戦までの苦悩もなくなっていた。
死兵五百人。
酒を酌み交わし、雑談をして多いに笑っていた。
結婚出来なくなったモノも、結婚してる者から苦労を言われて、笑っていた。もちろんエルクも前者なのだが、気苦労しないで済むと笑っていた。
結婚してる者はおどけて、結婚の苦しみや苦悩話などを多いに言った。
決して結婚して楽しい話はしなかった。
笑顔で笑い声もあるのに、皆は涙を流していた。

同時刻。
時の声が上がった。
エルクは酒を飲み干して、

「さぁ、守ろう!愛する者を守る為に!」

と叫ぶと、杯を割り、

「あの世でまた飲もう!」

と散開したのだった。
死兵達はそれぞれが「またな!」と言う声が聞こえた。



ーーーーーーーーーーーーーーー


同時刻。
アニァータの前にナインが現れた。
突然の事にアニァータは礼などせずに素で喋る。

「あ、アニァータ!」

「あじゃねぇよ!どこ行ってたんだよ!」

「うぉ!?なに?なに怒ってるの。」

「はぁー!今大変な時になってんの知らんてか!?」

「知ってるよ?」

「知らんやろが!!」

「ん?」
「へっ?」

俺の何言ってるの?の顔とアニァータの何を言ったの?の顔がぶつかる。
俺はアニァータの復活の前に話す。

「詳しい事は後にするけど、取り敢えず食糧置いて行くから、集まっといてくれ。」

と、倉庫から食糧を出してから、

「こんなけで良いな。じゃ行くわ!」

と、右手でシュタ!とすると転移した。

「何を!何処に行ったー!クソナインー!!!」

王妃の御乱心が城で起きた。
侍女や衛兵がアニァータを宥めるが、効果はなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーー


レイク王国は古式に乗っ取った戦闘を開始した。
歩兵と弓兵が前進していた。
弓兵の距離までもう少しなのは分かっていた。
この一射で、何人が生き残るのか分からない。
弓を耐えて一子報いなければと考えていた。
エルクは兵に声を掛けようとしていた。

「やっ!エルクみーけ!」

エルクの、目の前に不思議なポーズをした(jojo)ナインが入ってきた。

「はっ?」

「ごめーん!なんか面倒掛けたねー。ちょっとまつ」
「ナナナナっ、ナイン様ー!」

「うぉ!?」

おっさんに抱き締められても嬉しくない。

「うおぉぉぉぉお!!」
「落ち着け!エルクー」
「今までどこほっつき歩いてたー!!」
「のおぉぉ!」

首をガックンガックンしてくれます。

「放ってーー!」

の声、エルクの動きも止まる。
手が緩まり、矢を見ながら、

「アニァータを」
「はらひれほれ、待てって。」

エルクと死兵とレイク王国軍は、いつまでも落ちない矢を見てる。

「へっ、あっ?」

「落ち着け、エルク。」

エルクの肩を叩いく。

「終わったから。」

「?」

俺がニヤリと笑うと、

「「はにゃ!!」」
「「ほにゃー!!」」
「「ずぼらやーん!!」」
「「はいーー!!」」
「「うにょー!!」」

の声が大合唱で聞こえる。
敵を見ていた死兵達もあんぐりと口を開けていたが、やがて笑い出した。

「ぷっ、あれ、ぶっはぁ!」

の後は大爆笑に変わって、話もできなくなる。
エルクだけが、分からないでいた。

「あの?ナイン様?」

「エルクー、矢はここに集めて良い?」

呑気な言葉に何となく頷く。
エルクは仲間の笑い方と敵の叫び声が気になった。
ゆっくりと敵を見に行くと、信じられない光景を見ていた。
来世に伝わる、くだらない戦闘が目の前にあったのだ
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