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本章
ちちのこころ
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「どうなっているのだ!」
水蛇竜のララルバートは机を壊していた。
「落ち着きーな。」
水亀竜のロザンビークは器用に前足で水草を食べていた。
ラルデバラートはどうすべきかを考えていた。
嘘で固めた報告に不可解な事案に恐れていた。話を広げたり埋めたりする度に不可解な報告が増えるからだ。海賊討伐している場合では無くなっているのだから。
「シャチやクジラはもうどうでも良いが、エイが交易を辞めるとか、町を捨てるなぞ頭がおかしいぞ!龍にしてもそうだ。ラルデバラート!どうなっている!お前の報告では呪いのままであったではないか!」
ララルバートは怒りの矛先をラルデバラートに向けた。向けられたラルデバラートは逃げ口上を必死に考えるようにした。
逃げられないのだから。
コンコン。
一人の蛇族の衛兵がきた。
「ララルバート様。」
「なんだ!」
「はっ、サメ族が一族郎党を引き連れての引っ越しを見たものがいまして。」
「どうでもいいわ!下がれ!」
「はっ。」
とにかく逃げるラルデバラートは、
「ララルバート殿、私はサメ族の行動に何か有ると思いますぞ!」
「はぁ?」
「サメ族が一族郎党を引き連れるなんて何かを裏が有ると思うのです!」
「それよりも、」
「私は重要だと考え、サメ族の調査に出ます!もちろんエイ族の後釜なんか考えてませんので、後は好きなようにして下さい。では。」
ラルデバラートは逃げれた。逃げるようにその場から出ていった。止められる声も無視して逃げたのであった。
「サメ族が怪しい・・・・か。」
「ロザンビーク?」
「どうするかよりも、怪しいで動くとはね。」
「ふむ。」
「それにララルバート。君に殿付けしなくてはならない程に何かを察知したんと違う?」
「しかし、いや。それが一番の近道か?」
「さぁ、どうだろう。」
二人になって、一息ついたのか穏やかになっていた。怪しい雰囲気もあるのだがそれはー、
ロザンビークの側に寄り添うように、ララルバートが肩らしき場所に顔をのせる。
「なーに?」
「二人になれた。」
「そうやな。しかし、辛く当たりすぎやで?」
「仕方ないでしょ。あいつ何時も邪魔。」
「おー。辛辣やな。ま、邪魔やな。」
「でしょ。それに逃げたし。」
「ほんま。あれは酷い逃げや。」
「どうでも良いよけど。」
「そうやな。二人で話そか。」
「うふふふふふ。」
「ゆっくり、たーんとしような。」
二つの影が一つとなる。
別に人と、同じではない。
ただ、どちらが受けか攻めかは分からない。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ラルデバラートは必死に逃げていた。供を振り切り力の限り泳いだのである。
竜が逃げるのは、それよりも強い龍と相場は決まっているが、今の海では考えられない。知能を持つ者が海底に広がったのは、幻獣様の気まぐれだったのかは分からないが、魔物で終わる一生から脱却出来たのは間違いなく幻獣様のお力であった。それが、竜が嘘をついて逃げるまでになっていた。進化なのか退化なのかは分からないが、一様はここまでなったのだ。
「こ、ここまで来れば良いかな。」
供を置いて来たのも分かって、その場に腰を降ろした。いずれ供も追い付くだろう。
「どうしよう。」
なんて事はない。自分の不始末が心配なのだ。
龍を見張る簡単な仕事も出来ないと、不名誉なレッテルさえ付かなければ良いのだが、実に不可解な事になっていた。
龍からの口添えで、エイ族は貿易を辞めた。他にも辞めて海獣神のもとに身を寄せるとあったからだ。町の放棄はララルバートが喜ぶし、貿易等の商いはロザンビークが後を継ぐだろう。
ラルデバラートに入れる余地がないのだ。
利益は蛇と亀に取られて、ヒレ族には何も無いのが現状だ。
何かをすれば、お咎めありになってしまい、不遇の立場に追いやられる。
息子の話に乗っておけば良かったと、ラルデバラートは後悔していた。突然、海獣神様の元に行くとランバルトが言って来たのが二週間前。そこから、親子の縁も切れてしまった。
「元気かなー、ランバルトは。」
父として何も出来なかった事に後悔もしていた。
止めるにしても行かすにしても、もっと良い言い方があったのではないのかは、たまに思う事だ。
いずれにしても、ランバルトの動向よりも自分の身が大切なのだ。
迎えが追い付くまで、ランバルトの事を思う父であった。
水蛇竜のララルバートは机を壊していた。
「落ち着きーな。」
水亀竜のロザンビークは器用に前足で水草を食べていた。
ラルデバラートはどうすべきかを考えていた。
嘘で固めた報告に不可解な事案に恐れていた。話を広げたり埋めたりする度に不可解な報告が増えるからだ。海賊討伐している場合では無くなっているのだから。
「シャチやクジラはもうどうでも良いが、エイが交易を辞めるとか、町を捨てるなぞ頭がおかしいぞ!龍にしてもそうだ。ラルデバラート!どうなっている!お前の報告では呪いのままであったではないか!」
ララルバートは怒りの矛先をラルデバラートに向けた。向けられたラルデバラートは逃げ口上を必死に考えるようにした。
逃げられないのだから。
コンコン。
一人の蛇族の衛兵がきた。
「ララルバート様。」
「なんだ!」
「はっ、サメ族が一族郎党を引き連れての引っ越しを見たものがいまして。」
「どうでもいいわ!下がれ!」
「はっ。」
とにかく逃げるラルデバラートは、
「ララルバート殿、私はサメ族の行動に何か有ると思いますぞ!」
「はぁ?」
「サメ族が一族郎党を引き連れるなんて何かを裏が有ると思うのです!」
「それよりも、」
「私は重要だと考え、サメ族の調査に出ます!もちろんエイ族の後釜なんか考えてませんので、後は好きなようにして下さい。では。」
ラルデバラートは逃げれた。逃げるようにその場から出ていった。止められる声も無視して逃げたのであった。
「サメ族が怪しい・・・・か。」
「ロザンビーク?」
「どうするかよりも、怪しいで動くとはね。」
「ふむ。」
「それにララルバート。君に殿付けしなくてはならない程に何かを察知したんと違う?」
「しかし、いや。それが一番の近道か?」
「さぁ、どうだろう。」
二人になって、一息ついたのか穏やかになっていた。怪しい雰囲気もあるのだがそれはー、
ロザンビークの側に寄り添うように、ララルバートが肩らしき場所に顔をのせる。
「なーに?」
「二人になれた。」
「そうやな。しかし、辛く当たりすぎやで?」
「仕方ないでしょ。あいつ何時も邪魔。」
「おー。辛辣やな。ま、邪魔やな。」
「でしょ。それに逃げたし。」
「ほんま。あれは酷い逃げや。」
「どうでも良いよけど。」
「そうやな。二人で話そか。」
「うふふふふふ。」
「ゆっくり、たーんとしような。」
二つの影が一つとなる。
別に人と、同じではない。
ただ、どちらが受けか攻めかは分からない。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ラルデバラートは必死に逃げていた。供を振り切り力の限り泳いだのである。
竜が逃げるのは、それよりも強い龍と相場は決まっているが、今の海では考えられない。知能を持つ者が海底に広がったのは、幻獣様の気まぐれだったのかは分からないが、魔物で終わる一生から脱却出来たのは間違いなく幻獣様のお力であった。それが、竜が嘘をついて逃げるまでになっていた。進化なのか退化なのかは分からないが、一様はここまでなったのだ。
「こ、ここまで来れば良いかな。」
供を置いて来たのも分かって、その場に腰を降ろした。いずれ供も追い付くだろう。
「どうしよう。」
なんて事はない。自分の不始末が心配なのだ。
龍を見張る簡単な仕事も出来ないと、不名誉なレッテルさえ付かなければ良いのだが、実に不可解な事になっていた。
龍からの口添えで、エイ族は貿易を辞めた。他にも辞めて海獣神のもとに身を寄せるとあったからだ。町の放棄はララルバートが喜ぶし、貿易等の商いはロザンビークが後を継ぐだろう。
ラルデバラートに入れる余地がないのだ。
利益は蛇と亀に取られて、ヒレ族には何も無いのが現状だ。
何かをすれば、お咎めありになってしまい、不遇の立場に追いやられる。
息子の話に乗っておけば良かったと、ラルデバラートは後悔していた。突然、海獣神様の元に行くとランバルトが言って来たのが二週間前。そこから、親子の縁も切れてしまった。
「元気かなー、ランバルトは。」
父として何も出来なかった事に後悔もしていた。
止めるにしても行かすにしても、もっと良い言い方があったのではないのかは、たまに思う事だ。
いずれにしても、ランバルトの動向よりも自分の身が大切なのだ。
迎えが追い付くまで、ランバルトの事を思う父であった。
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